ピースフルパーティーと虹の蜜 第五章~月の国~

「月の国のお城にはフルムーンの光が強く降り注いでる所があるんだ?」
「バブ〜!」
「お城に置かせてもらえるなら安心ね。外のどこか適当な所だと光が当たってるかも分からなくて待ちぼうけしなくちゃいけなかったもの」
「よくよく考えればある意味ここが一番の難所だったかもしれないでプモ。なので助かりましたでプモ」

虹の花を育成すべく早くから月の国に訪れていたファインとレインとプーモ。
今回は珍しくアクロバット飛行する事なく到着した三人。
というのも、あのシェイドがいる月の国なのでファインのテンションが低下気味だったのが原因であったりする。
おひさまの国の気球のアクロバット飛行を楽しみにしていたミルキーは残念そうにしていて、ファインとレインも軽く謝っていたがプーモからしてみれば残念そうにされても困るし軽く謝る話しでもなくて頭を抱えそうになった。
そんな事は置いといて三人は今、ミルキーの案内の元、月の国の廊下を歩いていた。
太い柱が等間隔に並ぶ廊下は柱と柱の間にある壁の窓から外の光が差し込んでいて幻想的な雰囲気を醸し出している。
青と黄色を基調にしたデザインは見ていて心が落ち着き、ファインの低めだったテンションを徐々に戻してくれる。
が、そこでふとファインは何かの気配を感じてピタリと立ち止まった。

「ファイン?」
「どうしたでプモ?」
「バブ?」

突然立ち止まったファインを不思議に思ってレイン達が振り返る。
ファインは眉間に皺を寄せて唸っていた。

「う~・・・もしかして・・・」
「もしかして?」
「・・・レイン、これ持ってて」

ファインは半ば押し付ける形でレインに虹の花の植木鉢が入った桐の箱を渡すと踵を返して元来た道を歩き始めた。
そして太い柱を五本超えた所で柱の影に何かを見つけたらしく「あー!やっぱり!!」と驚きの声を上げる。
その反応にレイン達は一瞬顔を見合わせると急いでファインの元に駆け寄り、ファインと同じものを見て同じように驚いた。

「あ!シェイド!!」

柱の影にいたのはシェイドだった。
見つかって気まずいのか、バツが悪そうに顔を逸らしている。

「・・・どうしてお前はそう気配に敏感なんだ」
「だってなんかいるような気がしたんだもん。それよりここで何してるの?」
「ここは俺の城だ。どこで何をしていようが俺の勝手だろ」
「話を逸らさないでよ!そういう事じゃなくてアタシ達の後を尾けて何してたのって聞いてるの!」
「別に尾行なんかしてない。たまたま行く方向が同じだっただけだ」
「嘘付き!だったらなんで柱に隠れてたのさ!?」
「景色を見てただけだ」
「バブバブバブバァブブ!!」

「いい加減にしてお兄様!!」とシェイドを睨みながらミルキーが怒る。
他に視線を感じて見ればレインも責めるような眼差しでシェイドを見つめており、プーモは少し困ったような表情を浮かべていた。
ここまできては屁理屈もそろそろ限界だろうと思い、シェイドは次に用意しておいた嘘を使った。

「・・・お前らがこそこそと何かしてるみたいだから気になって尾けていただけだ」
「別に変な事なんかしてないよ!」
「そうよ!それに月の国のプリンセスであるミルキーの許可を貰ってるんだから悪い事なんかしてないわ!」
「悪い事をしてないなら何をしてるのか言えるだろ」
「バブバブバブ!」
「また『女の子の秘密』か。そうまでして隠すって事は何か余計な事に首を突っ込んでるんじゃないだろうな」
「シェイド様、心配なさっているお気持ちは分かりますでプモがここはどうかお引き下さいでプモ。頼りないかもしれないでプモがこのプーモが御三方を見ています故」
「そう言われてもな」

(こっちだってそう簡単に引き下がる訳にはいかないんだ)

