nclのmobシリーズ+他者視点
キバナはよくネットショッピングをする。
前は日用品が多かった。
そういえば洗剤が切れそうだった、と漏らせば買う?と声をかけて、サンキュー、頼んどいて、と頼まれれば履歴から検索をして注文した。
頼まれれば嬉しかった。
バトルに出ることはできないけれど、スマホの中にいればキバナの写真を撮って、買い物をして、会話もできる。
ジュラルドンやフライゴンにはできないことをしているのが堪らなく嬉しい。
「キバナ、最近アクセサリーよく見てるロトね」
「んー?ユウリに似合うかなぁって思ったらついつい買っちゃうんだよな」
「今日も買ったロト?宅急便の会社からメールが来てるロ」
「じゃあジムに届くように変更しといてくれ」
「わかったロト」
中から操作をして、届け先住所を変更する。
黙々と書類の山を片付けるキバナの横について、その様子を見る。
着信やメールが届けば知らせる。
何もすることがなくなれば、ジュラルドンたちと少し遊ぶ。
そうこうしていると、キバナが帰り支度を始めた。
小さな段ボールを抱えて、ジムを後にする。
最近のキバナはなんだか楽しそうだ。
「ただいまー」
「おかえりなさーい」
リビングの方からユウリの声が聞こえた。
最近ユウリはよくキバナの家にいる。
『恋愛』というものがよくわからないけれど、ユウリは好きだから一緒にいる時間が増えることは嬉しい。
キバナは玄関棚に段ボールを置いて、ガサガサと音を立てて中身を取り出すとリビングへ向かった。
「ユウリ、これプレゼント」
「もう、キバナさん。私ばっかり貰って、フェアじゃないからやめてくださいってこの間も言いましたよね?」
「うん、気を付ける」
ユウリは濡れていた手をタオルで拭って、小さな箱を手に取って開けた。
いつもならなんだかんだと言いつつもぱっと顔が輝いてキバナが贈ったものをつける。
けれども今日はなんだか様子が変だった。
「これって…」
「ピンキーリング。なんかいろんな願掛けみたいな意味があるみたいだけど普通にファッションとしてつけれるかなぁって」
キバナは細くて小さい指輪を手に取って、ユウリの左手を取る。
けれど、その手はすぐに引っ込んでしまった。
「…もしかして指輪、好きじゃなかった?」
「そういうわけじゃ、ないんですけど…」
「やっぱりこういうのは相談してから買うべきだったかな」
一気に気まずい空気が流れて、そっと気づかれないようにテーブルへ移動する。
ユウリは俯いていて表情が見えない。
そんなユウリにキバナは頭に手を置いて何度か撫でると風呂入ってくる、と言い残して脱衣所へと消えた。
しばらくの間物音が全く聞こえなくて、そっと体を起こしてみると、ユウリは小さな箱に入った指輪を見ている。
嬉しいような、嬉しくないような、どっちかよくわからない顔をしていた。
「ユウリ、それ、嬉しくなかったロト?」
「ううん、そうじゃないんだけど…」
「キバナ、いつも嬉しそうに選んでるロト。ロトムにはよくわからないけど、いつも一生懸命選んでるロ…」
「…あのね、この指輪が好きじゃないとかそういうことじゃないの。ただ…」
ガチャっと音がして扉が開いた。
シャワーを終えたキバナがタオルで髪を拭きながら不思議なものでも見るかのような視線を向けている。
ユウリは慌てて小さな箱をテーブルの上に戻した。
「あ、キ、キバナさん。早かったですね」
「うん、今日は砂浴びてなかったからな。ところでさっきの続き、オレさまにも教えてくれないか?」
ユウリは顔を赤くしてうーん、と唸っている。
「笑わないって約束してくれますか?」
「もちろん」
「指輪が嫌いじゃなくて、まだつけたくないんです。私、小さいころ、指輪って結婚している女性がつけるものだと思ってたから…なんていうか…」
「結婚指輪しかつけたくない?」
ユウリはさっきよりも顔を赤くして、小さく頷いた。
「じゃあさ。これはそれまで予約するって意味で。つけてもいいし、つけなくてもいい。嫌じゃなかったら受け取ってほしいな」
もう一度ユウリは頷いて、小さな箱から指輪を取り出すと左手の小指にはめた。
すごく嬉しそうな顔で自分の左手を少し眺めたかと思うと、キバナの腰にぎゅっと抱き着いた。
キバナは少し驚いたような顔をしてユウリの背中に手を回す。
そっと、テーブルの上に乗ってスマホを置く。そのままスマホから抜けて、こっそりとボールの中へと戻った。
人間のことはよくわからない。
二人はあの場にいても邪魔だとは言わないだろうけど、なんとなく、ボールに入った方がいいような気がした。
