カードの精霊たちの日常
柔らかな日差しが差し込む午後。
屋敷の中庭にある木の下でブラック・マジシャンは木に寄りかかってうたた寝をしていた。
傍には赤い栞を挟んだ本が置かれており、つい先程まで彼がそれを読んでいた事が窺える。
今日は特に何もない日。
ゆっくり昼寝をするのも悪くないだろうと微睡んでいる所に一人の人物がやってくる。
「お師匠サマ?こんな所で寝ていたら風邪を引きますよ?」
弟子のブラック・マジシャン・ガールの声だ。
眠りの底から意識が浮上するものの、それでも覚醒には程遠く、ブラック・マジシャンは「ん・・・あぁ・・・」と力のない返事をして甘美な微睡みに再び己を委ねようとする。
「ブランケットありますよ」
そう言って膝にかけられる柔らかい肌触りのブランケット。
珍しく用意が良い。
こんな時のブラック・マジシャン・ガールは遠慮も許可もなくブラック・マジシャンの膝に頭を乗せて猫のように甘えながら昼寝をするのが常だ。
人間だった頃からの癖で、自分が隣にいる時はいつもそうやって自分の膝の上で寝たり膝枕をねだってきていた。
普通は逆、或いは男の膝枕なんて硬くて気持ち良くないだろう、なんて聞いてみた事があるが自分の膝枕は特別なんだという答えが返ってきた。
つくづく変わった弟子だ、なんて思っていても悪い気がしていない自分ももしかしたら変わっているのかもしれない。
そんな弟子が珍しく気を利かせるなんてどういう風の吹き回しだろうか、などと考えていると、ぽんぽん、と何かを優しく叩く音が耳に届く。
薄く目を開けてみれば、隣に座ったブラック・マジシャン・ガールが自分の膝を両手で叩いているのが視界に入った。
「それから膝枕です!」
(ああ、なるほど)
どうりで用意が良いと思ったらそういう事か。
ブラック・マジシャンは心の中で苦笑を漏らしつつも、しかし素直にその膝の上に頭を乗せようとはしなかった。
理由は2つ。
「ここには私達しかいませんから照れなくても大丈夫ですよ!」
だからといってそんな軽々しく頭を乗せていいものだろうか。
それが理由その1・理性と遠慮。
「ほーら、お師匠サマ!」
そんなブラック・マジシャンの葛藤など露知らずブラック・マジシャン・ガールは腕を引っ張って無邪気に自分の膝の上にブラック・マジシャンの頭を乗せさせる。
その際に頭に柔らかな感触が掠った気がしたが全力で気の所為にした。
それよりも後頭部に感じる柔らかな膝の感触、ふわりと鼻腔を掠める甘い香りに心が安らぎ、再び意識が眠りの底に沈んで行こうとする。
「気持ち良いですか?」
「ああ」
素直な感想を述べ、ここで目を開いて自分を見下ろすブラック・マジシャン・ガールの顔を見れば一枚の絵となった事だろう。
しかしブラック・マジシャンは決して目を開けようとしなかった。
それが理由その2・絶対に視界に入る豊満な果実。
下から見上げても布に覆われているとは言え、意識せざるを得ないそれはあのブラック・マジシャンの理性さえも破壊していく。
「こうやってのんびりするのもいいですね〜」
「そうだな」
言葉を返して、ふと髪に指を通してさらさらと撫でる存在に気付く。
そちらに顔を向けて薄く目を開けば、思った通りブラック・マジシャン・ガールの白い指だった。
「お師匠サマの髪ってストレートで羨ましいなぁ。私なんか癖っ毛で」
「悪くないと思うがな・・・」
「えへへ、そうですか?」
「・・・あぁ・・・」
とうとうブラック・マジシャンは睡魔に負けて眠りの底に沈んでしまった。
程なくして聞こえてきた穏やかな寝息にブラック・マジシャン・ガールは笑みを溢す。
「おやすみなさい、お師匠サマ」
いつもは自分の方が先に眠ってしまってあまり見る事の出来ない大好きな師匠の寝顔。
顔が整っているからその寝顔もやっぱり美しくて見惚れてしまう。
そして安心しきっているのか、その寝顔は無防備だ。
これは貴重な表情だ。
じっくり目に焼き付けておかねば。
気持ち良さそうに眠るブラック・マジシャンとその寝顔を見つめるブラック・マジシャン・ガール。
そんな二人の穏やかな午後はゆっくりと過ぎていくのであった。
END
