酒は飲んでもなんとやら
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「お疲れ様でしたー」
全国ツアーも無事終わって戻ってきた月組生
大劇場の近くのいつもの店で打ち上げ
貴美さんは今公演で相手役のような存在で、ショーも組ませて貰って。
入学前からその美しさと凛とした姿に憧れの存在だった貴美さんと一緒に作品を作る日がくるなんて本当に夢のような日々だった。
男役の私が娘役の貴美さんに憧れるなんて不思議な話だけど。
隣の貴美さんは今日も綺麗。
横から盗み見るフェイスラインもきゅっと上がった唇も美しい。
横の席に座る為にそわそわしながらお店に入って、付かず離れずで自然に隣を確保できたと思う。
でも中々話しかけれなくて無駄に向かい側のありちゃんとかと盛り上がってしまった。
今日は沢山話するって決めてたのに。
「んー」
「どうしたんですか、貴美さん」
「ゆのちゃん、頭が重い」
私と反対側隣の風間の肩にこてんと乗せた貴美さん。
えっ、こっちに来てくれたら良かったのに。
相手役は私だったんですよ?なんて内心がっかりしながら気にしないふりしつつ横目で様子を伺う。
「貴美さん、もしかしてこれ飲んだんですか?」
貴美さんに空のグラスを指してびっくりしてる風間をよそに当の本人はゆるい返事を返した。
「美味しかった」
「これ度数高いんですよ」
「でも甘かったよ?」
なんですかその返事。可愛すぎるでしょう。
いやいや、甘いお酒ほど危険なんですよ。
というかお酒弱いんじゃなかったですっけ?
心の中で独り言が一気に増えて貴美さんが心配で気が気じゃない。
1人悶々と考えて居たら腕にぎゅっと温かい感触。
「れーこちゃん飲んでる?」
貴美さんの腕が私の腕に。
い、が伸ばし棒みたいな甘い言い方でどきっとする。
そして少し下から見上げる潤んだ瞳。
誘ってるんですか。唇奪ってもいいって事ですか。
「私もれーこちゃんと同じの飲む」
「いやこれワインなんで。大人しくジュースにしてください」
「わ。れーこちゃんまで意地悪する」
店員さんを呼ぼうと上げた手を掴んで下げれば
ほっぺたを膨らませて抗議する貴美さん
いつもの大人っぽい姿からは想像もできない位いっこいっこが可愛すぎて困る。勝手に頼んだオレンジジュースを手渡せば不満そうにじっと自分のグラスを見つめる貴美さんを無視してこつんと私のグラスをつける。
「今公演中は大変お世話になりました」
「こちらこそありがとう」
「貴美さんと一緒に組むの夢だったので嬉しかったです」
「何ていい子なの」
目をキラキラさせて喜んでくれてるけどあんまり本気にされてなさそう。
知ってますか、私達を見た下級生やファンの方々の反応。
美男美女で大人なカップルでお似合いだって。
美しいとか言われるの好きじゃない私が嬉しくなる位みんな私達を素敵だって綺麗だって思ってくれてるんですよ。
「たまちゃん、れいこちゃんにワイン一杯」
「え?まだ残ってるんで大丈夫です」
珠城さんに追加オーダーした貴美さんは私の目の前のグラスを手に取りぐっと飲み干してしまった。
「ちょ、貴美さん」
「んー。大人な味」
眉間に皺を寄せて苦そうな顔してるけど、唇がしっとりと濡れていて思わず息を呑む。
今あなたとキスしたらワイン味なんですかね。
って何考えてるんだ、ほんと。私まで酔ってしまったのかもしれない。
「ふふっ。れいこちゃんはすごくかっこよかったよ」
「ありがとうございます」
「わー。全然気持ちこもってないー」
「こもってますって」
「綺麗な顔して冷たい」
「はいはい、なんとでも言ってください」
ちょっと面倒くさいこのやり取りさえも愛おしく思えるんだから不思議な人。
