『レッドマテリア』
「シェルクちゃぁーーーん!シャルアちゃぁーーーん!哀れな俺を慰めてーーー!」
WROのシャルアが使用している研究室で、キャスター付きの椅子に反対向きに座ってグルグル回転しながら滑ってくるガルディス。
諸々の事情を把握しているシャルアとシェルクはコーヒー片手にそれぞれ一言。
「ご愁傷様」
「来世は上手く行くといいですね」
「あれ!?何で別れの言葉言われてんの俺!?流石に自殺とかは考えてないよ!!?」
「いや、今のお前は自殺よりも他殺される可能性の方が高いからな」
「マジで!?」
「マジです。ユフィにちょっかいかけた以上、そのコースは免れないかと」
「ちょっかいかけたつってもデートに誘っただけだぜ!?しかもデートつってもほぼ遊んでただけだしさぁ!」
「お前にはそのつもりでも他から見れば十分ちょっかいかけてるようにしか映らない事もあるぞ」
「特に『彼』にはちょっかいをかけているとしか映らないかと」
「マジか〜・・・ユフィちゃんとデートしてる時に視線感じたんだけどもしかしたらあれって―――」
「偶然かどこかで聞きつけたか。どちらにせよ、お前がユフィにおかしな事をしないか見張っていたんだろうな」
「うぉぉ・・・」
項垂れてガルディスは絶望の呻き声を漏らす。
ヴィンセント・ヴァレンタインという男を舐めていた。
小説やドラマではないが、ユフィとデートしている所を見せつけて諦めさせる算段でいたがまさか倍返しされる結果になるとは。
重く長い溜息を吐いているとシャルアが質問を投げかけてくる。
「ちなみにお前はどこで敗北を知ったんだ?」
「敗北を知ったとか嫌な言い方しないでよ・・・一昨日、上機嫌なユフィちゃんに赤マントさんとディナーに行く事を聞かされたんだ。俺がユフィちゃんをデートに誘った直後にこれなんだから赤マントさんがどういうつもりか分かるだろ?」
「大体察しがつくな」
「ちなみにその次の日に局長から今の任務が終わったら次の任務でヴィンセントと組むようにってお達しがあった」
「貴方が消されたらお察しします」
「そこはお察ししないでよ・・・」
普通に考えてタイミングが良過ぎると思った。
局長のリーブがユフィとヴィンセントとは懇意であるのは知っていたが公私混同するタイプではないし、何よりそういった話は外側から眺めて楽しむ方なのは仕事をしていて分かった。
そう考えるとヴィンセントがリーブに次の任務で自分と組ませるように進言したと考えるのが妥当だろう。
自分と組むだなんてリーブにはある意味唐突に感じられただろうに一体どう進言したのやら。
どちらにせよ、リーブに次の任務でヴィンセントと組むように言われたときは嫌な予感が物凄くした。
そしてそれはシャルアとシェルクのセリフからその予感が見事に的中した事を物語っていた。
「俺・・・消されんのかな?」
「貴方がどれだけユフィに手を出したかで程度は変わってくるかと」
「だから手なんか出してないって。一緒にバーでノンアルコールカクテル飲んで後はビリヤードとかダーツとかして遊んだだけだよ」
「どう思う?シェルク」
「死の淵は見せられる事になりそうですね」
「そんなにヤバイ!!?」
「ヤバイですよ。そもそもデートに誘う時点で重罪決定なので」
「その後にユフィのハートを掠め取ろうと遊びに行ったりしたんだ、余罪が重いのも当然だ」
「まぁギリギリ見殺しにされる事はないと思いますが」
「ギリギリかよ・・・」
「アンタには酷な話だがユフィの事は諦めるんだな」
「いや、それは出来ないな。諦められないねぇ」
ガルディスはかぶりを振るとまたいつものニヒルな笑顔を浮かべた。
彼の瞳にはまだ諦めの色は浮かんでいなかった。
「赤マントさんから上手い事寝取ってやるさ」
「殺される事になっても?」
「殺される事になってもだ」
「奪えなかったら?」
「その時は潔く諦めてやるさ。結婚式にはご祝儀をたんまり持ってくよ」
「じゃあ今すぐユフィに連絡しておきますね。ガルディスが結婚式にご祝儀をたんまり持ってくると」
「何でもう負ける事決定なんだよ!!」
そんなにも望み薄と思われているとは心外だ。
確かにユフィはヴィンセントに一途な想いを抱いていて、今夜のディナーをキッカケに籠絡されるのも秒読みの段階までくるだろう。
或いは、今この時この瞬間に籠絡されているか。
だがあの男の手に落ちていようと関係ない。
最後まで自分はユフィを追い求めるだけだ。
自分のような人間を危険を顧みず助けようとする優しくて強い最高の女をそう簡単に諦められる筈がない。
ガルディスは改めて決意するとタバコを買いに研究室を出た。
END
