その他
ドン!っと地鳴りのような音がして、書きあがった原稿を前にうたた寝をしていたソニアは目を開けた。
音が聞こえた方へ目を擦りながら向かうと、開け放った窓越しから見える中庭にはリザードンとダンデ。
「また連絡もなしに来るんだから」
欠伸を噛みしめて窓枠に肘をついてソニアは呟く。
「ああ、ソニア。今日は頼みがあるんだ」
「ダンデ君のお願いっていつも面倒なんだから」
呆れ果てたソニアの目の前にずいっと差し出された雑誌のページ。
「君はこんなコラムも書いていたのか?」
そこには先ほど書き上げた原稿の第1回目のコラムの記事。
見開き1ページ、写真をふんだんに使ったそのページは確かにソニアが書いたものだ。
「うん、頼まれたから書いたの」
「ソニア博士とLet’s Cooking!ポケモンのおやつを作ってみよう」
「お願いだから、読み上げないで」
中庭でただでさえ声量の大きなダンデがコラムの題名を読み上げる。
「君は栄養学も学んでいたのか?」
「そうよ。それがどうかしたの?」
話の意図がわからず、眠気も相まって段々と口調がいら立ち気味になっていく。
「インタビュー記事をチェックしていたらこのコラムを見つけてな。リザードンに見せたら食べたいのかせがまれたんだ」
大きな体躯のリザードンが窓枠に顎を乗せてソニアを上目遣いで見ている。
ワンパチのようにキラキラとした目は、バトル時の勇猛さの欠片もない。
「リザードンはソニアの作るカレーが大好物だからな!」
ぐるる、と喉を鳴らすような声にソニアがリザードンの鼻筋をすーっと撫でと気持ちよさそうに目を閉じる。
「食べたい?」
もう一度喉を鳴らす声と、ワンパ!と元気な声。
「ワンパチも?…もう。今回だけだからね」
観念したようにため息を一つついて、玄関のドアを開ける。
勝手知ったるなんとやら、ダンデとリザードンが室内へ入ってきて、ソニアの周りをうろうろと纏わりつく。
「ダンデくんはワンパチと座ってて。リザードンも」
白衣を脱いでソニアはキッチンへ立つ。
確か1回目はクッキーだったはず、と記憶を辿って、冷蔵庫や棚から目当ての物をそろえていく。
小麦粉、オリーブオイル、モーモーミルク、常備しているオレンのみ、クラボのみ、モモンのみ。
200gの小麦粉にオリーブオイルを数滴、モーモーミルク少々。それらを混ぜ合わせて纏まるまで混ぜる。
3等分に分けて各きのみを摩り下ろしたものをそれぞれにもう一度練りこんで。
あとは伸ばして型で切り取ったら予熱したオーブンで15分ほど焼いていく。
その間に洗い物を終え、ソニアはコーヒーを入れて焼きあがるまでの間、しばしの休憩をする。
「慣れているな」
「ワンパチのおやつに作ってたから」
ダンデと向き合う様に座って湯気の立てているコーヒーを啜る。
リザードンとワンパチは焼き上がりが楽しみなのか、二匹でオーブンを覗いていた。
置きっぱなしだったタブレットで、居眠りする前に書き上げた原稿をチェックする。
写真、レシピ内容、コメント。
一つずつチェックしていると、ずいっと横からダンデが覗き込んできた。
「これも旨そうだ。なあ、リザードン」
ぐるる、と唸り声のような低い音がダンデの反対側で聞こえる。
一人と一匹でソニアを間にタブレットを覗きこんで、居心地の悪さに耐えかねたソニアはがたっと椅子から立ち上がった。
「…写真用の試作品、あるから持って行って」
「ポケモンと一緒に食べられる、か」
ふむふむと一人頷いているダンデに簡単にラッピングしたシンプルなケーキを渡す。
チン、と短い音にワンパチが騒ぐ。
焼きあがったクッキーを取り出して、出来具合を確認していると、すっと横から手が伸びる。
熱っと小さな悲鳴をあげて、ダンデは半分に割ると片方を自分の口に、もう片方をリザードンの口に放り込む。
「うん、オレンのみの味がするクッキーだ」
「ダンデ君は食レポ、できそうにないね」
ソニアの足元ではワンパチがくれと言わんばかりに騒いでいる。
クッキングシートの上の熱々のクッキーを一枚、四つ割りにしてワンパチ、リザードン、ダンデに渡していく。
「味見はこれが最後ね」
ガザガサと棚を漁って探し出した紙袋に残りのクッキーを詰めてダンデに渡す。
「はい、これはお土産ね」
じゃ、とソニアはダンデの背を押して、帰るように促そうとしたその時。
「ソニア、カレーはないのか?」
唐突な一言にソニアは大ダメージをくらう。
「俺はソニアのカレーが食べたいんだ」
