ランチボックスシリーズ
「キバナさんちのカレーってどんなカレーでしたか?」
「オレさまんちのカレー……って?」
キバナさんは箸を止めて摘まんでいたおかずを皿に戻し、首を横に捻った。
「えっと、カレーってその家庭の味があるじゃないですか。だからキバナさんのおうちではどんなカレーだったのかなぁって」
「ああ、なるほどな。オレさまのうちのカレーは……レストランのカレーに近かったかな」
「あまりとろみがない感じの?」
「そうそう。具はビーフと玉ねぎとマッシュルーム」
以前シュートシティの高級レストランで食べたカレーの記憶が蘇った。
さらりとしていてビーフがゴロゴロ入っていて、スパイスが効いていた。少し甘酸っぱいらっきょうを箸休めにして、最後は柑橘系のシャーベットで口の中の辛味を取った。辛かったけどもそれだけではなく、肉の旨味も玉ねぎの甘さもあってとても美味しかった。
そんなカレーがおうちで食べられるなんて、羨ましい。
「ユウリのうちは?」
「うちは結構トロトロで、豚バラブロック肉がゴロゴロ入っていて、野菜もいっぱい入ってて……ちょっと甘かったかなぁ」
「へぇ。食べてみたいな。キャンプで作るカレーは生肉入れられないからな」
「ねぇキバナさん。明日カレー作りませんか?それぞれのおうちのカレー、作って食べ比べ!」
「お、いいな。じゃあ朝一で材料買いに行かなきゃな」
「楽しみだな~」
皿に残っていたおかずを咀嚼しながら材料を思い浮かべる。
人参と、玉ねぎ、じゃがいも、豚バラ肉、特選リンゴ。カレールーは少し中辛か、辛口でもいいかもしれない。
キバナさんの家のカレーはどんなカレーだろう。
カレーは人によっても、材料一つでも味が変わる。これ、と決まった味がない分、毎回作るのが楽しみで仕方がなかった。
夕食が終わって、キバナさんは何やらスマホを見ている。その横で先日のバトル映像を見ながら、それでもどこか頭の隅ではカレーのことを考えいてた。
翌日、休みにも関わらず仕事の日と同じ時間に起きて、朝ご飯は簡単に食パンにマヨネーズとマスタードを混ぜ合わせて塗って焼いただけの簡単なものにし、早々に買い物に出かけた。
休日の今日は、ナックルシティの街にもまだ人が少ない。スーパーも人が少なく、二人でのんびりと回って目当ての食材をカゴに入れていった。二人分のカレーとはいえ、材料が多いせいかなかなかの量になって、二人でその荷物に笑いながら家路についた。途中、オープンカフェでアイスコーヒーとアイスカフェラテを購入してちびちびと飲みながら、だんだんと気温が上がって生温くなった風を紛らわした。
「まずは玉ねぎ、切っちゃいますね」
帰宅後、早々にお揃いのエプロンを身に着ける。
お揃いといっても、デザインが一緒なだけで色もワンポイントのポケモンも違う。キバナさんのエプロンは紺地にナックラー、私の方は淡い水色にメッソンの刺繍が入っている。その水色の紐を後ろでリボンを結んでまずは玉ねぎを切っていく。
一つ目はまだ大丈夫だった。二つ目を切っている最中に少し目の奥がツンとし始めて、三つ目を切るころには涙で視界が滲んだ。
「ユウリ、危ないから代わる。他の準備しといて」
ひととおり食材を用意し終えたキバナさんにその場を譲り、涙を拭いていくが、離れてしばらくしても目の奥が痛い。ティッシュで何度も涙を拭い、少し視界がクリアになってからフライパンにバターを乗せ、弱火でゆっくりと溶かしていく。切り終えた玉ねぎをすべて入れてバターが満遍なく回ったのを確認し、塩を振って強火にかける。
しんなりとして少し茶色っぽくなったところで中火に落とし、ガシガシと焦げ付かないように箸で何度もこそげ落としながら火を通す。途中、水を少しずつ加えながら茶色くなるまで炒めたら完成だ。あんなにフライパン山盛りになっていた玉ねぎも、今では三分の一くらいになってしまった。
「キバナさん、玉ねぎ終わりましたよ」
「よし、じゃそれは後で使うとして……左側のコンロ、使うな」
キバナさんはフライパンに油を敷いて、サイコロ状に切った牛肉に焼き目をつけていく。
同じように右側のフライパンで私は豚バラ肉を焼き始めた。
じゅうじゅうと肉の焼ける音と香ばしい香りがキッチンに広がる。綺麗な赤身の牛肉も、脂の部分に焼き目が付き始めた豚バラ肉もとても美味しそうだ。
「お肉って、塩コショウで焼くだけでもすっごく美味しそうですよね……」
口の中に唾液が溢れ、フライパンの中の小さな塊を今すぐ摘まみたくなってしまう。
