メリーと子羊の先生。
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100匹の羊のうち、1匹の羊が群れを離れ、迷子になってしまいました。
羊飼いは、99匹の羊をおいて、迷った1匹の羊を探しに行きます。
そして羊飼いが戻るまでのお話。
99匹の羊たちは、最初は羊飼いに言われた通り、おとなしくその場で主人を待っていました。けれども、主人が帰ってこないまま、時間が経っていきました。
残った99匹の羊のうち、1匹がこう言いました。
『主人に任せず、我らも探しに行こう』と。
『言われた通りここでただ待っているなんてばからしい。
いなくなったのは我らの仲間なのだから、我らで探そう』
そう言いました。
賛同した羊たちはその場を離れることにしました。
そうして残った羊は89匹。
残った89匹の羊のうち、1匹がこう言いました。
『このすきに逃げよう』と。
『もうあれこれ主人に命令されるのはうんざりだ。
自由になりたいなら今がいいチャンスじゃないか?』
そう言いました。
賛同した羊たちはその場を離れることにしました。
そうして残った羊は79匹。
残った79匹の羊のうち、1匹がこう言いました。
『遊びに行こう』と。
『たかが我らの仲間1匹を連れ戻すだけでこれほど遅いはずがない。主人も迷子の羊を見つけて、一緒にどこかで楽しんでいるに違いない。こうして待っているのは損だ。主人が帰るまでに戻ってくればいい』
そう言いました。
賛同した羊たちはその場を離れることにしました。
そうして残った羊は69匹。
残った69匹の羊のうち、1匹がこう言いました。
『自分たちは見捨てられたのだ』と。
『言いつけを守った自分たちより、守らない1匹のほうが大切なのだ。それなら主人の言葉を守って、ここにいることはないではないか?』
そう言いました。
賛同した羊たちはその場を離れることにしました。
そうして残った羊は59匹。
残った59匹の羊のうち、1匹がこう言いました。
『このままここにいては、狼に食べられてしまう』と。
『身を守るものも何もない。確かに主人はここにいろと言ったが、自分たちが食べられることを主人だって望んでいないはずではないか?』
そう言いました。
賛同した羊たちはその場を離れることにしました。
そうして残った羊は49匹。
残った49匹の羊のうち、1匹がこう言いました。
『ここで待っているだけでいいのだろうか』と。
『主人はいないし、仲間はどんどん少なくなった。
空はどんどん暗くなるし、狼が来るかもわからない。
不安だから他のものを追いかけようじゃないか?』
そう言いました。
賛同した羊たちはその場を離れることにしました。
そうして残った羊は39匹。
残った39匹の羊のうち、1匹がこう言いました。
『自分がなんとかしてみせよう』と。
『寒さも凌げ、狼も来ない、そんな場所があるはずだ。
そこにこの自分が案内しよう。信じてついてくればいい』
そう言いました。
賛同した羊たちはその場を離れることにしました。
そうして残った羊は29匹。
羊飼いが迷った子羊を探している間に、
その場を離れていった70匹の羊たち。
何匹かは歩き続け、何匹かは森をさまよい、
何匹かは崖から落ちて、何匹かは川に落ちて、
何匹かは狼に食われ、何匹かは人間に捕えられ、
何十匹かは生き残り、何十匹かは死にました。
残った29匹の羊のところに、夜になって狼がきました。
そのときになって主人を恨んだ羊はあわれでした。
そのときになっても信じたままの羊は幸せでした。
それでも、その場で死んだ羊の亡骸は、すべて羊飼いの腕に抱かれました。
そうして残った羊は19匹。
羊飼いが連れ戻した羊と合わせて20匹。
後から戻ってきた羊、後から出ていった羊もいます。
だいたいいつも30匹くらいが羊飼いのもとにいることになりました。
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(つづく)