「よし、今日は一緒に帰ろ。電車でお話ししながら」
「れいこの家、貴美さん家と反対だから帰れませんって」
「電車がダメなの?じゃあ歩こ」
「そう言う問題じゃありません。我儘言わないで下さいよ」
「たまちゃんのけち」
全然噛み合ってないし、私の腕にしがみついて珠城さんに駄々こねる貴美さんがあまりに可愛くて、自ら持ち帰られようとしてくれてるならこのまま持って帰らせていただいてもばちは当たらないんじゃないかと思う。
結局引き剥がされた私達はそれぞれ別の人に捕まって話できないままお開きとなった。
やっと声をかけれたのは店の出口。
「本当にお疲れ様。気を付けてかえるんだよー」
にこにこしながら、ひらひらと手を振る貴美さんは完全に私と一緒に帰りたいって言った事も忘れてる。
あれだけ止めたのに結局結構飲んで完全に酔っ払ってるし。
「飲みすぎじゃないですか。大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫っ」
と言いつつ、歩き出した足元がおぼつかない貴美さんにそっと腰に手を回して支えながら並んで歩く。
ほんとに華奢な体してる。
「駅まで送ります」
「大丈夫よー。タクシーでバビューンと帰りますから」
「ばびゅーんて・・・。こんな時間に女の人1人とか危ないですから」
「れいこちゃんはこっち方向じゃないでしょ。私のことは気にしないで大丈夫よ」
「さっきは私と帰るって言ったじゃないですか」
私との約束は?
お話しもっとしたいのに。
貴美さんはそうでもなかったのだろうか。
「ほわっ」
つまづいた貴美さんの片手を咄嗟に掴めば辛うじてこけはしなかったものの、しゃがみこんでしまったので正面に同じ目線にしゃがむ。
「だから飲みすぎなんですって。酔っ払いー」
「酔っ払いじゃないよー」
この期に及んでまだそんな事を言って頬を膨らましてる貴美さんから目が離せなくなって吸い込まれるようにキスしてしまった。
「無防備」
「いやいや全然無防備じゃないよー」
怒られるかと思ったら、キスされたのに脳天気な貴美さんが恨めしくなった。
私はこんなにドキドキしてるのに貴美さんは何ともないんだ。
「もう怒った」
「れいこはすぐ怒るー」
いつも呼び捨てとかしないくせに完全に子供扱いされていて悔しい。
へらへらとする貴美さんの手を引いて立たせて足速に歩き出す。
「ちょっ。速いよー」
ぴたっと止まった私の背中にぼふっとぶつかる貴美さん
空いてる手で背中をぽかぽか叩かれるけど貴美さんの方は向かず前を見たまま握った手を少し強める。
「今日は帰しませんから。貴美さんが悪いんですからね」
「はいはい。そんな事言ってないで帰るよー。駅まで見送ってあげるから」
「帰さないって言ったじゃないですか。貴美さん家でもいいですけど」
「ああ!家で飲み直す?明日から少しお休みだしね」
本当この人は分かってない。
もう口実は何でもいいと思った
「・・・貴美さん家で飲み直しましょう」
「よし行こう!」
酔ってる人をだまして上がり込むみたいでちょっとだけ罪悪感だけど貴美さんが悪いんだから。
タクシーの車内で貴美さんは彼女なんじゃないかって錯覚するくらいの密着具合で、腕を組んだまま肩に頭を乗せてきて可愛いなんてものじゃない。
たどり着いた貴美さん家。
シンプルな家具に囲まれた綺麗なお家
憧れの人の家に上がり込んでいる現実をまだ受け入れられてない。
「あっという間だったねー。本当」
「これからもそばに居たいって言ったらどうします?」
「まあ、同じ組だしね。これからもそばって言えばそばよね」
ふふっと笑うけどそういう意味じゃないんだけどな。