今日はピースフルパーティーにして強盗団討伐作戦当日。
砂漠の西にある廃墟の街を包む砂嵐の威力は徐々に弱まりつつあり、あと数時間もすれば止む。
しかし弱まりつつあるとはいえ、抜けるのは危険なので強盗団も完全に止むまでは廃墟から出ないだろう。
それでも万が一の事がある。
今の所報告はないものの何かしらの手段で抜けている可能性もあるし、外部の者が変装して城に侵入し、こちらの動きを窺ったり攪乱する為の準備をしている可能性も捨てきれない。
家臣にもよく気を配っているシェイドはその中に不審な動きをしている者がいればすぐに分かるが今日はパーティーという事もあり、招待客の中に紛れられてしまってはそれは分からなくなる。
他にも大臣が使っていた秘密の部屋や通路は大臣逃亡後に徹底的に洗い出して別の施設として有効活用しているのでそこを使われる心配はないと思うが強盗団を討伐するまで安心は出来ない。
だからファイン達が何をしようとしているのかそれ自体に興味はなかったがプリンセス三人と小さな精霊一匹だけにしておくのはどうにも不安があった。
かと言って兵士を付けさせては怪訝に思われてシェイド達の作戦に気付かれる恐れがある。
どうしたものかと考えあぐねているとファインが片眉を上げた。

「・・・シェイド、何か隠してない?」

(不味いな・・・)

早速ファインの勘が働いてしまったようだ。
下手に慌てたり取り繕ったりするのは逆効果であると心得ているシェイドは心苦しくはあるが喧嘩の空気を利用して乗り切る方向に舵を切った。

「・・・だったら何だ。仮に隠していたとしてもお互い様だろ。それにお前なんかには関係ない話だ」

ファインの瞳を真っ直ぐ射抜きながら強い口調で言い放つ。
それは予想通りの効果を発揮し、ファインは怒りに眉根を寄せると握った拳を震わせて感情を爆発させた。

「そんな言い方しなくたっていいじゃん!!シェイドって本当に冷たいよね!何でそういう言い方しか出来ないの!?」
「物分かりの悪いお前の為に分かり易く言ってやってるだけだ」
「またそうやって!ほんっとうに頭にくるんだから!!」
「ファ、ファイン様、落ち着くでプモ!」
「プーモの言う通りよ、ファイン!それにシェイドもいくらなんでも言い過ぎだわ!とりあえず二人共落ち着いて!!」
「バブィ・・・」

激化していく二人の喧嘩をプーモとレインが止めようとする。
ミルキーに至っては大好きな二人が目の前で酷い言い争いをしているのを見て悲しそうに顔を歪ませている。
それらが僅かに耳に入ったのか、ファインは一度唇を噛むと最後の怒りを爆発させた。

「とにかく!こっちだってシェイドなんかには関係ない話なんだからついてこないでよ!!」

怒鳴って踵を返すファイン。

「おい待て!」
「っ!?」

立ち去ろうとするファインの右手首をシェイドが咄嗟に掴む。
するとファインの頭の中で強盗事件の時にシェイドに強く手首を掴まれた記憶が再生され、同時に痛みが蘇る。
防衛本能が働いてファインの脳は拒絶の指示を下す。

「や、やだっ!!!」

強く振り払って素早く右手を胸元に引き寄せて左手で右手首を労わるように覆い隠す。
けれども振り返った先でシェイドが傷付いた表情をしているのを見てしまい、ファインは瞳を大きく開けて言葉を失う。

「・・・」
「・・・」

お互いに何も言えず、気まずく重苦しい沈黙が走る。
レイン達も目の前で起きた出来事に何を言えばいいか分からずただただ黙る事しか出来なかった。
しばらくそうして全員で黙っていると天の救いの如く明るく陽気な声が廊下に響き渡った。

