飾り立てるもの
撮影を終えた四人は学生服に着替えて控え室でハーミィと話をしていた。
外はすっかり日が落ちていてオレンジ色の空も夜の色に変わりつつあった。
「ファイン様、レイン様、シェイド様、ブライト様、撮影にご協力いただきありがとうございます。心より感謝を申し上げます」
「そんなに畏まらないで?ハーミィさん」
「私達も楽しかったですから」
「ありがとうございます。パンフレットとカタログとそれから記念のアルバムは出来上がり次第送らせていただきます」
「「やったぁ!!」」
「アルバムも作ってくれたのか」
「ちょっと見返すのが照れ臭いね」
「それからこちらはほんのお気持ちです。受け取っていただけますでしょうか?」
側に控えるスタッフが持つカゴの中からハーミィは四人に小さな箱を手渡す。
箱の見た目は白を基調とした上品なデザインが施されており、結婚式をイメージさせるものがあった。
中身が気になったファインとレインは顔を見合わせると同時に蓋を開けて中を確認する。
そして中の物を見て二人は驚いた。
「あ、これ!」
「お人形さんだわ!」
ファインの箱にはシェイドとファインの人形が、レインの箱にはブライトとレインの人形が入っていた。
どちらもケーキの上に乗っていたものだ。
オマケに箱を開けると優しい音楽が流れ出し、それがオルゴールだと理解して二人は顔を輝かせる。
「折角ですのでオルゴールにさせていただきました。このオルゴールのような現実が来るようにと祈りを込めて!」
「は、ハーミィさん!!」
「や、やだわハーミィさんったら!!」
ハーミィの最後まで抜かりない冷やかしにファインとレインは慌て、シェイドとブライトは軽く咳払いをする。
「そ、そういえば僕達のオルゴールにも同じ人形が入ってるのかな?」
「確認してみるか」
話題逸らしにブライトとシェイドは顔を見合わせると二人同時にオルゴールの蓋を開けた。
しかしそこから現れたのはシェイドの方はファインの、ブライトの方はレインの写真だった。
どちらもエメラルドガーデンで撮影したであろう単体の写真で、まさに『とびりきの笑顔』という言葉が似合う明るくて可愛らしい笑顔だ。
二人の王子はそれを目にした瞬間、バンッ!と力強く箱の蓋を閉じた。
「シェイド?どうしたの?」
「ブライト様もそんな強く閉めたら壊れますよ?」
「気にするな」
「何も聞かないで」
目つきが鋭くなる二人の王子の後ろにはしかしニヤニヤと笑う天使達がいた。
「ピュピュピュ~!」
「キュキュキュ~!」
「ピュピュ、言うなよ」
「キュキュは秘密を守れる良い子だよね?」
「ピュピュー!」
「キュキュー!」
二人の天使はおかしそうにそれぞれの周りを飛ぶとそのままプーモの傍に寄った。
プーモは頭に疑問符を浮かべながら天使達に尋ねる。
「ピュピュ、キュキュ、何を見たでプモか?」
「ピューピュッ!」
「キューキュッ!」
「プモ、秘密でプモか」
楽しそうに手でバッテンを作る天使達にしかしプーモはそれ以上の追及は無粋だと捉え、何も聞かなかった。
こうして楽しい楽しいブライダル撮影会は恙なく幕を閉じるのであった。
それから数日後。
「「届いた~!」」
二人の元にパンフレットとカタログ、そして記念のアルバムが送られて来た。
アルバムの方は分厚く、やや重めだ。
「早速みんなに見せに行きましょう!」
「うん!」
二人はそれら三点セットを持つと早速サロンにいる友人達の元に急いだ。
しかしその途中のこと。
「あ、ソフィー!」
「まぁ、ファインにレイン。何を持ってるの?」
「この間のロイヤルブライダル社で撮ったパンフレットやカタログが届いたんだよ!」
「ソフィーも一緒に見ましょう!」
「ええ、是非ご一緒させていただくわ!でもその前にポストに手紙を出さないといけないから先にみんなと見ててくれないかしら?」
「うん、分かった!」
「待ってるわね!」
三人はそこで別れ、ソフィーも鑑賞会に加わるべく早足でポストへ向かうのだった。
「見て見てみんな!」
「カタログやパンフレットが届いたわ!」
「まぁ、もう届きましたの?」
「見せて見せて!」
