K.TUKISHIRO
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「一緒に見ましょう」
「うん」
次公演の参考動画を椅子を並べて座って画面を眺める。
今回同じシーンがある貴美さん。
お稽古終わりに一緒に見る約束をしていたから今日のお稽古は張り切って臨めた。
「もうちょっとこっちに寄った方が見やすくないですか」
「ありがとう」
椅子を引き寄せれば貴美さんの良い香りが鼻をくすぐって意識がそちらに向いてしまう。
近距離でどきどさせたいなんて思っていたけど結局どきどきしてしまうのはこちらの方で向こうは何も気にさえしてない。
そうはいっても動画が始まればそちらに集中できていたんだけど内容がなかなか難しくてふと貴美さんの方に意識がいく。
「んー」
「難しいねぇ」
最初首だけだったのがどんどん体が傾いちゃってこっちに近づいてるのが視界の端で確認できる。
集中できないんですけど。
このままじゃ全然だめだっ。全然映像に気持ちがいかなくて
意を決して貴美さんの方を向いた瞬間左腕にこつんとぶつかる感覚がして貴美さんの頭頂部が見えた。
「貴美さん?」
どうにか体制は保ってるものの、返事がないという事は・・・寝ちゃってる?
そっと覗き込めばしっかり閉じられた瞼。
「え、なに。かわいい」
思わず素直な感想が漏れた。
「ん、れこちゃ」
子供がお母さんに甘えるみたいに腕をつかんでぐりぐりと額を押し当ててきたので思わず向き直って正面から抱きしめた。
ふふっという笑い声とぎゅっと抱きしめ返されてちょっと動揺しちゃったけど嬉しくて抱きしめる力を強めてしまった。
なんだか最近疲れてるんだろうなっていうのを感じてたから、ちょっとでも気が抜ける相手になれてるなら嬉しい
「あれ?」
「しー」
唇に人差し指を当てて通りかかった風間に合図する。
抜き足差し足しながら私たちの様子を覗く風間。
「役得ですね。れいこさん」
「ふふっ」
「ん・・・」
あれ?なんだか。
「貴美さん?」
「ん、や」
様子を見たくて腕を緩めたけどいやいやと首を振って抱きついてくるから私の心臓はぎゅっと締め付けられて苦しい。
なにこれ、可愛すぎる。
「やだぁ」
「大丈夫ですよ、いますよちゃんと」
泣きそうな小さい声に
あやすように背中をとんとんと優しく叩けばふっと力が抜けた。
「なんですか、今の」
「風間は見ないで。今の記憶消して」
「いや、無理です。脳に刻まれました」
ひゃーっと男役らしからぬ声を出して頬を緩ませている。
確かに可愛すぎた。
風間には見せたくないほどに。
大人しく寝かせてあげようと風間を追い払い
しばらく静かな時間が流れた後、もぞもぞと動く気配がしたのですました顔で目覚めを待つ。
「ん、」
「おはようございます」
「あれっ。うわっ、ごめんね」
「最近お疲れみたいだったから。大丈夫ですか?」
「うん、なんだか良く眠れなくてね」
苦笑いしてる貴美さん
「ほっぺた型ついちゃいましたね」
「え?本当?恥ずかしい」
頬に手を伸ばせば恥ずかしそうにはにかむ姿が可愛すぎる。
「れいこちゃん?」
思わず見惚れてしまってて貴美さんが不思議そうに首を傾げていた。
***
最近よく眠くれなくてお稽古中に頭が痛くなったりとあまり良い状態じゃなくて。
改善しなくてはと色々試してみるものの中々どうにもできない日々。
この前は限界が来ちゃってれいこちゃんの腕の中が心地良すぎてぐっすり眠ってしまった。
あれかられいこちゃんが気にかけてくれててちゃんと寝れてるか聞いてくれたり、快眠情報を送ってくれるんだけどやっぱりよく眠れないのが現状。
今日のお稽古場もなんだか調子が思わしくなくてちなつの横にぴったりとくっついて寄りかかっている。
「病院行った方がいいんじゃない」
「んー、次のお休みに考える」
「体が一番だよ」
「うん。ありがとう、ちなつ」
自分の出番までみんなの動きを眺めているけど頭がぼーっとしてしまう。
もっと考えなきゃいけないことだってあるのに気持ちは焦るけど体と脳みそがついていってないかんじ。
どうしよう。
「ほら、れいこちゃんが呼んでるよ」
「へ?」
ちなつに肩揺らされてそう言われるまで全然気づかなかった。
慌てて声のした方を向けば隣にぴったりと座ってるれいこちゃん
