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ランチボックスシリーズ

書類から顔を上げると、既に昼を回っていた。
 この書類に手をつけるまではまだ昼はだいぶ後だと思っていたのに、なんて思いながらデスクの端に置かれたランチボックスを開ける。
 早朝からなにやらバタバタと用意していたユウリが出かける直前に渡してきたものだ。
 ここ最近は事務処理が忙しく、昼は手早く食べられるサンドイッチをテイクアウトすることが多かった。
 こんなにゆっくりとした昼は久しぶりかもしれない。
 少し浮かれ気味に蓋を開けると、少々彩りが偏ったおかずが並んでいた。
 カントーの弁当の定番だという卵焼きとミートボール、ヴルスト、ミニサラダに鮭のフレークがかかった白米。
 サラダ以外は茶色だなぁと苦笑いしながら以前カブさんとカントー料理を出す店で食べただし巻き卵を想像して口に運ぶ。
 ぺったりと縮んだそれは、卵の階層は箸で持つと崩れ、色濃く焼かれていて少し…香ばしい。
 朝の少し焦げたような匂いはこれか、と合点がいった。
 ヴルストは小さなオクタンのように見える。不揃いに切り込みが入り、足が丸まっていたり真っ直ぐだったり。こちらは食べ慣れた味だった。
 ミートボールは昨日二人で作ったものだ。ひき肉を捏ねて滑らかなトマトソースで少し煮込んだもの。続いてサラダを口に運ぶと小さなランチボックスはすぐに空になった。

 家には自分用のランチボックスはない。おそらく、ユウリが自分用に買ったランチボックスなのだろう。
 エプロンをつけて少し申し訳なさそうな顔をして差し出したユウリの姿が浮かんだ。
 カレーは絶品なんだけどなぁ、と苦笑いして蓋を閉める。
 なんだかんだと頭の中で思いながら、実はそれ以上に嬉しかった。
 ミートボール以外は初めて作ったのだろう。初めて作ったものだからうまくいかなかったのも仕方がない。
 食べられないほどまずい訳ではないし、朝早く起きて一生懸命作ってくれたその気持ちが嬉しい。

 ロトムを呼んでユウリにメッセージを送る。

『美味しかった。また作ってくれ』
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