ほんと、分かってくれない。
こんなに想ってるのに。
「泊まってくよね?着替え用意するね」
「ありがとうございます」
え、泊まってもいいんですか。
こんなにもあっさり家に上がり込んだ上にお泊まりまで。
どうしようこれから一晩二人っきり。
シャワー借りてさっぱり化粧も落として借りた部屋着でリビングに戻ればソファーにぐったりと寄りかかった貴美さんが微睡んでいた。
貴重な光景。
「お風呂ありがとうございました」
「んー。うん、どういたしまして。ごめん、飲み直すんだったね」
目を擦りながら起き上がりキッチンへ消えていった。
「はい、れいこちゃんこれどうぞ」
「飲めないのにお酒とか置いてあるんですか」
「多少は飲めるもん。それに同期とか飲める子多いから」
「へぇ」
差し出されたお酒とグラス。
みんな飲んで泊まるのかなここに。
「なんか軽く作ろうか」
結構お腹いっぱいではあるけどまだゆっくり飲めそうだし貴美さんの手料理なら入る気がする。
「お願いします」
キッチンに立つ貴美さんの周りをうろうろしてたらお座りって言われたので仕方なくソファーに座って、付けてくれていたスカイステージを眺める。
しばらくは眺めてたんだけどやっぱり気になっちゃってキッチンに戻って後ろから貴美さんにくっついた。
「んー?どした?飽きた?」
「飽きました。構ってください」
「構ってちゃんなの」
「かまって」
抱きしめたまま首に顔を埋めればくすぐったそうに肩をすくめた。
上半身だけこちらを向いて
「はい、あーん」
「あーん」
唇に添えられたチーズを貴美さんの指ごと咥える
「美味しい」
「ちょっ」
ちゅっと音を立てて唇を離せば真っ赤な顔してる。
可愛い。
「よし、これ開けちゃお」
おつまみも完成し、リビングのローテーブルの前に並んで座った私たち。
スパークリングの栓がすぽんと抜ける音と共に溢れ出た中身。
「わあっ」
「ちょっ」
貴美さんのTシャツはびしゃびしゃで下着まで透けている。
「ちょっ、風邪引いちゃうからすぐ脱いで」
「ひゃっ、冷たいよ」
慌ててシャツを脱がせれば可愛い下着が目に毒。
白いお肌にふわふわの胸に思わず息を呑む。
「そんなに見ないでっ」
「あ、ごめんなさい」
恥ずかしそうに向こう側向いてブラジャーのフックに手をかける様をじっと見つめる。
フックが外れた瞬間、私の中のストッパーも外れてしまったようで思わず後ろから抱きしめる。
「ちょっ、れいこちゃんっ」
「身体冷たい。温めてあげますよ」
「んっ」
そのまま柔らかそうな胸に手を添える。
柔らかい。想像以上に。
ゆるく手を動かせば感じたのか眉間に皺がよる。
それさえも愛おしい。
「もっと温めて欲しくないですか」
「れいこちゃん」
「どうです?」
「あたためて」
抱き上げてベットルームに移動してそっと降ろす。
上から貴美さんを見下ろしている今が信じられない。
本当にこれから貴美さんを・・・。
お酒がかかったところが冷たくて気持ちいい。改めて胸にそっと触れる。
「柔らかい」
「ん、れいこちゃんの手あったかい」
すべすべで吸い付くような肌。
「れいこちゃんも脱いで?」
「脱がせてください」
服の裾に手をかけた。
もう理性はかなり限界を迎えている。
しかし冷静な部分を失ってはいけないと深呼吸する。
「わー。れいこちゃんのお肌すべすべ」
「ちょっ、あんまり煽らないで」
お腹のあたりを撫でられる。
本人は自覚なしにやってるみたいだけどこの人の手が触れてるってだけで頭がどうにかなりそう。
「ね、ぎゅってして」
「そのまま抱かれる覚悟あるんですよね」
「れいこちゃん」
抱きしめた私の首に腕を回してきた貴美さん。
触れてる全ての部分に意識が集中してしまう。
