クッキーdays
シンヨコの静かな住宅街を一人の吸血鬼とその吸血鬼の頭の上に乗ったマジロが行く。
吸血鬼の名前はドラルク。
紫色のパーカーの上に学ランを着たクソ雑魚で、ちょっとした事ですぐに死んですぐに生き返る吸血鬼である。
しかし己の死よりも何よりも楽しみを優先する享楽主義的性格なのもあって毎日を愉快に過ごしている。
アルマジロの名前はジョン。
ドラルクの使い魔にして永遠のパートナーである、みんなのアイドルマジロだ。
埼玉からこの神奈川のシンヨコに引っ越して来た二人は新しい高校に通う事となり、今日がその日であった。
新しい土地、新しい高校に行くという事もあってか二人はとても楽しそうに歩いている。
「いや~新しい学校がどんな所か楽しみだねぇ、ジョン」
「ヌ~!」
「私はまた手芸部に入ろうかなぁ。いや、先生を言いくるめてゲーム部をまた創設するでもいいな。ジョンはどうする?またフットサル部に入る?」
「ヌ~ン・・・ヌヌヌスヌヌヌイイヌ」
「ラクロス部か、まさに青春という感じだな!ただし、競技用のボールに間違われない用に気を付け―――」
「むぃんっ!?」
「スナァ!?」
「ヌー!!?」
歩いている途中の角から人間とぶつかってドラルクは砂になり、ジョンが驚きと嘆きの涙を流す。
ドラルクが貧弱且つあまりにも軽すぎるからか、或いは人間の方が丈夫だったのか、ぶつかってきた人間が転んだり尻餅をつく事はなかった。
代わりにクッキーを咥えながらドラルクに手を差し出してくる。
「むむむむっむ!むいむーむむ!?」
「食べるか喋るかどちらかにしなさいよ」
再生した手で人間の手を取り、そこからドラルクは全身を再生させて人間の前に立つ。
人間はドラルクよりも頭一つ分背が小さく、赤毛のストレートで翡翠の瞳を持つ可憐な少女だった。
前髪の一部がアンテナのように立っているのがより可愛らしい。
その少女にドラルクはしばし見惚れ、少女がアンテナをハテナマークにしながら小首を傾げるとすぐに我に返って紳士対応に入った。
「改めて申し訳ない、美しいお嬢さん。お怪我は?」
「むぅっ!?むむむむぃむむーむむむ・・・!」
「まずはそのクッキーを食べなさいよ」
「さくさく・・・ごっくん!う、美しいお嬢さんとは何だ!?」
「私は事実を述べたまでさ」
「き、貴様!私をからかっているな!?何年のどこのクラスだ!?」
「私は今日から2年94組の真祖にして無敵の吸血鬼ドラルク。こちらはアルマジロのジョン。以後、お見知りおきを」
ちゅ、という小さなリップ音と共にヒナイチの手の甲にドラルクの唇が落とされる。
ヒナイチは数秒の間呆然とし、それから顔を真っ赤にすると叫んだ。
「んななななな何する貴様ー!!?」
「何って挨拶だけど?」
「う、嘘を付け!そうやって他の女子生徒にも同じ事をして風紀を乱すつもりだろう!?同じクラスの委員長である私の瞳が黒い内は許さないからな!!」
「へぇ、キミ委員長だったんだ?お名前は?」
「ヒナイチだ!覚えていろー!!」
住宅街に叫び声を響かせながら少女―――ヒナイチは一目散に学校へ向かって走って行った。
その背中に向けてドラルクは白いハンカチを振りながらジョンに語り掛ける。
「ヒナイチくんだって。早速覚えたぞ」
「ヌー」
「フフフ、初日からあんな項のうまそ―――可愛い人間の少女と知り合えるとは。これは幸先が良いぞ!」
「ヌー!」
「さぁ我々も行こうか、ジョン。初日から遅れるとか不味いし、何か良い事があるかもしれない気がするんだ。例えばヒナイチくんの隣の席に座れるとか!」
「ヌホ~?」
その後、ドラルクの予感は的中して見事にヒナイチの隣の席に座るように先生に言われるのだった。
