nclのmobシリーズ+他者視点
キバナとユウリが新築に引っ越しをした。
ぜひ来てくれという二人に、どんな所に住んでいるのかという興味が半分と、祝いの気持ちが半分。
ささやかな手土産を持って、訪れたわけだけれども。
「ユウリ、あれどこにあったっけ」
「それならあそこの棚です」
「あったあった、サンキュー」
キバナがあれ、と言えばユウリはちらりと見ただけで居場所を伝えるその様子に思わず首を傾げた。
「キバナさん、あれ、えーと、こんな感じの…」
ユウリが手振りを添えて名前の出てこない物を伝えると、キバナはそれだけで理解したようだ。
どうやらキッチンで使う物だったらしく、いかにも高そうなソファに座らされている私からは見えない。
とても広々としていて、大型ポケモンも動きやすいように天井も高い。
なんとなく、落ち着かなくてそわそわとしてしまう。
やがて、ユウリが紅茶を淹れてきた。
一口啜ると豊かな花の香りが広がる。フレーバーティーのようだった。
「あんたたち、よくそれで会話できるわね」
ティーカップをソーサーに置くと、ここ一連の流れから疑問に思った一言が漏れた。
え?と二人同時に不思議そうな視線が向けられる。
「あれ、とかこれ、とか。手振りとか。それでよく伝わるわね…」
自分とて指示語や手振り身振りを交えて話すことはある。
どうしたって名前の出てこない物や表現しにくいことはあるものだ。
けれど、キバナのようにそれで伝わることなどあまりない。
結局は違う物が出てきたり、大まかなことしか伝わらなかったり。
そのうちに面倒になって自分でしてしまうのだ。
「そういえばルリナさんってあまり指示語使いませんね?」
「そうね。伝わらなかった時が面倒じゃない?」
「でも、だいたいはわかるよな?」
ああ、そうか。
一緒にいる時間が長すぎるのだ。
この二人を見ていると自分の価値観がわからなくなる。
なんというか、見本のようで。とてつもなく羨ましくなる。
「夫婦ってみんなこうなのかしら」
「さあ…それはわかんねぇけど。相手の思考がわかるから、かもな」
ふうん、と返事を返してもう一口紅茶を啜る。
ユウリは持ってきた手土産を開けて目を輝かせた。
何にしようかと考え抜いて、用意したのはタオルセット。
タオルならいくらあっても困らないだろうと思ったからだ。
小さくメッソンとナックラーの刺繍を添えた品はプレゼントにぴったりだと思った。
「ルリナさん、ありがとうございます!」
「喜んでもらえたならよかったわ」
出会って15年、結婚して1年経ったくらいだったろうか。
それだけ長い間一緒にいれば、もはや喧嘩をすることなどないのかもしれない。
そんな人物に出会えたことも、二人の持つ運の強さ故なのだろう。
ぜひ来てくれという二人に、どんな所に住んでいるのかという興味が半分と、祝いの気持ちが半分。
ささやかな手土産を持って、訪れたわけだけれども。
「ユウリ、あれどこにあったっけ」
「それならあそこの棚です」
「あったあった、サンキュー」
キバナがあれ、と言えばユウリはちらりと見ただけで居場所を伝えるその様子に思わず首を傾げた。
「キバナさん、あれ、えーと、こんな感じの…」
ユウリが手振りを添えて名前の出てこない物を伝えると、キバナはそれだけで理解したようだ。
どうやらキッチンで使う物だったらしく、いかにも高そうなソファに座らされている私からは見えない。
とても広々としていて、大型ポケモンも動きやすいように天井も高い。
なんとなく、落ち着かなくてそわそわとしてしまう。
やがて、ユウリが紅茶を淹れてきた。
一口啜ると豊かな花の香りが広がる。フレーバーティーのようだった。
「あんたたち、よくそれで会話できるわね」
ティーカップをソーサーに置くと、ここ一連の流れから疑問に思った一言が漏れた。
え?と二人同時に不思議そうな視線が向けられる。
「あれ、とかこれ、とか。手振りとか。それでよく伝わるわね…」
自分とて指示語や手振り身振りを交えて話すことはある。
どうしたって名前の出てこない物や表現しにくいことはあるものだ。
けれど、キバナのようにそれで伝わることなどあまりない。
結局は違う物が出てきたり、大まかなことしか伝わらなかったり。
そのうちに面倒になって自分でしてしまうのだ。
「そういえばルリナさんってあまり指示語使いませんね?」
「そうね。伝わらなかった時が面倒じゃない?」
「でも、だいたいはわかるよな?」
ああ、そうか。
一緒にいる時間が長すぎるのだ。
この二人を見ていると自分の価値観がわからなくなる。
なんというか、見本のようで。とてつもなく羨ましくなる。
「夫婦ってみんなこうなのかしら」
「さあ…それはわかんねぇけど。相手の思考がわかるから、かもな」
ふうん、と返事を返してもう一口紅茶を啜る。
ユウリは持ってきた手土産を開けて目を輝かせた。
何にしようかと考え抜いて、用意したのはタオルセット。
タオルならいくらあっても困らないだろうと思ったからだ。
小さくメッソンとナックラーの刺繍を添えた品はプレゼントにぴったりだと思った。
「ルリナさん、ありがとうございます!」
「喜んでもらえたならよかったわ」
出会って15年、結婚して1年経ったくらいだったろうか。
それだけ長い間一緒にいれば、もはや喧嘩をすることなどないのかもしれない。
そんな人物に出会えたことも、二人の持つ運の強さ故なのだろう。
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