スーパーリア充シェイドさん
公務やら外交やらでしばらく月の国の城を空けていたシェイド。
本日やっと城への帰還が叶った。
しかし明日また出かけなければならない用事がある。
中々に忙しいがワーカホリックで感覚が若干麻痺しているシェイドにとってはあまり大した事ではなかった。
とはいえ、休憩は必要だ。
母親のムーンマリアに帰還した事と仕事の報告を終えて自室で休む事にする。
とりあえずベッドで横になろうかと考えていた矢先に部屋の扉の向こうから気配がした。
「・・・クスクス・・・おにい・・・・・・かなぁ?」
「絶対・・・・・・だよ!」
気配どころか話声さえ隠そうともしない少女達の声。
きっと自分を驚かす為の策を練っているのだろうが生憎疲れている体と頭ではそれらに配慮した対応をしてやれる優しさはない。
なのでシェイドは真正面から向き合うべく、心の中で構えながら扉を開け放った。
「お帰り!お兄様!」
「お帰り!シェイド!」
満面の笑顔で飛びついて来る可愛い妹のミルキーと恋人のファイン。
構えていたとはいえ、やはり元気いっぱいな二人を受け止めるのはそう簡単な事ではなく、シェイドは小さく「うぉっ」と呻くと二人を抱き留めて自然を笑みを溢した。
「ただいま、ミルキー、ファイン」
「お兄様、驚いた?」
「いいや。声が聞こえたからすぐにいるのが分かった」
「な~んだ」
「そこは空気読んで聞こえないフリして驚いてよ~」
「生憎そんな事をしてやれる程の体力は残ってないんでな。だがまぁ、出迎えてくれたのは嬉しい。ありがとう」
二人が苦しくならないように細心の注意を払って優しく抱き寄せる。
が、次の瞬間にはファインだけシェイドの腕の中から消えていた。
「ん?」
空を切った片腕に違和感を覚えて顔を上げ、先程まで腕の中にいた人物を視線で探す。
その人物はベッドの影に身を隠すようにして身を縮めていたが隠しきる事が出来ず真っ赤な髪がモロに見えていた。
相変わらずだな、と心の中で苦笑しながら呟くとミルキーが呆れた目でファインを振り返った。
「もう、ファインは相変わらずなんだから〜。お兄様そこに座ってて」
ソファを指差されてシェイドは素直にそれに従って座る。
その間にミルキーはベッドに近付いて「ほらファイン!」と仕方なさそうにファインを引っ張る。
やれやれ、これでは一体どっちが年上なのやら。
苦笑しているとミルキーが引っ張ってきたファインをシェイドの右隣に座らせ、そして自分はシェイドの左隣に座って抱き着いてきた。
「はい、ファインも抱き着いて!」
「こ・・・こう・・・?」
顔を真っ赤にしながらややぎこちない動きでファインが抱きついてくる。
それを確認するとミルキーはシェイドを見上げて合図を送った。
シェイドはそれに静かに頷くと再び二人を優しく抱きしめた。
ファインの方は逃げられないように今度はしっかりと力を込めて。
その際にファインか小さく身じろぎしたが構わずに抱き寄せて密着する。
「あのね、ファイン。お兄様の疲れを癒して私達もお兄様と触れ合うにはこれが一番なの」
「そ、そうなの?」
「そうよ。ね?お兄様?」
「ああ、そうだな」
シェイドは普段、隙を見せない。
何事においても常に油断はせず、どんな物事も見逃さないように細心の注意を払っている。
勿論気を許した友人達はまた別だが、それ以外だと警戒している事の方が多い。
今回の仕事も駆け引きや要注意人物とのやり取りが中心で流石のシェイドも精神を摩耗していた。
そこにこうやって全面的に気を許している大切な妹のミルキーと恋人のファインに抱き着いてもらうのは安息の地に帰ってきたという安心感を得られるものであった。
何より多忙を極めるこの身を癒すには抜群の効果を発揮する。
回復効果は凄まじく、また今すぐにでも仕事に行けそうな勢いだった。
「シェイド、今仕事しようかなとか考えてなかった?」
「そんな訳ないだろ」
「嘘だ!目逸らしてるもん!!」