えっ。いつからいたの。
「貴美さん、今日一緒に自主稽古大丈夫ですか?」
「あ、うん。大丈夫」
「じゃあよろしくお願いします」
微笑んで去っていく背中を見つめる。
今日は早めに帰ろうかなと思ってたんだけど自主稽古まで体力持つだろうか。
二人きりのお稽古場。
踊り終わった後、ちょっと立ち眩みがしたところを目敏いれいこちゃんは見逃さなかった。
「大丈夫?」
「ん、だい・・・じょ」
「貴美さんっ」
れいこちゃんの手が頬に伸びてきたのと同時に視界が歪んで、何とか返事はしたものの険しい顔のれいこちゃんが私の名前を呼んだのは分かったけど頭がぼーっとして力が入らない。
れいこちゃんに支えてもらってる、ふわふわした感覚に意識が遠のいていくのが分かった。
気づけばれいこちゃんの腕にいた。
「あれ、ごめっ。また私」
「貴美さん、ちゃんと寝れてないでしょう」
「えへへ。ごめん。またご迷惑をかけちゃって」
じとりとした視線が私を突き刺す。
精一杯おどけて言うけど、あの日から気にかけてくれてたれいこちゃんにちゃんと寝れてると嘘をついてたのだから怒られて当然だ。
「この前も今もぐっすりでしたよね。もしかして私なら不眠改善出来るのでは」
「え?」
「足りないのは抱き枕なんですよ、きっと」
「だきまくら?」
はたと閃いたように大きな目がきらきらと輝いて出てきたのがれいこちゃんが私の抱き枕になって快眠へ導いてくれるという案。
「いやいや、こないだから十分ご迷惑かけちゃってるから」
「取り敢えず今日うちに来てください」
「え、あの」
「よし、早めに切り上げましょう」
結局断りきれずにれいこちゃんのお家にお邪魔することになった。
快眠へ向けてお風呂に浸かることと軽いストレッチ等々色々調べてくれていて。
お風呂に浸かってれいこちゃんが髪の毛乾かしてくれて、その手が気持ち良くて既にほわほわしていた。
「はい。携帯はしまいましょうね」
アラームだけかけて伏せてテーブルに置く。
甲斐甲斐しくお世話してもらっちゃってどっちがお姉さんなんだか分からない感じになってる。
「そうだ。少しお話ししましょう」
「うん」
「今度は貴美さん家で快眠の会しましょうね」
家でちゃんと寝れるようになるためにと考えてくれてるれいこちゃんに感謝しかない。
ぎゅっと抱きしめられて心地良い温かさに微睡んでしまう。
「れこちゃん」
「んー?」
「あったかい。あり、が」
全部言い切る前に心地良すぎて瞼が重くなって口が言うことをきかなくなって
「おやすみなさい、貴美さん。いい夢が見れますように」
れいこちゃんの優しい声が遠くなる意識の中で聞こえた。
それかられいこちゃんは定期的に私の抱き枕になってくれて。
お陰でよく眠れるようになったんだけど、ここ最近逆にれいこちゃんの腕の中じゃないと眠れなくなってしまうという困った現象に悩まされている。なんて甘えてるんだ私は。
休憩時間とかちょっとしたタイミングでもぎゅっとしてもらって仮眠させてもらってるから中々調子が戻ってきた。
「休憩、休憩ー。さ、仮眠しに行かなきゃ」
「れいこさんすぐ貴美さんを連れて行っちゃってずるいです」
「あんな可愛い仕草みんなに見せれる訳がない」
「確かに。たまには代わってくださいよー」
「絶対やだ」
大劇場公演が終了して、次の公演はれいこちゃんと別グループ。
お稽古場も時間も違うから忙しいれいこちゃんに甘える訳にもいかないのでどうにかしなくては。
れいこちゃんといる時みたいにお風呂にちゃんと浸かってストレッチもしてってやってるけどなかなか思うように寝れない。
また前みたいに戻っちゃって不調へと転がり落ちていた。
「貴美さん」
「なあに?ゆのちゃん」
「どうぞ」
お稽古場のはじっこに座り込んでいた私の前にやってきたゆのちゃんはしゃがみ込んでどんとこい!と言わんばかりに腕を広げてくれる。
どうしたんだろうと首をかしげるけど、しばし考えて意味を理解する。
「私じゃだめですか?」
「そっ、そんな事ないよ」
眉を下げて子犬みたいなゆのちゃんの腕の中にそっと収まれば暖かい腕に包まれる
「え、貴美さんちっちゃーい」
「むー。ばかにしてー」
「そんな事ないですよー。可愛いって事です」
ぎゅぎゅっと優しく抱きしめてくれる。
れいこちゃんと会えなくてまた眠れない日々に舞い戻っていた私にはとても有難いお誘い。