こうかばつぐんの言葉に、研究所にはソニアの悲鳴が響いた。
音が聞こえた方へ目を擦りながら向かうと、開け放った窓越しから見える中庭にはリザードンとダンデ。
「また連絡もなしに来るんだから」
欠伸を噛みしめて窓枠に肘をついてソニアは呟く。
「ああ、ソニア。今日は頼みがあるんだ」
「ダンデ君のお願いっていつも面倒なんだから」
呆れ果てたソニアの目の前にずいっと差し出された雑誌のページ。
「君はこんなコラムも書いていたのか?」
そこには先ほど書き上げた原稿の第1回目のコラムの記事。
見開き1ページ、写真をふんだんに使ったそのページは確かにソニアが書いたものだ。
「うん、頼まれたから書いたの」
「ソニア博士とLet’s Cooking!ポケモンのおやつを作ってみよう」
「お願いだから、読み上げないで」
中庭でただでさえ声量の大きなダンデがコラムの題名を読み上げる。
「君は栄養学も学んでいたのか?」
「そうよ。それがどうかしたの?」
話の意図がわからず、眠気も相まって段々と口調がいら立ち気味になっていく。
「インタビュー記事をチェックしていたらこのコラムを見つけてな。リザードンに見せたら食べたいのかせがまれたんだ」
大きな体躯のリザードンが窓枠に顎を乗せてソニアを上目遣いで見ている。
ワンパチのようにキラキラとした目は、バトル時の勇猛さの欠片もない。
「リザードンはソニアの作るカレーが大好物だからな!」
ぐるる、と喉を鳴らすような声にソニアがリザードンの鼻筋をすーっと撫でと気持ちよさそうに目を閉じる。
「食べたい?」
もう一度喉を鳴らす声と、ワンパ!と元気な声。
「ワンパチも?…もう。今回だけだからね」
観念したようにため息を一つついて、玄関のドアを開ける。
勝手知ったるなんとやら、ダンデとリザードンが室内へ入ってきて、ソニアの周りをうろうろと纏わりつく。
「ダンデくんはワンパチと座ってて。リザードンも」
白衣を脱いでソニアはキッチンへ立つ。
確か1回目はクッキーだったはず、と記憶を辿って、冷蔵庫や棚から目当ての物をそろえていく。
小麦粉、オリーブオイル、モーモーミルク、常備しているオレンのみ、クラボのみ、モモンのみ。
200gの小麦粉にオリーブオイルを数滴、モーモーミルク少々。それらを混ぜ合わせて纏まるまで混ぜる。
3等分に分けて各きのみを摩り下ろしたものをそれぞれにもう一度練りこんで。
あとは伸ばして型で切り取ったら予熱したオーブンで15分ほど焼いていく。
その間に洗い物を終え、ソニアはコーヒーを入れて焼きあがるまでの間、しばしの休憩をする。
「慣れているな」
「ワンパチのおやつに作ってたから」
ダンデと向き合う様に座って湯気の立てているコーヒーを啜る。
リザードンとワンパチは焼き上がりが楽しみなのか、二匹でオーブンを覗いていた。
置きっぱなしだったタブレットで、居眠りする前に書き上げた原稿をチェックする。
写真、レシピ内容、コメント。
一つずつチェックしていると、ずいっと横からダンデが覗き込んできた。
「これも旨そうだ。なあ、リザードン」
ぐるる、と唸り声のような低い音がダンデの反対側で聞こえる。
一人と一匹でソニアを間にタブレットを覗きこんで、居心地の悪さに耐えかねたソニアはがたっと椅子から立ち上がった。
「…写真用の試作品、あるから持って行って」
「ポケモンと一緒に食べられる、か」
ふむふむと一人頷いているダンデに簡単にラッピングしたシンプルなケーキを渡す。
チン、と短い音にワンパチが騒ぐ。
焼きあがったクッキーを取り出して、出来具合を確認していると、すっと横から手が伸びる。
熱っと小さな悲鳴をあげて、ダンデは半分に割ると片方を自分の口に、もう片方をリザードンの口に放り込む。
「うん、オレンのみの味がするクッキーだ」
「ダンデ君は食レポ、できそうにないね」
ソニアの足元ではワンパチがくれと言わんばかりに騒いでいる。
クッキングシートの上の熱々のクッキーを一枚、四つ割りにしてワンパチ、リザードン、ダンデに渡していく。
「味見はこれが最後ね」
ガザガサと棚を漁って探し出した紙袋に残りのクッキーを詰めてダンデに渡す。
「はい、これはお土産ね」
じゃ、とソニアはダンデの背を押して、帰るように促そうとしたその時。
「ソニア、カレーはないのか?」
唐突な一言にソニアは大ダメージをくらう。
「俺はソニアのカレーが食べたいんだ」
こうかばつぐんの言葉に、研究所にはソニアの悲鳴が響いた。