サロンに行くとふしぎ星の女子メンバーは勿論、レモンやビビンやシフォンといった先日のメンバーたちが勢ぞろいしていた。
それらの面々を招いて二人はパンフレットとカタログ、それから記念アルバムを広げる。
流石有名なロイヤルブライダル社とでもいうべきか、構図、距離感、雰囲気などカメラ技術は全てにおいてトップクラスで無駄も隙もなかった。
これにリオーネやミルロが感動の声をあげる。
「凄い!とっても素敵だわ!」
「本当に・・・見てるだけで結婚っていいなって思えるわね」
「こっちのアルバムにはとんでもないものがございますけれど・・・」
アルテッサが恐ろしい物を見るような目で見た写真はファインとレインがシェイドとブライトに向かってケーキを刺したフォークを突き出している姿だった。
そんな写真まで入れてあったのかという驚きよりも気まずさの方が先に立ってファインもレインも乾いた笑いを漏らす。
「それにしてもかなりラブラブだったみたいね」
「本当、見てるこっちが火傷しそうだわ」
「お熱いわ~」
「大胆!」
シフォンが意味ありげに微笑み、タネタネプリンセスが口々に冷やかしてくる。
これには流石のファインとレインも照れて小さくなる。
「そ、それはハーミィさんからの指示で・・・!」
「ブライダル系の撮影だから近いのは仕方なくて・・・!」
「おや、盛り上がってるみたいだね」
「何を見てるんだ?」
と、ここで二人の意中の王子たちが登場し、ファインとレインは飛び上がる。
「シェ、シェイド!」
「ブライト様!」
「ん?ああ、パンフレットか」
「僕達の所にも届いたよ」
「あら、じゃあアルバムのこの写真も見たという事ね?感想を聞かせてもらってもいいかしら?」
シフォンはニヤリと笑うとプラチナチャペルでファインをお姫様抱っこしてるシェイドと、レインをお姫様抱っこしてるブライトの写真を二人に見せた。
それを見て二人は「うっ」と言葉を漏らして一歩引くがその後ろにビビン・レモン・アルテッサが立ち塞がる。
「あら~?どこに逃げようっていうのかしら?」
「逃げたらどえらい事になるでぇ?」
「お兄様、プリンスシェイド、これを見ていただこうかしら?」
物凄く嫌な予感がするが振り向かない訳にはいかない。
シェイドとブライトがぎこちなく振り向くとレモンの手には先程の写真と同じファインをお姫様抱っこしてるシェイドのポストカードが、アルテッサの手にはレインをお姫様抱っこしてるブライトのポストカードが握られていた。
唯一の違いはポストカードにマジックで『結婚しました♡』という文字が書き込まれている点だ。
とんでもない落書きにシェイドとブライトは絶句し、ファインとレインは心臓が飛び出しそうな程驚く。
「「っ!!」」
「なななななな何それー!!!??」
「ビビン、アルテッサ、レモン!どういう事!?ていうか何でポストカードなんか持ってるの!!?」
「ここの教頭先生がしょーもない事でロイヤルブライダル社の人を足止めしてたでしょ?その時にちょ~っとお願いしたのよ」
「そしたら二つ返事でOKしてくれたんやで!」
「折角の撮影デビューですからそれぞれの国にも報告しておいた方が宜しいんじゃないかと思いましてね」
そう言ってアルテッサとレモンは同時にポストカードを裏返す。
裏面には月の国の住所と宝石の国の住所が書かれており、シェイドとブライトは慌ててそれを奪い取った。
「な、何をやってるんだアルテッサ!!」
「マジの住所だぞ、これ・・・」
「切手を貼られてないのがせめてもの救いだね・・・」
「悪質にも程があるぞ!」
「やーねぇ、本当に送る訳ないじゃない。ちょっとからかっただけよ」
「あんたら今めっちゃいい反応してたで~!」
「お前らな・・・」
シェイドは拳を握ってワナワナと震わせる。
と、そこでポストから戻って来たソフィーが顔を出してきた。
「みんな、お待たせ!」
「あらソフィー。どこに行ってましたの?」
「決まってるじゃない、お手紙を出しに行ってたのよ!」
「お手紙ってかざぐるまの国にですの?」
「いいえ、おひさまの国ですわ!」
「はぁ?おひさまの国?」
「さっき四人でポストカードに『結婚しました♡』って書いたでしょう?」
