ヒナコレ
前回までのあらすじ
突如現れた闇の一族が一人、ヘンリー・シャドウズ。
彼の振る舞いに心を掻き乱され、同時にドラルクに対して抱いていた想いに気付くヒナイチ。
自身の中に芽生えた淡い気持ちに揺れ動きながらも日々は過ぎていき、なんやかんやあってパワーアップを果たすのであった。
「プリリアントパワー♡きゅんきゅんミラクルチェンジ!」
「ミラクル変身!ヒナイチレッド・ピュア!」
「凄いプリ凄いプリ!こんな短期間でパワーアップするなんてヒナイチレッドは逸材プリ!惜しむらくはパワーアップの過程がカットされた事プリが・・・」
「私は一向に構わないがな」
「構うプリよ~!」
「目覚ましい活躍だね、ヒナイチレッド」
突如暗闇に響いた愉しそうな声にヒナイチはハッとして身構える。
「ヘンリー・シャドウズ!」
「ご機嫌よう、ヒナイチレッド。今日も月の美しい夜だね」
カツカツと音を立てて月明かりの下に現れるヘンリー・シャドウズ。
相も変わらず不気味なマスクを付けており、口元には三日月のような笑みを讃えている。
「・・・前から聞こうと思っていたんだがお前の目的は何だ?あの怪物はお前が呼び出しているのか?」
「いいや、あの怪物は確かに闇の世界から来たものだが私が呼んでいる訳じゃあない。私はこちらの世界と闇の世界の均衡を保つ為にここにいる」
「世界の均衡?」
「こちらの世界を光の世界と仮称しよう。さて、闇の世界では何百年かに一度、闇の宝玉が生成されるんだ。宝玉は大抵、闇の世界で砕いて世界の力にするんだけどどっかのポンチのせいでこの光の世界で砕かれてしまったんだ」
「なんて事をしてくれたんだ・・・」
「ちなみにそのポンチはバカヤローってみんなに罵倒されながらメキャメキャにされたよ」
「それは何よりだ」
「そして光の世界に溢れた闇をどうにかする為に私に白羽の矢が立ったという訳だ。全く迷惑な話だ」
「具体的にお前は何をしているんだ?」
「光の宝玉を生み出しうる存在を探し、育み、その宝玉をこの光の世界で砕くこと。現在は育む所まできている」
「そうなのか!?それでその存在は今どこに?」
「今、私の目の前に―――・・・」
にぃ、とつり上がった口角にヒナイチは一瞬呆気に取られる。
それからヘンリー・シャドウズの視線、言葉の意味するものに気付いて激しく狼狽える。
「わ、たし・・・が・・・?」
「ご名答」
「それじゃぁ・・・スコスコ妖精を遣わして私を魔法美少女に仕立て上げ、怪物と戦わせていたのも・・・」
「いや、それはそこの饅頭みたいな妖精が勝手にやってる事だよ。この光の世界に闇が溢れたのを良い事に自分からホイホイ怪物を呼び出してキミと戦わせて楽しんでるんだよ」
ヒナイチは無言でスコスコ妖精を振り返った。
「プ・・・プリッ?」
あまり可愛くないぶりっ子ポーズを決めてみせたスコスコ妖精の顔面に鋭いパンチが飛ぶ。
「ホゲェエエエエエエエ!!」
悪は滅された。
「でもまぁ、全くの無駄ではないよ。少なくとも私にとってはね」
「どういう意味だ?」
「キミが魔法美少女として力を付ければ付ける程、光の宝玉の生成が速まるのさ。あともう一段階パワーアップしてくれれば完成かな。その代わりにキミは魔法美少女の力を失う事になると思うけど」
「一向に構わん!」
「それは困るプリ!ヒナイチレッドにはこれからも魔法美少女としてオギャッ!!」
スコスコ妖精の頭にチョップを振り下ろして主張を物理的に取り下げさせる。
そこでヒナイチの中でふとした疑問が浮かび、それを素直にヘンリー・シャドウズに投げかけた。
「私が魔法美少女として力を付けていなかったらどうするつもりだったんだ?」
「別の方法で力を付けさせて光の宝玉を生成してもらっていたまでさ。ただ、今よりもう少し時間がかかって私の友人への負担が長引く事になってたけど」
「友人への負担?」
「とはいえ、キミのような可愛らしい少女にこんな危険な戦いをさせて光の宝玉を生成してもらうのは私としても不本意であり、申し訳ないと思っている」
「か、かわっ・・・!な、舐めるな!これでも私は剣道部の主将として活躍しているんだ!怪物など全く怖くなんかないぞ!」
「そんなものは関係ない。私は真剣に心配しているんだ。本当にごめんよ、ヒナイチ・・・レッド」
仮面の奥の瞳が真剣に申し訳なさそうに細められ、ヘンリー・シャドウズの骨ばった掌がヒナイチの頬に添えられる。
冷たくて殆ど皮と骨だけのような手。
そこから微かに香る甘いお菓子の香り。
(ん・・・?この感触、この香り、どこかで・・・)
「さて、今日はこの辺でお別れだ。また会おう、ヒナイチレッド。月の美しい夜に」
添えられていた手は緩やかに離れ、ヘンリー・シャドウズはまた闇の中へと消えて行った。
まるでヒナイチが真実に気付くのを避けるようにして・・・。
