花の魔法使い
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――1998年。イングランド中央部。
クロノス家の敷地内にある森に足を踏み入れる。ここには、怪我した魔法動物が保護と治療をする場所だ。普通の生活が送れるようになったら、元の場所へ戻す為の森。
いつものように使い魔のカイロスを連れ添い魔法動物達の様子を見ている。
このご時世人間も怪我や亡くなる者も多いが、魔法動物だってそうだ。
以前は一月に1、2匹程度だったのに、今月はもうセストラルが4頭、スウーピング・イーヴルが3匹、ヒッポグリフが1頭、ペガサスが2頭、ユニコーンが3頭、ワンプス・キャットが1匹、ニーズルが2匹と計16匹と過去最多だった。
敷地一帯に何重にも強力な保護魔法を掛けている。この保護魔法を解除する方法を知っているのはセブルスと私しかいない。喰い人、例のあの人、闇祓いでさえここに立ち入る事は出来ないので、ここにいる間は安心して治療が行える。
「早く闇が終わればいいのに」
足を怪我して動けないユニコーンの治療をしながらぽつりと呟く。
「もう少しの辛抱だ。安心しろ、ウイエ。俺がお前を守ってやる」
何とも頼もしい返事に思わず頬が緩む。
いつの間にか近くに寄ってきた動物たち。この子達が元の生活が送れるように私も頑張らなければと気合いを入れ直す。
パチン!
私達しかいない空間に似つかわしく無い音が森に響く。
音がした後ろを振り向くと愛しい人がいつも通り疲労を色濃く映した表情で立っていた。
「ウイエ。もうじき、ホグワーツが戦場になる。私では生徒を守れない。」
この人は、教え子達が嫌いだとか思っていそうだが実際そんな事は無いのだ。ちゃんと大なり小なり差はあるが一人一人を大切に想っている。
それこそ恋人である私よりもだ。きっと。
戦争では例のあの人の元で、ハリーの安全を見守るのだろう。
表立って生徒を守る事は出来ない。誰かに頼る事も出来ない。そこで私に頼みに来たのか。
言わんとしている事が分かる為セブルスの言葉に静かに頷く。
私の横で、カイロスがふんと鼻を鳴らす。カイロスの頭を撫でてやりながら
「ええ。セブルス。私が貴方の大切な人達が守ります。貴方は貴方のやるべき事に専念してください」
と告げると「すまない。助かる」それだけ言い要件が済んだとばかりにバチンと音ともに消えて行った。
「あいつ、ウイエの事何だと思ってるんだ?」
と不満気カイロスがに零す。
「いいの、カイロス。私が望んだ事よ」
そう。私が望んだ事。
あの人はリリーを守れなかった変わりにハリーポッターを守る。そんなのずっと昔から知っていた。
私と恋人になってくれたのだって、リリーと同じ瞳を持っているだけだから。たったそれだけの理由。
死んでもなおあの人の心を照らし続けるリリーに最早、感心さえする。
「最初から叶わない事なんて知っていたじゃない」
熱い何かが頬を濡らす。これはきっと涙なんかじゃない。
Coleus【叶わぬ恋】