「ええ」
「あれの予備を封筒にまとめて入れておひさまの国に出してきたの!」
『・・・・・・・・・・・・え?』
その場にいる全員が同時に目を点にして固まる。
場は凍えそうな程冷えているのにソフィーの周りだけが春が訪れたかのように明るく温かい。
ビビンとレモンが呆然としながらソフィーに言う。
「ちょ、ちょっと何言ってるのよアンタ・・・」
「アレはプリンス二人に奪われても『実はもう一枚ありました~』言うて取り出す二段構えギャグ用の予備言うたやろ・・・?」
「まぁそうだったの!?いっけない、私ったら勘違いしてたわ!」
「ねぇソフィー・・・ちなみにポストってもう―――」
「聞いてアルテッサ。私が出しに行った時にね、丁度郵便屋さんが来てたの!だから渡しちゃった!」
「・・・」
「しかも速達で!!」
もう誰も何も言えなかった。
言いたくなかった。
考えたくなかった。
これが夢であればどれだけ良いだろうか。
頭の良いシェイドもブライトも、そして学園一の秀才であるシフォンですらも思考を放棄した。
そんな中、リオーネとミルロが目線だけファインとレインの方に向けると、二人は砂になってサラサラと崩れていく所だった。
「ああ!ファインとレインが!!」
「二人共、しっかりして!」
二人の慌てたような声にその場の全員が我に返り、あれやこれやと騒ぎ始める。
「も~!何で出しちゃうのよ~!」
「やっぱソフィーのボケは天下一品やな!」
「褒められても困りますわ~!」
「誰も褒めてません事よ!!」
怒るビビンといつもの漫才を始めるチームジュエル。
「・・・・・・ブライト、後で胃に効くハーブを分けてやるよ・・・」
「ありがとう、シェイド・・・ついでにトゥルース王への弁解について一緒に考えようか・・・」
もう既に胃が痛いシェイドとブライト。
そんな二人をシフォンとタネタネプリンセスが同情の籠った瞳で見つめる。
翌日、ふしぎ星のおひさまの国のトゥルースから直接ファインとレインとシェイドとブライトに週末に緊急帰国するようにという連絡があったのは言うまでもない。
END
外はすっかり日が落ちていてオレンジ色の空も夜の色に変わりつつあった。
「ファイン様、レイン様、シェイド様、ブライト様、撮影にご協力いただきありがとうございます。心より感謝を申し上げます」
「そんなに畏まらないで?ハーミィさん」
「私達も楽しかったですから」
「ありがとうございます。パンフレットとカタログとそれから記念のアルバムは出来上がり次第送らせていただきます」
「「やったぁ!!」」
「アルバムも作ってくれたのか」
「ちょっと見返すのが照れ臭いね」
「それからこちらはほんのお気持ちです。受け取っていただけますでしょうか?」
側に控えるスタッフが持つカゴの中からハーミィは四人に小さな箱を手渡す。
箱の見た目は白を基調とした上品なデザインが施されており、結婚式をイメージさせるものがあった。
中身が気になったファインとレインは顔を見合わせると同時に蓋を開けて中を確認する。
そして中の物を見て二人は驚いた。
「あ、これ!」
「お人形さんだわ!」
ファインの箱にはシェイドとファインの人形が、レインの箱にはブライトとレインの人形が入っていた。
どちらもケーキの上に乗っていたものだ。
オマケに箱を開けると優しい音楽が流れ出し、それがオルゴールだと理解して二人は顔を輝かせる。
「折角ですのでオルゴールにさせていただきました。このオルゴールのような現実が来るようにと祈りを込めて!」
「は、ハーミィさん!!」
「や、やだわハーミィさんったら!!」
ハーミィの最後まで抜かりない冷やかしにファインとレインは慌て、シェイドとブライトは軽く咳払いをする。
「そ、そういえば僕達のオルゴールにも同じ人形が入ってるのかな?」
「確認してみるか」
話題逸らしにブライトとシェイドは顔を見合わせると二人同時にオルゴールの蓋を開けた。
しかしそこから現れたのはシェイドの方はファインの、ブライトの方はレインの写真だった。
どちらもエメラルドガーデンで撮影したであろう単体の写真で、まさに『とびりきの笑顔』という言葉が似合う明るくて可愛らしい笑顔だ。