「わかる。なんでこんなに旨そうなんだろうなー……」
少し視線を上げると、キバナさんと視線が合った。
同時ににやりと笑って、視線はフライパンへと戻る。
先に動いたのはキバナさんで、菜箸で小さめのサイコロを取り、手のひらに乗せられる。
焼きたての牛肉はとても熱くてすぐに口の中へ放り込む。ステーキ用の牛肉は適度に分厚く、はふはふと息を吐いて口の中の熱を逃がしながら濃厚な牛の味を噛みしめる。
続いて豚バラ肉をそれぞれの手のひらに乗せてまた口の中へと放り込む。今度はじゅわっと脂の甘味が口内へ広がった。
「今度は焼肉、しましょうか」
「だな」
良い具合に焼けた肉を各々のカレー用の鍋へと移し、私のフライパンは豚肉の油が残ったまま、人参とじゃがいもを炒める。ここでしっかりと炒めると後で煮崩れしないとママが言っていたのを思い出しながら、じっくりと炒めていく。
キバナさんは鍋に赤ワインを入れて強火でアルコールを飛ばしている。焼けた肉の香りと赤ワインのベリー系きのみにも似た香りがキッチンに混ざり合って思わずワンパチのように鼻をくんくんとさせてその香りを楽しんでいると、じゃがいもに少し焼き色がついてしまった。
炒めた野菜をすべて鍋に入れ、たっぷりの水とローリエを入れて火にかける。ここでしばらく休憩かな、とシンクに回ると、キバナさんはミキサーを用意し始めた。
野菜ジュースにセロリ、人参、にんにく、しょうが、生クリーム、特選リンゴとガラムマサラにクミン、コリアンダー、オールスパイスとカルダモンの粉末を入れると、ミキサーを回した。
ペースト状になったそれらを鍋に入れ、鶏ガラスープを溶かした水とローリエ、炒め玉ねぎを入れて火にかけた。
洗い物をしながら時々鍋を覗いてアクと余分な脂を丁寧に取っていく。
「あとは、私はしばらく煮込みます」
「オレさまのも三十分くらい煮込むかな」
蓋をせず火にかけた二つの鍋からはそれぞれいい香りが漂っている。
キバナさんの方はこのまま食べても美味しいのではないかというくらいだ。
「ほかに何か作ります?」
「コンロがいっぱいだからなぁ。何か火を使わない料理で……」
「サラダは後でいいですし……あ、デザート!」
小さいころにカレーのときは絶対に食べていたデザートを思い出して特選リンゴを取り出す。
一つはカレーの隠し味として入れるすり下ろしリンゴ
用に皮を向いて、すりおろし器とボウルをキバナさんに渡した。説明しなくてもどうしたいのかわかってくれたのか、そのまますりおろし始めたキバナさんの横でリンゴを皮が付いたまま小さめにカットしていく。
耐熱ボウルに砂糖とレモン汁を加えてラップをして電子レンジで三分。一度混ぜ合わせてさらに二分。そのままラップを外して粗熱を取り、汁は入れずにリンゴだけをフリーザーバッグへ移して冷凍庫へ。
「即席のリンゴシャーベットです。これも昔、よく作ってもらってたの」
「へぇ……ユウリのママは料理上手なんだな」
リンゴをすりおろし終わって、手元をずっと見ていたキバナさんは感心したように何度か頷いていた。
「キバナさんは子供のころ、どんな料理を食べていたんですか?」
「うーん……普通の家庭で食べる料理だと思うぜ?ただスイーツは出たことないな。せいぜいきのみ切っただけとか。ユウリは?」
「よくホットケーキ作ってもらってました。あとはいつもいっぱいきのみ貰うから、ジャムとかシャーベットとか。今も多分作ってると思うので今度貰ってきますね」
「手作りジャムもいいな。オレさまも作ってみようかな」
それからは何味のジャムを作るかでいくつか候補を出し、結局は甘味の強いきのみがいいだろうということで落ち着いた。
あっという間に時間は過ぎ、鍋の中の具材も野菜と豚の旨味が溶け出し、薄黄色のスープが出来上がっていた。
火を止めてカレールーを割入れ、かき混ぜながらじっくりと溶かしていく。次第に薄黄色のスープはとろみが出始め、スパイスの香りが漂い始めた。ある程度カレールーが溶けたところで特選リンゴのすり下ろしたものと、同じく特選リンゴのリンゴジュースを加える。これはモモンジュースなどの甘いきのみのジュースではなく同じ特選リンゴでないと味に纏まりがなくて、少し値は張るけれどもきちんとしたものを買っている。あとはまた少し火にかけながら混ぜれば完成だ。
キバナさんも同じようにカレールーを入れ、マッシュルームとモーモーミルクとガラムマサラを加えていた。
二人でコンロの前に並び、弱火でじっくりと煮詰めていく。
