Flower Récit
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「はあ・・・」
「どうしたの?」
珍しく早目に終わったお稽古
自分の出番のシーンを自主稽古をして帰るというので明日は2人のシーンを一緒に練習しようと約束して解散したけど、何となく今日のお稽古場での様子が気になって引き返した。
こっそりドアを開けてお稽古場の端っこにしゃがみ込んで、自主稽古を始める気配のない声をかければ貴美はびっくりしたみたいで目をまんまるにして振り返った。
「あっ、みりさんっ。何でもないです。ここの振り付けがうまく出来なくて・・・」
貴美の足元にある楽譜を指差してるけど、そこは私との一緒のシーンでしょ?しかも一人じゃできないシーンだし。
今日は一人のシーンの練習するんじゃなかったの。
何でもないは嘘だよね。何か悩んでる事があるんだろうな。
気づかないとでも思った?
貴美はすぐ一人で抱え込んでしまう。
この様子だとまただいもんにも言ってないんだろうな。
無理矢理聞いても答えてくれなさそうだから取り敢えず気づかないふりして練習に付き合ってあげるとしよう。
「そう?じゃあ一緒にやってみようか」
「ありがとうございます」
にこりと微笑んで立ち上がりスタート位置につく
ダンダダダンッ
「ばっちりじゃん」
「感覚掴めました!!ありがとうございます」
踊ってる間はオンになってるからいい表情してるんだけど、音楽が終わってオフになると気持ちがにじみ出ちゃってる。
それを必死に隠そうとして無理して笑ってる。
練習に没頭して気持ちを紛らわそうとしてるんだろうな。
「ねえ、ちょっとおいで」
タオルで汗を拭った後、お稽古場のはじの方に座って貴美を手招きする。
不思議そうにこちらに来る貴美に自分の横をトントンと指して座るよう促すと並んで座る
「ちょっと休憩しよう。ねえ、貴美更に軽くなったんじゃない?頑張るのは良い事だけど頑張りすぎたらだめだよ。持ち上げる時に軽すぎてふっ飛ばしてしまうよ」
「まだまだなので。みりさんの横に並んでも恥ずかしくない位になりたくて」
体育座りしてる貴美は足を抱えて俯く。でもそうじゃないでしょ。
「今日の貴美は何か思うところがあってそっちに気持ちが向かないよう没頭してたいって感じに思えたけど」
「・・・みりさんには何でもお見通しなんですね」
私の大事な相手役さんなのでね。
どうしたのか聞くなら今しかないと思ってたら思いもよらない答えが返ってきた。
「・・・私、みりさんの事大好きです」
えっ、急にまさかの告白ですか?悩みの原因はわたし?
いや、でもだいもんとらぶらぶでしょ?だいもんより私の方が好きになっちゃったとか。だから悩んでるとか
「本当です。本当に大好きなんです」
貴美の真剣な眼差しが突き刺さる。
「でもあやちゃんは私の特別で」
そうだよね、知ってる。
じゃあ悩みの種はだいもんかなと貴美の言葉を待てば、舞台とか番組とかで私を好きだって言ってるのにだいもんの彼女だし、だいもんが特別だなんて今の関係がみんなを騙してるようで心苦しくなってきたみたい。
だいもんには真彩ちゃんという大事な相手役もいるのに。
でも、私の事大好きなんだと。
「なーんだ」
「・・・本気で悩んでるんですよ」
泣きそうに見つめられると悪いことしてる気になるけど、答えは簡単だと思う。
だって友達の好きって別に1人じゃなきゃダメなわけじゃないでしょ。
友達になるって好きになるって事と比例してると思うし。
それが特別だと恋だけど。
私たちは友達みたいなものでしょ?戦友かな。相手役の好きってちょっと普通の好きとはみんなの感覚ちがうかもだけど、私も貴美大好きだよ。
もちろんだいもんが特別で一番って分かってる。
でも貴美が可愛いと思うし、愛おしいよ。
恋の好きか人として好きかの違いじゃない、そんなので嫌いになられたら困っちゃうよ私
「ほら、泣かないよ」
私の想いを伝えれば泣き出すから頬を両手で包み、親指で涙を拭う
「みりさーん大好きです」
「もう仕方ないなー」
泣きながら抱きついてきたから抱きしめ返して頭を撫でる。
困った子だ。仕事なんだからなんていくらでも考え方次第。
でもそうやってファンのみんなの事も想って悩んでしまうところも可愛いと思ってるんだよ。
*******************************
貴美ちゃん最近痩せたよねー
元々細かったけどより細い気がする。
そんな声を最近聞いた
お互い公演を控えて遅くまでお稽古や取材の日々。
全然会えてなくて日々のLINEとたまの電話位。
貴美大丈夫かな。頑張りすぎてしまうタイプだから心配
今日は会う約束してるんだけど、お互いお稽古日だからここでもちょっと逢えるかな
そう思ってお稽古場を覗いたのいけなかった
さゆみちゃんと抱き合ってる姿をみてしまった。
貴美を優しい目で見つめて頭を撫でるさゆみちゃんに心がざわついた。
それはお稽古の一環?