二人の王子はそれを目にした瞬間、バンッ!と力強く箱の蓋を閉じた。
「シェイド?どうしたの?」
「ブライト様もそんな強く閉めたら壊れますよ?」
「気にするな」
「何も聞かないで」
目つきが鋭くなる二人の王子の後ろにはしかしニヤニヤと笑う天使達がいた。
「ピュピュピュ~!」
「キュキュキュ~!」
「ピュピュ、言うなよ」
「キュキュは秘密を守れる良い子だよね?」
「ピュピュー!」
「キュキュー!」
二人の天使はおかしそうにそれぞれの周りを飛ぶとそのままプーモの傍に寄った。
プーモは頭に疑問符を浮かべながら天使達に尋ねる。
「ピュピュ、キュキュ、何を見たでプモか?」
「ピューピュッ!」
「キューキュッ!」
「プモ、秘密でプモか」
楽しそうに手でバッテンを作る天使達にしかしプーモはそれ以上の追及は無粋だと捉え、何も聞かなかった。
こうして楽しい楽しいブライダル撮影会は恙なく幕を閉じるのであった。
それから数日後。
「「届いた~!」」
二人の元にパンフレットとカタログ、そして記念のアルバムが送られて来た。
アルバムの方は分厚く、やや重めだ。
「早速みんなに見せに行きましょう!」
「うん!」
二人はそれら三点セットを持つと早速サロンにいる友人達の元に急いだ。
しかしその途中のこと。
「あ、ソフィー!」
「まぁ、ファインにレイン。何を持ってるの?」
「この間のロイヤルブライダル社で撮ったパンフレットやカタログが届いたんだよ!」
「ソフィーも一緒に見ましょう!」
「ええ、是非ご一緒させていただくわ!でもその前にポストに手紙を出さないといけないから先にみんなと見ててくれないかしら?」
「うん、分かった!」
「待ってるわね!」
三人はそこで別れ、ソフィーも鑑賞会に加わるべく早足でポストへ向かうのだった。
「見て見てみんな!」
「カタログやパンフレットが届いたわ!」
「まぁ、もう届きましたの?」
「見せて見せて!」
サロンに行くとふしぎ星の女子メンバーは勿論、レモンやビビンやシフォンといった先日のメンバーたちが勢ぞろいしていた。
それらの面々を招いて二人はパンフレットとカタログ、それから記念アルバムを広げる。
流石有名なロイヤルブライダル社とでもいうべきか、構図、距離感、雰囲気などカメラ技術は全てにおいてトップクラスで無駄も隙もなかった。
これにリオーネやミルロが感動の声をあげる。
「凄い!とっても素敵だわ!」
「本当に・・・見てるだけで結婚っていいなって思えるわね」
「こっちのアルバムにはとんでもないものがございますけれど・・・」
アルテッサが恐ろしい物を見るような目で見た写真はファインとレインがシェイドとブライトに向かってケーキを刺したフォークを突き出している姿だった。
そんな写真まで入れてあったのかという驚きよりも気まずさの方が先に立ってファインもレインも乾いた笑いを漏らす。
「それにしてもかなりラブラブだったみたいね」
「本当、見てるこっちが火傷しそうだわ」
「お熱いわ~」
「大胆!」
シフォンが意味ありげに微笑み、タネタネプリンセスが口々に冷やかしてくる。
これには流石のファインとレインも照れて小さくなる。
「そ、それはハーミィさんからの指示で・・・!」
「ブライダル系の撮影だから近いのは仕方なくて・・・!」
「おや、盛り上がってるみたいだね」
「何を見てるんだ?」
と、ここで二人の意中の王子たちが登場し、ファインとレインは飛び上がる。
「シェ、シェイド!」
「ブライト様!」
「ん?ああ、パンフレットか」
「僕達の所にも届いたよ」
「あら、じゃあアルバムのこの写真も見たという事ね?感想を聞かせてもらってもいいかしら?」
シフォンはニヤリと笑うとプラチナチャペルでファインをお姫様抱っこしてるシェイドと、レインをお姫様抱っこしてるブライトの写真を二人に見せた。
それを見て二人は「うっ」と言葉を漏らして一歩引くがその後ろにビビン・レモン・アルテッサが立ち塞がる。
「あら~?どこに逃げようっていうのかしら?」
「逃げたらどえらい事になるでぇ?」