コポっと小さな気泡が浮かび上がる度に数回混ぜ合わせ、馴染ませる。それぞれの鍋からは同じカレールーを入れているのに、どことなく香りが異なった。どろっとした液体を何度となく混ぜ合わせ、火を止める。
冷蔵庫からレタスを取り出し、洗ってキッチンペーパーの上に置く。続いて鍋を奥のコンロへ移動させ、小さめのフライパンを弱火にかけて短冊切りにしたベーコンを焼いていく。深手の小さな陶器の小鉢には生卵を落とし、浸かるくらいの水を被せて黄身を爪楊枝でいくつか穴をあけて電子レンジへと入れる。
数十秒置きにセットし、爆発しないように見守っていると、忘れていたベーコンをキバナさんが片手で器用に炒めていた。
程よい半熟卵が出来上がり、ちぎったレタスの上にベーコンをまぶし、卵を乗せる。
ベーコンを炒めていたフライパンにオリーブオイルを敷き、食パンを小さな正方形に切ってあげ焼きをする。
途中、塩胡椒とガーリックパウダーを多めに振り、レタスの周りに散りばめて粉チーズをたっぷりと振りかけてドレッシングをかければシーザーサラダの出来上がりだ。
「さ、お昼ご飯にしましょう」
炊飯器を開けると、ふわっと甘い香りが広がる。つやつやとしていて、ふっくらと炊けた米はヤローさんから届いた米だ。見た目は水分をたっぷりと含んでいて柔らかそうなのに、食べると程よい固さがある。この米で塩おにぎりを作ったときは、ついつい何個も食べてしまったくらいだ。
皿に炊き立てのご飯を盛りつけようとすると、キバナさんから静止の声が入った。
「もう一つカレー増えるから、ライスも三等分に」
「もう一種類、カレーあるんですか?」
「うん。だから三種類のカレー食べることになるな。グレイビーボートに入れるからそっちも出して」
はーい、と間延びした返事を返して食器棚を開ける。
隅の方に置かれたグレイビーボートは私がキバナさんの家に来る前からあるらしい。並んでいる四つのグレイビーボートの一つは少しだけ他のものよりくすんでいる。
くすんだ方にはキバナさんのカレーを入れ、最後のトッピングで生クリームを一筋の線を描くように垂らし、まだ真新しいものには私の具だくさんのカレーを目いっぱい盛りつけた。
「三つ目のカレーは?」
「それはこれから。すぐ出来るからテーブルのセット、頼めるか?」
三つ目のカレーを想像しながら出来上がったものをテーブルへと運んでいく。途中で盛りつけを代わってもらったライスは、小さなお椀型が三つ並んでいる。キバナさんが片手鍋で何かをしているところまでは見えるが、カウンターテーブル越しには具体的には見えなかった。見てしまえば楽しみが半減してしまう、と潔く諦めて次々とテーブルに運び、最後に飲み物を用意しようとしたときだった。
「三つ目もできたぜ」
アイスティーを入れていた手を止めて跳ねるように視線を返すと、グレイビーボートに盛りつけられたのは普通のカレーだった。近いのはキバナさんのカレーだ。それにしては牛肉も小さく、マッシュルームも随分と小ぶりな気がした。
「これが、三つ目ですか?」
「そ。さ、食べるぞ」
いただきます、と一言呟いて、まずはキバナさんのカレーをライスにかける。
僅かなとろみと、ゴロゴロとした牛肉にマッシュルームを添えて口に運ぶ。最初はスパイスの香りが広がり、ピリッとした辛味が口の中に残る。けれどもそれは一瞬で、辛味の後には複数の野菜の甘味が残った。牛肉はほろほろとスプーンでも簡単に崩れる。野菜の甘味と牛肉の旨味が合えば、もう美味しいしか言葉は出なかった。
「これがキバナさんのおうちのカレーかぁ。おしゃれだしすっごく美味しいです」
「ん、そっか。よかった。じゃ次はこっち食べてみな」
差し出されたのは三つ目のカレーだ。
同じようにとろりとしているし、色も似ているが、具はいささか小さい。スパイシーな香りはするものの、旨味は薄く、人工的な辛味ばかりが後を引く。そして保存料独特の香りがした。
この味はよく知っている。キャンプでカレーは作るけれど、天候の悪いときは温めるだけで食べれるインスタントカレーを重宝している。忙しいときも、キャンプにも行けず、家でカレーを作る体力もない。けれどもどうしてもカレーが食べたいときはインスタントカレーの出番だった。食べ慣れた味、といえば聞こえはいいが、所詮はインスタントカレー。これが三つ目のカレーという意味はなんなのだろうかと考えるも、キバナさんの意図はさっぱりわからなかった。
「どっちがうまい?」
「こっちの、キバナさんのカレーですね。なんかこっちは……その、インスタントカレーっぽい……?」