続く
突如現れた闇の一族が一人、ヘンリー・シャドウズ。
彼の振る舞いに心を掻き乱され、同時にドラルクに対して抱いていた想いに気付くヒナイチ。
自身の中に芽生えた淡い気持ちに揺れ動きながらも日々は過ぎていき、なんやかんやあってパワーアップを果たすのであった。
「プリリアントパワー♡きゅんきゅんミラクルチェンジ!」
「ミラクル変身!ヒナイチレッド・ピュア!」
「凄いプリ凄いプリ!こんな短期間でパワーアップするなんてヒナイチレッドは逸材プリ!惜しむらくはパワーアップの過程がカットされた事プリが・・・」
「私は一向に構わないがな」
「構うプリよ~!」
「目覚ましい活躍だね、ヒナイチレッド」
突如暗闇に響いた愉しそうな声にヒナイチはハッとして身構える。
「ヘンリー・シャドウズ!」
「ご機嫌よう、ヒナイチレッド。今日も月の美しい夜だね」
カツカツと音を立てて月明かりの下に現れるヘンリー・シャドウズ。
相も変わらず不気味なマスクを付けており、口元には三日月のような笑みを讃えている。
「・・・前から聞こうと思っていたんだがお前の目的は何だ?あの怪物はお前が呼び出しているのか?」
「いいや、あの怪物は確かに闇の世界から来たものだが私が呼んでいる訳じゃあない。私はこちらの世界と闇の世界の均衡を保つ為にここにいる」
「世界の均衡?」
「こちらの世界を光の世界と仮称しよう。さて、闇の世界では何百年かに一度、闇の宝玉が生成されるんだ。宝玉は大抵、闇の世界で砕いて世界の力にするんだけどどっかのポンチのせいでこの光の世界で砕かれてしまったんだ」
「なんて事をしてくれたんだ・・・」
「ちなみにそのポンチはバカヤローってみんなに罵倒されながらメキャメキャにされたよ」
「それは何よりだ」
「そして光の世界に溢れた闇をどうにかする為に私に白羽の矢が立ったという訳だ。全く迷惑な話だ」
「具体的にお前は何をしているんだ?」
「光の宝玉を生み出しうる存在を探し、育み、その宝玉をこの光の世界で砕くこと。現在は育む所まできている」
「そうなのか!?それでその存在は今どこに?」
「今、私の目の前に―――・・・」
にぃ、とつり上がった口角にヒナイチは一瞬呆気に取られる。
それからヘンリー・シャドウズの視線、言葉の意味するものに気付いて激しく狼狽える。
「わ、たし・・・が・・・?」
「ご名答」
「それじゃぁ・・・スコスコ妖精を遣わして私を魔法美少女に仕立て上げ、怪物と戦わせていたのも・・・」
「いや、それはそこの饅頭みたいな妖精が勝手にやってる事だよ。この光の世界に闇が溢れたのを良い事に自分からホイホイ怪物を呼び出してキミと戦わせて楽しんでるんだよ」
ヒナイチは無言でスコスコ妖精を振り返った。
「プ・・・プリッ?」
あまり可愛くないぶりっ子ポーズを決めてみせたスコスコ妖精の顔面に鋭いパンチが飛ぶ。
「ホゲェエエエエエエエ!!」
悪は滅された。
「でもまぁ、全くの無駄ではないよ。少なくとも私にとってはね」
「どういう意味だ?」
「キミが魔法美少女として力を付ければ付ける程、光の宝玉の生成が速まるのさ。あともう一段階パワーアップしてくれれば完成かな。その代わりにキミは魔法美少女の力を失う事になると思うけど」
「一向に構わん!」
「それは困るプリ!ヒナイチレッドにはこれからも魔法美少女としてオギャッ!!」
スコスコ妖精の頭にチョップを振り下ろして主張を物理的に取り下げさせる。
そこでヒナイチの中でふとした疑問が浮かび、それを素直にヘンリー・シャドウズに投げかけた。
「私が魔法美少女として力を付けていなかったらどうするつもりだったんだ?」
「別の方法で力を付けさせて光の宝玉を生成してもらっていたまでさ。ただ、今よりもう少し時間がかかって私の友人への負担が長引く事になってたけど」
「友人への負担?」
「とはいえ、キミのような可愛らしい少女にこんな危険な戦いをさせて光の宝玉を生成してもらうのは私としても不本意であり、申し訳ないと思っている」
「か、かわっ・・・!な、舐めるな!これでも私は剣道部の主将として活躍しているんだ!怪物など全く怖くなんかないぞ!」
「そんなものは関係ない。私は真剣に心配しているんだ。本当にごめんよ、ヒナイチ・・・レッド」
仮面の奥の瞳が真剣に申し訳なさそうに細められ、ヘンリー・シャドウズの骨ばった掌がヒナイチの頬に添えられる。
冷たくて殆ど皮と骨だけのような手。
そこから微かに香る甘いお菓子の香り。
(ん・・・?この感触、この香り、どこかで・・・)
「さて、今日はこの辺でお別れだ。また会おう、ヒナイチレッド。月の美しい夜に」
添えられていた手は緩やかに離れ、ヘンリー・シャドウズはまた闇の中へと消えて行った。
まるでヒナイチが真実に気付くのを避けるようにして・・・。
続く