Nouvelle
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「キキ達って敬語で話すの?」
みりおさんの一言で私は重要なことを忘れている事に気づいた。
そうや、付き合えた事で忘れそうになってたけど本名で呼んでほしいって言ったのにリセットされてるやん。
しかも確かに2人っきりの時も敬語のまま。
「仕事とプライベートは分けてますから。プライベートではらぶらぶしてますよ」
「へー。いちゃいちゃするタイプに見えないのにキキの前ではそんな面もあるんだね」
はい。見栄を張りました。
感心してるみりおさんを他所に私はこの状況打破のためにどうするかをぐるぐると考えていた。
「芹香さん?」
「ん?」
「大丈夫ですか?」
「え?ああ、大丈夫」
ああ、可愛い。
怪訝そうに私のこと心配そうに覗き込む姿さえも。
恋は盲目とはよく言ったものだ。
大好きやなぁ。
でも、今日この状況打破をやり遂げるべし。
「やっぱり大丈夫やないからちゅーして」
「へっ」
「ちゅう」
「いや、ここお稽古場ですよ」
むー!!
可愛く唇を突き出しておねだりしてみたけど落ちひんかった。
***
「ちなつさん、どうされたんですか?」
「面白いもの見たくない?」
「面白いものですか?」
休憩中、ふと横に並んだちなつさんがそう言って私の手を握った
「ちなつさん?」
ちなつさんを見て、その繋がれた手に目をやる。
何だろう。
「あっかーん」
遠くから芹香さんの声が近づいてくるのが分かって振り返れば凄い形相。
「何してくれてんの。私のやで」
すぱっと私たちの繋いだ手を手刀で切った芹香さん
「いやぁ、手小さくて可愛いなと思って」
そう言ってまた手を取ってしみじみと手を見つめたちなつさん
「ちなつさん恥ずかしいです」
「ちなつさん・・・」
急に顔が曇った芹香さん。
怒っちゃったかな。
意外と嫉妬深い芹香さん。
だけどそれだけ愛してくださっていると信じている。
「キキが隅っこからじっと見てたからさ、ちょっと揶揄ってみたくなった」
いたずらっ子みたいに笑うちなつさんの横で芹香さんは何か真剣に考えているようでちなつさんの言葉に全然反応しなかった
「芹香さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫、気にせんといて」
そう言ってどこかへ行ってしまった。
本当に大丈夫かな。
「揶揄いすぎたかな」
横に立つちなつさんも少し心配そうなお顔をしてらっしゃる。
たしかにいつもの芹香さんならひどーい!とか言って笑ってるのに。
気になった私はちなつさんにお断りをいれて、芹香さんの出ていった先を追った。
空き教室に入っていく背中を見つけたので小走りで追って窓から中を覗けば小さくなって座り込んでらっしゃる。
扉をそっと開けて声をかければ振り返った芹香さんの顔は強張っている
「大丈夫ですか」
「ごめん、今は来んとって」
力なく笑う芹香さん、でも今このまま置いていってしまったら芹香さんはきっと
「ごめんなさい、それは出来ません」
そっと後ろから抱きしめれば、抱きしめた腕をそっと剥がされる。
なんで、私じゃだめなんですか?
「お願いや、離れて」
「私の事嫌いになりましたか」
「そんな訳ないやん、こんなに好きで好きでおかしくなりそうなんに」
芹香さんにぐっと引っ張られて気付けば怒ったような表情をした芹香さんに見下ろされている。
でもちゃんと頭打たないように手を添えてくれたのを私は知っている。
「ほら、はよ逃げり。何するか分からんで」
手を伸ばして芹香さんの頬に触れる。
こうなったら根気強く問いかけるしかない。
本当は劇団内で私情を挟んではいけないと分かっているけど、今だけごめんなさい。
「どうしたの、さやかさん」
優しく促すように問い掛ければ目をまん丸にして
私を見つめる芹香さん。やっぱり劇団内で敬語もなく話しかけるなんてだめだったかな。しかもこの場の雰囲気につけこんでちゃっかりさやかさんとか呼んでみたりして。
恥ずかしくてつい呼び損ねちゃってたからこれがチャンスだと思った私はずるい女。
大きくため息をついた芹香さんに力が入る。
呆れられてしまっただろうか。
「なんでそうやって私の心掻き乱すん」
「え?」
「ほんまずるい」
触れた唇が熱くて、さやかさんは何かに悩んでるのに好きが溢れてこのまま時が止まればいいとさえ思った。
「さやかさん、すき」
「ほんまにあかんって」
今どうしても言いたくなってしまって、唇が離れたタイミングで伝えれば困惑した表情。
「さやかさん」
「もう」
ぎゅーっと抱きしめられて苦しくて苦しくて、でも幸せで何とも言えない気持ちが込み上げて泣きそうになる。
「私も呼んで欲しかったんよ」
「呼ぶ?」
「さやかって。前言ったやん。なのにちなつさんはちなつさん呼びで私は芹香さん。しかもちなつさんと手なんか繋いじゃってさ。私のなのに」
ぼそぼそと話しだした芹香さんの言葉に思わず愛しさが込み上げてきて顔が緩んでふっと声が漏れた。
「あー、ばかにしてるやろ」
「ちがっ、してません。嬉しいなって」
軽く睨まれるけどそれさえも何だか可愛らしくて、つくづく大好きなんだなぁと思う。
「じゃあ、ちゃんと名前呼んで好きって言ってちゅーして」
「物凄く我儘な話ですね」
「してくれへんの?」
そう言う時に可愛いところ出してくるのずるい。
断れないってわかってるくせに。
でもさやかさんがそれで私の気持ちわかってくれるならそれでいい。
ちゅーされるのを待っている可愛い唇にそっと口付けた。
さやかさんだけ大好きですよ
もっと皆に見せつけとかなあかん、誰のものなんか
さやかさんは本当に困った人ですね、でもそんなところも好きです