「どうぞゆっくりお休みください」
「ありがとう」
「どういたしまして」
早速目を瞑ってみるけどなんでか眠れない。
何って言われてもうまく説明はできないんだけど、なんでだろうあったかいのは変わらないのに。
「眠れませんか?」
「ゆのちゃん」
「それが答えなんじゃないですか」
ゆのちゃんの優しい声に顔を上げれば綺麗な顔で微笑んでいる。
***
貴美さんがあまりよく眠れてないのは前にれいこさんに抱きしめられて眠ってらっしゃるのを目撃した時からわかってた。
でもこの前の大劇場ではなんだか調子良さそうで、れいこさんに聞き出した話ではお泊まりとかしてれいこさんが快眠へ導いておられるとのお話。
正直言って羨ましい。
私だって貴美さんの事大好きなのに。
れいこさんは海乃さんだけでなく貴美さんまでも手に入れるなんて。でも勝てない事くらい分かってる。
「好きって理屈じゃないですから」
「・・・大人になったね」
「子供扱いしないでください」
それは貴美さんに向けたようで私にも向けた言葉だったのかもしれない。
あまりにも眼中になさすぎて少し悔しくなったので貴美さんのおでこに唇を落とす。
「一回くらい許されるでしょう?」
「許される訳ないでしょ」
「やばっ」
腕の中で顔を真っ赤にしている貴美さんの心に少しでも私の好きが刻まれればいいと悪びれもせず言った言葉への返事
その声に背筋が凍った。
今日は遅くまで撮影のはずの声の主。
すっかり油断してしまっていた。
「でもれいこさんもしてました」
「え?」
空気が止まり、今度はれいこさんが慌てだしたのが分かった。
「なっ、何言ってんの。私がそんなハレンチなことするわけないでしょう」
「見ましたもん」
「大体、貴美さんも貴美さんです。誰でもいいんですか」
「えっ」
急に責任転嫁しだしたれいこさん。
「あなたの抱き枕は私だけでしょう」
「そっち?」
思わず声が出た。
れいこさんの鋭い視線が突き刺さるけど、だってそうじゃないですか。あなたは私のものとか言うのかと思いきや抱き枕止まりだなんて。
「え、じゃあれいこさんが抱き枕でいいなら私恋人がいいです」
「はあ?」
私の言葉に不満満点の声、さっきよりさらに険しいお顔になられて。
やっぱり抱き枕止まりじゃ嫌なんじゃないですか。
頬に手を当ててあわあわしてる貴美さんをおいてけぼりにして2人であーでもないこーでもないしてる。
「ちょっ、ちょっと待って」
『なんですか』
「一旦落ち着こう?」
貴美さんがいさめてくれたけどこのままでは終われない。
『どっちにしますか?』
「えっと・・・あの、」
「風間がいいんですか?」
「れいこさんがいいんですか?」
詰め寄った私達
ぷしゅーっと力が抜けるように崩れ落ちた貴美さん。
「風間、しばし休戦」
「はい。貴美さんの健康が一番です。でも負けません」
諦めるつもりだった。
だけどもう少しだけ足掻かせてください。
ちょっ、風間どいて
いやです、私もくっつきたい
2人して抱き合って何してるの
ちなつさん、2人じゃありません。間に貴美さんが居るんです
凄いね、サンドウィッチみたい
抱き枕は私だけで充分なんですけどね
れいこさんばっかりずるいです。私だって頑張れば
「うん」
次公演の参考動画を椅子を並べて座って画面を眺める。
今回同じシーンがある貴美さん。
お稽古終わりに一緒に見る約束をしていたから今日のお稽古は張り切って臨めた。
「もうちょっとこっちに寄った方が見やすくないですか」
「ありがとう」
椅子を引き寄せれば貴美さんの良い香りが鼻をくすぐって意識がそちらに向いてしまう。
近距離でどきどさせたいなんて思っていたけど結局どきどきしてしまうのはこちらの方で向こうは何も気にさえしてない。
そうはいっても動画が始まればそちらに集中できていたんだけど内容がなかなか難しくてふと貴美さんの方に意識がいく。
「んー」
「難しいねぇ」
最初首だけだったのがどんどん体が傾いちゃってこっちに近づいてるのが視界の端で確認できる。
集中できないんですけど。
このままじゃ全然だめだっ。全然映像に気持ちがいかなくて
意を決して貴美さんの方を向いた瞬間左腕にこつんとぶつかる感覚がして貴美さんの頭頂部が見えた。
「貴美さん?」
どうにか体制は保ってるものの、返事がないという事は・・・寝ちゃってる?
