スーパーリア充シェイドさん

「「海~~~!!」」
「コーラルビーチ~!」

晴天のコーラルビーチで喜び全開ではしゃぐ妙齢のふたごのプリンセスと月の国の幼きプリンセス。
そんな三人をパラソルの下で温かく見守る二人のプリンス。

「便乗する形で僕とレインもついてきてすまないね、シェイド」
「気にするな。こっちこそ俺の都合に付き合わせて悪かったな」
「それこそ気にしなくて平気さ。いつもは遠慮がちなレインがお願いをしてくる事なんて滅多にないからね」

少し前にレインが宝石の国にやってきて、一緒にバカンスに行けないか伺いだてに来た事がある。
可愛い恋人のお願い、それも普段はブライトを前に暴走する事があると言えどお願いやおねだりをする事があまりないレインからの誘いをブライトが断る筈がなかった。
けれどシェイドとミルキーを伴ったファインと一緒にと聞いた時は少し驚いた。
一緒に行って邪魔にならないかと思ったがミルキーを伴ってる時点でシェイドにはデートの意識はほぼないだろうし、ファインもファインで殆どないのだろう。
レインに一応確認してみてもファインはレインとブライトを誘う事をあらかじめシェイドに話していたそうで、シェイドも何の躊躇いもなくOKを出していたとか。
ならばこれは遠慮なく便乗しても良いだろうという事でブライトも参加した次第である。

「それにこっちの方では仕事は落ち着いてて時間は作り易かったから大した事はないよ。シェイドの方は目の下に隈がないのを見るに時間は作り易かったみたいだね?」
「いや、割と忙しかった」
「え?」
「三徹したらミルキーとファインにブチギレられて仕事部屋に立て篭もられるという事件が発生したくらいだ」
「ミルキーとファイン、ナイスだよ」
「俺は仕事を片付けて早く二人を連れてバカンスに行きたかったんだ」
「だからって無理して三徹とかブチギレられてもおかしくないよ。でもその割には目の下に隈がないからきちんと睡眠時間を確保したんだね?」
「ああ、仕事の合間に刻みで仮眠をな」
「シェイド、仮眠は睡眠時間とは言わないよ・・・まぁでも、仮眠を覚えただけマシか・・・」
「俺の為にミルキーや城の人間が毎日のようにファインを呼んでな・・・散々振り回したから今日はとことん付き合うつもりだ」
「毎日のようになんでファインを・・・いや、もう何も聞かないであげるよ・・・」

当たり前のように徹夜をして目の下に隈を作りがちなシェイドが仮眠を覚えたのは大きな進歩だと思ったがそれと同時にファインが毎日のように月の国に呼ばれたという事実を知ってブライトは大体を察した。
どんな仮眠の取り方をしているのかまでは想像がつかないがファインが絡んでいるのは間違いないだろう。
加えてレインがバカンスのお願いに来た時に、ファインが毎日のように月の国に呼び出されているという愚痴を溢していたのを思い出して確信を深めた。
普段であればファインを独り占めし過ぎだと抗議しに行くレインだが、みんなでバカンスに行く為だと自分に言い聞かせてぐっと堪えたのだろう。
そんなレインの忍耐に報いる為にもブライトも今日はとことんレインを甘やかすと決めるのであった。







おひさまが傾いて辺りがオレンジ色に染まる夕方。
ビーチバレーをしたり海で泳いだりバーベキューをしたりと海での一日を満喫した五人。
別荘に戻る前にファインと一緒に砂の城を作っていたミルキーは何と無しにレインとブライトの方を見て「あっ!」と黄色い声を上げる。

「見てファイン!レインが!」
「え?・・・あ~!」

ミルキーが指差す方向にある光景を見てファインも黄色い声を上げる。
こちらに背を向けて波打ち際を二人並んで仲良く歩くレインとブライト。
しかしただ並んで歩いているだけではない。
レインは見るからに緊張で固まっていながらもブライトの腕に絡んで密着していた。
中々のロマンチックな光景にファインとミルキーははしゃぐ。

「レインってば緊張で固まってるけど大胆~!進歩したじゃない!」
「ロマンチック~!とっても絵になるわね!」
「本当にね!」
「ファインはお兄様にはしないの?」
「うえぇっ!?あ、アタシは別に・・・!」
「私はここで砂のお城作ってくるからお兄様と二人でイチャついてて大丈夫よ」

ミルキーはファインから砂の城へ視線を移すと建設を再開する。
変わらず楽しそうな表情を浮かべているので寂しさなどを感じてはいないのだろうがファインはそれでは駄目だと思って口を開く。

「ミルキーも一緒に行くよ!」
「え?でも折角二人きりなのに―――」
「いーくーの!」

「ね?」と笑顔で小首を傾げるファインの顔を見てミルキーの表情はみるみるうちに幸せなものに変わっていき、「うん!」と元気よく返事をした。

「その代わりにファインもレインみたいな感じでお兄様に抱き付いてね!」
「えぇっ!?そ、それは流石に・・・!」
「すーるーの!」
「で、でも、シェイドそういうの嫌かもしんないし・・・」
「そんな事ないわよ!お兄様はムッツリなんだからむしろ大喜びよ!」
「大喜びってミルキー・・・」
「ほら行くわよ、ファイン!」
「わぁああちょっと!!?」

ミルキーに強引に手を引かれてファインはミルキーと共にシェイドが休んでいるパラソルの下に足を運ぶ。
この流れは絶対にシェイドの腕に絡まないといけないだろう事はこれまでの経験で予想出来た。
そしてその予想はすぐに現実のものになる。

「お兄様!」
「ん?どうした?」
「ファインと一緒にイチャイチャしにきたの!」
「ハハ、そうか」
「ほら、ファイン!」

お兄様の腕に絡んで!と、雄弁に語るミルキーの瞳。
片やファインは何度か視線を泳がせた後、赤い顔を俯かせながら正座をして一言。

「し、失礼します・・・」

それから両手を震わせながらシェイドの腕に絡む。
しかしその絡み方はレインのような密着したものではなく、腕と体の間に十分な空間を作ってのものだった。

「も~!違うでしょファイン!こうよ!」

頬を膨らませたミルキーは一度立ち上がると強引にファインの体とシェイドの腕を密着させた。

「「っ!?」」

これにはファインは勿論、流石のシェイドも驚きに声を出しそうになるがぐっと堪える。
水着という布面積が少なく、厚さも薄いものを着たスタイル抜群のファインが密着してくるというのはつまりそういう事なのだが、それをおかしな声を出さず何とか堪えた事を褒めて欲しい。
二人が密着した事に満足したミルキーは反対側に戻ってシェイドの腕をギュッと抱き締めた。

「お兄様、バカンスに連れて来てくれてありがとう!とっても嬉しいわ!」
「あ、アタシも・・・ありがとう・・・」
「二人が喜んでくれて俺も嬉しいよ」

柔らかく穏やかに微笑むシェイドを見てミルキーは嬉しそうに、ファインはほんの少しの勇気を出してより一層シェイドに身を寄せる。
仕事を頑張った甲斐があったとシェイドは今日一日の幸せを噛み締めるのであった。





「見て、ブライト様。ファインやミルキーがあんなにシェイドに密着して・・・」
「もう少しそっとしておいてあげようか」
「はい!」

一方のブライトはブライトで、レインとの浜辺のお散歩デートを引き続き楽しむのであった。





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