このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

nclのmobシリーズ+他者視点

帰宅ラッシュに合わせた夜のピークがようやく過ぎた。
もうすぐで退勤だ。
今日も疲れたな、と店内に誰もいないのをいいことに、軽く足のストレッチをする。
立ち仕事は足が辛い。
今日も湿布のお世話になるだろう。
コンビニで働き出して二週間。ほぼ毎日のようにお世話になっている湿布代もなかなかにきつい。
「いらっしゃいませー」
店内のドアが開くと自然と言葉が出てくるようになった。昼から出勤して夜に退勤するシフトにも慣れた。
元々夜型だったし、逆に朝ゆっくり寝ていられる分、体は楽になったように思う。足が痛いこと以外は。
「アメスピのターコイズをワンカートンください」
「あめすぴ…?」
思わず疑問形で答えてしまった。もちろん聞きなれない単語だったというのもある。
けれども目の前に立つ人物は、黒と白のツートンカラーの毛量の多い髪を後ろで一束にくくっている細見の男性。
この人だって相当な有名人のはずだ。
「ああ、すみません。97番です」
反射的に後ろを向いて、97番に目を向ける。
あまり他のコンビニでは見ない煙草だ。
下の引き出しを開いてみると、パステルブルーよりは少し色の濃いタバコの束が目に入る。
「こちらでお間違いございませんか?」
「はい」
どう返していいかわからず、とりあえず会釈をする。
煙草を吸わないからよくはわからないが、綺麗な色のパッケージだから覚えやすい。
「お弁当は温めますか?」
「いえ、そのままで。袋もください」
テーブルの乗せられた他の弁当をスキャンして、ビニール袋に詰めていく。
しかし、彼はスパイクタウンに住んでいたはずだ。何もここで買わなくてもいいような気もしなくはないが。
「ありがとうございました」
歌手だという彼の声もまた、耳障りのいい声だった。ドラゴンストームよりは少し高めだったな、なんて感想を抱いてそっとため息をつく。
それにしてもここの職場は有名人の来店が多すぎる。
たまたまかもしれないが、それでも心臓に悪い。
さて、もう退勤時間だ。
今日も無事に一日が終わったことにほっとしてバックヤードへと戻る。
制服を脱いでロッカーからバッグを引っ掴み、肩にかける。
残ったお弁当を一つと飲み物を買って、ついでにお疲れ様と挨拶をして外へ出た。
外の喫煙所では哀愁のネズがスマホを見ながらタバコを吸っていた。
その姿に軽く会釈をして通り過ぎる。
昼間の喧騒が嘘のように静かな夜のナックルシティ。
石畳の坂道を登ったり下ったりしながら自宅へと歩いていく。
チャンピオンに始まり、ドラゴンストームに哀愁のネズ。
思ったよりも皆、普通にコンビニで買い物して行くんだなと思うと、なぜだか嬉しかった。
どうか、明日も平穏でありますように。
2/8ページ
スキ