温め合うのに時間はかからなかった。
「おはよう」
「んっ。おは・・・え?」
見開かれた目には困惑の色が見える。
「えと・・・何でれいこちゃんがいるのかな」
「え・・・まさか覚えてないんですか」
「ごめっ。全然」
「ひどい。でも体は覚えてるはずですから体に聞いたら早いですよ」
忘れるなんてさせない。
私とあんな事しといて自分だけ忘れるなんて許さない。
ふつふつと湧き上がる怒りを抑えきれなかった。
「やあっ。何するっ」
「思い出させてあげます」
起き上がり貴美さんを組み敷いて、首筋に口付ける。
裸だから襲うなんて簡単なんですよ。
「ほら。体は覚えてますよ。あなたが誘ってきたんですからね」
「ああっ。待っ・・・」
まだこの状況についてこれてない貴美さんの足の間に入り込み逃げれないようにして、追い打ちをかけるように動かす指を速める。
「だっ・・め。あぁっ」
「可愛い。でも昨日の夜はもっと素直でしたよ」
「れいこちゃっ、やめっ。お願いっ」
一生懸命押し返そうとしてるけど力なんて入ってなくて
もう目に涙が溜まって限界そうな貴美さん
その息遣いも私を掻き立ててるって分からないんですか。
「れいこ」
「えっ?」
「昨日は呼び捨てで呼んでくれました。本当の恋人みたいに好きだって言ってくれました」
さっきから貴美さんの中がぎゅうぎゅうに締め付けてきてもう限界なの分かってるけど
「良いの間違いでしょ。ちゃんとイかせてって言えたらイかせてあげてますよ」
「やっ。むりぃっ」
首を左右に振る。ふーん、なら止めちゃいますからね。
ぴたっと指を止める。
代わりに身体中に音を立てながらキスする。
唇を落とす度に反応する身体が愛おしくてたまらない。
もっと私を感じて。
「んんっ。お願いっ」
「どうしたんですか」
「つっ・・・。れいこっもう無理ぃかせ・・・てえっ」
貴美さんの頬を伝う涙を舐め取り
一気に攻める
余裕ぶってるけど私も結構限界
貴美さんにはもうちょっと頑張ってもらうしかない
散々責めて私が満足する頃にはぐったりとしてしまった。
「どこまで覚えてるんですか?」
腕枕しながら聞けばしばし考え込んだ後、顔が真っ赤に。
なんか思い出したかな。
「道・・・で。あの、ホントにこれ夢だったら申し訳ないんだけど」
「なに?」
私としたこと全て思い出させたい。
そして自覚させたい。
「キス・・・したりした?」
「した」
悪びれもせずに答えた私に目がまん丸
それ位で顔真っ赤とか可愛すぎですよ。
「何でっ・・・」
「貴美さん隙がありすぎ。私ばっかドキドキして何ともなさそうだったからムカつきました」
「いやすごくびっくりしたの。でも挨拶的な感じかなと・・・」
「そんな軽くないですよ」
「分かってるけど、理由なんて考えつかないもん。 そんな期待するなんておこがましいよ」
私がどれだけ頑張ったと思ってるんですか。
「期待してよ。結構頑張ったんですから。まさか挨拶的な感じで誰かにそんな事されたことが?」
「いやっ。そのっ」
「へー。初めてじゃなかったんだ」
「幻滅した?」
「うん」
タオルケットをきゅっと握ってしゅんとした後背中を向けてしまった貴美さん。
この人の行動はいちいちぐっとくる。
耐えられず腰に手を回して抱き寄せる。
「本気じゃないのに貴美さんに触るとかそいつを軽蔑します」
「え?」
「貴美さんは大体隙がありすぎるんです。もっと自覚しないと」
「ごめんなさい」
「じゃ、今日から私の彼女になってください。必ず守ってみせます」
「え?」
「私じゃもの足りませんか?」
首をぶんぶんと振る貴美さんの耳は真っ赤でそっと唇を寄せた
じゃあもう一回いいですよね
え?もう無理っ