「うん、そう。こっちの方はインスタントカレー。これがオレさまのうちのカレーだった」
「え?じゃあこっちのカレーは……?」
「今日作ったのはオレさまが考え出したカレー、かな。うちはさ、母親が料理すごく下手でな。米も野菜も食器用洗剤で洗うし、炒め物は必ず焦げるし。だからほとんど食事は総菜だった。でもカレーだけは美味かったんだよ。鍋いっぱいに作ってあるカレーを、オレさまはずっと母親が作ったんだと思ってた。けれどある日、見ちゃったんだよなぁ」
「……何を、ですか?」
「インスタントカレーを袋から鍋に移し替えてるのを。それを温めて出してたってワケだ」
はは、っと苦笑いを零したキバナさんは、私が作ったカレーを口に運んだ。
ママの作っていたカレーそっくりにできているはずだ。入れ忘れた食材もないし、工程に間違いもなかった。
咀嚼しながら頷いているキバナさんがまるで料理番組の審査員のように見えてくる。カレーを食べる手を止めてじっくりと見ていると、ふっと目尻が垂れ下がり、笑みを浮かべた。
「ユウリのカレーの原点ってこれだったんだな」
言われたことの意味が分からず、思わず首を傾げた。
「キャンプで作るときもさ、酸っぱくちでも辛口でもどこか甘いんだよ。なんでかなって思ってたけどそっか、特選リンゴか」
「そうですね。特選リンゴのすりおろしと特選リンゴジュース、いつも入れてます」
「豚バラもしっかり煮込んであるから柔らかいけど食べ応えあるし、ちょっと煮崩れして溶けたじゃがいもがまたうまい」
自分のカレーはそっちのけで私の作ったカレーばかり食べるキバナさんにほっと胸を撫でおろし、もう一度キバナさんの作ったカレーをよそう。
辛くて、甘くて、キャンプで作ってくれるカレーとはまた違うちょっとおしゃれなカレーにあっという間にライスがなくなってしまった。
ライスのお替りを取りに行くついでに、空っぽになった私のカレーも足し、未だ口の中で燻っている辛味を和らげようとシーザーサラダに手を伸ばした。
レタスの上にベーコンを数切れとたっぷり乗った粉チーズを卵黄とドレッシングに絡める。カリカリに焼いたクルトンもガーリックがよく効いていてたっぷりとドレッシングを吸っていた。少し酸味があって、濃厚なチーズと卵黄のソースたっぷりのレタスは辛味を取っていく。
リセットされたところで、今度は自分の作ったカレーをかけて、だいぶ小ぶりになった野菜と一緒に口に運んだ。
煮崩れて少し小さくなった野菜と、豚肉の旨味たっぷりのカレーはママと同じように作っているのにどこか違う。
けれど定期的に食べたくなる味だ。
二つのグレイビーボートの中身は綺麗になくなった。最後まで残ったインスタントカレーに視線を向けるが、手は伸びない。これを食べるくらいなら、キバナさんのカレーを食べたいと思ってしまった。
残すのももったいないという気持ちはあるが、なかなか手を付けずにいると大きな褐色の手がグレイビーボートを攫って行く。
「これは、オレさまが責任もって食べる」
あ、と声が漏れたのとキバナさんが豪快にライスにルーをかけるのは同時だった。もう味わうことを捨てたのか、次々と飲むようにかきこんでいく。
「ま、あまり美味しくはないんだけどさ。たまに懐かしいと思って買っちゃうんだよな」
エメラルドグリーンの瞳がどこか遠くを見つめるように細くなる。
十人いれば、十通りあるカレー。同じ人が作っても、決して毎回同じ味になるわけではない。
だからこそ追及するのは楽しいし、美味しいのだけれど、毎回一定の味のインスタントカレーも馴染みのあるカレーの一つであることには変わりない。
「インスタントも、もちろん美味しいですけど。私はキバナさんのカレー、大好きだなぁ」
「オレさまもユウリのカレー、好きだぜ」
「また作ってくださいね。今度はもっと大きな鍋で!」
「おう。また二人で食べ比べしようぜ。あとは……まだ試してないチキンカレーとか」
「あ、いいですね。じゃあ次は二人でオリジナルチキンカレー、考案しましょう!」
冷凍庫から取り出したばかりの特選リンゴシャーベットをキバナさんに渡し、自分の分に噛り付く。
まだ少し柔らかいリンゴはそれでも十分冷たく、甘い。
しゃくしゃくと味わっていながら、空っぽになったグレイビーボートが目に入った。
キバナさんのおうちのカレーと、キバナさんの考え出したカレー。そして私のうちのカレー。
そこにいつか加わる、私とキバナさんが考えたカレーを追加して、四種類のカレーを食べる日が来るのが楽しみでしかたがなかった。