それとも・・・
*******************************
「そろそろ帰ろうか。リフレッシュしてまた明日頑張ろう」
少し落ち着いた頃にあやすように背中を撫でて
そっと声をかける。
あんまり遅くなってもいけないから。
だいもんと会う約束してるみたいだし。
遅くなってまた嫉妬されたら大変だからね。
「はい。みりさん本当にありがとうございました。この顔をどうにかしてからあやちゃんに会いに行きます」
「相談ならいつでもどうぞ。だいもんから私に乗り換える際もご相談にのりますよー」
「もー。みりさんいじわる」
「そうやって笑ってる顔が好きだよ」
「なっ・・・。今日のみりさんかっこよすぎてだめです」
「だめってなによ。惚れそう?」
「もう惚れてるんでいいんですー」
「はいはい。帰るよー」
*******************************
今日は私の家で会う約束だったから、取敢えず連絡だけして先に家に帰ったものの今日の光景が頭から離れない
あんな端っこで抱き合ってお稽古とかじゃないよね。
会いたいと思ってたのは私だけ?さゆみちゃんの方が好きになった?さゆみちゃんが貴美を可愛がってるのは知ってる。
でも、相手役としてと思ってたけど違うのかな
「あーもうっ。なんでこんな悩んでんの私」
貴美に聞いてしまえば簡単だって分かってる。
でも聞くのが怖い。
さゆみちゃんが好きになった、それで終わってしまうかもしれない。
ぴーんぽーん
「遅くなってごめんなさい」
申し訳なさそうに眉毛を下げながら言われるけど、さゆみちゃんと居たから遅くなったの?そう言いそうになって言葉を飲み込む
「大丈夫。私もさっき帰ってきたとこだから」
うそ。待ってたんだよ。だいぶ
ケーキを買ってきてくれたらしく、にこりと笑ってケーキの箱を渡される。
その笑顔に癒されそうになるけど今日の私は複雑。
リビングに向かう廊下、貴美の後姿がやっぱり小さくなったように見えて思わず後ろから抱きしめる。
「痩せたんじゃない?大丈夫?」
抱きしめた瞬間にふっと香ったさゆみちゃんの香水の香りに黒い私がまた顔を出す
「・・・さゆみちゃんの香りがする」
「えっ?」
そんなにびっくりするなんて、自覚あるって事だよね。
「今日お稽古だったもんね」
「うん。だからかな?」
嘘ばっかり。ほっとしたような表情してるよ、気づいてないの?
「ねえ、あやちゃん」
無意識に握られた手を振りほどいてしまった。
なんで貴美が傷ついたような顔するの
「ごめんなさい」
そのごめんは何?さゆみちゃんを好きになってしまったから?もう一緒にいたい人じゃなくなったと言いたいの?
