ヒナコレ
「ドラルクー!パパだよー!喫茶店を開いたって聞いて遊びに来たよー!」
「おや、これはお父様。ようこそいらっしゃいました」
「ヌー!」
「おいポール、茶を出せ。熱いのでいいぞ」
「普通にお冷だわ!ったく!」
「あ、ドラルクのお父上」
「やぁ、吸対の少女よ。ドラルクとジョンと君達で喫茶店を経営しているそうだね」
「気紛れの道楽感覚ですがね」
「それでも立派な事だ。ドラルクが色んな事に挑戦してパパ嬉しいよ。ところで私が一番最初の客かな?」
「いえ、三番目ですよ」
「えぇっ!?」
「一番最初に来たのが武々夫」
「二番目に来たのが変態イモムシだ」
「息子が開いた店の一番最初の客になれなかった・・・私は底に穴の空いた紙コップ・・・」
「おいお前、ちゃんと親父さんに連絡したのか?」
「勿論。ただ相変わらずスマホを信用していないようでRINEが中々既読にならなくてな。それで昨日電話したんだ」
「あーなるほど」
「元気を出して下さい、お父様。まともな客という意味ではお父様が一番最初のお客様ですよ」
「うん・・・じゃあそれで納得する・・・」
「それで?ご注文は如何なさいますかな?」
「ふむ・・・では、このシンヨコハマウンテンとクッキーをお願いしようか」
「はい、かしこまりました。お題はサービスしておきますよ」
「いや、ちゃんと払うさ。どれくらいの儲けになるかは分からないが少しでも足しにしてみんなとどこかに遊びに行って楽しんできなさい」
「だったら直接お小遣い下さい」
「このクズ!!」
「いいよ、いくらがいい?」
「アンタも甘やかすな!!」
「ところでお父上はコーヒーやクッキーは人間のもので大丈夫なのか?ドラルクと同じで食べないと聞いたが」
「全く食べられない訳じゃない、食べても栄養にならないから意味がないだけだ。例えば冷たいとかの温度はさておき、氷を食べたら君達には栄養になるかね?」
「いや、ならないな」
「氷は氷だ」
「そういう事だ。そこに加えて味のする氷を食べているようなものだ」
「なるほど」
「なのに人間用のコーヒーとクッキーを食べるのか?ちゃんと吸血鬼用のもあるぜ?」
「いや、これでいいんだ。なんたってドラルクが初めて作った人間をもてなす為のコーヒーセットと同じにしてるからな」
「ちょっとお父様!若造達の前でやめて下さい!」
「ヌヌヌイヌー!」
「ジョンもこう言ってるし、いいじゃねぇか!」
「是非とも聞かせてくれ!」
「ああ、いいとも。あれはドラルクが7歳の頃。ドラルクは幼い時から料理に興味があって私とミラさんにコーヒーとお菓子を用意するんだと言ってな。それでゴルゴナや他の者達に教えてもらいながら作り始めたんだ」
「え?アンタが教えたんじゃないのか?」
「私達に振舞うのに傍で教えられたんじゃ意味がないと断られたんだ」
「それで?その後はどうなったんだ?」
「ミラさんと一緒にこっそり厨房を覗いたんだが、そりゃあもう賑やかだった。グレゴリと一緒に適当な分量を量ってフィンに怒られたり、エディと一緒に生地を捏ねたり、ゴルゴナの入れ知恵で私のコーヒーだけ豆を多くしたり・・・」
「あの叔母さん、とんでもねー入れ知恵してんな・・・」
「お父上はそれを飲んだのか?」
「ドラルクが淹れたのだから勿論!後でゴルゴナには怒ったがね」
「ちなみに私はお父様にコーヒー豆の量をもう少し減らすようにと言われるまであの量がお父様にとって最適だと信じていた」
「少しも疑わなかったのかよ」
「疑える訳ないだろ。子供なんだからそうなんだと信じるのが普通だろ」
「ま、まぁな」
「まぁ、叔母様がお父様に対してちょくちょく悪戯を仕掛けてたのはその当時から知っていたがね」
「疑う余地あっただろ!!」
「いや、アレはゴルゴナが悪い。それはそれとしてお菓子を作るドラルクはとても楽しそうだった。当時は高性能なカメラがないのをどれだけ惜しんだ事か」
「ちなみにクッキーの出来はやはり当時から凄かったのか?」
「そりゃあ勿論!所々焦げていて形も少し歪だったりしたが7歳の息子がここまで作ったのかと思うと至高の味がしたし正に秘宝とも言えたぞ!」
「お父様!!焦げてるだの形が歪だっただのは伏せてて下さいよ!!」
「でも本当に私には金銀財宝にも勝る宝だったんだよ、ドラルク。愛する息子が私とミラさんの為に作った少し歪だけれど可愛らしいクッキーと濃いコーヒーだったんだから」
「・・・っ!」
「おうおう、ドラ公は愛されてんなー?」
「煩いバカ造!セロリでも食べてろ!」
「アバランセロッセロッスォボロッシャアアアアア!!」
スナァ!!