前は日用品が多かった。
そういえば洗剤が切れそうだった、と漏らせば買う?と声をかけて、サンキュー、頼んどいて、と頼まれれば履歴から検索をして注文した。
頼まれれば嬉しかった。
バトルに出ることはできないけれど、スマホの中にいればキバナの写真を撮って、買い物をして、会話もできる。
ジュラルドンやフライゴンにはできないことをしているのが堪らなく嬉しい。
「キバナ、最近アクセサリーよく見てるロトね」
「んー?ユウリに似合うかなぁって思ったらついつい買っちゃうんだよな」
「今日も買ったロト?宅急便の会社からメールが来てるロ」
「じゃあジムに届くように変更しといてくれ」
「わかったロト」
中から操作をして、届け先住所を変更する。
黙々と書類の山を片付けるキバナの横について、その様子を見る。
着信やメールが届けば知らせる。
何もすることがなくなれば、ジュラルドンたちと少し遊ぶ。
そうこうしていると、キバナが帰り支度を始めた。
小さな段ボールを抱えて、ジムを後にする。
最近のキバナはなんだか楽しそうだ。
「ただいまー」
「おかえりなさーい」
リビングの方からユウリの声が聞こえた。
最近ユウリはよくキバナの家にいる。
『恋愛』というものがよくわからないけれど、ユウリは好きだから一緒にいる時間が増えることは嬉しい。
キバナは玄関棚に段ボールを置いて、ガサガサと音を立てて中身を取り出すとリビングへ向かった。
「ユウリ、これプレゼント」
「もう、キバナさん。私ばっかり貰って、フェアじゃないからやめてくださいってこの間も言いましたよね?」
「うん、気を付ける」
ユウリは濡れていた手をタオルで拭って、小さな箱を手に取って開けた。
いつもならなんだかんだと言いつつもぱっと顔が輝いてキバナが贈ったものをつける。
けれども今日はなんだか様子が変だった。
「これって…」
「ピンキーリング。なんかいろんな願掛けみたいな意味があるみたいだけど普通にファッションとしてつけれるかなぁって」
キバナは細くて小さい指輪を手に取って、ユウリの左手を取る。
けれど、その手はすぐに引っ込んでしまった。
「…もしかして指輪、好きじゃなかった?」
「そういうわけじゃ、ないんですけど…」
「やっぱりこういうのは相談してから買うべきだったかな」
一気に気まずい空気が流れて、そっと気づかれないようにテーブルへ移動する。
ユウリは俯いていて表情が見えない。
そんなユウリにキバナは頭に手を置いて何度か撫でると風呂入ってくる、と言い残して脱衣所へと消えた。
しばらくの間物音が全く聞こえなくて、そっと体を起こしてみると、ユウリは小さな箱に入った指輪を見ている。
嬉しいような、嬉しくないような、どっちかよくわからない顔をしていた。
「ユウリ、それ、嬉しくなかったロト?」
「ううん、そうじゃないんだけど…」
「キバナ、いつも嬉しそうに選んでるロト。ロトムにはよくわからないけど、いつも一生懸命選んでるロ…」
「…あのね、この指輪が好きじゃないとかそういうことじゃないの。ただ…」
ガチャっと音がして扉が開いた。
シャワーを終えたキバナがタオルで髪を拭きながら不思議なものでも見るかのような視線を向けている。
ユウリは慌てて小さな箱をテーブルの上に戻した。
「あ、キ、キバナさん。早かったですね」
「うん、今日は砂浴びてなかったからな。ところでさっきの続き、オレさまにも教えてくれないか?」
ユウリは顔を赤くしてうーん、と唸っている。
「笑わないって約束してくれますか?」
「もちろん」
「指輪が嫌いじゃなくて、まだつけたくないんです。私、小さいころ、指輪って結婚している女性がつけるものだと思ってたから…なんていうか…」
「結婚指輪しかつけたくない?」
ユウリはさっきよりも顔を赤くして、小さく頷いた。
「じゃあさ。これはそれまで予約するって意味で。つけてもいいし、つけなくてもいい。嫌じゃなかったら受け取ってほしいな」
もう一度ユウリは頷いて、小さな箱から指輪を取り出すと左手の小指にはめた。
すごく嬉しそうな顔で自分の左手を少し眺めたかと思うと、キバナの腰にぎゅっと抱き着いた。
キバナは少し驚いたような顔をしてユウリの背中に手を回す。
そっと、テーブルの上に乗ってスマホを置く。そのままスマホから抜けて、こっそりとボールの中へと戻った。
人間のことはよくわからない。
二人はあの場にいても邪魔だとは言わないだろうけど、なんとなく、ボールに入った方がいいような気がした。