「お兄様、休む事も仕事のうちですよ」
「分かってる。それより少し眠くなってきたな・・・」
「じゃあ一緒に寝ましょう!勿論ファインもね!」
「ええっ!?アタシも!?」
「ただ普通にお昼寝するだけだからへーきよ!あ、それとも二人きりの方が良かった?」
「そそそそそそんな訳ないじゃん!!」
「じゃあ決まり!」
「で、でもアタシ、寝相とか悪いしさ・・・!」
「え?いつの話してるの?随分昔の話でしょう?」
「さ、最近また悪くなったの!だから―――」
「グダグダ言ってないで寝るぞ」
「わぁ~!待って~!?」
ぐいっとシェイドに引っ張られ、ファインは半泣きになりながらベッドに連行される。
ベッドの真ん中にシェイドが寝転がって両腕を横に広げると右腕の上にミルキーがころんと頭を乗せた。
それから兄妹揃ってファインに視線を集中させる。
「・・・」
「・・・」
「うぅ~・・・分かったよぅ・・・」
無言の圧力に勝てずファインはおずおずとシェイドの左腕に頭を乗せる。
が、乗せた場所は腕というよりは手首の近くだ。
シェイドはそれを無言で腕を上げる事でファインの顔を近付けさせた。
ファインの頭はずずず、とシェイドの腕を滑って否応なしに距離が近くなる。
すぐに離れようとしたが片腕で抱きすくめられてしまったのでそれは叶わないものとなる。
「お休み、ミルキー、ファイン」
「お休み、お兄様、ファイン」
「お・・・オヤスミ・・・」
至高のお昼寝によってシェイドの体力はフル充電されるのであった。
オマケ
心行くまで昼寝をしたシェイドはその後、ファインも交えて賑やかな夕食を終えた。
ミルキーが泊まっていくようにと引き止めた結果、ファインは泊まっていく事になったのだ。
一緒にいられる時間が少し延びたので今度お土産にお菓子を買ってきてあげなければ。
ソファに座って本を読んでいたシェイドがそんな事をつらつらと考えていると、不意にノック音がして直後に「シェイド」という聞き慣れた声が耳に届いた。
「入っていいぞ」
入室許可を出すと扉が開いて「えへへ」と顔を出したファインが嬉しそうに部屋に入って来た。
シェイドも自然と口元を綻ばせると本を閉じて机の上に置き、少し横にずれて座る事で暗に隣に座るようにファインに促す。
それを察したファインは喜んで隣に座って来た。
「・・・」
しかしファインが座った瞬間、ふわりと石鹸の香りが鼻腔を満たした。
ビクリと体が揺れそうになったが鋼の理性でなんとか押しとどめる。
だが、はしたなくも目はファインを素早く盗み見てしまう。
乾かしたばかりの艶やかな赤い髪、しっとりとした肌、薄手のネグリジェを覆うようなローブの上からでも分かる女性らしい丸みを帯びた線。
少し会わなかっただけでファインはどんどん『女』へと変貌を遂げていく。
中身はまだまだ落ち着きのないお転婆だがそれでも不意に見せる大人の仕草や表情に不覚にも動揺してしまう時がある。
本人に自覚がないのがこれまた性質が悪い。
「こうやって二人だけで話すの久しぶりだね」
「・・・そうだな」
なるべく平静を装って言葉を返す。
ファインが不審に思った様子はなく、こちらの動揺は悟られてはいないようで内心安堵の息を漏らす。
「お仕事頑張るのもいいけどあんまり無理しちゃダメだよ?シェイドが倒れたら大騒ぎになるんだから」
「分かってる。そこは程々に気を付けてるつもりだ」
「ならいいけど・・・アタシに出来る事ってある?って言っても月の国の事に口出しなんて出来ないからあんまりないかもだけど・・・」
「いや、お前にしか出来ない事はちゃんとあるぞ」
「え?本当!?」
「ああ」
「何々!?アタシに出来る事なら何でもするから言ってよ!アタシ頑張るよ!」
「なら、まずは手を繋ぐ」
シェイドはするりと自分の手をファインの手に絡めて強く握った。
突然の事にファインは一瞬驚いたものの、パッと頬を赤く染めてくすぐったそうに微笑んだ。