「ヌ~!」
「お、落ち着け二人共!ほらロナルドも!セロリは私が処理しておくから理性を取り戻せ!」
「せ!セロリを片付けたその手はよ~~~く洗え!除菌しろ!百回消毒しろ!!検査してもらえ!!!」
「セロリを何だと思ってるんだ」
「バイオ兵器くらいに思ってるんだろ」
「そんな生温いもんじゃねぇ!!セロリはなぁ―――」
「ヌー」
カチャ(コーヒーを置く)
コトッ(クッキーの乗った皿を置く)
「ありがとう、ジョン」
ゴクッ・・・
サクサク・・・
「ハハ、あの時と変わらない最高の味と風景だな」
END
「おや、これはお父様。ようこそいらっしゃいました」
「ヌー!」
「おいポール、茶を出せ。熱いのでいいぞ」
「普通にお冷だわ!ったく!」
「あ、ドラルクのお父上」
「やぁ、吸対の少女よ。ドラルクとジョンと君達で喫茶店を経営しているそうだね」
「気紛れの道楽感覚ですがね」
「それでも立派な事だ。ドラルクが色んな事に挑戦してパパ嬉しいよ。ところで私が一番最初の客かな?」
「いえ、三番目ですよ」
「えぇっ!?」
「一番最初に来たのが武々夫」
「二番目に来たのが変態イモムシだ」
「息子が開いた店の一番最初の客になれなかった・・・私は底に穴の空いた紙コップ・・・」
「おいお前、ちゃんと親父さんに連絡したのか?」
「勿論。ただ相変わらずスマホを信用していないようでRINEが中々既読にならなくてな。それで昨日電話したんだ」
「あーなるほど」
「元気を出して下さい、お父様。まともな客という意味ではお父様が一番最初のお客様ですよ」
「うん・・・じゃあそれで納得する・・・」
「それで?ご注文は如何なさいますかな?」
「ふむ・・・では、このシンヨコハマウンテンとクッキーをお願いしようか」
「はい、かしこまりました。お題はサービスしておきますよ」
「いや、ちゃんと払うさ。どれくらいの儲けになるかは分からないが少しでも足しにしてみんなとどこかに遊びに行って楽しんできなさい」
「だったら直接お小遣い下さい」
「このクズ!!」
「いいよ、いくらがいい?」
「アンタも甘やかすな!!」
「ところでお父上はコーヒーやクッキーは人間のもので大丈夫なのか?ドラルクと同じで食べないと聞いたが」
「全く食べられない訳じゃない、食べても栄養にならないから意味がないだけだ。例えば冷たいとかの温度はさておき、氷を食べたら君達には栄養になるかね?」
「いや、ならないな」
「氷は氷だ」
「そういう事だ。そこに加えて味のする氷を食べているようなものだ」
「なるほど」
「なのに人間用のコーヒーとクッキーを食べるのか?ちゃんと吸血鬼用のもあるぜ?」
「いや、これでいいんだ。なんたってドラルクが初めて作った人間をもてなす為のコーヒーセットと同じにしてるからな」
「ちょっとお父様!若造達の前でやめて下さい!」
「ヌヌヌイヌー!」
「ジョンもこう言ってるし、いいじゃねぇか!」
「是非とも聞かせてくれ!」
「ああ、いいとも。あれはドラルクが7歳の頃。ドラルクは幼い時から料理に興味があって私とミラさんにコーヒーとお菓子を用意するんだと言ってな。それでゴルゴナや他の者達に教えてもらいながら作り始めたんだ」
「え?アンタが教えたんじゃないのか?」
「私達に振舞うのに傍で教えられたんじゃ意味がないと断られたんだ」
「それで?その後はどうなったんだ?」
「ミラさんと一緒にこっそり厨房を覗いたんだが、そりゃあもう賑やかだった。グレゴリと一緒に適当な分量を量ってフィンに怒られたり、エディと一緒に生地を捏ねたり、ゴルゴナの入れ知恵で私のコーヒーだけ豆を多くしたり・・・」
「あの叔母さん、とんでもねー入れ知恵してんな・・・」
「お父上はそれを飲んだのか?」
「ドラルクが淹れたのだから勿論!後でゴルゴナには怒ったがね」
「ちなみに私はお父様にコーヒー豆の量をもう少し減らすようにと言われるまであの量がお父様にとって最適だと信じていた」
「少しも疑わなかったのかよ」
「疑える訳ないだろ。子供なんだからそうなんだと信じるのが普通だろ」
「ま、まぁな」
「まぁ、叔母様がお父様に対してちょくちょく悪戯を仕掛けてたのはその当時から知っていたがね」
「疑う余地あっただろ!!」
「いや、アレはゴルゴナが悪い。それはそれとしてお菓子を作るドラルクはとても楽しそうだった。当時は高性能なカメラがないのをどれだけ惜しんだ事か」
「ちなみにクッキーの出来はやはり当時から凄かったのか?」
「そりゃあ勿論!所々焦げていて形も少し歪だったりしたが7歳の息子がここまで作ったのかと思うと至高の味がしたし正に秘宝とも言えたぞ!」
「お父様!!焦げてるだの形が歪だっただのは伏せてて下さいよ!!」
「でも本当に私には金銀財宝にも勝る宝だったんだよ、ドラルク。愛する息子が私とミラさんの為に作った少し歪だけれど可愛らしいクッキーと濃いコーヒーだったんだから」
「・・・っ!」
「おうおう、ドラ公は愛されてんなー?」
「煩いバカ造!セロリでも食べてろ!」
「アバランセロッセロッスォボロッシャアアアアア!!」
スナァ!!
「ヌ~!」
「お、落ち着け二人共!ほらロナルドも!セロリは私が処理しておくから理性を取り戻せ!」
「せ!セロリを片付けたその手はよ~~~く洗え!除菌しろ!百回消毒しろ!!検査してもらえ!!!」
「セロリを何だと思ってるんだ」
「バイオ兵器くらいに思ってるんだろ」
「そんな生温いもんじゃねぇ!!セロリはなぁ―――」
「ヌー」
カチャ(コーヒーを置く)
コトッ(クッキーの乗った皿を置く)
「ありがとう、ジョン」
ゴクッ・・・
サクサク・・・
「ハハ、あの時と変わらない最高の味と風景だな」
END