屋敷の中庭にある木の下でブラック・マジシャンは木に寄りかかってうたた寝をしていた。
傍には赤い栞を挟んだ本が置かれており、つい先程まで彼がそれを読んでいた事が窺える。
今日は特に何もない日。
ゆっくり昼寝をするのも悪くないだろうと微睡んでいる所に一人の人物がやってくる。
「お師匠サマ?こんな所で寝ていたら風邪を引きますよ?」
弟子のブラック・マジシャン・ガールの声だ。
眠りの底から意識が浮上するものの、それでも覚醒には程遠く、ブラック・マジシャンは「ん・・・あぁ・・・」と力のない返事をして甘美な微睡みに再び己を委ねようとする。
「ブランケットありますよ」
そう言って膝にかけられる柔らかい肌触りのブランケット。
珍しく用意が良い。
こんな時のブラック・マジシャン・ガールは遠慮も許可もなくブラック・マジシャンの膝に頭を乗せて猫のように甘えながら昼寝をするのが常だ。
人間だった頃からの癖で、自分が隣にいる時はいつもそうやって自分の膝の上で寝たり膝枕をねだってきていた。
普通は逆、或いは男の膝枕なんて硬くて気持ち良くないだろう、なんて聞いてみた事があるが自分の膝枕は特別なんだという答えが返ってきた。
つくづく変わった弟子だ、なんて思っていても悪い気がしていない自分ももしかしたら変わっているのかもしれない。
そんな弟子が珍しく気を利かせるなんてどういう風の吹き回しだろうか、などと考えていると、ぽんぽん、と何かを優しく叩く音が耳に届く。
薄く目を開けてみれば、隣に座ったブラック・マジシャン・ガールが自分の膝を両手で叩いているのが視界に入った。
「それから膝枕です!」
(ああ、なるほど)
どうりで用意が良いと思ったらそういう事か。
ブラック・マジシャンは心の中で苦笑を漏らしつつも、しかし素直にその膝の上に頭を乗せようとはしなかった。
理由は2つ。
「ここには私達しかいませんから照れなくても大丈夫ですよ!」
だからといってそんな軽々しく頭を乗せていいものだろうか。
それが理由その1・理性と遠慮。
「ほーら、お師匠サマ!」
そんなブラック・マジシャンの葛藤など露知らずブラック・マジシャン・ガールは腕を引っ張って無邪気に自分の膝の上にブラック・マジシャンの頭を乗せさせる。
その際に頭に柔らかな感触が掠った気がしたが全力で気の所為にした。
それよりも後頭部に感じる柔らかな膝の感触、ふわりと鼻腔を掠める甘い香りに心が安らぎ、再び意識が眠りの底に沈んで行こうとする。
「気持ち良いですか?」
「ああ」
素直な感想を述べ、ここで目を開いて自分を見下ろすブラック・マジシャン・ガールの顔を見れば一枚の絵となった事だろう。
しかしブラック・マジシャンは決して目を開けようとしなかった。
それが理由その2・絶対に視界に入る豊満な果実。
下から見上げても布に覆われているとは言え、意識せざるを得ないそれはあのブラック・マジシャンの理性さえも破壊していく。
「こうやってのんびりするのもいいですね〜」
「そうだな」
言葉を返して、ふと髪に指を通してさらさらと撫でる存在に気付く。
そちらに顔を向けて薄く目を開けば、思った通りブラック・マジシャン・ガールの白い指だった。
「お師匠サマの髪ってストレートで羨ましいなぁ。私なんか癖っ毛で」
「悪くないと思うがな・・・」
「えへへ、そうですか?」
「・・・あぁ・・・」
とうとうブラック・マジシャンは睡魔に負けて眠りの底に沈んでしまった。
程なくして聞こえてきた穏やかな寝息にブラック・マジシャン・ガールは笑みを溢す。
「おやすみなさい、お師匠サマ」
いつもは自分の方が先に眠ってしまってあまり見る事の出来ない大好きな師匠の寝顔。
顔が整っているからその寝顔もやっぱり美しくて見惚れてしまう。
そして安心しきっているのか、その寝顔は無防備だ。
これは貴重な表情だ。
じっくり目に焼き付けておかねば。
気持ち良さそうに眠るブラック・マジシャンとその寝顔を見つめるブラック・マジシャン・ガール。
そんな二人の穏やかな午後はゆっくりと過ぎていくのであった。
END
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