しばらく会えていなかったものだからこの笑顔を見たのは久しぶりだ。
これだけでもシェイドの心は大分癒されて蓄積されていた疲れも吹き飛んだが、折角のチャンスをこれで終わらせる程シェイドも甘くはない。
すっかり油断しているファインの頬に素早く手を添えて向きを固定する。
「それから、これだな」
「ちょ、シェイ―――」
名前の最後はシェイドの喉の奥に消えた。
重ねるだけのスキンシップのような口付け。
既にキスは何度もしているのに久しぶりだからか、ファインは耳まで顔を赤くして金魚のように口をパクパクと動かしている。
それが可愛らしくも面白くてシェイドはつい笑い声を漏らしてしまう。
「くくっ・・・変な顔だ」
「だだ、だって・・・!」
「前回のパーティーでレインが言っていた通りだな。ちゃんと定期的に会わないと慣れて来たものも忘れてしまう」
「えっ!?レイン、そんな事言ってたの!?」
「正確にはちゃんと時間を作ってファインに会え、だがな。本当はこのまま続きをしたい所だがミルキーが興奮で眠れなくなるから今日はここまでだ」
「へ?ミルキー?」
ファインの頬から手を放したシェイドは静かに扉の方に視線を移動させる。
それを追ってファインも扉に目を向けると―――扉の隙間から興奮気味に二人の様子を覗き見しているミルキーと目が合った。
「みみみみみみミルキー!?いいいいいつからそこに!!?」
「こうやって二人で話すの久しぶりだねって所からよ!」
「殆ど最初からじゃん!!」
「私の事は気にしないで続けていいわよ!」
「しないよ!!」
「ミルキー、もういい加減遅い時間だから寝ろ。明日起きられなくても知らないぞ」
「もうちょっとだけ!お兄様とファインのイチャイチャを見てから!」
「見なくていいの~!!」
叫びながら立ち上がるとファインは慌ててミルキーの下に駆け寄り、そのまま寝室へと連行した。
自分に似てちゃっかりしてる妹と相変わらず奥手な恋人に笑みを溢しながらシェイドは入浴する為に立ち上がるのであった。
END
本日やっと城への帰還が叶った。
しかし明日また出かけなければならない用事がある。
中々に忙しいがワーカホリックで感覚が若干麻痺しているシェイドにとってはあまり大した事ではなかった。
とはいえ、休憩は必要だ。
母親のムーンマリアに帰還した事と仕事の報告を終えて自室で休む事にする。
とりあえずベッドで横になろうかと考えていた矢先に部屋の扉の向こうから気配がした。
「・・・クスクス・・・おにい・・・・・・かなぁ?」
「絶対・・・・・・だよ!」
気配どころか話声さえ隠そうともしない少女達の声。
きっと自分を驚かす為の策を練っているのだろうが生憎疲れている体と頭ではそれらに配慮した対応をしてやれる優しさはない。
なのでシェイドは真正面から向き合うべく、心の中で構えながら扉を開け放った。
「お帰り!お兄様!」
「お帰り!シェイド!」
満面の笑顔で飛びついて来る可愛い妹のミルキーと恋人のファイン。
構えていたとはいえ、やはり元気いっぱいな二人を受け止めるのはそう簡単な事ではなく、シェイドは小さく「うぉっ」と呻くと二人を抱き留めて自然を笑みを溢した。
「ただいま、ミルキー、ファイン」
「お兄様、驚いた?」
「いいや。声が聞こえたからすぐにいるのが分かった」
「な~んだ」
「そこは空気読んで聞こえないフリして驚いてよ~」
「生憎そんな事をしてやれる程の体力は残ってないんでな。だがまぁ、出迎えてくれたのは嬉しい。ありがとう」
二人が苦しくならないように細心の注意を払って優しく抱き寄せる。
が、次の瞬間にはファインだけシェイドの腕の中から消えていた。
「ん?」
空を切った片腕に違和感を覚えて顔を上げ、先程まで腕の中にいた人物を視線で探す。
その人物はベッドの影に身を隠すようにして身を縮めていたが隠しきる事が出来ず真っ赤な髪がモロに見えていた。
相変わらずだな、と心の中で苦笑しながら呟くとミルキーが呆れた目でファインを振り返った。