「おーいシェイドー!ちょっとこっちに来てくれないかー?」

声の主はアウラーだった。
呼ばれた方のシェイドは「分かった、今行く」と無駄なく返事をするとファイン達に背を向ける。

「・・・すまなかったな」

それだけを言い残してシェイドは歩き去る。
それがどういう意味なのか、ファインの右手首を握ってトラウマを刺激した事に対するものなのか、密かに尾行していた事に対するもなのか、誰にも、そしてシェイドにも分からなった。
やってきたシェイドと並んで歩き、悲しそうな空気に包まれているファイン達をチラリと見やりながら小さな声でアウラーが尋ねる。

「どうしたの?また喧嘩?」
「計画的な喧嘩だ。作戦に気付かれそうになって仕方なくな」
「他に方法はなかったの?」
「言葉で語る方がもっと怪しまれる。感情で目隠しさせた方が手っとり早い」
「だからって傷付けるのは良くないと思うけど」
「・・・」
「また謝らなきゃいけない事が増えたね」
「・・・煩い」
「はいはい。それよりもファイン達大丈夫かな?僕が代わりに見張ってこようか?」
「また『女の子の秘密』とか訳の分からない事を抜かして追い返されるだけだ。それにあの方向は月光宮に繋がっている。あそこなら見張りの兵士もいるし多分問題ない筈だ」
「月光宮って?」
「フルムーンの光でのみ育つ花があってそれを育てている小さな建物だ。あの場所はフルムーンの光が他より多く降り注ぐ不思議な場所でその花を育てるには丁度良いだろうって事で大昔に建てられたらしい」
「へぇ。じゃあそのお花を今日使うつもりで向かってるのかな?」
「いや、その花自体は特別綺麗だとか変わった見た目をしているとかそういう事はない。それこそ野花と変わらない普通の見た目をしているから使うかどうかは微妙な所だ。それにあの花は主に薬の材料として使われているから管理している担当者にもパーティー用としての持ち出しは渋られると思う」
「そっか。なら何の用があるんだろう?」
「さぁな・・・危険な事をしてないならそれでいい」
「それもそうだね」

危険な事をして傷付かなければそれでいい。
でもついさっき、自分がまた傷付けた。
事件に近付かせない為とはいえ、ワザと喧嘩を振りかけて煽って罵倒しあって。
そして右手首を掴んで拒絶されて・・・。
きっとあれはファインの本能が働いたのであってファイン自身に他意はなかったと思う。
むしろファインの本能が働いてしまう程の痛みの記憶を植え付けてしまった自分に嫌気が差す。
それからファインに拒絶された事に内心落ち込む自分にももっと嫌気が差す。

(傷付けたのは俺なのに厚かましいにも程がある)

シェイドはアウラーに気付かれないようにひっそりと音もなく溜息を吐き、重い足取りで廊下を歩いて行くのだった。





「・・・シェイド・・・傷付いてた・・・アタシが傷付けちゃった・・・」

右手首を左手で覆ったままの状態で俯き、ファインが重く呟く。
瞳は悲しみに揺れていて後悔の色が滲んでいる。

「強く掴まれた右手首を掴まれたんだもの、仕方ないわ。また話す機会があったら謝りましょう?」
「ワザとではないとシェイド様もきっと理解して下さっているでプモ」

箱を片腕で抱きながらレインがファインをあやすように背中をポンポンと叩き、プーモが励ます。
しかしファインは未だ俯いたままか細い声で「うん・・・」としか頷かない。
そんなファインにミルキーも近寄って何事かを伝える。

「バブバブバブバブ」
「ファイン、ミルキーは何て?」
「・・・シェイドは細かい事を気にするような人じゃないから大丈夫だよって」
「そう。でもミルキーの言う通りだわ。シェイドってあんまり過去を振り返らない性質でしょ?だから大丈夫大丈夫」
「だと、いいけど・・・」
「ファイン様、シェイド様の事を気にするのもいいでプモがミルキー様の事も気遣うべきでプモ。ファイン様とシェイド様が言い争いをしてた時、ミルキー様はとても悲しそうにしていたでプモ」
「あ・・・!」