大丈夫、だって明日もお休みじゃないですか
全国ツアーも無事終わって戻ってきた月組生
大劇場の近くのいつもの店で打ち上げ
貴美さんは今公演で相手役のような存在で、ショーも組ませて貰って。
入学前からその美しさと凛とした姿に憧れの存在だった貴美さんと一緒に作品を作る日がくるなんて本当に夢のような日々だった。
男役の私が娘役の貴美さんに憧れるなんて不思議な話だけど。
隣の貴美さんは今日も綺麗。
横から盗み見るフェイスラインもきゅっと上がった唇も美しい。
横の席に座る為にそわそわしながらお店に入って、付かず離れずで自然に隣を確保できたと思う。
でも中々話しかけれなくて無駄に向かい側のありちゃんとかと盛り上がってしまった。
今日は沢山話するって決めてたのに。
「んー」
「どうしたんですか、貴美さん」
「ゆのちゃん、頭が重い」
私と反対側隣の風間の肩にこてんと乗せた貴美さん。
えっ、こっちに来てくれたら良かったのに。
相手役は私だったんですよ?なんて内心がっかりしながら気にしないふりしつつ横目で様子を伺う。
「貴美さん、もしかしてこれ飲んだんですか?」
貴美さんに空のグラスを指してびっくりしてる風間をよそに当の本人はゆるい返事を返した。
「美味しかった」
「これ度数高いんですよ」
「でも甘かったよ?」
なんですかその返事。可愛すぎるでしょう。
いやいや、甘いお酒ほど危険なんですよ。
というかお酒弱いんじゃなかったですっけ?
心の中で独り言が一気に増えて貴美さんが心配で気が気じゃない。
1人悶々と考えて居たら腕にぎゅっと温かい感触。
「れーこちゃん飲んでる?」
貴美さんの腕が私の腕に。
い、が伸ばし棒みたいな甘い言い方でどきっとする。
そして少し下から見上げる潤んだ瞳。
誘ってるんですか。唇奪ってもいいって事ですか。
「私もれーこちゃんと同じの飲む」
「いやこれワインなんで。大人しくジュースにしてください」
「わ。れーこちゃんまで意地悪する」
店員さんを呼ぼうと上げた手を掴んで下げれば
ほっぺたを膨らませて抗議する貴美さん
いつもの大人っぽい姿からは想像もできない位いっこいっこが可愛すぎて困る。勝手に頼んだオレンジジュースを手渡せば不満そうにじっと自分のグラスを見つめる貴美さんを無視してこつんと私のグラスをつける。
「今公演中は大変お世話になりました」
「こちらこそありがとう」
「貴美さんと一緒に組むの夢だったので嬉しかったです」
「何ていい子なの」
目をキラキラさせて喜んでくれてるけどあんまり本気にされてなさそう。
知ってますか、私達を見た下級生やファンの方々の反応。
美男美女で大人なカップルでお似合いだって。
美しいとか言われるの好きじゃない私が嬉しくなる位みんな私達を素敵だって綺麗だって思ってくれてるんですよ。
「たまちゃん、れいこちゃんにワイン一杯」
「え?まだ残ってるんで大丈夫です」
珠城さんに追加オーダーした貴美さんは私の目の前のグラスを手に取りぐっと飲み干してしまった。
「ちょ、貴美さん」
「んー。大人な味」
眉間に皺を寄せて苦そうな顔してるけど、唇がしっとりと濡れていて思わず息を呑む。
今あなたとキスしたらワイン味なんですかね。
って何考えてるんだ、ほんと。私まで酔ってしまったのかもしれない。
「ふふっ。れいこちゃんはすごくかっこよかったよ」
「ありがとうございます」
「わー。全然気持ちこもってないー」
「こもってますって」
「綺麗な顔して冷たい」
「はいはい、なんとでも言ってください」
ちょっと面倒くさいこのやり取りさえも愛おしく思えるんだから不思議な人。
「よし、今日は一緒に帰ろ。電車でお話ししながら」
「れいこの家、貴美さん家と反対だから帰れませんって」