「オレさまんちのカレー……って?」
キバナさんは箸を止めて摘まんでいたおかずを皿に戻し、首を横に捻った。
「えっと、カレーってその家庭の味があるじゃないですか。だからキバナさんのおうちではどんなカレーだったのかなぁって」
「ああ、なるほどな。オレさまのうちのカレーは……レストランのカレーに近かったかな」
「あまりとろみがない感じの?」
「そうそう。具はビーフと玉ねぎとマッシュルーム」
以前シュートシティの高級レストランで食べたカレーの記憶が蘇った。
さらりとしていてビーフがゴロゴロ入っていて、スパイスが効いていた。少し甘酸っぱいらっきょうを箸休めにして、最後は柑橘系のシャーベットで口の中の辛味を取った。辛かったけどもそれだけではなく、肉の旨味も玉ねぎの甘さもあってとても美味しかった。
そんなカレーがおうちで食べられるなんて、羨ましい。
「ユウリのうちは?」
「うちは結構トロトロで、豚バラブロック肉がゴロゴロ入っていて、野菜もいっぱい入ってて……ちょっと甘かったかなぁ」
「へぇ。食べてみたいな。キャンプで作るカレーは生肉入れられないからな」
「ねぇキバナさん。明日カレー作りませんか?それぞれのおうちのカレー、作って食べ比べ!」
「お、いいな。じゃあ朝一で材料買いに行かなきゃな」
「楽しみだな~」
皿に残っていたおかずを咀嚼しながら材料を思い浮かべる。
人参と、玉ねぎ、じゃがいも、豚バラ肉、特選リンゴ。カレールーは少し中辛か、辛口でもいいかもしれない。
キバナさんの家のカレーはどんなカレーだろう。
カレーは人によっても、材料一つでも味が変わる。これ、と決まった味がない分、毎回作るのが楽しみで仕方がなかった。
夕食が終わって、キバナさんは何やらスマホを見ている。その横で先日のバトル映像を見ながら、それでもどこか頭の隅ではカレーのことを考えいてた。
翌日、休みにも関わらず仕事の日と同じ時間に起きて、朝ご飯は簡単に食パンにマヨネーズとマスタードを混ぜ合わせて塗って焼いただけの簡単なものにし、早々に買い物に出かけた。
休日の今日は、ナックルシティの街にもまだ人が少ない。スーパーも人が少なく、二人でのんびりと回って目当ての食材をカゴに入れていった。二人分のカレーとはいえ、材料が多いせいかなかなかの量になって、二人でその荷物に笑いながら家路についた。途中、オープンカフェでアイスコーヒーとアイスカフェラテを購入してちびちびと飲みながら、だんだんと気温が上がって生温くなった風を紛らわした。
「まずは玉ねぎ、切っちゃいますね」
帰宅後、早々にお揃いのエプロンを身に着ける。
お揃いといっても、デザインが一緒なだけで色もワンポイントのポケモンも違う。キバナさんのエプロンは紺地にナックラー、私の方は淡い水色にメッソンの刺繍が入っている。その水色の紐を後ろでリボンを結んでまずは玉ねぎを切っていく。
一つ目はまだ大丈夫だった。二つ目を切っている最中に少し目の奥がツンとし始めて、三つ目を切るころには涙で視界が滲んだ。
「ユウリ、危ないから代わる。他の準備しといて」
ひととおり食材を用意し終えたキバナさんにその場を譲り、涙を拭いていくが、離れてしばらくしても目の奥が痛い。ティッシュで何度も涙を拭い、少し視界がクリアになってからフライパンにバターを乗せ、弱火でゆっくりと溶かしていく。切り終えた玉ねぎをすべて入れてバターが満遍なく回ったのを確認し、塩を振って強火にかける。
しんなりとして少し茶色っぽくなったところで中火に落とし、ガシガシと焦げ付かないように箸で何度もこそげ落としながら火を通す。途中、水を少しずつ加えながら茶色くなるまで炒めたら完成だ。あんなにフライパン山盛りになっていた玉ねぎも、今では三分の一くらいになってしまった。
「キバナさん、玉ねぎ終わりましたよ」
「よし、じゃそれは後で使うとして……左側のコンロ、使うな」
キバナさんはフライパンに油を敷いて、サイコロ状に切った牛肉に焼き目をつけていく。
同じように右側のフライパンで私は豚バラ肉を焼き始めた。
じゅうじゅうと肉の焼ける音と香ばしい香りがキッチンに広がる。綺麗な赤身の牛肉も、脂の部分に焼き目が付き始めた豚バラ肉もとても美味しそうだ。
「お肉って、塩コショウで焼くだけでもすっごく美味しそうですよね……」
口の中に唾液が溢れ、フライパンの中の小さな塊を今すぐ摘まみたくなってしまう。
「わかる。なんでこんなに旨そうなんだろうなー……」
