K.TUKISHIRO
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「れいこさん、今日もかっこいいですね」
「そうだね」
お稽古場、れいこちゃんと珠ちゃんの決闘シーン
椅子に座ってそれを見ている私の横に直前までお稽古場の真ん中でかっこよくお芝居していたありちゃんがにこにこしながら座ってきた。
席はいっぱい空いているというのに。
今回ありちゃんとお芝居、ショーともに組ませてもらうからなのかありちゃんはよく私のところに来てくれてなんでもない話とかよくする。
「あれ?貴美さん、髪飾りがちょっと歪んでます」
「え?本当?」
直そうと後頭部に手を伸ばした私より早くありちゃんの手が伸びて整えてくれた。そのスマートな所作に感心する。
「ありがとう」
「その髪飾りれいこさんからですか?」
「うん」
思わず顔が緩む。
お気に入りの髪飾り。
れいこちゃんが付き合って初めてプレゼントしてくれたもの。
この髪飾りをつけていればれいこちゃんと一緒にいるような気になって安心する。
「れいこさんが娘役さんと絡んでるシーンの時、決まってその髪飾り触ってるって気づいてます?」
にやっとした表情で発せられた言葉の内容にびっくりして顔が熱くなる。
そんな事してるの私。
「本当?」
「本当ですよ。だってその姿が可愛くて私が観察してますから」
いつものように天使のような笑顔を見せてくれるけど、完全に遊ばれている。
「上級生をからかうものではありません」
でこぴんをおみまいすればおでこをおさえて大袈裟に痛がるありちゃん
「貴美さんのいじわるー」
「ありちゃんが悪い」
ぷくっと頬を膨らませてみせれば、ありちゃんの右手が伸びてきて頬を掴まれぷしゅっと音を立ていとも簡単に潰されてしまった。
それを見てケラケラと笑うありちゃんに眉を顰める。
全く完全に遊ばれている。
そんなやり取りをしている間にれいこちゃん達のシーンは終わって先生からアドバイスをもらっているところだった。
席に戻ろうとしたれいこちゃんと目が合って微笑めば、微笑み返してくれてこちらにやってきた。
「お疲れ様」
差し出したタオルで汗を拭う姿さえも様になって思わず見惚れてしまう。
私の横にぴったりと座ったれいこちゃん。
「どうでした?」
「え?」
「さっきの私達のシーン」
いつもなら真剣に見てるんだけどありちゃんとあんなやり取りしてたから見損ねてしまった。
素直に見てなかったと言うしかないと口を開こうとした時、隣のありちゃんが身を乗り出して先に口を開いていた。
「私が質問とかしちゃったから貴美さんちゃんと見れて無かったかもしれません」
「あー。そっか。なら仕方ない」
別になんて事ないという感じの返事だったから拍子抜けしてしまった。
そこはちゃんと私を見といて下さいよとか言ってくれても良くない?
見てなかったことを棚に上げてこんなこと思うのもどうかと思うけど。
男役、月城かなとをれいこちゃんに当てはめるのは違うと思うけどもうちょっと何かお前は俺の物だ的なものがあってもいいのではなんて最近思っていたりする。
「私が貴美さんの髪飾り直してる時れいこさんに見られてた気がしたんですけど何も言われなかったですね」
こそっと耳打ちされ、れいこちゃんを横目にちらっと見るけど私の視線になんて気付くわけもなく真剣な眼差しで真ん中で踊ってるちなつを見ていた。
「貴美さーん」
「ありちゃん」
「ここなんですけどー」
全体稽古が終わって、何だかしっくりこないところがあるらしいありちゃんが台本片手にやってきた。
「ここですね、もっと角度的に斜めから入ったらいいんじゃないかなって思うんですけど」
ありちゃんの指差しているところは私とありちゃんが一緒に組んで踊るシーン
「ちょっとやってみようか」
「はい」
空き教室にやってきた私たちは早速そのシーンのそれぞれの意見を伝えていざやってみようとなった時
扉が開く音がして入ってきたのはれいこちゃんとちなつ
「あれ、貴美さんとありちゃん」
「あ、れいこさんにちなつさん」
「他のとこ埋まってて。一緒に使ってもいい?」
「もちろん」
今日はみんな残りそうだったもんな。
意見交換も終わった私達は音楽に合わせて踊り始める。
ひと通りやってみて気になったところを伝える。
「ばっといくより、見つめ合ってゆっくりいく方がいいんじゃないかなと思います。大人っぽい感じの方がいいですよね」
「そうだね、やってみよう」
踊っている途中にあるキスシーン。
頬に手を添えてゆっくりと近づいてくる綺麗な顔を見つめていたらそっと触れた柔らかい感覚
「へっ」
びっくりしたものの、体は音楽に合わせて動き続けて最後の決めポーズまできちんと踊り終わった後呆然と立ち尽くした。
「すみません。距離感が」
慌てた様子もなく眉を下げて微笑んだありちゃんにびっくりする。
そっか男役さんはこういうの馴れてるんだろう。
