ピースフルパーティーと虹の蜜 第七章~かざぐるまの国~

(あれは虹の花・・・!)

数十分前の事。
七枚羽のかざぐるまの塔から少し離れた所にある塔から一人の男が望遠鏡でプリンセス達の動向を窺っていた。
男はマッカロンに憧れていた者である。
マッカロンに認められてメンバーに加えてもらう為に色々と画策していたのだが、宝石の国で起きたマッカロンメンバーによる強盗事件によって各国の警戒が強まり、しばらく大人しくしているしかなかった。
それからプリンス達によるマッカロン討伐作戦によってマッカロン全てのメンバーが捕まったと聞いて男は絶望した。
けれどすぐに男は立ち直った。
そうだ、自分がマッカロンの意志を継いで新生マッカロンを名乗ればいいのだと。
男はとにかく悪い組織のてっぺんに立ってカッコよく振る舞いたいという子供染みた願望があった。
その手始めとして最後のピースフルパーティーが開催されるかざぐるまの国で何かを盗んで盛大に騒がせてやりたいと考えていた。
しかし一人で出来る事などたかが知れていて、何を盗むとかどうやって盗むとかの計画はまるで立てられておらず、行きあたりばったりな強盗劇になる事必至であった。
その証拠にパーティーが始まる時間まで警備が手薄なかざぐるまの塔に身を潜め、頃合いを見計らって気球に乗って城の上にダイブして後はノリで何とかするという杜撰な計画を立てていたという有様。
そんな時におひさまの国のプリンセスが使っている気球を見かけて男はすぐに塔の影に隠れると望遠鏡を使って様子を窺い、虹の花を目撃したのである。

(売りに出せば数千万はくだらないとされる幻の蜜が採れる花じゃねーか!)

闇取引やお宝コレクションに憧れていた男はその手の知識は豊富だった。
俄然、男のやる気は湧いて来る。

(俺から始まる新生マッカロンのデビュー戦に相応しきお宝!何としても手に入れてみせるぜ!)

あの幻の虹の蜜をそれも王族から奪ったとなれば一躍有名になれるだろう。
新生マッカロンの歴史の一ページ目を飾るに相応しいお宝。
男はグッと拳を握るとやる気をみなぎらせた。

(よし、プリンセスどもは王宮に戻ったな。俺もそろそろ出動するか)

望遠鏡でプリンセス達がおひさまの国の気球に乗って王宮に戻ったのを見届けてから男も影に忍ばせていた自前の気球に乗り込む。

「初出動!刻め!新生マッカロンがヒストリィー!!」

子供染みた口上を述べてスタイリッシュに男は発進ボタンを押す。
しかし―――

「おぁ?あ、あ・・・あぁ~~~~~~~!!!!」

ここはかざぐるまの国。
かざぐるまによって風を起こし、ふしぎ星にあらゆるものを送る国。
故にこの国は常に風が巻き起こっている。
しかもその風がいつも穏やかという訳ではない。
時と場合、そして条件によっては強風や荒々しい風が吹く事もある。
偶然か必然か、そんな風が吹き荒れて男の気球はいとも簡単に風の波にあっという間に流されて遥か彼方へ飛ばされてしまうのであった。

「覚えてろ~~~!!!」

単に言ってみたかっただけの言葉でそこに意味は特に何もなかった。







続く
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