少し視線を上げると、キバナさんと視線が合った。
同時ににやりと笑って、視線はフライパンへと戻る。
先に動いたのはキバナさんで、菜箸で小さめのサイコロを取り、手のひらに乗せられる。
焼きたての牛肉はとても熱くてすぐに口の中へ放り込む。ステーキ用の牛肉は適度に分厚く、はふはふと息を吐いて口の中の熱を逃がしながら濃厚な牛の味を噛みしめる。
続いて豚バラ肉をそれぞれの手のひらに乗せてまた口の中へと放り込む。今度はじゅわっと脂の甘味が口内へ広がった。
「今度は焼肉、しましょうか」
「だな」
良い具合に焼けた肉を各々のカレー用の鍋へと移し、私のフライパンは豚肉の油が残ったまま、人参とじゃがいもを炒める。ここでしっかりと炒めると後で煮崩れしないとママが言っていたのを思い出しながら、じっくりと炒めていく。
キバナさんは鍋に赤ワインを入れて強火でアルコールを飛ばしている。焼けた肉の香りと赤ワインのベリー系きのみにも似た香りがキッチンに混ざり合って思わずワンパチのように鼻をくんくんとさせてその香りを楽しんでいると、じゃがいもに少し焼き色がついてしまった。
炒めた野菜をすべて鍋に入れ、たっぷりの水とローリエを入れて火にかける。ここでしばらく休憩かな、とシンクに回ると、キバナさんはミキサーを用意し始めた。
野菜ジュースにセロリ、人参、にんにく、しょうが、生クリーム、特選リンゴとガラムマサラにクミン、コリアンダー、オールスパイスとカルダモンの粉末を入れると、ミキサーを回した。
ペースト状になったそれらを鍋に入れ、鶏ガラスープを溶かした水とローリエ、炒め玉ねぎを入れて火にかけた。
洗い物をしながら時々鍋を覗いてアクと余分な脂を丁寧に取っていく。
「あとは、私はしばらく煮込みます」
「オレさまのも三十分くらい煮込むかな」
蓋をせず火にかけた二つの鍋からはそれぞれいい香りが漂っている。
キバナさんの方はこのまま食べても美味しいのではないかというくらいだ。
「ほかに何か作ります?」
「コンロがいっぱいだからなぁ。何か火を使わない料理で……」
「サラダは後でいいですし……あ、デザート!」
小さいころにカレーのときは絶対に食べていたデザートを思い出して特選リンゴを取り出す。
一つはカレーの隠し味として入れるすり下ろしリンゴ
用に皮を向いて、すりおろし器とボウルをキバナさんに渡した。説明しなくてもどうしたいのかわかってくれたのか、そのまますりおろし始めたキバナさんの横でリンゴを皮が付いたまま小さめにカットしていく。
耐熱ボウルに砂糖とレモン汁を加えてラップをして電子レンジで三分。一度混ぜ合わせてさらに二分。そのままラップを外して粗熱を取り、汁は入れずにリンゴだけをフリーザーバッグへ移して冷凍庫へ。
「即席のリンゴシャーベットです。これも昔、よく作ってもらってたの」
「へぇ……ユウリのママは料理上手なんだな」
リンゴをすりおろし終わって、手元をずっと見ていたキバナさんは感心したように何度か頷いていた。
「キバナさんは子供のころ、どんな料理を食べていたんですか?」
「うーん……普通の家庭で食べる料理だと思うぜ?ただスイーツは出たことないな。せいぜいきのみ切っただけとか。ユウリは?」
「よくホットケーキ作ってもらってました。あとはいつもいっぱいきのみ貰うから、ジャムとかシャーベットとか。今も多分作ってると思うので今度貰ってきますね」
「手作りジャムもいいな。オレさまも作ってみようかな」
それからは何味のジャムを作るかでいくつか候補を出し、結局は甘味の強いきのみがいいだろうということで落ち着いた。
あっという間に時間は過ぎ、鍋の中の具材も野菜と豚の旨味が溶け出し、薄黄色のスープが出来上がっていた。
火を止めてカレールーを割入れ、かき混ぜながらじっくりと溶かしていく。次第に薄黄色のスープはとろみが出始め、スパイスの香りが漂い始めた。ある程度カレールーが溶けたところで特選リンゴのすり下ろしたものと、同じく特選リンゴのリンゴジュースを加える。これはモモンジュースなどの甘いきのみのジュースではなく同じ特選リンゴでないと味に纏まりがなくて、少し値は張るけれどもきちんとしたものを買っている。あとはまた少し火にかけながら混ぜれば完成だ。
キバナさんも同じようにカレールーを入れ、マッシュルームとモーモーミルクとガラムマサラを加えていた。
二人でコンロの前に並び、弱火でじっくりと煮詰めていく。
