『レッドマテリア』
「え?それマジ?」
「マジです」
オフの日、ユフィはシェルクとデザート行脚の旅に出ていて三軒目の店でトロピカルケーキを食べようとしていた。
しかしシェルクから聞かされた衝撃の事実にケーキを小さく切り分けようとするフォークの動きが止まった。
そんな風に固まるユフィにシェルクは話を続ける。
「潜入ミッションの練習に参加している女性隊員のグループが話しているのをたまたま聞きました。誰が一番最初にヴィンセント・ヴァレンタインとキス出来るか競争しよう、と」
「うぉ・・・」
自分の―――恐らくヴィンセントすらも―――与り知らぬ所でとんでもない競争が行われていた事にユフィは思わず重い呻き声を吐き出してしまう。
がっくりと項垂れてフォークを紙ナプキンの上に乗せた。
「疑似ではあるけどヴィンセントとデート出来るつって潜入ミッションの練習に参加する人が多いって聞いてたけど・・・まさかキスまで狙ってたなんてね・・・」
「まぁある意味予測出来ていた事だと思いますが」
「いやでもほら、みんな潜入ミッションに関しては初心者な訳じゃん?だからデート気分はともかくそこまではいかないかなーって思ってたんだけどさ・・・」
「甘いですね。ミルク―のペンコちゃん並みに甘いです。彼を目当てに参加するくらいですから肉食なのは当然です」
「確かに・・・・・・アタシも―――」
「やめておいた方がいいですよ」
「まだ最後まで言ってないじゃん!」
「言わなくても分かります。まずヴィンセント・ヴァレンタインは隊員育成の為に潜入ミッションの指導に当たっているのでプロのユフィが参加するのは難しいと思います。仮に通ったとしても嫉妬の恰好の的になって色々苦労するかと。そうなるくらいな全くの別方向でアプローチする方が賢明です」
「ぐぅ・・・」
言葉に出してしまったがそれでもぐうの音も出ないとはこの事か。
ド正論を理路整然と並びたてられてユフィはまたがっくりと項垂れる。
ここ最近はヴィンセントは件の潜入ミッションにばかり出ていて、ユフィの方も別の任務で忙しくてあまりヴィンセントに会えていなかった。
その為、アプローチ出来る機会も失われていて焦りと寂しさからこうしてシェルクに愚痴を零したり話を聞いてもらっていたのだ。
そしたらこの話だ、ユフィは益々焦った。
だから安易な道に走ろうとしたのだがすぐにシェルクに見抜かれてしまい、止められてしまった。
そんな打つ手がなくなって魂が抜けそうになるユフィを気遣ってシェルクがフォローを入れる。
「焦らずともヴィンセント・ヴァレンタインはそう軽々と女性とキスはしないと思いますよ」
「でも元タークスだよ?任務で色んな女の人と関係持ってたって言ってたし」
「それはタークスだったからです。ですが彼は今WRO社員で現在受け持ってる任務の内容もそこまでのものじゃないみたいですからきっと大丈夫ですよ」
「だといいんだけどさぁ~」
「それにメッセージアプリでやり取りをしているんでしょう?」
「ヴィンセント返信遅いんだよ。それにまだスマホのキータッチ操作に慣れてないみたいでさぁ」
「なるほど」
「しかも何回かスルーされるし!」
「それはユフィのメッセージ送信頻度が高いから追い付いてないだけでは?」
「あーもーなんかむしゃくしゃしてきた!ケーキ食べたらゲーセン行くよ!」
「いいですよ。太鼓の名人なんてどうですか?」
「いいね~!リズムに乗って太鼓を叩いてストレスを発散しよー!」
シェルクの意見に快く賛同するとユフィは再びフォークを手に取って甘いケーキでストレスを包んで行くのであった。
つづく
「マジです」
オフの日、ユフィはシェルクとデザート行脚の旅に出ていて三軒目の店でトロピカルケーキを食べようとしていた。
しかしシェルクから聞かされた衝撃の事実にケーキを小さく切り分けようとするフォークの動きが止まった。
そんな風に固まるユフィにシェルクは話を続ける。
「潜入ミッションの練習に参加している女性隊員のグループが話しているのをたまたま聞きました。誰が一番最初にヴィンセント・ヴァレンタインとキス出来るか競争しよう、と」
「うぉ・・・」
自分の―――恐らくヴィンセントすらも―――与り知らぬ所でとんでもない競争が行われていた事にユフィは思わず重い呻き声を吐き出してしまう。
がっくりと項垂れてフォークを紙ナプキンの上に乗せた。
「疑似ではあるけどヴィンセントとデート出来るつって潜入ミッションの練習に参加する人が多いって聞いてたけど・・・まさかキスまで狙ってたなんてね・・・」
「まぁある意味予測出来ていた事だと思いますが」
「いやでもほら、みんな潜入ミッションに関しては初心者な訳じゃん?だからデート気分はともかくそこまではいかないかなーって思ってたんだけどさ・・・」
「甘いですね。ミルク―のペンコちゃん並みに甘いです。彼を目当てに参加するくらいですから肉食なのは当然です」
「確かに・・・・・・アタシも―――」
「やめておいた方がいいですよ」
「まだ最後まで言ってないじゃん!」
「言わなくても分かります。まずヴィンセント・ヴァレンタインは隊員育成の為に潜入ミッションの指導に当たっているのでプロのユフィが参加するのは難しいと思います。仮に通ったとしても嫉妬の恰好の的になって色々苦労するかと。そうなるくらいな全くの別方向でアプローチする方が賢明です」
「ぐぅ・・・」
言葉に出してしまったがそれでもぐうの音も出ないとはこの事か。
ド正論を理路整然と並びたてられてユフィはまたがっくりと項垂れる。
ここ最近はヴィンセントは件の潜入ミッションにばかり出ていて、ユフィの方も別の任務で忙しくてあまりヴィンセントに会えていなかった。
その為、アプローチ出来る機会も失われていて焦りと寂しさからこうしてシェルクに愚痴を零したり話を聞いてもらっていたのだ。
そしたらこの話だ、ユフィは益々焦った。
だから安易な道に走ろうとしたのだがすぐにシェルクに見抜かれてしまい、止められてしまった。
そんな打つ手がなくなって魂が抜けそうになるユフィを気遣ってシェルクがフォローを入れる。
「焦らずともヴィンセント・ヴァレンタインはそう軽々と女性とキスはしないと思いますよ」
「でも元タークスだよ?任務で色んな女の人と関係持ってたって言ってたし」
「それはタークスだったからです。ですが彼は今WRO社員で現在受け持ってる任務の内容もそこまでのものじゃないみたいですからきっと大丈夫ですよ」
「だといいんだけどさぁ~」
「それにメッセージアプリでやり取りをしているんでしょう?」
「ヴィンセント返信遅いんだよ。それにまだスマホのキータッチ操作に慣れてないみたいでさぁ」
「なるほど」
「しかも何回かスルーされるし!」
「それはユフィのメッセージ送信頻度が高いから追い付いてないだけでは?」
「あーもーなんかむしゃくしゃしてきた!ケーキ食べたらゲーセン行くよ!」
「いいですよ。太鼓の名人なんてどうですか?」
「いいね~!リズムに乗って太鼓を叩いてストレスを発散しよー!」
シェルクの意見に快く賛同するとユフィは再びフォークを手に取って甘いケーキでストレスを包んで行くのであった。
つづく
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