「ケーキ、食べようか。紅茶入れるね」
「うん・・・」
貴美から逃げるようにキッチンへ向かう。
紅茶を入れる間、部屋は静まりかえっていた
リビングのローテーブルに並んで座る
「お稽古は順調?」
「うん。みりさんにいつも迷惑かけてばっかだけど、嫌な顔ひとつせず自主稽古も付き合ってくださるから」
嬉しそうに微笑む横顔を見て話題を間違ったと心から後悔した。私の方はどうかと聞かれるけど、小っちゃな反抗心でうまくいってますアピールしてしまってる自分に虚しさを感じる。
貴美の嬉しそうだけどどこか寂しそうな顔、そうもっと私でいっぱいになればいい
「さゆみちゃんとべたべたしてさ。お稽古に身が入ってないんじゃない」
「っ・・・あやちゃんだってなっちゃんと仲良しじゃない。」
「私は公私混同してないからね」
「私だってしてないよ」
一度口を開いてしまえばもう止めることが出来なかった。
いつもなら強く言い返したりしない貴美が強めの口調で言い返してきたので思わず無理矢理口を塞ぐ
「んっ・・・やっ」
なんで逃げるの。
怯えた目で軽く睨まれるけど、そんなことされたら黒い感情が余計私の心を蝕んでいく
私とは出来ないって事?
「なんかあやちゃん怖い」
「さゆみちゃんの方が良かった?」
「なんで・・・そんな事言うの」
事実だからじゃないの。
「もういいっ。今日は帰るね。お互い冷静になった方がいい」
「私はいつも冷静だよ。私の事好きって言いながら、本当はさゆみちゃんに気持ちがいって浮かれてるんじゃないの」
立ち上がって鞄を掴んだ貴美にそんな言葉をぶつけてしまう
「・・・そんな事あやちゃんだけには一番言ってほしくなかった」
そう言ってさみしそうに家を出る貴美の背中を見送る事しかできなかった。
何やってるんだろ。こんな事したい訳じゃなかったのに食べかけのケーキと冷めた紅茶だけが残った
*******************************
貴美は次の日からますますお稽古に没頭するようになっていった。
おかしいな、答えはでたと思ったけどそんな簡単じゃなかったかな聞いても大丈夫の一点張り。
ここまで頑なって事はあの日だいもんと何かあって言いたくない感じかな。
だいもんがなんか知ってるんだろう、探りをいれてみるかな
「おっ。だいもんー」
「さゆみちゃん・・・」
なんか暗いな。いつもなら嬉しそうに駆け寄ってきてくれるのに。
「貴美大丈夫?またお稽古頑張りすぎてて振り切れそうなんだけど。」
「・・・さゆみちゃんが聞いた方が答えてくれるんじゃない」
なにそれ。ふてくされたような顔で何かぶつぶつ言ってる
「嫉妬?」
ばっと私を見るだいもんの顔に笑いがこみ上げる。
こんなにだいもんに一途に思われてるんだから深く考えずに流れに任せればなにも心配なんてないのにね
「・・・こないだ見た。」
「何を?」
なんかあったっけ?記憶を辿るけど思い当たる節がない。
「二人が抱き合ってるとこ」
「?ああ。のぞき見なんて悪趣味だなー」
悪びれもしない私にだいもんがイラッとたのが分かった。
私の彼女なのに手を出すなと言いたいのかな。
「まあ、真面目な彼女を持つと苦労しますねー」
「真面目だから拒まれたんだろうな。」
「私の事大好きでどうしたらいいかって。」
軽くからかったつもりが、やっぱり・・・とがっくりと頭を抱えるだいもん。
なんか勘違いしてるなこれは。
しょうがないなぁ、教えてあげるしかないか。
「だからって抱き合う必要ある?」
「私の事相手役として大好きらしいからそれでじゃない?少しのスキンシップ位許可してよー」
「スキンシップの域を超えてるよ・・・なにそれ、私が特別なの?もう私バカみたい」
「うん。そうだね」
「・・・なに、私は慰めてくれないの」
「抱きしめて欲しいの?」
「うん」
しょうがないなぁ。と軽く抱きしめてあげる。
なんでさっきまで嫉妬の炎を燃やされてた相手を抱きしめなきゃいけないんだよ。
全く2人とも手のかかる子達だ。
どうせ、さゆみちゃんと抱き合ってた‼︎私よりさゆみちゃんの方が好きになったんだ。貴美のばかーとか思ったんでしょとだいもんの真似して言えばしょぼんとした感じで
「思った。そんで貴美にぶつけた」