コポっと小さな気泡が浮かび上がる度に数回混ぜ合わせ、馴染ませる。それぞれの鍋からは同じカレールーを入れているのに、どことなく香りが異なった。どろっとした液体を何度となく混ぜ合わせ、火を止める。
冷蔵庫からレタスを取り出し、洗ってキッチンペーパーの上に置く。続いて鍋を奥のコンロへ移動させ、小さめのフライパンを弱火にかけて短冊切りにしたベーコンを焼いていく。深手の小さな陶器の小鉢には生卵を落とし、浸かるくらいの水を被せて黄身を爪楊枝でいくつか穴をあけて電子レンジへと入れる。
数十秒置きにセットし、爆発しないように見守っていると、忘れていたベーコンをキバナさんが片手で器用に炒めていた。
程よい半熟卵が出来上がり、ちぎったレタスの上にベーコンをまぶし、卵を乗せる。
ベーコンを炒めていたフライパンにオリーブオイルを敷き、食パンを小さな正方形に切ってあげ焼きをする。
途中、塩胡椒とガーリックパウダーを多めに振り、レタスの周りに散りばめて粉チーズをたっぷりと振りかけてドレッシングをかければシーザーサラダの出来上がりだ。
「さ、お昼ご飯にしましょう」
炊飯器を開けると、ふわっと甘い香りが広がる。つやつやとしていて、ふっくらと炊けた米はヤローさんから届いた米だ。見た目は水分をたっぷりと含んでいて柔らかそうなのに、食べると程よい固さがある。この米で塩おにぎりを作ったときは、ついつい何個も食べてしまったくらいだ。
皿に炊き立てのご飯を盛りつけようとすると、キバナさんから静止の声が入った。
「もう一つカレー増えるから、ライスも三等分に」
「もう一種類、カレーあるんですか?」
「うん。だから三種類のカレー食べることになるな。グレイビーボートに入れるからそっちも出して」
はーい、と間延びした返事を返して食器棚を開ける。
隅の方に置かれたグレイビーボートは私がキバナさんの家に来る前からあるらしい。並んでいる四つのグレイビーボートの一つは少しだけ他のものよりくすんでいる。
くすんだ方にはキバナさんのカレーを入れ、最後のトッピングで生クリームを一筋の線を描くように垂らし、まだ真新しいものには私の具だくさんのカレーを目いっぱい盛りつけた。
「三つ目のカレーは?」
「それはこれから。すぐ出来るからテーブルのセット、頼めるか?」
三つ目のカレーを想像しながら出来上がったものをテーブルへと運んでいく。途中で盛りつけを代わってもらったライスは、小さなお椀型が三つ並んでいる。キバナさんが片手鍋で何かをしているところまでは見えるが、カウンターテーブル越しには具体的には見えなかった。見てしまえば楽しみが半減してしまう、と潔く諦めて次々とテーブルに運び、最後に飲み物を用意しようとしたときだった。
「三つ目もできたぜ」
アイスティーを入れていた手を止めて跳ねるように視線を返すと、グレイビーボートに盛りつけられたのは普通のカレーだった。近いのはキバナさんのカレーだ。それにしては牛肉も小さく、マッシュルームも随分と小ぶりな気がした。
「これが、三つ目ですか?」
「そ。さ、食べるぞ」
いただきます、と一言呟いて、まずはキバナさんのカレーをライスにかける。
僅かなとろみと、ゴロゴロとした牛肉にマッシュルームを添えて口に運ぶ。最初はスパイスの香りが広がり、ピリッとした辛味が口の中に残る。けれどもそれは一瞬で、辛味の後には複数の野菜の甘味が残った。牛肉はほろほろとスプーンでも簡単に崩れる。野菜の甘味と牛肉の旨味が合えば、もう美味しいしか言葉は出なかった。
「これがキバナさんのおうちのカレーかぁ。おしゃれだしすっごく美味しいです」
「ん、そっか。よかった。じゃ次はこっち食べてみな」
差し出されたのは三つ目のカレーだ。
同じようにとろりとしているし、色も似ているが、具はいささか小さい。スパイシーな香りはするものの、旨味は薄く、人工的な辛味ばかりが後を引く。そして保存料独特の香りがした。
この味はよく知っている。キャンプでカレーは作るけれど、天候の悪いときは温めるだけで食べれるインスタントカレーを重宝している。忙しいときも、キャンプにも行けず、家でカレーを作る体力もない。けれどもどうしてもカレーが食べたいときはインスタントカレーの出番だった。食べ慣れた味、といえば聞こえはいいが、所詮はインスタントカレー。これが三つ目のカレーという意味はなんなのだろうかと考えるも、キバナさんの意図はさっぱりわからなかった。
「どっちがうまい?」
「こっちの、キバナさんのカレーですね。なんかこっちは……その、インスタントカレーっぽい……?」
