ヒナコレ

中学三年生の時にプリリアント♡レインボーの仲間達と共に世界を救ったヒナイチ。
高校生になった彼女は新たなマスコット妖精・鼻息丸をペットにして充実した女子高生生活を送っていた・・・筈だった。

「高貴な紫は私にこそ相応しい!エレガントパープル・ドラ子!」
「燃えるような赤は筋肉のシンボル!ゴリラレッド・ロナル子!」
「ヌヌロイロヌ イヌヌヌイロ!ヌーヌンヌヌヌロ・ヌンヌ!(マジロ色は癒しの色!ヒーリングマジロ・ヌン子!)」
「ピスピス!ピスー!(可愛さ・高貴さはオリジナル譲りの紫マスコット!プリティーバイオレット・鼻子!と、言いたいようだ)」
「濃くなる程に深くなる恋のピンクカラー!ラブリーマゼンタ・サン子!」
「・・・」
「どうしたんだねヒナイチくん?」
「さっさと口上を述べやがるですよ」
「大丈夫かー?ヒナイチ」
「ヌー?」

新たな仲間三人と一匹に見つめられ、ヒナイチは諦めたような顔で瞳を逸らしながら渋々と口上を述べる。

「・・・私のピンクはクッキーへの想いそのもの。ピュアピンク・ヒナ子」



width=



『四人と二匹合わせて!プラチナ♡プリリアント!』

ドーン!とそれぞれのテーマカラーの煙が背後で勢いよく立ち上る。

(何故こんな事に・・・)

ヒナイチは遠い目でこれまでの経緯を雑に思い返す。
鼻息丸をペットとして迎えた直後、本当に新しい悪がワヤワヤと迫ってきた。
竹刀片手に立ち向かおうとしたその時、鼻息丸から謎のキラキラした紫色の光が放たれてヒナイチは再び魔法美少女に変身してしまったのだ。
しかも今度の魔法美少女はステッキを使って戦うらしい。
更にどうでも良い情報だが、前は名前の後に担当カラーが付いた名前が戦士としての名前だったが、どうやら今回は名前に『子』が付いた名前が戦士の名前になるらしい。
そしてそこからはなんかワヤワヤと色々あって爆速で仲間が増えた。
ドラ子こと『夜の国』という別世界からやってきたクソ雑魚吸血鬼のドラルク。
ヌン子ことドラルクの使い魔にして相棒の可愛らしいアルマジロのジョン。
ロナル子こと同じ高校のクラスメイトでゴリラ並みの怪力を有するロナルド。
サン子ことこちらも同じ高校のクラスメイトでロナルドに片想いして追っかけをしているサンズ。
鼻子ことなんか知らんけど魔法美少女の力に目覚めた人形にして妖精の鼻息丸。
他にも二名いたが今この場にはいないので割愛させてもらう。
そんなこんなでヒナイチは現在、このメンバーで魔法美少女として再び活動する事になったのである。

「んで?今日の敵は?」

ゴッゴッゴッと叩き棒代わりにステッキで自分の肩を叩くロナルド。
彼はどうもステッキを物理方面で使う癖がある。
ついこの間もステッキで敵をフルスイングしたばかりだ。
その時の即興オリジナル技名が『ロナル子フルスイング』。

「三丁目で悪の組織『ド・ヘン・タイ』の幹部・ビキニキセルが下僕のビキニ親衛隊を連れてビキニの啓蒙活動をしているらしい」

鼻息丸を抱っこしているジョンを抱っこしているドラルクが説明をする。
ジョンは基本、ドラルクに抱っこしてもらっているか肩か頭の上に乗っている。
要はドラルクに対して甘えん坊なのだ。
そして鼻息丸はドラルクが変身に成功した姿(極々稀)を自作で人形にしたものらしく、その所為もあってか主人とジョンに対しては非常に従順である。
そしてジョンも鼻息丸を気に入っているらしく、暇な時は抱き締めたり一緒に遊んだりしている。

「それ普通に通報案件じゃないですかね」

内容が内容なだけに冷静なツッコミを入れるサンズ。
ロナルドが絡まなければまともな彼女。
しかしロナルドが絡むと途端にバグる。
野望はロナルドとの合体技を編み出すこと。