「もう、ファインは相変わらずなんだから〜。お兄様そこに座ってて」
ソファを指差されてシェイドは素直にそれに従って座る。
その間にミルキーはベッドに近付いて「ほらファイン!」と仕方なさそうにファインを引っ張る。
やれやれ、これでは一体どっちが年上なのやら。
苦笑しているとミルキーが引っ張ってきたファインをシェイドの右隣に座らせ、そして自分はシェイドの左隣に座って抱き着いてきた。
「はい、ファインも抱き着いて!」
「こ・・・こう・・・?」
顔を真っ赤にしながらややぎこちない動きでファインが抱きついてくる。
それを確認するとミルキーはシェイドを見上げて合図を送った。
シェイドはそれに静かに頷くと再び二人を優しく抱きしめた。
ファインの方は逃げられないように今度はしっかりと力を込めて。
その際にファインか小さく身じろぎしたが構わずに抱き寄せて密着する。
「あのね、ファイン。お兄様の疲れを癒して私達もお兄様と触れ合うにはこれが一番なの」
「そ、そうなの?」
「そうよ。ね?お兄様?」
「ああ、そうだな」
シェイドは普段、隙を見せない。
何事においても常に油断はせず、どんな物事も見逃さないように細心の注意を払っている。
勿論気を許した友人達はまた別だが、それ以外だと警戒している事の方が多い。
今回の仕事も駆け引きや要注意人物とのやり取りが中心で流石のシェイドも精神を摩耗していた。
そこにこうやって全面的に気を許している大切な妹のミルキーと恋人のファインに抱き着いてもらうのは安息の地に帰ってきたという安心感を得られるものであった。
何より多忙を極めるこの身を癒すには抜群の効果を発揮する。
回復効果は凄まじく、また今すぐにでも仕事に行けそうな勢いだった。
「シェイド、今仕事しようかなとか考えてなかった?」
「そんな訳ないだろ」
「嘘だ!目逸らしてるもん!!」
「お兄様、休む事も仕事のうちですよ」
「分かってる。それより少し眠くなってきたな・・・」
「じゃあ一緒に寝ましょう!勿論ファインもね!」
「ええっ!?アタシも!?」
「ただ普通にお昼寝するだけだからへーきよ!あ、それとも二人きりの方が良かった?」
「そそそそそそんな訳ないじゃん!!」
「じゃあ決まり!」
「で、でもアタシ、寝相とか悪いしさ・・・!」
「え?いつの話してるの?随分昔の話でしょう?」
「さ、最近また悪くなったの!だから―――」
「グダグダ言ってないで寝るぞ」
「わぁ~!待って~!?」
ぐいっとシェイドに引っ張られ、ファインは半泣きになりながらベッドに連行される。
ベッドの真ん中にシェイドが寝転がって両腕を横に広げると右腕の上にミルキーがころんと頭を乗せた。
それから兄妹揃ってファインに視線を集中させる。
「・・・」
「・・・」
「うぅ~・・・分かったよぅ・・・」
無言の圧力に勝てずファインはおずおずとシェイドの左腕に頭を乗せる。
が、乗せた場所は腕というよりは手首の近くだ。
シェイドはそれを無言で腕を上げる事でファインの顔を近付けさせた。
ファインの頭はずずず、とシェイドの腕を滑って否応なしに距離が近くなる。
すぐに離れようとしたが片腕で抱きすくめられてしまったのでそれは叶わないものとなる。
「お休み、ミルキー、ファイン」
「お休み、お兄様、ファイン」
「お・・・オヤスミ・・・」
至高のお昼寝によってシェイドの体力はフル充電されるのであった。
オマケ
心行くまで昼寝をしたシェイドはその後、ファインも交えて賑やかな夕食を終えた。
ミルキーが泊まっていくようにと引き止めた結果、ファインは泊まっていく事になったのだ。
一緒にいられる時間が少し延びたので今度お土産にお菓子を買ってきてあげなければ。
ソファに座って本を読んでいたシェイドがそんな事をつらつらと考えていると、不意にノック音がして直後に「シェイド」という聞き慣れた声が耳に届いた。
「入っていいぞ」