そっと覗き込めばしっかり閉じられた瞼。
「え、なに。かわいい」
思わず素直な感想が漏れた。
「ん、れこちゃ」
子供がお母さんに甘えるみたいに腕をつかんでぐりぐりと額を押し当ててきたので思わず向き直って正面から抱きしめた。
ふふっという笑い声とぎゅっと抱きしめ返されてちょっと動揺しちゃったけど嬉しくて抱きしめる力を強めてしまった。
なんだか最近疲れてるんだろうなっていうのを感じてたから、ちょっとでも気が抜ける相手になれてるなら嬉しい
「あれ?」
「しー」
唇に人差し指を当てて通りかかった風間に合図する。
抜き足差し足しながら私たちの様子を覗く風間。
「役得ですね。れいこさん」
「ふふっ」
「ん・・・」
あれ?なんだか。
「貴美さん?」
「ん、や」
様子を見たくて腕を緩めたけどいやいやと首を振って抱きついてくるから私の心臓はぎゅっと締め付けられて苦しい。
なにこれ、可愛すぎる。
「やだぁ」
「大丈夫ですよ、いますよちゃんと」
泣きそうな小さい声に
あやすように背中をとんとんと優しく叩けばふっと力が抜けた。
「なんですか、今の」
「風間は見ないで。今の記憶消して」
「いや、無理です。脳に刻まれました」
ひゃーっと男役らしからぬ声を出して頬を緩ませている。
確かに可愛すぎた。
風間には見せたくないほどに。
大人しく寝かせてあげようと風間を追い払い
しばらく静かな時間が流れた後、もぞもぞと動く気配がしたのですました顔で目覚めを待つ。
「ん、」
「おはようございます」
「あれっ。うわっ、ごめんね」
「最近お疲れみたいだったから。大丈夫ですか?」
「うん、なんだか良く眠れなくてね」
苦笑いしてる貴美さん
「ほっぺた型ついちゃいましたね」
「え?本当?恥ずかしい」
頬に手を伸ばせば恥ずかしそうにはにかむ姿が可愛すぎる。
「れいこちゃん?」
思わず見惚れてしまってて貴美さんが不思議そうに首を傾げていた。
***
最近よく眠くれなくてお稽古中に頭が痛くなったりとあまり良い状態じゃなくて。
改善しなくてはと色々試してみるものの中々どうにもできない日々。
この前は限界が来ちゃってれいこちゃんの腕の中が心地良すぎてぐっすり眠ってしまった。
あれかられいこちゃんが気にかけてくれててちゃんと寝れてるか聞いてくれたり、快眠情報を送ってくれるんだけどやっぱりよく眠れないのが現状。
今日のお稽古場もなんだか調子が思わしくなくてちなつの横にぴったりとくっついて寄りかかっている。
「病院行った方がいいんじゃない」
「んー、次のお休みに考える」
「体が一番だよ」
「うん。ありがとう、ちなつ」
自分の出番までみんなの動きを眺めているけど頭がぼーっとしてしまう。
もっと考えなきゃいけないことだってあるのに気持ちは焦るけど体と脳みそがついていってないかんじ。
どうしよう。
「ほら、れいこちゃんが呼んでるよ」
「へ?」
ちなつに肩揺らされてそう言われるまで全然気づかなかった。
慌てて声のした方を向けば隣にぴったりと座ってるれいこちゃん
えっ。いつからいたの。
「貴美さん、今日一緒に自主稽古大丈夫ですか?」
「あ、うん。大丈夫」
「じゃあよろしくお願いします」
微笑んで去っていく背中を見つめる。
今日は早めに帰ろうかなと思ってたんだけど自主稽古まで体力持つだろうか。
二人きりのお稽古場。
踊り終わった後、ちょっと立ち眩みがしたところを目敏いれいこちゃんは見逃さなかった。
「大丈夫?」
「ん、だい・・・じょ」
「貴美さんっ」