「電車がダメなの?じゃあ歩こ」
「そう言う問題じゃありません。我儘言わないで下さいよ」
「たまちゃんのけち」
全然噛み合ってないし、私の腕にしがみついて珠城さんに駄々こねる貴美さんがあまりに可愛くて、自ら持ち帰られようとしてくれてるならこのまま持って帰らせていただいてもばちは当たらないんじゃないかと思う。
結局引き剥がされた私達はそれぞれ別の人に捕まって話できないままお開きとなった。
やっと声をかけれたのは店の出口。
「本当にお疲れ様。気を付けてかえるんだよー」
にこにこしながら、ひらひらと手を振る貴美さんは完全に私と一緒に帰りたいって言った事も忘れてる。
あれだけ止めたのに結局結構飲んで完全に酔っ払ってるし。
「飲みすぎじゃないですか。大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫っ」
と言いつつ、歩き出した足元がおぼつかない貴美さんにそっと腰に手を回して支えながら並んで歩く。
ほんとに華奢な体してる。
「駅まで送ります」
「大丈夫よー。タクシーでバビューンと帰りますから」
「ばびゅーんて・・・。こんな時間に女の人1人とか危ないですから」
「れいこちゃんはこっち方向じゃないでしょ。私のことは気にしないで大丈夫よ」
「さっきは私と帰るって言ったじゃないですか」
私との約束は?
お話しもっとしたいのに。
貴美さんはそうでもなかったのだろうか。
「ほわっ」
つまづいた貴美さんの片手を咄嗟に掴めば辛うじてこけはしなかったものの、しゃがみこんでしまったので正面に同じ目線にしゃがむ。
「だから飲みすぎなんですって。酔っ払いー」
「酔っ払いじゃないよー」
この期に及んでまだそんな事を言って頬を膨らましてる貴美さんから目が離せなくなって吸い込まれるようにキスしてしまった。
「無防備」
「いやいや全然無防備じゃないよー」
怒られるかと思ったら、キスされたのに脳天気な貴美さんが恨めしくなった。
私はこんなにドキドキしてるのに貴美さんは何ともないんだ。
「もう怒った」
「れいこはすぐ怒るー」
いつも呼び捨てとかしないくせに完全に子供扱いされていて悔しい。
へらへらとする貴美さんの手を引いて立たせて足速に歩き出す。
「ちょっ。速いよー」
ぴたっと止まった私の背中にぼふっとぶつかる貴美さん
空いてる手で背中をぽかぽか叩かれるけど貴美さんの方は向かず前を見たまま握った手を少し強める。
「今日は帰しませんから。貴美さんが悪いんですからね」
「はいはい。そんな事言ってないで帰るよー。駅まで見送ってあげるから」
「帰さないって言ったじゃないですか。貴美さん家でもいいですけど」
「ああ!家で飲み直す?明日から少しお休みだしね」
本当この人は分かってない。
もう口実は何でもいいと思った
「・・・貴美さん家で飲み直しましょう」
「よし行こう!」
酔ってる人をだまして上がり込むみたいでちょっとだけ罪悪感だけど貴美さんが悪いんだから。
タクシーの車内で貴美さんは彼女なんじゃないかって錯覚するくらいの密着具合で、腕を組んだまま肩に頭を乗せてきて可愛いなんてものじゃない。
たどり着いた貴美さん家。
シンプルな家具に囲まれた綺麗なお家
憧れの人の家に上がり込んでいる現実をまだ受け入れられてない。
「あっという間だったねー。本当」
「これからもそばに居たいって言ったらどうします?」
「まあ、同じ組だしね。これからもそばって言えばそばよね」
ふふっと笑うけどそういう意味じゃないんだけどな。
ほんと、分かってくれない。
こんなに想ってるのに。
「泊まってくよね?着替え用意するね」
「ありがとうございます」
え、泊まってもいいんですか。