「うん、そう。こっちの方はインスタントカレー。これがオレさまのうちのカレーだった」
「え?じゃあこっちのカレーは……?」
「今日作ったのはオレさまが考え出したカレー、かな。うちはさ、母親が料理すごく下手でな。米も野菜も食器用洗剤で洗うし、炒め物は必ず焦げるし。だからほとんど食事は総菜だった。でもカレーだけは美味かったんだよ。鍋いっぱいに作ってあるカレーを、オレさまはずっと母親が作ったんだと思ってた。けれどある日、見ちゃったんだよなぁ」
「……何を、ですか?」
「インスタントカレーを袋から鍋に移し替えてるのを。それを温めて出してたってワケだ」
はは、っと苦笑いを零したキバナさんは、私が作ったカレーを口に運んだ。
ママの作っていたカレーそっくりにできているはずだ。入れ忘れた食材もないし、工程に間違いもなかった。
咀嚼しながら頷いているキバナさんがまるで料理番組の審査員のように見えてくる。カレーを食べる手を止めてじっくりと見ていると、ふっと目尻が垂れ下がり、笑みを浮かべた。
「ユウリのカレーの原点ってこれだったんだな」
言われたことの意味が分からず、思わず首を傾げた。
「キャンプで作るときもさ、酸っぱくちでも辛口でもどこか甘いんだよ。なんでかなって思ってたけどそっか、特選リンゴか」
「そうですね。特選リンゴのすりおろしと特選リンゴジュース、いつも入れてます」
「豚バラもしっかり煮込んであるから柔らかいけど食べ応えあるし、ちょっと煮崩れして溶けたじゃがいもがまたうまい」
自分のカレーはそっちのけで私の作ったカレーばかり食べるキバナさんにほっと胸を撫でおろし、もう一度キバナさんの作ったカレーをよそう。
辛くて、甘くて、キャンプで作ってくれるカレーとはまた違うちょっとおしゃれなカレーにあっという間にライスがなくなってしまった。
ライスのお替りを取りに行くついでに、空っぽになった私のカレーも足し、未だ口の中で燻っている辛味を和らげようとシーザーサラダに手を伸ばした。
レタスの上にベーコンを数切れとたっぷり乗った粉チーズを卵黄とドレッシングに絡める。カリカリに焼いたクルトンもガーリックがよく効いていてたっぷりとドレッシングを吸っていた。少し酸味があって、濃厚なチーズと卵黄のソースたっぷりのレタスは辛味を取っていく。
リセットされたところで、今度は自分の作ったカレーをかけて、だいぶ小ぶりになった野菜と一緒に口に運んだ。
煮崩れて少し小さくなった野菜と、豚肉の旨味たっぷりのカレーはママと同じように作っているのにどこか違う。
けれど定期的に食べたくなる味だ。
二つのグレイビーボートの中身は綺麗になくなった。最後まで残ったインスタントカレーに視線を向けるが、手は伸びない。これを食べるくらいなら、キバナさんのカレーを食べたいと思ってしまった。
残すのももったいないという気持ちはあるが、なかなか手を付けずにいると大きな褐色の手がグレイビーボートを攫って行く。
「これは、オレさまが責任もって食べる」
あ、と声が漏れたのとキバナさんが豪快にライスにルーをかけるのは同時だった。もう味わうことを捨てたのか、次々と飲むようにかきこんでいく。
「ま、あまり美味しくはないんだけどさ。たまに懐かしいと思って買っちゃうんだよな」
エメラルドグリーンの瞳がどこか遠くを見つめるように細くなる。
十人いれば、十通りあるカレー。同じ人が作っても、決して毎回同じ味になるわけではない。
だからこそ追及するのは楽しいし、美味しいのだけれど、毎回一定の味のインスタントカレーも馴染みのあるカレーの一つであることには変わりない。
「インスタントも、もちろん美味しいですけど。私はキバナさんのカレー、大好きだなぁ」
「オレさまもユウリのカレー、好きだぜ」
「また作ってくださいね。今度はもっと大きな鍋で!」
「おう。また二人で食べ比べしようぜ。あとは……まだ試してないチキンカレーとか」
「あ、いいですね。じゃあ次は二人でオリジナルチキンカレー、考案しましょう!」
冷凍庫から取り出したばかりの特選リンゴシャーベットをキバナさんに渡し、自分の分に噛り付く。
まだ少し柔らかいリンゴはそれでも十分冷たく、甘い。
しゃくしゃくと味わっていながら、空っぽになったグレイビーボートが目に入った。
キバナさんのおうちのカレーと、キバナさんの考え出したカレー。そして私のうちのカレー。
そこにいつか加わる、私とキバナさんが考えたカレーを追加して、四種類のカレーを食べる日が来るのが楽しみでしかたがなかった。