ヒナコレ

「クソッ、手強かったぜ。吸血鬼ゴールドリンボーダンサー」
「金色のアフロによる目眩しが―――ん?なぁロナルド君」
「あ?どした?」
「ウチの事務所の一階ってなんだったっけ?」
「そりゃあ・・・テナントだろ?どっかの?」
「喫茶店じゃなくて?」
「んなコ〇ンみたいな設定・・・何あれ」
「喫茶店」
「どこのビルの?」
「我々のビルの」

「我は吸血鬼お前の事務所の一階に喫茶店を作る」



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「「また変なの出たー!!」」

「おいコラ!何勝手に人が使ってる事務所の一階を喫茶店にしてんだ!!大家に許可は取ったのか!?」

「いんじゃね?別にって許可してくれたぞ」

「すげー適当!!」
「まぁこの新種のポンチ吸血鬼が経営する分には別にいいのではないか?」

「我は作るだけで経営はしない。貴様らがこの喫茶店を経営すると触れ込みさせてもらったぞ」

「「何ぃーーー!!?」」

「オープンは明日からだ。精々頑張るのだな!」

「待てやコラ!こちとら本業ハンター・副業作家の二足の草鞋で必死なんだよ!三足目なんて履いてられるか!!」
「お、悪くない内装だぞ、ロナルド君」
「ヌー」
「入ってんじゃねー!!」
「おや、メモがあるな。あの吸血鬼が書いたもののようだな」

『経営に必要な一式は一通り揃えておきました。今回は出血大サービスで諸費用はこちらで持ちます』

「変な所でめっちゃ律儀だな」
「もしや能力が暴発してその詫びとして取り揃えてくれたんじゃないか?」
「どちらにせよ、喫茶店なんかやってらんねーよ。家具全部売るぞ」
「いや待て。折角だ、少しやってみないか?」
「はぁ?正気かよ?本業どーすんだよ」
「勿論本業がメインだ、こちらは道楽程度にやればいい。それに喫茶店は飲食物を提供する施設でそうなるとメインで動くのは私だ」
「あー、まぁ、そうだな」
「ジョンは店のマスコットで若造はまぁ、オーダー取るくらいは出来るだろ」
「雑な扱いすんじゃねぇ!レジ打ちだってできらぁ!!」
「出来ればあともう一人欲しい所だが・・・」

「にっぴきとも!ここにいたか!」

「おやヒナイチくん、どうし・・・って!!?」



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「どーしたのヒナイチくん!?その格好!まるでおあつらえ向きみたいな!」
「潜入調査で色々あったんだ。それより『吸血鬼お前の事務所の一階に喫茶店を作る』とかいう奴に急いでこのままの格好でロナルドの事務所に行けと言われて来たんだ。一体何がどうなってるんだ?」
「その吸血鬼の名前の通りだ。ウチの事務所の一階に喫茶店を作ってそれをドラ公が本業の片手間に経営するつってんだ」
「ヒナイチくんもどうかね?丁度もう一人スタッフが欲しいと思っていた所なんだ。歓迎するよ」
「そう言われても私は公務員だから副業は出来ないぞ」
「ならこうしよう。ヒナイチくんはあくまでも私の監視業務の延長として喫茶店経営の手伝い。給料は私がお菓子に変換する。どうかね?」
「交渉成立だ!!」
「決めんの早っ!!いくらなんでもお菓子につられすぎだろ!!」


かくして、みっぴきによる道楽感覚の喫茶店経営が始まるのであった。









オマケ


「さて、喫茶店の名前だが『喫茶ドラドラちゃん』なんてのはどうだ?」
「場末のスナックの名前かよ」
「寂れた路地裏で看板から寂しいネオンの光を放ってそうだな」
「煩い!誰がスナックのママじゃ!そんなに言うなら代案はあるのか!?」
「カフェ・マスタードなんてどうだ?」
「客が一回来るだけで終わってそのまま静かに潰れそう」
「ていうか辛そうだな」
「ヌヌヌ」
「駄目!?ジョンまで!?」
「ヒナイチくんは何かあるかね?」
「うーん・・・『クッキークッキー』なんてのはどうだ?」
「それは今お前が食べたいだけだろ!」
「後で焼いてあげるよ。そうなるとやはり、ここは間を取って店のマスコットであり象徴となるジョンをモチーフとして『喫茶マジロ』なんてのはどうだ?」
「どんな間だよって言いたい所だがジョンなら仕方ないな」
「可愛いし良いと思うぞ!」
「では『喫茶マジロ』で決定だ!」
「ヌー!」








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