ヒナコレ

「さて、今日からオープンだな」
「ご丁寧に店のバックヤードにロッカー設置してある上にサイズピッタリの制服まであるとか怖すぎるだろ・・・」
「ヌヌッヌヌヌ?」
「うむ、エプロン姿がよく似合ってるぞ、ジョン」
「可愛いな~ジョン!写真撮っていい?」
「ヌン!」
「おーいヒナイチくん、準備は出来たかねー?」
「あ、ああ・・・」



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「おお、良く似合っているじゃないか」
「お、いいじゃん。悪くないぜ」
「ヌヌイ~!」
「サイズピッタリなのが怖いんだが・・・」
「それはさっき俺も思った」
「それから私だけデザイン違いの制服が何着もあったんだが」
「そういえば置いてあったね、ヒナイチくん専用のハンガーラックと大量の制服」
「もはやセクハラだな。アレだったらゴミに出してやろうか?」
「い、いや、そこまでは別に・・・」
「でも気持ち悪いだろ?」
「しかし一回も着ないっていうのもゴニョゴニョ・・・」
「おいロナルド君、そろそろ客が来そうだから迎える準備をしろ」
「お?おう」
「ジョンもロナルド君と一緒にお客様をお迎えしてくれるか?」
「ヌー!」


タタタッ


「・・・ありがとう、ドラルク」
「礼には及ばないさ。全く、あの五歳児は乙女心というものが全く分かっていないから困るな」
「だがロナルドは私の事を心配してくれてたんだ。気持ちは嬉しい」
「ヒナイチくんがそう言うなら別にいいけど。でもあんまり甘やかすとあの五歳児が結婚出来なくなるよ?」
「サンズがいるだろう?」
「どっちも一歩も進まずモダモダしたままでいそうだと思うけど」
「ロナルドは乙女心に鈍感でサンズは直球過ぎて冗談だと取られてしまっているからなぁ」
「そーいうこと。さて、私達もお客様を迎える準備をしなくちゃ」
「わ、私も出ないとダメか?コーヒーくらいなら淹れられるからキッチンの端で―――」
「ダメダメ!こんなに可愛いウェイトレスさんを引っ込ませるなんて勿体ないよ!」
「か、かわっ!?お前はまたそんな事を―――」

「チィーッスロナルドさん!オープン記念になんかくださいよー!」

「前言撤回。ヒナイチくん、バックヤードにお行き。どのダンボール箱に何が入ってるか確認してマジックで書いててくれない?」
「ああ、喜んで引き受けよう」

「記念すべきオープン初日第一号の客がこれなんてな・・・」
「幸先が悪いな」
「ヌー・・・」

「ロナルドさん可愛い女の子は?ボインでエッチなウェイトレスさんはいないんですか?」

「いるわけねーだろ!キャバクラじゃねーんだよ!」

「でもさっき、あのクッキーにつられて床下から出てくる胸の小さい子いましたよね?あの子でいいから呼んでくださいよー!」

「うわー、無駄によく見てる上に超失礼」
「女だけは見逃さないんだろ」

「早く呼んでくださいよー!俺客なんだからもっとサービスしてくさだいよサービスー!」

「ウチはバカ一人につきチャージ料100万円いただきますよお客様」(←般若の顔をしたロナルド)

「す、すいません、コーヒーお願いします・・・」

「泥水一丁!」

「ちょっロナルドさん!?」

「ぶっちゃけ泥水出しても分からんだろ」

「はぁ!?バカにしないで下さいよ!コーヒーくらい違い分かりますよ!」

「では格付けといこうじゃないか。どちらが高いコーヒーか当ててみたまへ」


カチャ(二つのティーカップを武々夫の前に置く)


「へへ、そうこなくっちゃ!」


ゴクッ

ゴクッ


「さて、どっちが高いコーヒーかな?」

「こっちだ!」

「ブブー!正解はどっちもインスタントコーヒーでしたー!」

「はぁっ!?そんなん卑怯ッスよ!!」
「違いが分かるんなら見抜けるだろ」
「武々夫君は違いが分からない事が証明されたな」

「もうワンチャンくださいよー!」

「仕方ない。ホレ」


カチャ


「うっし!」


ゴクッ

ゴクッ


「で?正解は?」

「こっちが高いやつでこっちがインスタントだ!」

「ブブー!どっちもメーカー違いのインスタントコーヒーでーす!」

「またかよ!!」

「おい待て、少なくともインスタントコーヒーが3種類もあるのか?」
「私が見た限りではな」

「ジョン、ちょっと」
「ヌヌイヌヌン?」
「ゴニョゴニョ」
「ヌン。ヌー!」

「どうした?ジョン」
「ヌヌヌヌヌンヌヌイヌヌッヌ」
「何?他にもあと5種類もあるだと?」
「いやどんだけインスタントコーヒーの種類豊富なんだよ!!」
「客の需要に合わせて使ってくれって事かもしれんな」

「んな事より高いコーヒー出してくださいよー!」

「別にいいけど四千円するよ。出せるの?コーヒー一杯に」

「すんません、俺バイトの時間なんで今日はこれで!」

「うむ、賢明な判断だ」
「インスタントコーヒーの味が見分けられないんじゃな」

「そんじゃ、俺はこれで―――」

「待てや!コーヒー四杯分きっちり払えや!」

「えー?でもアレはゲームじゃないッスか~。記念すべき第一号の客としてタダにしてくださいよー。そんなんじゃモテないッスよー?」

「よし分かった、その代わりにチャージ料1億円払ってもらうぞ」(←阿修羅顔のロナルド)

「すんません、払います・・・」


カランカラン(武々夫ログアウト)


「はぁ・・・初日から無駄に疲れたな・・・」
「相手が武々夫じゃあな」
「ヌー」
「あの失礼男は行ったか?」
「うん、行ったよ。バックヤードの方はどうだった?」
「色々あったぞ。予備の食器やパーティーグッズ、それからカラオケセットがあった」
「この他にも今後必要に応じて色んな物が生えてくるだろうな」
「生えてくるとか言うな」
「そ、それからポールダンス用のポールも・・・」
「よし!それを店の目玉にして史上初ポールダンス喫茶を―――」
「しねぇよ!!」

スナァ!!

「ヌー!!」








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