続く
吸血鬼の名前はドラルク。
紫色のパーカーの上に学ランを着たクソ雑魚で、ちょっとした事ですぐに死んですぐに生き返る吸血鬼である。
しかし己の死よりも何よりも楽しみを優先する享楽主義的性格なのもあって毎日を愉快に過ごしている。
アルマジロの名前はジョン。
ドラルクの使い魔にして永遠のパートナーである、みんなのアイドルマジロだ。
埼玉からこの神奈川のシンヨコに引っ越して来た二人は新しい高校に通う事となり、今日がその日であった。
新しい土地、新しい高校に行くという事もあってか二人はとても楽しそうに歩いている。
「いや~新しい学校がどんな所か楽しみだねぇ、ジョン」
「ヌ~!」
「私はまた手芸部に入ろうかなぁ。いや、先生を言いくるめてゲーム部をまた創設するでもいいな。ジョンはどうする?またフットサル部に入る?」
「ヌ~ン・・・ヌヌヌスヌヌヌイイヌ」
「ラクロス部か、まさに青春という感じだな!ただし、競技用のボールに間違われない用に気を付け―――」
「むぃんっ!?」
「スナァ!?」
「ヌー!!?」
歩いている途中の角から人間とぶつかってドラルクは砂になり、ジョンが驚きと嘆きの涙を流す。
ドラルクが貧弱且つあまりにも軽すぎるからか、或いは人間の方が丈夫だったのか、ぶつかってきた人間が転んだり尻餅をつく事はなかった。
代わりにクッキーを咥えながらドラルクに手を差し出してくる。
「むむむむっむ!むいむーむむ!?」
「食べるか喋るかどちらかにしなさいよ」
再生した手で人間の手を取り、そこからドラルクは全身を再生させて人間の前に立つ。
人間はドラルクよりも頭一つ分背が小さく、赤毛のストレートで翡翠の瞳を持つ可憐な少女だった。
前髪の一部がアンテナのように立っているのがより可愛らしい。
その少女にドラルクはしばし見惚れ、少女がアンテナをハテナマークにしながら小首を傾げるとすぐに我に返って紳士対応に入った。
「改めて申し訳ない、美しいお嬢さん。お怪我は?」
「むぅっ!?むむむむぃむむーむむむ・・・!」
「まずはそのクッキーを食べなさいよ」
「さくさく・・・ごっくん!う、美しいお嬢さんとは何だ!?」
「私は事実を述べたまでさ」
「き、貴様!私をからかっているな!?何年のどこのクラスだ!?」
「私は今日から2年94組の真祖にして無敵の吸血鬼ドラルク。こちらはアルマジロのジョン。以後、お見知りおきを」
ちゅ、という小さなリップ音と共にヒナイチの手の甲にドラルクの唇が落とされる。
ヒナイチは数秒の間呆然とし、それから顔を真っ赤にすると叫んだ。
「んななななな何する貴様ー!!?」
「何って挨拶だけど?」
「う、嘘を付け!そうやって他の女子生徒にも同じ事をして風紀を乱すつもりだろう!?同じクラスの委員長である私の瞳が黒い内は許さないからな!!」
「へぇ、キミ委員長だったんだ?お名前は?」
「ヒナイチだ!覚えていろー!!」
住宅街に叫び声を響かせながら少女―――ヒナイチは一目散に学校へ向かって走って行った。
その背中に向けてドラルクは白いハンカチを振りながらジョンに語り掛ける。
「ヒナイチくんだって。早速覚えたぞ」
「ヌー」
「フフフ、初日からあんな項のうまそ―――可愛い人間の少女と知り合えるとは。これは幸先が良いぞ!」
「ヌー!」
「さぁ我々も行こうか、ジョン。初日から遅れるとか不味いし、何か良い事があるかもしれない気がするんだ。例えばヒナイチくんの隣の席に座れるとか!」
「ヌホ~?」
その後、ドラルクの予感は的中して見事にヒナイチの隣の席に座るように先生に言われるのだった。
続く