そういう事ね。お稽古で紛らわそうとしてるから頑張りすぎてあれじゃ倒れちゃうよ。責任取ってなんとかしてよね
「許してくれるかな」
「さあねー。」
「さゆみちゃんにも責任あるんだよ」
「じゃあ責任取って貴美の面倒みますが?」
「結構です。・・・でもありがと」
うん。仕事には影響させないけど、一人の時に無理しちゃうから。貴美が倒れたりしたら大変なことになるのでちゃんと大事にしてもらわないと。
******************************************
お稽古終わりにまだ自主稽古を一人ででしているという貴美のところに向かう。
お稽古場に入ると、私が来ると思ってもみなかったようでびっくりしてた。
「望海さん・・・?」
「ごめん貴美。」
深々と頭を下げれば、お稽古場で私的な話とかした事無かったから仕事の件の何かだと思ったらしく身構えられてる感じ。
素直にこないだ見たことの話と嫉妬してしまったことを告げた。
「・・・あやちゃん、みりさんの事は大好き。でもあやちゃんは特別なの。私の特別はあやちゃん以外ありえないの。
一筋の涙が貴美の頬を伝う。頬に手を当て、涙を拭う
「私も。貴美だけ特別。・・・抱きしめてもいい?」
こくんと頷いた貴美を思いっきり抱きしめる
「あやちゃん、ごめんね」
おずおずと背中に手をまわして抱き締め返してくれる
「・・・ひとりでも考えれば解決できると思ったの」
「悩んでるなら言ってよ。さゆみちゃんじゃなくて私に。一緒に悩もう。全部教えてよ貴美を」
仲直りのキスは涙の味がした。
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「どうしたの?」
珍しく早目に終わったお稽古
自分の出番のシーンを自主稽古をして帰るというので明日は2人のシーンを一緒に練習しようと約束して解散したけど、何となく今日のお稽古場での様子が気になって引き返した。
こっそりドアを開けてお稽古場の端っこにしゃがみ込んで、自主稽古を始める気配のない声をかければ貴美はびっくりしたみたいで目をまんまるにして振り返った。
「あっ、みりさんっ。何でもないです。ここの振り付けがうまく出来なくて・・・」
貴美の足元にある楽譜を指差してるけど、そこは私との一緒のシーンでしょ?しかも一人じゃできないシーンだし。
今日は一人のシーンの練習するんじゃなかったの。
何でもないは嘘だよね。何か悩んでる事があるんだろうな。
気づかないとでも思った?
貴美はすぐ一人で抱え込んでしまう。
この様子だとまただいもんにも言ってないんだろうな。
無理矢理聞いても答えてくれなさそうだから取り敢えず気づかないふりして練習に付き合ってあげるとしよう。
「そう?じゃあ一緒にやってみようか」
「ありがとうございます」
にこりと微笑んで立ち上がりスタート位置につく
ダンダダダンッ
「ばっちりじゃん」
「感覚掴めました!!ありがとうございます」
踊ってる間はオンになってるからいい表情してるんだけど、音楽が終わってオフになると気持ちがにじみ出ちゃってる。
それを必死に隠そうとして無理して笑ってる。
練習に没頭して気持ちを紛らわそうとしてるんだろうな。
「ねえ、ちょっとおいで」
タオルで汗を拭った後、お稽古場のはじの方に座って貴美を手招きする。
不思議そうにこちらに来る貴美に自分の横をトントンと指して座るよう促すと並んで座る
「ちょっと休憩しよう。ねえ、貴美更に軽くなったんじゃない?頑張るのは良い事だけど頑張りすぎたらだめだよ。持ち上げる時に軽すぎてふっ飛ばしてしまうよ」
「まだまだなので。みりさんの横に並んでも恥ずかしくない位になりたくて」
体育座りしてる貴美は足を抱えて俯く。でもそうじゃないでしょ。
「今日の貴美は何か思うところがあってそっちに気持ちが向かないよう没頭してたいって感じに思えたけど」
「・・・みりさんには何でもお見通しなんですね」
私の大事な相手役さんなのでね。
どうしたのか聞くなら今しかないと思ってたら思いもよらない答えが返ってきた。
「・・・私、みりさんの事大好きです」
えっ、急にまさかの告白ですか?悩みの原因はわたし?