「下手に一般人を向かわせてもビキニ地獄が待っているだけだぞ。見たいか?」
「んな訳ねーです!」
「ったく、アイツついこの間ぶん殴ったばっかりなのに懲りねーな」
「まぁ野蛮ですこと。ゴリル子さんはいつになったら魔法という知性をスナァ!」
「遊んでないで行くぞ」

ロナルドを煽ったドラルクが砂にされる、といういつものやり取りを経た所でヒナイチが場をまとめる。
これもまたいつもの流れである。







そうして現場に急行した一行。
現場ではドラルクの説明通り、悪の幹部・ビキニキセル(本名・ミカエラ)がビキニ親衛隊を引き連れて町の往来をネリネリ練り歩いていた。

「来たな、プラチナ♡プリリアントども!今日こそ貴様ら全員ビキニに―――」
「フンッ!!」
「ブェッ!!」

ビキニキセルはロナルドのゴリラパンチで呆気なく沈むのだった。

「オイ貴様!開幕パンチで終わらせる奴があるか!!」
「暴力で解決出来るならそれに越した事はねーだろ!!」
「それではいつもと変わらんではないか!魔法少女ものなのだから魔法少女らしく解決しろ!」
「メタな話してんじゃねー!!」
「うぎゃん!!」

ロナルドはステッキでビキニキセルを思いっきり殴った。

「おら、魔法少女らしくステッキで殴ってやったぞ。これで満足か?」
「いい訳あるか!!物理攻撃である事に変わりはないだろ!!」
「ロナルド君・・・じゃなくてロナル子ちゃん、ビキニは魔法少女らしい技で倒されるのがご所望らしいからそれで退治してやるぞ」
「待て!退治されたいとは言ってないだろ!」
「ったく、しゃーねーなぁ。んじゃみんな、やるぞ」
「オイ!人の話を聞け!!」

ビキニキセルの意見をまるっと無視してメンバーは一列に整列し、夜空に向かってそれぞれステッキを掲げる。

「クソザコ・パワー!」
「ゴリラ・パワー!」
「ヌン・ヌヌー!」
「ピス・ピスー!」
「ロナルドしゃん・パワー!」
「なんて!?」
「クッキー・パワー!」

『プリリアントパワー♡きゅんきゅんエナジー!』

途中のロナルドのツッコミを無視して四人と二匹のエネルギーが空中に集い、白い光の塊を中心にそれぞれのカラーの光の帯が迸る。
が、エネルギーの塊はピンポン玉くらいの大きさしかなかった。

「小さすぎるだろ!!」

ビキニキセルのツッコミはもっともだった。

「どういう事だ!?チーム一体の技ならばもっと大きくて派手な筈だろう!!」
「うるせーな!あと二人足りねーから小せぇんだよ!」
「その二人はどうした!?」
「一人はY談言わせる事にしか魔法を使わないし戦わないイエローともう一人は滅多に姿を現さないし現してもリククリオネを被ったネイビーブルーだ」
「変態しかいないではないか!!」
「変態のオメーに言われたくねーんだよ!くらいやがれ!!」

ステッキを構えてロナルドが光の玉に渾身のフルスイングを打ち込む。

「うおっ!?」

光速で飛んできたそれにビキニキセルは驚いて身構える。
が・・・

「ぉ・・・お・・・?」

光の玉はビキニキセルに当たったものの、大したダメージを与えた風もなく飛び散って宙に消えた。
ビキニキセルは光の玉が当たった腹部を見下ろすが特にこれといった傷はなく。
強いて言えば微妙に電流が流れているような感覚に首を傾げる。

「どうだ?俺達の必殺技は」
「どうと言われても・・・低周波の一番低いレベルの振動というか電流というかそういうのがワヤワヤ流れて来ているような気がするだけなんだが」
「不完全な技だからな。それも仕方なかろう」
「んじゃ、改めて暴力で―――」
「まぁ待てロナル子ちゃん。暴力を行使してばかりでは可哀想だ」
「うるせぇ。暴力が全てを解決するんだよ」
「イカれた悪役みたいなセリフを吐くな。このおノーブルな私が穏便に解決してやろう」
「はぁ?クソ雑魚のお前が?」
「結局砂にされる未来が視えるです」
「ドラルク、出来ない事は出来ないと言っていいんだぞ」
「えぇい煩い!黙って見ていたまへ!」
「ヌヌヌヌヌヌ、ヌンヌヌー!」
「ピスー!」
「ジョン、私の変身人形、ありがとう!さてビキニキセルよ、これを見るがいい」
「そ、それは・・・!?」