プーモに窘められてファインはハッと気付く。
見ればプーモの言う通りミルキーは瞳に涙を溜めて今にも泣きだしそうな顔をしていた。
ミルキーはシェイドの事が大好きだしファインの事も友人として好いてくれている。
そんな大好きな人達が目の前で喧嘩をしていて悲しくならない人間などいないだろう。
自分の身に置き換えて考えたらその悲しみが痛い程分かってファインは申し訳なさから胸を痛める。
それから落ち着く為に深呼吸を一度するとファインはミルキーと向き合って謝罪をした。

「ごめんね、ミルキー。シェイドとまた喧嘩して」
「バブバ・・・」
「辛かったよね、本当にごめんね。お詫びにまだちょっと先だけど今度おひさまの国でお祭りがあるんだ。そのお祭りに一番にミルキーを招待してあげるね。美味しいお店にいっぱい連れてってあげる!」
「バブ・・・」
「その頃までには絶対にシェイドと仲直りするからさ。そしたらみんなで楽しく遊ぼう!ね?」
「バブバブ、バブ!」
「うん、約束!」

少しばかり笑顔が戻って来たミルキーが小指を差し出すとファインも同じように小指を出して優しく絡め合い、ゆびきりをする。
ファインを中心に四人を包んでいた悲しい空気は和らぎ、ファインとミルキーにも笑顔が戻ってきてレインとプーモはホッと胸を撫で降ろす。

「さっきの事もあるし折角だから今日仲直りしたらどう?」
「うん・・・でも話聞いてくれるかな?」
「聞いてくれないなら聞いてくれるように私達が説得するわ。喧嘩になりそうだったら今度は絶対に止めてあげる。だから大丈夫大丈夫!」
「レイン・・・!」
「ファイン様も今度は怒りに感情を任せるのではなく、落ち着いて冷静にお話するでプモ。ファイン様もシェイド様も売り言葉に買い言葉なのが原因でプモ」
「うん、分かった。気を付けるね」
「バブバブバブ、バブ~。バブバブバブ」
「そ、そうなんだ?」
「何て言ってるの?」
「シェイドがここまで意地張ったり本気の喧嘩をするのって初めてなんだって。ムーンマリア様に聞いてもミルキーが生れる前までのシェイドは誰かと大喧嘩した事がなかったみたい」
「普段は冷静で落ち着いていて頭の回転も早い方でプモから納得と言えば納得でプモ」
「でもそんなシェイドが感情的になって怒ったりここまで意地張って喧嘩しちゃうって事はシェイドの中でファインは特別になのかもしれないわね~」
「うぇぇっ!?とと、特別!!?」

恋愛モードに入ったレインが楽しそうに言うとファインは途端に顔を赤くしてたじろぐ。
相変わらず自分をターゲットにしたコイバナには弱いようで、気持ちと空気の切り替えの為にもレインは更なる追い打ちをかける。

「他ならぬ『あのシェイドが』っていうのがポイント高いわ!ミルキーもそう思うでしょ?」
「バブブバブ~!」

レインがミルキーに同意を求めるとミルキーは冷やかすように両手を挙げて賛同する。
そんな風に茶化してくる二人にファインは益々慌てた。

「や、やめてよ二人共~!それにほら、アタシってこんなんだから遠慮がないってだけでまだ特別って決まった訳じゃないし・・・なれるかも分かんないし・・・」
「でもその『特別』になる為にこうして頑張っているのでプモ」

プーモはレインの持っている桐の箱に手を置くと続けた。

「頑張ってこれを育てて贈ればシェイド様の特別になれる事間違い無しでプモ!」
「本当になれるかな・・・?」
「大丈夫大丈夫!ファインだって自分の為に一生懸命作ってくれたものがあったら嬉しいでしょう?」
「うん」
「それと同じでシェイドもきっと喜んでくれる筈だわ。たとえシェイドが鈍感で特別の手前で止まってもその時は別の手を考えましょう!」
「バブバブ!バブバ~!」
「もしかしてミルキーも一緒に考えてくれるの?」
「そう言ってるよ」
「良かったじゃないファイン!初めての恋で弱気になるのは仕方ないけどこうして私達が応援してるんだから頑張りましょう?」
「うん!!」