こんなにもあっさり家に上がり込んだ上にお泊まりまで。
どうしようこれから一晩二人っきり。
シャワー借りてさっぱり化粧も落として借りた部屋着でリビングに戻ればソファーにぐったりと寄りかかった貴美さんが微睡んでいた。
貴重な光景。
「お風呂ありがとうございました」
「んー。うん、どういたしまして。ごめん、飲み直すんだったね」
目を擦りながら起き上がりキッチンへ消えていった。
「はい、れいこちゃんこれどうぞ」
「飲めないのにお酒とか置いてあるんですか」
「多少は飲めるもん。それに同期とか飲める子多いから」
「へぇ」
差し出されたお酒とグラス。
みんな飲んで泊まるのかなここに。
「なんか軽く作ろうか」
結構お腹いっぱいではあるけどまだゆっくり飲めそうだし貴美さんの手料理なら入る気がする。
「お願いします」
キッチンに立つ貴美さんの周りをうろうろしてたらお座りって言われたので仕方なくソファーに座って、付けてくれていたスカイステージを眺める。
しばらくは眺めてたんだけどやっぱり気になっちゃってキッチンに戻って後ろから貴美さんにくっついた。
「んー?どした?飽きた?」
「飽きました。構ってください」
「構ってちゃんなの」
「かまって」
抱きしめたまま首に顔を埋めればくすぐったそうに肩をすくめた。
上半身だけこちらを向いて
「はい、あーん」
「あーん」
唇に添えられたチーズを貴美さんの指ごと咥える
「美味しい」
「ちょっ」
ちゅっと音を立てて唇を離せば真っ赤な顔してる。
可愛い。
「よし、これ開けちゃお」
おつまみも完成し、リビングのローテーブルの前に並んで座った私たち。
スパークリングの栓がすぽんと抜ける音と共に溢れ出た中身。
「わあっ」
「ちょっ」
貴美さんのTシャツはびしゃびしゃで下着まで透けている。
「ちょっ、風邪引いちゃうからすぐ脱いで」
「ひゃっ、冷たいよ」
慌ててシャツを脱がせれば可愛い下着が目に毒。
白いお肌にふわふわの胸に思わず息を呑む。
「そんなに見ないでっ」
「あ、ごめんなさい」
恥ずかしそうに向こう側向いてブラジャーのフックに手をかける様をじっと見つめる。
フックが外れた瞬間、私の中のストッパーも外れてしまったようで思わず後ろから抱きしめる。
「ちょっ、れいこちゃんっ」
「身体冷たい。温めてあげますよ」
「んっ」
そのまま柔らかそうな胸に手を添える。
柔らかい。想像以上に。
ゆるく手を動かせば感じたのか眉間に皺がよる。
それさえも愛おしい。
「もっと温めて欲しくないですか」
「れいこちゃん」
「どうです?」
「あたためて」
抱き上げてベットルームに移動してそっと降ろす。
上から貴美さんを見下ろしている今が信じられない。
本当にこれから貴美さんを・・・。
お酒がかかったところが冷たくて気持ちいい。改めて胸にそっと触れる。
「柔らかい」
「ん、れいこちゃんの手あったかい」
すべすべで吸い付くような肌。
「れいこちゃんも脱いで?」
「脱がせてください」
服の裾に手をかけた。
もう理性はかなり限界を迎えている。
しかし冷静な部分を失ってはいけないと深呼吸する。
「わー。れいこちゃんのお肌すべすべ」
「ちょっ、あんまり煽らないで」
お腹のあたりを撫でられる。
本人は自覚なしにやってるみたいだけどこの人の手が触れてるってだけで頭がどうにかなりそう。
「ね、ぎゅってして」
「そのまま抱かれる覚悟あるんですよね」
「れいこちゃん」
抱きしめた私の首に腕を回してきた貴美さん。
触れてる全ての部分に意識が集中してしまう。
温め合うのに時間はかからなかった。
「おはよう」
「んっ。おは・・・え?」
見開かれた目には困惑の色が見える。