ドラルクが懐から取り出した物。
それはスマホで、画面には布面積の少ない衣装を身に纏い、頭と顔の半分を白い布で覆ったガタイの良い男の写真が表示されていた。
この他にも男の乳首の辺りにはパーの形をしたシールが貼られており、中々シュールである。
しかしその男の事を知っているようでビキニキセルは驚愕する。

「何だそれはーーー!!?」
「知り合いから貰った爆笑写真だ。一応は世界を救った先代プリリアントの戦士らしいがな」
「え?こんなのが先代?え?」
「変態戦士がいるのは伝統だったみたいですね・・・」
「そしてこの先代、そこのビキニキセルの実の兄だ」
「マジで!!!??」
「ヌァッ!?」
「マジなんです!!?」
「マジだとも。ほれ、ビキニキセルを見てみろ」

「愚兄ーーーーー!!!貴様どういう事だーーー!!!」

ビキニキセルはドラルク達に背を向けると携帯を取り出して何事かを叫ぶ。
それから愚兄だの恥晒しだの電話口の向こうの相手を罵倒していた。
どうやらドラルクの言っていた事は本当だったらしい。

「えぇいまどろっこしい!今から行って事情を聴くからそこにいろ愚兄!今日はここまでだ!プラチナ♡プリリアント!!」

通話を一方的に終えるとビキニキセルはぷりぷりとケツを振りながら帰って行った。

「どうだ、ビキニは去ったぞ。これが私流の穏便なやり方だ」
「ヌ~!」
「ビキニの心にとんでもねー傷を残したけどな」
「ちょっと哀れですね」
「・・・」
「ん?床下、何で黙ってやがるです?」
「いぃいいや別に何でもないぞっ!?」
「明らかに挙動不審ですね」

滝のような汗を流してソワソワと忙しないヒナイチをサンズが訝しむ。
だがそこにドラルクが追い打ちをかける。

「そういえばヒナイチくんが『ヒナイチレッド』って名前で活動してる写真があるんだけど」
「えっ!?マジで!?」
「ヌッ!?」
「床下、お前先代だったんです!?」
「これがそのしゃし―――」
「ちぃーーーーん!!!」
「スナァ!!」

ヒナイチ必殺・ステッキ二刀流によってドラルクは切り裂かれる。

「ヌーーーーー!!」
「ピスーーーー!!」

今宵もジョンと鼻息丸の嘆きが夜空に響くのであった。












オマケ


「何故俺がこんな姿に・・・」

シンヨコの暗い路地裏では一人の男が紺色の魔法美少女衣装に身を包まれていた。
男の名はナギリ。
悪の組織『ド・ヘン・タイ』の幹部にしてつい最近プリリアントに光落ちした魔法美少女である。
光落ちした要因としては、とある出来事がキッカケでジョンと触れ合い、僅かに光の心を取り戻した事による。
しかしその僅かな心の光に反応して魔法美少女の力がナギリに降り立ち、今に至るのである。

「クソッ!ブラックカッター・ナギリがなんてザマだ!こんな格好、他の奴に見られる訳にはいかない!!ぐぉおお!頭の中で流れるフレーズがウザ過ぎる!!」

「それはどんなフレーズだい?」

「『切り裂くは悪と悲しみの涙!ネイビーブルー・ナギ子』・・・」

突然横から現れた男をナギリはギギギ、と音がしそうな動きでもって振り返る。
そこには黄色の魔法美少女衣装を着た壮年の男性がそれはそれは愉快そうな笑みを浮かべてナギリを見つめていた。

「めくるめく黄色はY談の色!ハレンチイエロー・Y子!」

「・・・」

「Y談波ァッ!」

ナギリが固まっているのを良い事にY談おじさんは杖を掲げ、ピンク紫色の光を放つ。

「ぐぉおお!柔らかい胸に顔を埋めて頭を撫でてもらいたいぃいい!!」

Y談おじさんの催眠能力により、ナギリの性癖が星々輝く夜空に響き渡るのであった。










END
42/55ページ
スキ