いや、でもだいもんとらぶらぶでしょ?だいもんより私の方が好きになっちゃったとか。だから悩んでるとか
「本当です。本当に大好きなんです」
貴美の真剣な眼差しが突き刺さる。
「でもあやちゃんは私の特別で」
そうだよね、知ってる。
じゃあ悩みの種はだいもんかなと貴美の言葉を待てば、舞台とか番組とかで私を好きだって言ってるのにだいもんの彼女だし、だいもんが特別だなんて今の関係がみんなを騙してるようで心苦しくなってきたみたい。
だいもんには真彩ちゃんという大事な相手役もいるのに。
でも、私の事大好きなんだと。
「なーんだ」
「・・・本気で悩んでるんですよ」
泣きそうに見つめられると悪いことしてる気になるけど、答えは簡単だと思う。
だって友達の好きって別に1人じゃなきゃダメなわけじゃないでしょ。
友達になるって好きになるって事と比例してると思うし。
それが特別だと恋だけど。
私たちは友達みたいなものでしょ?戦友かな。相手役の好きってちょっと普通の好きとはみんなの感覚ちがうかもだけど、私も貴美大好きだよ。
もちろんだいもんが特別で一番って分かってる。
でも貴美が可愛いと思うし、愛おしいよ。
恋の好きか人として好きかの違いじゃない、そんなので嫌いになられたら困っちゃうよ私
「ほら、泣かないよ」
私の想いを伝えれば泣き出すから頬を両手で包み、親指で涙を拭う
「みりさーん大好きです」
「もう仕方ないなー」
泣きながら抱きついてきたから抱きしめ返して頭を撫でる。
困った子だ。仕事なんだからなんていくらでも考え方次第。
でもそうやってファンのみんなの事も想って悩んでしまうところも可愛いと思ってるんだよ。
*******************************
貴美ちゃん最近痩せたよねー
元々細かったけどより細い気がする。
そんな声を最近聞いた
お互い公演を控えて遅くまでお稽古や取材の日々。
全然会えてなくて日々のLINEとたまの電話位。
貴美大丈夫かな。頑張りすぎてしまうタイプだから心配
今日は会う約束してるんだけど、お互いお稽古日だからここでもちょっと逢えるかな
そう思ってお稽古場を覗いたのいけなかった
さゆみちゃんと抱き合ってる姿をみてしまった。
貴美を優しい目で見つめて頭を撫でるさゆみちゃんに心がざわついた。
それはお稽古の一環?