とびきりの笑顔でファインが頷く。
もうそこに先程までの悲壮感はどこにもなかった。
ファインはレインから桐の箱を受け取るとミルキーの案内で再び歩き始めた。
廊下の突き当りには扉があり、開け放つとすぐ目の前には小さな丸型の建物があった。
入り口には兵士が二人立って見張りをしていた。
その兵士達にミルキーが「バブー」と挨拶をすると兵士達は表情を緩ませてミルキーを快く迎える。

「これはプリンセス様!お勤めご苦労様です!」
「ムーンマリア様よりお話は伺っております。どうぞ中へ」
「バブバブ!」
「ミルキー、ムーンマリア様にはなんて言ったの?」
「バブバブババブ~イ」
「えっ」

途端に顔を赤くして俯くファインにプーモとレインは首を傾げる。

「ミルキー様はムーンマリア様に何とお伝えしたでプモ?」
「・・・・・・アタシがシェイドに特別な贈り物をするのにこの月光宮っていう建物にある物を置きたいって・・・」
「プモ・・・」
「でも兵士さんたちが守る程大切な場所だからそれくらい言わないとダメよねぇ」
「バブバブバブ~バブ!」
「ついでに今日だけは絶対にシェイドをこの月光宮に入れないようにって頼んでくれたって・・・」
「仕方のない事とはいえ、ムーンマリア様はきっと全てを知ってしまったと思うでプモ」
「今日一日、シェイドがこの月光宮に来ない事を祈りましょう」

穴があったら入りたいとはこの事かとファインは熱くなっている顔を更に俯かせながら痛感する。
その後、兵士が呼んで来たラビ族の管理人に案内されて羞恥心に塗れた気持ちのまま月光宮に足を踏み入れた。
建物の中は暗がりで、ガラス張りの天井から降り注ぐフルムーンの青白い光が室内を薄ぼんやりと照らしていて神秘的な空間を作りだしている。
中心の地面には七枚の花弁を開かせる花がレンガの囲いの中で咲き誇っていた。
その光景にファインとレインは思わず見惚れてしまう。

「すご~い!」
「幻想的でロマンチックね~!」
「あのお花はフルムーンの光を浴びる事でしか育たないお花ですラビラビ。また、大切な薬の材料として栽培してるのですラビラビ」
「なるほど。だからこうして厳重に管理しているのでプモね」
「そうですラビラビ」
「あの、これはどこに置いたらいいですか?出来ればフルムーンの光をいっぱい浴びせたいんですけど」
「それでしたらこの辺にどうぞですラビラビ。この花と同じくらい光を浴びれる筈ですラビラビ」

管理人が囲いの真横を指すとファインはその指示に従って植木鉢を安置した。
虹の花もフルムーンの青白い光に照らされる事で神秘の仲間入りを果たす。
今までのようにすぐ変化が訪れる事はなかったが、メラメラの国の時のように小一時間も経てば蕾をつけるだろう。
ファインは管理人とミルキーに礼を述べる。

「管理人さん、ありがとうございます」
「いえ、どういたしましてラビラビ」
「ミルキーもありがとうね。すっごく助かったよ!」
「バブバブ~!」
「協力してくれたムーンマリア様にも後でお礼を言わないとダメよ?」
「わ、分かってるよ・・・!」

また顔を赤くしてファインは小さく俯き、両手の人差し指の先をツンツンとぶつけ合あわせる。
好きな人の母親に好きな人の為の贈り物の協力をしてくれた事に対するお礼を言うのは何とも言えない恥ずかしさがある。
しかもファインがシェイドの事を好きだと知られてしまっては尚の事。
どんな顔をしてお礼を言えばいいのかと悩みながらファインはレイン達と共に月光宮を後にするのだった。






続く
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