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短編
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いつもより少し色めき立つ校内の雰囲気とは裏腹にわたしの心はどんどん沈んでいく。
私だって、好きな人へのチョコを学校に持ってきてはいる。渡せない。だって、、、
「だって、なぁ....」
きゃー、登校するやいなや下駄箱のところに人だかりができている。きっと私の想い人はあの中心にいるのだろう。
生徒会書記・柳蓮二、王者立海テニス部のレギュラーであり参謀、身長も高いしあの端正で品のある顔、、、
モテないわけが無い、、
私がもし、生徒会で先輩の書記補佐をしていなかったらきっとあのどさくさに紛れてポイっと渡せていただろうか、、
あぁ、そもそも好きにはなっていなかったかもな
そう思いながら、するすると女子生徒の間を縫って靴を履き教室へ行く。
(こっちもか、、、)
私の隣の席は幸か不幸か柳先輩と交流の深い切原赤也なのだが、机の上には大量のバレンタインチョコ
朝から気疲れがすごい
「おはよ、今年もすごいね、」
「あったりまえだろ、おめぇも俺にチョコねーの?」
「あるわけないでしょ、、はぁ、、朝から疲れるわ」
「あぁ、お前は柳先輩か。」
「.......」
ジトりと睨みつける
この男、、1年の時からデリカシーの欠片もない。
いや、むしろ期待していた私が馬鹿だったのかもしれない。
「別に、、、ないけど、、」
「えっ!!作ってきてねぇの?!おいやめろよ、練習にひびくって...やば。」
「?なに1人で焦ってんの」
「いや、なんでもねぇ!と、とにかくおまえは放課後までになんでもいいから柳先輩にあげるもん用意しとけよ!世話になってんだろ!」
「、、、うん」
何をそんなに焦っているんだか、早口でまくし立てられる。
でも、彼のゆう事も一理ある。生徒会としてお世話になっている。そう理由付けをして渡してしまえばいいのだ。
しかし、逃げてしまえば楽だが、そのあと自己嫌悪に襲われる。情けなくて泣きたくなる。
もやもや、もやもや、ずっと考えていたが放課後なんてすぐ来てしまう。
(生徒会室に行かなきゃ、、)
私は、逃走用としてスポーツ飲料を自動販売機で買うと生徒会室へ向かった。
「失礼します。」
「遅かったな、苗字。」
「すみません、急いで来たつもりだったんですけど。
、、、そういえば、今年も朝からすごかったですね!毎年の恒例行事みたいになってきましたね。いくつ貰ったか数え切れませんね!」
「.........」
(やばい、訳分からん感じに話をしすぎた)
先輩も先輩で妙にレスポンスが悪い。
いつも、口数が多い方ではないが、それにしても無口だ。
「、、今期の各部活動費の予想計算今日中にはおわらせられると思うので、、、、」
「あぁ、、、」
微妙な空気の中、私は席につき作業を始める。
先輩はこちらを見たまま動かない。
私も今日ばかりは、適当な会話が思いつかない。
なぜほかの生徒会メンバーは来ないのか、早く誰でもいいから来て欲しい。
(耐えきれない。このスポーツ飲料を渡してしまおう!)
そう思い、ぱっと顔をあげた瞬間、、、
「苗字、お前は去年もチョコを持って来ていたな。今年も渡さないのか?」
びっくりした。言葉が何も出てこない。
なにか話さなきゃ、でも、柳先輩の顔を見ることしかできない。
「渡さないままでは何も伝わらないのではないか?お前は、ほんとにそれでいいのか?」
「あっ、、、」
いきなり、、、なんで、、、、、
先輩にそんなこと言われなくちゃいけないのか。
だってしょうがないじゃない!先輩と私は生徒会でこれからも顔を合わせる機会は沢山ある。
渡して?そのあとはどうなるの?
ただただ気まずくなるだけだ。
なのに、なんでそんな、、無責任にも、程がある。
「っ、、、先輩には関係ないじゃないですか」
「そんなことはない。大切な後輩の事だ。」
「大切な?後輩?」
「そうだ.....」
、、、なんで、、、悔しい、、
なにかはわからない、でも、自分の中で耐えてたものがプチっと切れる音がした。
「先輩は!なんでわかんないんですか?!
私は渡さないって決めてるんです!そういうのお節介って言うんですよ。そもそも、私だって渡したくて渡してないわけじゃないんですよ?ちゃんといっぱい考えて、、、
渡さない方がいいって、、、」
視界が歪む。情けない、私、泣いてるんだ。
「、、苗字言いたいことはそれだけか?」
先輩が優しく頭を撫で、私は小さく首を振る。
もう、言葉が止まらない。
「だって、、渡したら困らせるし、今までどうり話せなくなっちゃうし、関係だって変わっちゃう、」
「別に困りはしない。たしかに、関係は変わるし、今までどおりの会話ではなくなるかもな。」
「いっぱい貰ってるし、私なんか眼中にもないだろうし、、、」
「貰いたいものから貰えなければ意味が無い。
それに、眼中にないなんてそんなことはない。お前の事は誰よりも可愛いと思っている。」
「嘘だっ、、、って、へ?」
可愛い?この人は何を言ってるんだろう。
驚きで涙が引っ込む。
「お前から、言って欲しかったんだが。
いや、俺が男らしくなかったのがいけないな。
泣かせてしまうとは、、、」
期待をしてしまう。
「、、、でも、関係が変わるって」
「好き同士なら付き合うのが普通だろう。そしたら、会話だってかわってくる」
好き同士、、その言葉にまたこめかみが熱くなる。
「、、、いつから気づいてたんですか?」
「去年のバレンタインには、
今年もお前がチョコを用意する確率は100%だった。」
「、、ひどい」
「それで?スポーツ飲料もチョコも俺が貰っていいな?」
「、、はい゛」
「これからそんなに溜め込んだりはさせない。
泣かせたりもしない。お前が好きだ。」
「うぅ、わ゛たし゛もす゛きです゛」
「はは、泣かせないと言ったばかりなんだがな。」
困ったように微笑む先輩をみて、やっぱり好きだとそう思った。
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