「えと・・・何でれいこちゃんがいるのかな」
「え・・・まさか覚えてないんですか」
「ごめっ。全然」
「ひどい。でも体は覚えてるはずですから体に聞いたら早いですよ」
忘れるなんてさせない。
私とあんな事しといて自分だけ忘れるなんて許さない。
ふつふつと湧き上がる怒りを抑えきれなかった。
「やあっ。何するっ」
「思い出させてあげます」
起き上がり貴美さんを組み敷いて、首筋に口付ける。
裸だから襲うなんて簡単なんですよ。
「ほら。体は覚えてますよ。あなたが誘ってきたんですからね」
「ああっ。待っ・・・」
まだこの状況についてこれてない貴美さんの足の間に入り込み逃げれないようにして、追い打ちをかけるように動かす指を速める。
「だっ・・め。あぁっ」
「可愛い。でも昨日の夜はもっと素直でしたよ」
「れいこちゃっ、やめっ。お願いっ」
一生懸命押し返そうとしてるけど力なんて入ってなくて
もう目に涙が溜まって限界そうな貴美さん
その息遣いも私を掻き立ててるって分からないんですか。
「れいこ」
「えっ?」
「昨日は呼び捨てで呼んでくれました。本当の恋人みたいに好きだって言ってくれました」
さっきから貴美さんの中がぎゅうぎゅうに締め付けてきてもう限界なの分かってるけど
「良いの間違いでしょ。ちゃんとイかせてって言えたらイかせてあげてますよ」
「やっ。むりぃっ」
首を左右に振る。ふーん、なら止めちゃいますからね。
ぴたっと指を止める。
代わりに身体中に音を立てながらキスする。
唇を落とす度に反応する身体が愛おしくてたまらない。
もっと私を感じて。
「んんっ。お願いっ」
「どうしたんですか」
「つっ・・・。れいこっもう無理ぃかせ・・・てえっ」
貴美さんの頬を伝う涙を舐め取り
一気に攻める
余裕ぶってるけど私も結構限界
貴美さんにはもうちょっと頑張ってもらうしかない
散々責めて私が満足する頃にはぐったりとしてしまった。
「どこまで覚えてるんですか?」
腕枕しながら聞けばしばし考え込んだ後、顔が真っ赤に。
なんか思い出したかな。
「道・・・で。あの、ホントにこれ夢だったら申し訳ないんだけど」
「なに?」
私としたこと全て思い出させたい。
そして自覚させたい。
「キス・・・したりした?」
「した」
悪びれもせずに答えた私に目がまん丸
それ位で顔真っ赤とか可愛すぎですよ。
「何でっ・・・」
「貴美さん隙がありすぎ。私ばっかドキドキして何ともなさそうだったからムカつきました」
「いやすごくびっくりしたの。でも挨拶的な感じかなと・・・」
「そんな軽くないですよ」
「分かってるけど、理由なんて考えつかないもん。 そんな期待するなんておこがましいよ」
私がどれだけ頑張ったと思ってるんですか。
「期待してよ。結構頑張ったんですから。まさか挨拶的な感じで誰かにそんな事されたことが?」
「いやっ。そのっ」
「へー。初めてじゃなかったんだ」
「幻滅した?」
「うん」
タオルケットをきゅっと握ってしゅんとした後背中を向けてしまった貴美さん。
この人の行動はいちいちぐっとくる。
耐えられず腰に手を回して抱き寄せる。
「本気じゃないのに貴美さんに触るとかそいつを軽蔑します」
「え?」
「貴美さんは大体隙がありすぎるんです。もっと自覚しないと」
「ごめんなさい」
「じゃ、今日から私の彼女になってください。必ず守ってみせます」
「え?」
「私じゃもの足りませんか?」
首をぶんぶんと振る貴美さんの耳は真っ赤でそっと唇を寄せた
じゃあもう一回いいですよね
え?もう無理っ
大丈夫、だって明日もお休みじゃないですか
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