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ジンクス本編外

 最初は憧れだった。
 キバナさんの周りを囲んでいる女の人たちのように、胸が大きくて、ショートパンツやミニスカートから伸びる足は細くて、お洒落な人たちに憧れた。
 ああいう風になれれば、キバナさんだって振り向いてくれるかもしれない、そう思った。
 彼女たちと同じような年齢になる前に、そうはなれないのだと悟った。
 どう頑張っても筋肉のついた足は細くはない。胸も人並みのサイズで成長は止まってしまった。肌も髪も、ワイルドエリアに行っていれば紫外線でどうしても傷んでしまう。傷んでいるところを切っているうちに綺麗なロングヘアにするのは到底無理だと思った。
 膝から下や腕にはたくさんの傷跡ができたいた。どれもこれも、ポケモンの技が飛んできたときにできた傷だ。

 いつしか、彼の周りにいる女性たちが羨ましく思えた。
 もし、ポケモントレーナーでなければ、あの人たちのようにお洒落に気遣える余裕があったかもしれない。髪も肌も、ここまで痛むことはなかったかもしれない。腕や足の傷も、ここまで増えなかったかもしれない。
 私は、あの人たちのようにはなれない。自分で選んだ道といえど、割り切ることはできなかった。
 彼は分け隔てなく接してくれるけれど、本当は迷惑なのかもしれない。
 子供のころならいざ知らず、もうすぐ成人を迎える。
 もしかしたらあの中に意中の女性がいるのかもしれない。
 だとしたら、子供のころと変わらない頻度で連絡を取ったり会いに来たり、キャンプに誘うのはもうやめた方がいいのかもしれない。
 無意識に唇を嚙みしめていたのか、口の中に鉄の味が広がった。
 噛みしめていた唇を離すと視界が滲み始めた。
 キバナさんの隣には、先ほどとは違う女性が立っていた。傍にぴったりと寄って、写真を撮っている。その次の女性は彼の腕に手を回して体を密着させた。
 涙が零れ落ちる前に手の甲でごしごしと乱雑に拭う。
 鮮明になった視界の先には、まだキバナさんがファンサービスをしていた。
 ぐっと堪えて背を向ける。
 彼の元へ行く勇気は出なかった。
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