WROのシャルアが使用している研究室で、キャスター付きの椅子に反対向きに座ってグルグル回転しながら滑ってくるガルディス。
諸々の事情を把握しているシャルアとシェルクはコーヒー片手にそれぞれ一言。
「ご愁傷様」
「来世は上手く行くといいですね」
「あれ!?何で別れの言葉言われてんの俺!?流石に自殺とかは考えてないよ!!?」
「いや、今のお前は自殺よりも他殺される可能性の方が高いからな」
「マジで!?」
「マジです。ユフィにちょっかいかけた以上、そのコースは免れないかと」
「ちょっかいかけたつってもデートに誘っただけだぜ!?しかもデートつってもほぼ遊んでただけだしさぁ!」
「お前にはそのつもりでも他から見れば十分ちょっかいかけてるようにしか映らない事もあるぞ」
「特に『彼』にはちょっかいをかけているとしか映らないかと」
「マジか〜・・・ユフィちゃんとデートしてる時に視線感じたんだけどもしかしたらあれって―――」
「偶然かどこかで聞きつけたか。どちらにせよ、お前がユフィにおかしな事をしないか見張っていたんだろうな」
「うぉぉ・・・」
項垂れてガルディスは絶望の呻き声を漏らす。
ヴィンセント・ヴァレンタインという男を舐めていた。
小説やドラマではないが、ユフィとデートしている所を見せつけて諦めさせる算段でいたがまさか倍返しされる結果になるとは。
重く長い溜息を吐いているとシャルアが質問を投げかけてくる。
「ちなみにお前はどこで敗北を知ったんだ?」
「敗北を知ったとか嫌な言い方しないでよ・・・一昨日、上機嫌なユフィちゃんに赤マントさんとディナーに行く事を聞かされたんだ。俺がユフィちゃんをデートに誘った直後にこれなんだから赤マントさんがどういうつもりか分かるだろ?」
「大体察しがつくな」
「ちなみにその次の日に局長から今の任務が終わったら次の任務でヴィンセントと組むようにってお達しがあった」
「貴方が消されたらお察しします」
「そこはお察ししないでよ・・・」
普通に考えてタイミングが良過ぎると思った。
局長のリーブがユフィとヴィンセントとは懇意であるのは知っていたが公私混同するタイプではないし、何よりそういった話は外側から眺めて楽しむ方なのは仕事をしていて分かった。
そう考えるとヴィンセントがリーブに次の任務で自分と組ませるように進言したと考えるのが妥当だろう。
自分と組むだなんてリーブにはある意味唐突に感じられただろうに一体どう進言したのやら。
どちらにせよ、リーブに次の任務でヴィンセントと組むように言われたときは嫌な予感が物凄くした。
そしてそれはシャルアとシェルクのセリフからその予感が見事に的中した事を物語っていた。
「俺・・・消されんのかな?」
「貴方がどれだけユフィに手を出したかで程度は変わってくるかと」
「だから手なんか出してないって。一緒にバーでノンアルコールカクテル飲んで後はビリヤードとかダーツとかして遊んだだけだよ」
「どう思う?シェルク」
「死の淵は見せられる事になりそうですね」
「そんなにヤバイ!!?」
「ヤバイですよ。そもそもデートに誘う時点で重罪決定なので」
「その後にユフィのハートを掠め取ろうと遊びに行ったりしたんだ、余罪が重いのも当然だ」
「まぁギリギリ見殺しにされる事はないと思いますが」
「ギリギリかよ・・・」
「アンタには酷な話だがユフィの事は諦めるんだな」
「いや、それは出来ないな。諦められないねぇ」
ガルディスはかぶりを振るとまたいつものニヒルな笑顔を浮かべた。
彼の瞳にはまだ諦めの色は浮かんでいなかった。
「赤マントさんから上手い事寝取ってやるさ」
「殺される事になっても?」
「殺される事になってもだ」
「奪えなかったら?」
「その時は潔く諦めてやるさ。結婚式にはご祝儀をたんまり持ってくよ」
「じゃあ今すぐユフィに連絡しておきますね。ガルディスが結婚式にご祝儀をたんまり持ってくると」
「何でもう負ける事決定なんだよ!!」
そんなにも望み薄と思われているとは心外だ。
確かにユフィはヴィンセントに一途な想いを抱いていて、今夜のディナーをキッカケに籠絡されるのも秒読みの段階までくるだろう。
或いは、今この時この瞬間に籠絡されているか。
だがあの男の手に落ちていようと関係ない。
最後まで自分はユフィを追い求めるだけだ。
自分のような人間を危険を顧みず助けようとする優しくて強い最高の女をそう簡単に諦められる筈がない。
ガルディスは改めて決意するとタバコを買いに研究室を出た。
END
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