ジンクス本編外
シャキッと小気味のいい音を立てて、栗色の髪の毛がはらりと床に落ちた。
目を瞑ってハサミが奏でる音に耳を傾ける。
伸ばし続けて腰上まであった髪が床に広がっているのだろう。スタイリストは何も言わずにただ切り続けている。
一般的に髪を切る理由は、失恋。けれど飄々と短く切って、と伝えた私に、聞いていいものかどうなのかと様子を伺っている気配が漂っている。
聞かれれば答えるつもりだ。失恋じゃありませんよ、と。
けれどもスタイリストはそのことには触れずに最後の仕上げまで終わらせた。
ありがとうございました、と丁寧に頭を下げる女性にありがとう、と返して石畳の上を歩いていく。
風に靡く髪がないのは少し寂しいが、首元は涼しいし頭が軽い。懐かしい感覚に思わず笑みが溢れた。
ぐるりと回り込むように進んでいけば見慣れたナックルシティスタジアムが見えてきて、待ち合わせをしている人物がベンチに腰掛けてスマホを弄っていた。
「キバナさん」
声をかけると視線がゆっくりと上を向く。いつもなら目尻を下げて微笑む彼が、何かを言いかけた口が開いたままになっていた。
「ユウリ!?なんでっ…!」
「どうですか?似合いますか?」
大きな手が小刻みに震えていて、確かめるように短くなった髪を撫でる。相変わらずぽかんと口を開けたままだ。
「似合うけど…」
その手は数十分前まであった長い髪を惜しむように撫でて空を掻いた。
その寂しそうな青い瞳ににっこりと微笑む。
「だって、髪を伸ばしていたのは願掛けだったから。いつかキバナさんと付き合えますようにって」
もう必要ないですよね、と付け加えると、肩のあたりで止まっていた大きな手が腕を伝い、そっと握られた。
「ああ、よく似合ってる」
青い瞳はどこか懐かしむように揺れていた。
目を瞑ってハサミが奏でる音に耳を傾ける。
伸ばし続けて腰上まであった髪が床に広がっているのだろう。スタイリストは何も言わずにただ切り続けている。
一般的に髪を切る理由は、失恋。けれど飄々と短く切って、と伝えた私に、聞いていいものかどうなのかと様子を伺っている気配が漂っている。
聞かれれば答えるつもりだ。失恋じゃありませんよ、と。
けれどもスタイリストはそのことには触れずに最後の仕上げまで終わらせた。
ありがとうございました、と丁寧に頭を下げる女性にありがとう、と返して石畳の上を歩いていく。
風に靡く髪がないのは少し寂しいが、首元は涼しいし頭が軽い。懐かしい感覚に思わず笑みが溢れた。
ぐるりと回り込むように進んでいけば見慣れたナックルシティスタジアムが見えてきて、待ち合わせをしている人物がベンチに腰掛けてスマホを弄っていた。
「キバナさん」
声をかけると視線がゆっくりと上を向く。いつもなら目尻を下げて微笑む彼が、何かを言いかけた口が開いたままになっていた。
「ユウリ!?なんでっ…!」
「どうですか?似合いますか?」
大きな手が小刻みに震えていて、確かめるように短くなった髪を撫でる。相変わらずぽかんと口を開けたままだ。
「似合うけど…」
その手は数十分前まであった長い髪を惜しむように撫でて空を掻いた。
その寂しそうな青い瞳ににっこりと微笑む。
「だって、髪を伸ばしていたのは願掛けだったから。いつかキバナさんと付き合えますようにって」
もう必要ないですよね、と付け加えると、肩のあたりで止まっていた大きな手が腕を伝い、そっと握られた。
「ああ、よく似合ってる」
青い瞳はどこか懐かしむように揺れていた。