『レッドマテリア』
ガルディスと模擬デートをした翌日。
別件でとある報告書を届ける為に局長室を訪れていたユフィ。
いつものように鼻歌交じりで扉を開けると―――
「あ、ヴィンセント!」
「・・・ユフィか」
久しぶりの赤マントがそこにあってユフィの心は沸き立つ。
ステップを踏みながら隣に立ち、その整った顔を見上げて尋ねた。
「ヴィンセントも報告?」
「そんな所だ。お前も報告か?」
「そんな所だ」
わざとらしく声を低くしてヴィンセントの真似をするユフィにヴィンセントは呆れたように溜息を吐き、リーブはおかしそうに笑った。
「お二人共お疲れ様です。報告書には目を通してサインをしておきますので戻っていいですよ」
「分かった」
「よろしく~」
二人揃って局長室を出て行く。
久しぶりのヴィンセントとの時間。
部屋に着くまでの短い時間だがそれでも何かを話したい。
頭の中で話のネタをしまっている引き出しを開けてファイルを漁る。
ヴィンセントも好きそうな料理の店や新しく出来た武器屋について話そうと決めたが、それよりも先にヴィンセントの方が口を開いた。
「今度の任務で裏カジノに潜入するそうだな」
「え?あ、うん、まーね。薬の売人とか裏カジノ仕切ってるオーナーの摘発だってさ。売人はともかくオーナーの割り出しはちょっと時間かかりそうでさ~」
「あまり時間がかかるようなら私も途中で合流する可能性があるかもしれないな」
「その時はよろしく〜」
「誰かとペアでミッションに当たるのか?」
「うん。ガルディスっていう奴と組むんだけど設定が恋人でさ~。しかも本番に備えておきたいからって雰囲気掴みの為に昨日模擬デートに付き合わされたんだよ」
「そうか」
返事はいつも通り淡泊だった。
やはり自分の事など恋愛対象として見ていないのだろうと内心軽くショックを受けるがこんな事でめげたりはしない。
こんな事でへこたれていてはこの棺桶男の棺桶に閉ざされた心は開けないのだ。
「でもデートって言ってもバーでダーツしたりビリヤードして遊でたんだけどね~」
「・・・酒は飲んだのか?」
「飲んでないよ。ノンアルコールカクテル飲んだだけ。何だったらガルに確認してみる?」
「いや・・・それよりもバーにはその恰好で行ったのか?」
「ううん、アタシがドレスないって言ったらガルが備品室でドレス借りてきてそれ着たんだ」
「・・・そうか。お前はドレスを持っていないのか」
「それが何なのさ?」
「いや、クラウドから高級ホテルのディナー招待券を貰ってな。クラウドはどうしても外せない配達があってティファと行けないそうだ。だから私に誰かと行って来いと言って譲ってくれた」
「そ、それでもしかしてアタシも連れてってくれるの!?」
「そのつもりだったがドレスがないようでは無理な話だ。他を誘うとしよう」
「わーーー待った!!ドレス調達する!今日定時で上がって速攻で買う!だから連れてけー!!」
「決まりだな。ドレス選びには私も付き添って良いか?」
「へ?」
思ってもみなかった返しにユフィは間の抜けた声を漏らす。
あの意外にめんどくさがりでこういう時は大体「任せる」だの集合場所や時間を告げて「遅れるなよ」としか言わないのに今回に限ってはドレス選びに付き添いたいとはどういう風の吹き回しだろうか。
「勿論無理にとは言わないが・・・」
「い、いいよ、勿論!その代わり、ヴィンセントにもしっかり選んでもらうからね!」
「ああ。では、今日の定時に」
「うん!あーあ、早く定時になんないかな〜」
ヴィンセントと約束を取り付けられて目に見えて喜ぶユフィにヴィンセントはマントの下で密かに笑みを浮かべるのであった。
つづく
別件でとある報告書を届ける為に局長室を訪れていたユフィ。
いつものように鼻歌交じりで扉を開けると―――
「あ、ヴィンセント!」
「・・・ユフィか」
久しぶりの赤マントがそこにあってユフィの心は沸き立つ。
ステップを踏みながら隣に立ち、その整った顔を見上げて尋ねた。
「ヴィンセントも報告?」
「そんな所だ。お前も報告か?」
「そんな所だ」
わざとらしく声を低くしてヴィンセントの真似をするユフィにヴィンセントは呆れたように溜息を吐き、リーブはおかしそうに笑った。
「お二人共お疲れ様です。報告書には目を通してサインをしておきますので戻っていいですよ」
「分かった」
「よろしく~」
二人揃って局長室を出て行く。
久しぶりのヴィンセントとの時間。
部屋に着くまでの短い時間だがそれでも何かを話したい。
頭の中で話のネタをしまっている引き出しを開けてファイルを漁る。
ヴィンセントも好きそうな料理の店や新しく出来た武器屋について話そうと決めたが、それよりも先にヴィンセントの方が口を開いた。
「今度の任務で裏カジノに潜入するそうだな」
「え?あ、うん、まーね。薬の売人とか裏カジノ仕切ってるオーナーの摘発だってさ。売人はともかくオーナーの割り出しはちょっと時間かかりそうでさ~」
「あまり時間がかかるようなら私も途中で合流する可能性があるかもしれないな」
「その時はよろしく〜」
「誰かとペアでミッションに当たるのか?」
「うん。ガルディスっていう奴と組むんだけど設定が恋人でさ~。しかも本番に備えておきたいからって雰囲気掴みの為に昨日模擬デートに付き合わされたんだよ」
「そうか」
返事はいつも通り淡泊だった。
やはり自分の事など恋愛対象として見ていないのだろうと内心軽くショックを受けるがこんな事でめげたりはしない。
こんな事でへこたれていてはこの棺桶男の棺桶に閉ざされた心は開けないのだ。
「でもデートって言ってもバーでダーツしたりビリヤードして遊でたんだけどね~」
「・・・酒は飲んだのか?」
「飲んでないよ。ノンアルコールカクテル飲んだだけ。何だったらガルに確認してみる?」
「いや・・・それよりもバーにはその恰好で行ったのか?」
「ううん、アタシがドレスないって言ったらガルが備品室でドレス借りてきてそれ着たんだ」
「・・・そうか。お前はドレスを持っていないのか」
「それが何なのさ?」
「いや、クラウドから高級ホテルのディナー招待券を貰ってな。クラウドはどうしても外せない配達があってティファと行けないそうだ。だから私に誰かと行って来いと言って譲ってくれた」
「そ、それでもしかしてアタシも連れてってくれるの!?」
「そのつもりだったがドレスがないようでは無理な話だ。他を誘うとしよう」
「わーーー待った!!ドレス調達する!今日定時で上がって速攻で買う!だから連れてけー!!」
「決まりだな。ドレス選びには私も付き添って良いか?」
「へ?」
思ってもみなかった返しにユフィは間の抜けた声を漏らす。
あの意外にめんどくさがりでこういう時は大体「任せる」だの集合場所や時間を告げて「遅れるなよ」としか言わないのに今回に限ってはドレス選びに付き添いたいとはどういう風の吹き回しだろうか。
「勿論無理にとは言わないが・・・」
「い、いいよ、勿論!その代わり、ヴィンセントにもしっかり選んでもらうからね!」
「ああ。では、今日の定時に」
「うん!あーあ、早く定時になんないかな〜」
ヴィンセントと約束を取り付けられて目に見えて喜ぶユフィにヴィンセントはマントの下で密かに笑みを浮かべるのであった。
つづく