れいこちゃんの手が頬に伸びてきたのと同時に視界が歪んで、何とか返事はしたものの険しい顔のれいこちゃんが私の名前を呼んだのは分かったけど頭がぼーっとして力が入らない。
れいこちゃんに支えてもらってる、ふわふわした感覚に意識が遠のいていくのが分かった。
気づけばれいこちゃんの腕にいた。
「あれ、ごめっ。また私」
「貴美さん、ちゃんと寝れてないでしょう」
「えへへ。ごめん。またご迷惑をかけちゃって」
じとりとした視線が私を突き刺す。
精一杯おどけて言うけど、あの日から気にかけてくれてたれいこちゃんにちゃんと寝れてると嘘をついてたのだから怒られて当然だ。
「この前も今もぐっすりでしたよね。もしかして私なら不眠改善出来るのでは」
「え?」
「足りないのは抱き枕なんですよ、きっと」
「だきまくら?」
はたと閃いたように大きな目がきらきらと輝いて出てきたのがれいこちゃんが私の抱き枕になって快眠へ導いてくれるという案。
「いやいや、こないだから十分ご迷惑かけちゃってるから」
「取り敢えず今日うちに来てください」
「え、あの」
「よし、早めに切り上げましょう」
結局断りきれずにれいこちゃんのお家にお邪魔することになった。
快眠へ向けてお風呂に浸かることと軽いストレッチ等々色々調べてくれていて。
お風呂に浸かってれいこちゃんが髪の毛乾かしてくれて、その手が気持ち良くて既にほわほわしていた。
「はい。携帯はしまいましょうね」
アラームだけかけて伏せてテーブルに置く。
甲斐甲斐しくお世話してもらっちゃってどっちがお姉さんなんだか分からない感じになってる。
「そうだ。少しお話ししましょう」
「うん」
「今度は貴美さん家で快眠の会しましょうね」
家でちゃんと寝れるようになるためにと考えてくれてるれいこちゃんに感謝しかない。
ぎゅっと抱きしめられて心地良い温かさに微睡んでしまう。
「れこちゃん」
「んー?」
「あったかい。あり、が」
全部言い切る前に心地良すぎて瞼が重くなって口が言うことをきかなくなって
「おやすみなさい、貴美さん。いい夢が見れますように」
れいこちゃんの優しい声が遠くなる意識の中で聞こえた。
それかられいこちゃんは定期的に私の抱き枕になってくれて。
お陰でよく眠れるようになったんだけど、ここ最近逆にれいこちゃんの腕の中じゃないと眠れなくなってしまうという困った現象に悩まされている。なんて甘えてるんだ私は。
休憩時間とかちょっとしたタイミングでもぎゅっとしてもらって仮眠させてもらってるから中々調子が戻ってきた。
「休憩、休憩ー。さ、仮眠しに行かなきゃ」
「れいこさんすぐ貴美さんを連れて行っちゃってずるいです」
「あんな可愛い仕草みんなに見せれる訳がない」
「確かに。たまには代わってくださいよー」
「絶対やだ」
大劇場公演が終了して、次の公演はれいこちゃんと別グループ。
お稽古場も時間も違うから忙しいれいこちゃんに甘える訳にもいかないのでどうにかしなくては。
れいこちゃんといる時みたいにお風呂にちゃんと浸かってストレッチもしてってやってるけどなかなか思うように寝れない。
また前みたいに戻っちゃって不調へと転がり落ちていた。
「貴美さん」
「なあに?ゆのちゃん」
「どうぞ」
お稽古場のはじっこに座り込んでいた私の前にやってきたゆのちゃんはしゃがみ込んでどんとこい!と言わんばかりに腕を広げてくれる。
どうしたんだろうと首をかしげるけど、しばし考えて意味を理解する。
「私じゃだめですか?」
「そっ、そんな事ないよ」