それとも・・・
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「そろそろ帰ろうか。リフレッシュしてまた明日頑張ろう」
少し落ち着いた頃にあやすように背中を撫でて
そっと声をかける。
あんまり遅くなってもいけないから。
だいもんと会う約束してるみたいだし。
遅くなってまた嫉妬されたら大変だからね。
「はい。みりさん本当にありがとうございました。この顔をどうにかしてからあやちゃんに会いに行きます」
「相談ならいつでもどうぞ。だいもんから私に乗り換える際もご相談にのりますよー」
「もー。みりさんいじわる」
「そうやって笑ってる顔が好きだよ」
「なっ・・・。今日のみりさんかっこよすぎてだめです」
「だめってなによ。惚れそう?」
「もう惚れてるんでいいんですー」
「はいはい。帰るよー」
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今日は私の家で会う約束だったから、取敢えず連絡だけして先に家に帰ったものの今日の光景が頭から離れない
あんな端っこで抱き合ってお稽古とかじゃないよね。
会いたいと思ってたのは私だけ?さゆみちゃんの方が好きになった?さゆみちゃんが貴美を可愛がってるのは知ってる。
でも、相手役としてと思ってたけど違うのかな
「あーもうっ。なんでこんな悩んでんの私」
貴美に聞いてしまえば簡単だって分かってる。
でも聞くのが怖い。
さゆみちゃんが好きになった、それで終わってしまうかもしれない。
ぴーんぽーん
「遅くなってごめんなさい」
申し訳なさそうに眉毛を下げながら言われるけど、さゆみちゃんと居たから遅くなったの?そう言いそうになって言葉を飲み込む
「大丈夫。私もさっき帰ってきたとこだから」
うそ。待ってたんだよ。だいぶ
ケーキを買ってきてくれたらしく、にこりと笑ってケーキの箱を渡される。
その笑顔に癒されそうになるけど今日の私は複雑。
リビングに向かう廊下、貴美の後姿がやっぱり小さくなったように見えて思わず後ろから抱きしめる。
「痩せたんじゃない?大丈夫?」
抱きしめた瞬間にふっと香ったさゆみちゃんの香水の香りに黒い私がまた顔を出す
「・・・さゆみちゃんの香りがする」
「えっ?」
そんなにびっくりするなんて、自覚あるって事だよね。
「今日お稽古だったもんね」
「うん。だからかな?」
嘘ばっかり。ほっとしたような表情してるよ、気づいてないの?
「ねえ、あやちゃん」
無意識に握られた手を振りほどいてしまった。
なんで貴美が傷ついたような顔するの
「ごめんなさい」
そのごめんは何?さゆみちゃんを好きになってしまったから?もう一緒にいたい人じゃなくなったと言いたいの?
「ケーキ、食べようか。紅茶入れるね」
「うん・・・」
貴美から逃げるようにキッチンへ向かう。
紅茶を入れる間、部屋は静まりかえっていた
リビングのローテーブルに並んで座る
「お稽古は順調?」
「うん。みりさんにいつも迷惑かけてばっかだけど、嫌な顔ひとつせず自主稽古も付き合ってくださるから」
嬉しそうに微笑む横顔を見て話題を間違ったと心から後悔した。私の方はどうかと聞かれるけど、小っちゃな反抗心でうまくいってますアピールしてしまってる自分に虚しさを感じる。
貴美の嬉しそうだけどどこか寂しそうな顔、そうもっと私でいっぱいになればいい
「さゆみちゃんとべたべたしてさ。お稽古に身が入ってないんじゃない」
「っ・・・あやちゃんだってなっちゃんと仲良しじゃない。」
「私は公私混同してないからね」
「私だってしてないよ」
一度口を開いてしまえばもう止めることが出来なかった。
いつもなら強く言い返したりしない貴美が強めの口調で言い返してきたので思わず無理矢理口を塞ぐ
「んっ・・・やっ」
なんで逃げるの。
怯えた目で軽く睨まれるけど、そんなことされたら黒い感情が余計私の心を蝕んでいく
私とは出来ないって事?