「お兄様、プリンスシェイド、これを見ていただこうかしら?」
物凄く嫌な予感がするが振り向かない訳にはいかない。
シェイドとブライトがぎこちなく振り向くとレモンの手には先程の写真と同じファインをお姫様抱っこしてるシェイドのポストカードが、アルテッサの手にはレインをお姫様抱っこしてるブライトのポストカードが握られていた。
唯一の違いはポストカードにマジックで『結婚しました♡』という文字が書き込まれている点だ。
とんでもない落書きにシェイドとブライトは絶句し、ファインとレインは心臓が飛び出しそうな程驚く。
「「っ!!」」
「なななななな何それー!!!??」
「ビビン、アルテッサ、レモン!どういう事!?ていうか何でポストカードなんか持ってるの!!?」
「ここの教頭先生がしょーもない事でロイヤルブライダル社の人を足止めしてたでしょ?その時にちょ~っとお願いしたのよ」
「そしたら二つ返事でOKしてくれたんやで!」
「折角の撮影デビューですからそれぞれの国にも報告しておいた方が宜しいんじゃないかと思いましてね」
そう言ってアルテッサとレモンは同時にポストカードを裏返す。
裏面には月の国の住所と宝石の国の住所が書かれており、シェイドとブライトは慌ててそれを奪い取った。
「な、何をやってるんだアルテッサ!!」
「マジの住所だぞ、これ・・・」
「切手を貼られてないのがせめてもの救いだね・・・」
「悪質にも程があるぞ!」
「やーねぇ、本当に送る訳ないじゃない。ちょっとからかっただけよ」
「あんたら今めっちゃいい反応してたで~!」
「お前らな・・・」
シェイドは拳を握ってワナワナと震わせる。
と、そこでポストから戻って来たソフィーが顔を出してきた。
「みんな、お待たせ!」
「あらソフィー。どこに行ってましたの?」
「決まってるじゃない、お手紙を出しに行ってたのよ!」
「お手紙ってかざぐるまの国にですの?」
「いいえ、おひさまの国ですわ!」
「はぁ?おひさまの国?」
「さっき四人でポストカードに『結婚しました♡』って書いたでしょう?」
「ええ」
「あれの予備を封筒にまとめて入れておひさまの国に出してきたの!」
『・・・・・・・・・・・・え?』
その場にいる全員が同時に目を点にして固まる。
場は凍えそうな程冷えているのにソフィーの周りだけが春が訪れたかのように明るく温かい。
ビビンとレモンが呆然としながらソフィーに言う。
「ちょ、ちょっと何言ってるのよアンタ・・・」
「アレはプリンス二人に奪われても『実はもう一枚ありました~』言うて取り出す二段構えギャグ用の予備言うたやろ・・・?」
「まぁそうだったの!?いっけない、私ったら勘違いしてたわ!」
「ねぇソフィー・・・ちなみにポストってもう―――」
「聞いてアルテッサ。私が出しに行った時にね、丁度郵便屋さんが来てたの!だから渡しちゃった!」
「・・・」
「しかも速達で!!」
もう誰も何も言えなかった。
言いたくなかった。
考えたくなかった。
これが夢であればどれだけ良いだろうか。
頭の良いシェイドもブライトも、そして学園一の秀才であるシフォンですらも思考を放棄した。
そんな中、リオーネとミルロが目線だけファインとレインの方に向けると、二人は砂になってサラサラと崩れていく所だった。
「ああ!ファインとレインが!!」
「二人共、しっかりして!」
二人の慌てたような声にその場の全員が我に返り、あれやこれやと騒ぎ始める。
「も~!何で出しちゃうのよ~!」
「やっぱソフィーのボケは天下一品やな!」
「褒められても困りますわ~!」
「誰も褒めてません事よ!!」
怒るビビンといつもの漫才を始めるチームジュエル。
「・・・・・・ブライト、後で胃に効くハーブを分けてやるよ・・・」
「ありがとう、シェイド・・・ついでにトゥルース王への弁解について一緒に考えようか・・・」
もう既に胃が痛いシェイドとブライト。
そんな二人をシフォンとタネタネプリンセスが同情の籠った瞳で見つめる。
翌日、ふしぎ星のおひさまの国のトゥルースから直接ファインとレインとシェイドとブライトに週末に緊急帰国するようにという連絡があったのは言うまでもない。
END