眉を下げて子犬みたいなゆのちゃんの腕の中にそっと収まれば暖かい腕に包まれる
「え、貴美さんちっちゃーい」
「むー。ばかにしてー」
「そんな事ないですよー。可愛いって事です」
ぎゅぎゅっと優しく抱きしめてくれる。
れいこちゃんと会えなくてまた眠れない日々に舞い戻っていた私にはとても有難いお誘い。
「どうぞゆっくりお休みください」
「ありがとう」
「どういたしまして」
早速目を瞑ってみるけどなんでか眠れない。
何って言われてもうまく説明はできないんだけど、なんでだろうあったかいのは変わらないのに。
「眠れませんか?」
「ゆのちゃん」
「それが答えなんじゃないですか」
ゆのちゃんの優しい声に顔を上げれば綺麗な顔で微笑んでいる。
***
貴美さんがあまりよく眠れてないのは前にれいこさんに抱きしめられて眠ってらっしゃるのを目撃した時からわかってた。
でもこの前の大劇場ではなんだか調子良さそうで、れいこさんに聞き出した話ではお泊まりとかしてれいこさんが快眠へ導いておられるとのお話。
正直言って羨ましい。
私だって貴美さんの事大好きなのに。
れいこさんは海乃さんだけでなく貴美さんまでも手に入れるなんて。でも勝てない事くらい分かってる。
「好きって理屈じゃないですから」
「・・・大人になったね」
「子供扱いしないでください」
それは貴美さんに向けたようで私にも向けた言葉だったのかもしれない。
あまりにも眼中になさすぎて少し悔しくなったので貴美さんのおでこに唇を落とす。
「一回くらい許されるでしょう?」
「許される訳ないでしょ」
「やばっ」
腕の中で顔を真っ赤にしている貴美さんの心に少しでも私の好きが刻まれればいいと悪びれもせず言った言葉への返事
その声に背筋が凍った。
今日は遅くまで撮影のはずの声の主。
すっかり油断してしまっていた。
「でもれいこさんもしてました」
「え?」
空気が止まり、今度はれいこさんが慌てだしたのが分かった。
「なっ、何言ってんの。私がそんなハレンチなことするわけないでしょう」
「見ましたもん」
「大体、貴美さんも貴美さんです。誰でもいいんですか」
「えっ」
急に責任転嫁しだしたれいこさん。
「あなたの抱き枕は私だけでしょう」
「そっち?」
思わず声が出た。
れいこさんの鋭い視線が突き刺さるけど、だってそうじゃないですか。あなたは私のものとか言うのかと思いきや抱き枕止まりだなんて。
「え、じゃあれいこさんが抱き枕でいいなら私恋人がいいです」
「はあ?」
私の言葉に不満満点の声、さっきよりさらに険しいお顔になられて。
やっぱり抱き枕止まりじゃ嫌なんじゃないですか。
頬に手を当ててあわあわしてる貴美さんをおいてけぼりにして2人であーでもないこーでもないしてる。
「ちょっ、ちょっと待って」
『なんですか』
「一旦落ち着こう?」
貴美さんがいさめてくれたけどこのままでは終われない。
『どっちにしますか?』
「えっと・・・あの、」
「風間がいいんですか?」
「れいこさんがいいんですか?」
詰め寄った私達
ぷしゅーっと力が抜けるように崩れ落ちた貴美さん。
「風間、しばし休戦」
「はい。貴美さんの健康が一番です。でも負けません」
諦めるつもりだった。
だけどもう少しだけ足掻かせてください。
ちょっ、風間どいて
いやです、私もくっつきたい
2人して抱き合って何してるの
ちなつさん、2人じゃありません。間に貴美さんが居るんです
凄いね、サンドウィッチみたい
抱き枕は私だけで充分なんですけどね
れいこさんばっかりずるいです。私だって頑張れば