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ジンクス本編外

「キバナさん!見てください!」
ただいま、と途中まで言いかけたキバナの言葉にユウリの声が重なる。
鍵を開けてから迎えたにしては早すぎる彼女の出迎え。
その腕の中にはロコンが一匹。
ただし、それは通常色ではない。
「…アローラロコン?」
愛らしい目、ツンと立った耳、ふわふわとした綿毛のような尻尾。
そこまでは一緒だった。
全体的に薄い紫の毛並みをしていて足元が少し水色がかっている。
「はい。しかも色違いです!」
「どーしたんだ、そいつ」
「交換してもらいました!」
ガラルではアローラロコンを見つけることはできない。
交換というならば納得である。
キバナはしげしげと観察したのち、ロコンの首元を掻くように撫でる。
人見知りしない子なのか目を細めて大人しく撫でられてる。
「しかも、この子、隠れ特性のゆきふらしです!」
とても嬉しそうにしているユウリに、キバナは少し複雑な気持ちになる。
ドラゴンタイプの弱点は氷タイプ。
アローラロコンも氷タイプ。
ユウリの様子からして恐らく何も悪気はないのだろう。
ただ、自身の手持ちたちのことを考えれば、手放しでは喜べなかった。
そんなキバナの心境を知らないユウリは相変わらずニコニコとロコンを撫でている。
まあ、いいか。
そんな風に楽観視していた自分を呪うことになるとはこの時はまだ思っていなかった。

◆◇◆
ユウリがアローラロコンを手に入れて数か月したころ。
ナックルジムで練習と称して行われた非公式試合で、あろうことかユウリはキュウコンを戦闘に出してきた。
ゴージャスボールから現れたキュウコンは眩い光を散らして現れたかと思うと、すぐさま特性ゆきふらしであられを降らす。
薄紫の毛並みを揺らして現れたアローラキュウコンは、思わず見とれてしまうほどの優美さ。高貴な、という表現がぴったりだとキバナは思った。
ただし、どんなに美しい出で立ちをしていても、フライゴンの弱点である氷。
「フライゴン、りゅうせいぐんだ」
「キュウコン、フリーズドライ」
たった数か月でよくここまで育て上げたな、と感心したのもつかの間。
お互いの技がぶつかりあり、爆発を起こした。
巻き上げった煙が晴れ、美しい氷の粒がキラキラと舞っている。
その先に立っていたのは、やはりキュウコンだった。
「ごめんな、フライゴン」
倒れたフライゴンをボールへ戻し、労りの言葉をかける。
「頼んだ、ジュラルドン」
ジュラルドンのメタルクローを受け、キュウコンが倒れる。
フィールドの反対側でユウリがわずかに口角を上げた気がした。
ギラギラとした、それでいて凛とした美しさを保つ女王は、相棒のインテレオンをくりだした。
すぐさまキバナはジュラルドンをキョダイマックスさせる。
繰り出したばかりのユウリもインテレオンをボールに戻し、ダイマックスさせるところまでは予測できた。
「おい…なんだよそれ」
「キョダイマックスインテレオンですよ、キバナさん!」
見慣れた姿とは全く違うインテレオンの容姿に、キバナは身震いした。
恐怖などの負ではない。興奮や興味故の震えに鳥肌が立った。
ただでさえ強いインテレオンがキョダイマックス。
長い尻尾を柱にし、スナイパーのように構えるインテレオン。
初めて見るキョダイソゲキをダイウォールで防いだのち、キョダイゲンスイの指示を出す。
ダメージを食らわせたものの、2度目のキョダイソゲキでジュラルドンは倒れた。
「オマエ…聞いてねぇぞ」
「ふふ、私のインテレオンとキュウコン、攻略してくださいね」
女王は不敵に笑った。
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