入室許可を出すと扉が開いて「えへへ」と顔を出したファインが嬉しそうに部屋に入って来た。
シェイドも自然と口元を綻ばせると本を閉じて机の上に置き、少し横にずれて座る事で暗に隣に座るようにファインに促す。
それを察したファインは喜んで隣に座って来た。
「・・・」
しかしファインが座った瞬間、ふわりと石鹸の香りが鼻腔を満たした。
ビクリと体が揺れそうになったが鋼の理性でなんとか押しとどめる。
だが、はしたなくも目はファインを素早く盗み見てしまう。
乾かしたばかりの艶やかな赤い髪、しっとりとした肌、薄手のネグリジェを覆うようなローブの上からでも分かる女性らしい丸みを帯びた線。
少し会わなかっただけでファインはどんどん『女』へと変貌を遂げていく。
中身はまだまだ落ち着きのないお転婆だがそれでも不意に見せる大人の仕草や表情に不覚にも動揺してしまう時がある。
本人に自覚がないのがこれまた性質が悪い。
「こうやって二人だけで話すの久しぶりだね」
「・・・そうだな」
なるべく平静を装って言葉を返す。
ファインが不審に思った様子はなく、こちらの動揺は悟られてはいないようで内心安堵の息を漏らす。
「お仕事頑張るのもいいけどあんまり無理しちゃダメだよ?シェイドが倒れたら大騒ぎになるんだから」
「分かってる。そこは程々に気を付けてるつもりだ」
「ならいいけど・・・アタシに出来る事ってある?って言っても月の国の事に口出しなんて出来ないからあんまりないかもだけど・・・」
「いや、お前にしか出来ない事はちゃんとあるぞ」
「え?本当!?」
「ああ」
「何々!?アタシに出来る事なら何でもするから言ってよ!アタシ頑張るよ!」
「なら、まずは手を繋ぐ」
シェイドはするりと自分の手をファインの手に絡めて強く握った。
突然の事にファインは一瞬驚いたものの、パッと頬を赤く染めてくすぐったそうに微笑んだ。
しばらく会えていなかったものだからこの笑顔を見たのは久しぶりだ。
これだけでもシェイドの心は大分癒されて蓄積されていた疲れも吹き飛んだが、折角のチャンスをこれで終わらせる程シェイドも甘くはない。
すっかり油断しているファインの頬に素早く手を添えて向きを固定する。
「それから、これだな」
「ちょ、シェイ―――」
名前の最後はシェイドの喉の奥に消えた。
重ねるだけのスキンシップのような口付け。
既にキスは何度もしているのに久しぶりだからか、ファインは耳まで顔を赤くして金魚のように口をパクパクと動かしている。
それが可愛らしくも面白くてシェイドはつい笑い声を漏らしてしまう。
「くくっ・・・変な顔だ」
「だだ、だって・・・!」
「前回のパーティーでレインが言っていた通りだな。ちゃんと定期的に会わないと慣れて来たものも忘れてしまう」
「えっ!?レイン、そんな事言ってたの!?」
「正確にはちゃんと時間を作ってファインに会え、だがな。本当はこのまま続きをしたい所だがミルキーが興奮で眠れなくなるから今日はここまでだ」
「へ?ミルキー?」
ファインの頬から手を放したシェイドは静かに扉の方に視線を移動させる。
それを追ってファインも扉に目を向けると―――扉の隙間から興奮気味に二人の様子を覗き見しているミルキーと目が合った。
「みみみみみみミルキー!?いいいいいつからそこに!!?」
「こうやって二人で話すの久しぶりだねって所からよ!」
「殆ど最初からじゃん!!」
「私の事は気にしないで続けていいわよ!」
「しないよ!!」
「ミルキー、もういい加減遅い時間だから寝ろ。明日起きられなくても知らないぞ」
「もうちょっとだけ!お兄様とファインのイチャイチャを見てから!」
「見なくていいの~!!」
叫びながら立ち上がるとファインは慌ててミルキーの下に駆け寄り、そのまま寝室へと連行した。
自分に似てちゃっかりしてる妹と相変わらず奥手な恋人に笑みを溢しながらシェイドは入浴する為に立ち上がるのであった。
END