「なんかあやちゃん怖い」
「さゆみちゃんの方が良かった?」
「なんで・・・そんな事言うの」
事実だからじゃないの。
「もういいっ。今日は帰るね。お互い冷静になった方がいい」
「私はいつも冷静だよ。私の事好きって言いながら、本当はさゆみちゃんに気持ちがいって浮かれてるんじゃないの」
立ち上がって鞄を掴んだ貴美にそんな言葉をぶつけてしまう
「・・・そんな事あやちゃんだけには一番言ってほしくなかった」
そう言ってさみしそうに家を出る貴美の背中を見送る事しかできなかった。
何やってるんだろ。こんな事したい訳じゃなかったのに食べかけのケーキと冷めた紅茶だけが残った
*******************************
貴美は次の日からますますお稽古に没頭するようになっていった。
おかしいな、答えはでたと思ったけどそんな簡単じゃなかったかな聞いても大丈夫の一点張り。
ここまで頑なって事はあの日だいもんと何かあって言いたくない感じかな。
だいもんがなんか知ってるんだろう、探りをいれてみるかな
「おっ。だいもんー」
「さゆみちゃん・・・」
なんか暗いな。いつもなら嬉しそうに駆け寄ってきてくれるのに。
「貴美大丈夫?またお稽古頑張りすぎてて振り切れそうなんだけど。」
「・・・さゆみちゃんが聞いた方が答えてくれるんじゃない」
なにそれ。ふてくされたような顔で何かぶつぶつ言ってる
「嫉妬?」
ばっと私を見るだいもんの顔に笑いがこみ上げる。
こんなにだいもんに一途に思われてるんだから深く考えずに流れに任せればなにも心配なんてないのにね
「・・・こないだ見た。」
「何を?」
なんかあったっけ?記憶を辿るけど思い当たる節がない。
「二人が抱き合ってるとこ」
「?ああ。のぞき見なんて悪趣味だなー」
悪びれもしない私にだいもんがイラッとたのが分かった。
私の彼女なのに手を出すなと言いたいのかな。
「まあ、真面目な彼女を持つと苦労しますねー」
「真面目だから拒まれたんだろうな。」
「私の事大好きでどうしたらいいかって。」
軽くからかったつもりが、やっぱり・・・とがっくりと頭を抱えるだいもん。
なんか勘違いしてるなこれは。
しょうがないなぁ、教えてあげるしかないか。
「だからって抱き合う必要ある?」
「私の事相手役として大好きらしいからそれでじゃない?少しのスキンシップ位許可してよー」
「スキンシップの域を超えてるよ・・・なにそれ、私が特別なの?もう私バカみたい」
「うん。そうだね」
「・・・なに、私は慰めてくれないの」
「抱きしめて欲しいの?」
「うん」
しょうがないなぁ。と軽く抱きしめてあげる。
なんでさっきまで嫉妬の炎を燃やされてた相手を抱きしめなきゃいけないんだよ。
全く2人とも手のかかる子達だ。
どうせ、さゆみちゃんと抱き合ってた‼︎私よりさゆみちゃんの方が好きになったんだ。貴美のばかーとか思ったんでしょとだいもんの真似して言えばしょぼんとした感じで
「思った。そんで貴美にぶつけた」
そういう事ね。お稽古で紛らわそうとしてるから頑張りすぎてあれじゃ倒れちゃうよ。責任取ってなんとかしてよね
「許してくれるかな」
「さあねー。」
「さゆみちゃんにも責任あるんだよ」
「じゃあ責任取って貴美の面倒みますが?」
「結構です。・・・でもありがと」
うん。仕事には影響させないけど、一人の時に無理しちゃうから。貴美が倒れたりしたら大変なことになるのでちゃんと大事にしてもらわないと。
******************************************
お稽古終わりにまだ自主稽古を一人ででしているという貴美のところに向かう。
お稽古場に入ると、私が来ると思ってもみなかったようでびっくりしてた。
「望海さん・・・?」
「ごめん貴美。」
深々と頭を下げれば、お稽古場で私的な話とかした事無かったから仕事の件の何かだと思ったらしく身構えられてる感じ。
素直にこないだ見たことの話と嫉妬してしまったことを告げた。
「・・・あやちゃん、みりさんの事は大好き。でもあやちゃんは特別なの。私の特別はあやちゃん以外ありえないの。
一筋の涙が貴美の頬を伝う。頬に手を当て、涙を拭う
「私も。貴美だけ特別。・・・抱きしめてもいい?」
こくんと頷いた貴美を思いっきり抱きしめる
「あやちゃん、ごめんね」
おずおずと背中に手をまわして抱き締め返してくれる
「・・・ひとりでも考えれば解決できると思ったの」
「悩んでるなら言ってよ。さゆみちゃんじゃなくて私に。一緒に悩もう。全部教えてよ貴美を」
仲直りのキスは涙の味がした。
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