こういうこともあるって思ってはいたけど今までそんなこと経験しないままここまで来たからなんだか動揺してしまった。
「大丈夫」
れいこちゃんに見られていたら嫌だなって思って振り返ればじっとこちらを見ているれいこちゃん。
見られていた。鼓動が速くなる。
「ありちゃん、ああいいう時はこうやって」
立ち上がってこちらにきたれいこちゃんに身構えれば私を引き寄せてさっきのシーンを再現してくれる。
大きな手が私の頬を包んでゆっくりと近づく熱い視線
目があったまま、唇が触れる寸前で止まった。
恥ずかしくて息ができない。
「ここに手を添えておくといいよ」
「おー。分かりました、次からやってみます」
何も無かったかのように続く会話
れいこちゃんにはなんてことないんだ。
仕事上のことだから怒られるよりいいはずなのに、容認されてしまった
それがすごく切なかった。
もう少し自主稽古をして帰るという2人を残して私とありちゃんは先に帰宅の途に着いた。
明日はお休みだかられいこちゃんがうちにやってくる予定になっている。
久しぶりの一緒のお休み
れいこちゃんはお休みの日も撮影とか色々忙しいから。
帰ってきたらすぐご飯を食べれるように支度を始めた。
気が緩んでいたのか支度中に指を切ってしまい唇に指を当てた時に
さっきの自主稽古の事を思い出してしまった。
ありちゃんとキスしてしまった。
事故とはいえ、この罪悪感。
でもわざとじゃないし。駆け巡る邪念を払うように手を動かす
「れいこちゃんもこういう事あるのかな」
考えるだけで心が苦しくて息が詰まりそうになった。
さっきの反応からしてれいこちゃんもそういう事経験ありそうだった。
れいこちゃんが誰か他の人と唇を重ねる。
そんな事想像するのも怖い。
どうか早く帰ってきてこの不安をれいこちゃんで吹き飛ばして欲しい。
でも会うのが怖い気もする。
ほぼ支度も終わって後はれいこちゃんが帰ってきてから仕上げようと
ソファーで微睡んでいたところに玄関の鍵が開く音がして一気に意識が覚醒する。
あれ、いつもなら帰る前に連絡くれるから携帯の音量上げといたのに。
もしかして私が気づかなかったのかな。
そう思って携帯を見てみるけどれいこちゃんからの連絡は来てない。
別に連絡来なくてもれいこちゃんが帰ってきた、それだけでいいのに何だか今日は気持ちが沈んでばっかり。
「おかえりなさい」
「ただいま」
携帯を握りしめた私を不思議そうな目で見られる。
慌てて携帯をテーブルに置いて立ち上がる。
連絡して帰ってきてなんて重いよね。
れいこちゃんにもタイミングというものがあるのだから。
気持ちを切り替えなくては。そう思ってれいこちゃんのところへ駆け寄る。
「疲れたでしょう。ご飯あるよ」
「嬉しい」
ご飯を食べている間も楽しそうにちなつとの稽古の話をするれいこちゃんに返事はするものの心はなんとなくここにあらずだった。
洗い物も済ませてソファーに座ってたらシャワーを浴びて出てきたれいこちゃんが肩にタオルをかけたまま私の横に腰掛けた。
濡れた髪が色っぽい
「ショーの部分進んでます?」
「うん。どうにか形になりそう」
「へえ、それは良かった。私も海ちゃんといい感じに仕上がってます」
「そっか」
ずきん。
また音を立てた心に必死で目を背ける。
海ちゃんみたいに可愛くて可憐な子とれいこちゃんの並びがあまりに眩しくていつもお稽古場で目を背けたくなるのを必死で抑えながら過ごしているというのに。
「れいこちゃん?」
少し足を開いてその真ん中をトントンしている。
間に座れって事かな。
促されるまま足の間に収まればお腹に手を回されてきゅっとれいこちゃんの腕に閉じ込められてしまった。
シャンプーのいい香りが鼻をくすぐる。
肩に顎を乗せて力を抜いたれいこちゃんの重みさえも心地よい。
さっきまでの沈んだ気持ちも忘れてしまいそうになる。
「ありちゃんにキスされてどうでしたか」
「えっ」
唐突な言葉にびっくりしてれいこちゃんの方を向けばどあっぷの美しいお顔
片眉だけ上げたれいこちゃんは無という言葉がぴったり。
もしかして怒ってる?綺麗な顔程怖い。
「事故ですって?そんなのプロがしていいと思ってるんですか」
「んっ、れっ」
「それとも私に嫉妬させる為わざととか」
違う。そう言いたいのに顎を掴まれてれいこちゃんから顔を背ける事も弁解させてもくれず、言いたいことだけ言って口を塞がれる。
はいどうぞと言われたとしても綺麗な唇によって与えられるふわふわした感覚に思考が停止してしまって何も出てこないんだけど。
唇が離れる瞬間、下唇を軽く食んでわざと音を立てて私の羞恥を煽っている。
いつものれいこちゃんとは違いすぎて、でもその鋭い目にドキドキが止まらない。
「今日一日中ありちゃんとべたべたしてましたよね」
「んっ」
「ありちゃんの方がいいんですか、私より」
気がつけばソファーに押し倒され見下ろされていた。
やっぱりれいこちゃんの唇じゃないとだめ
思わずその形の整った唇に触れたくなって伸ばした手を掴まれる。
「こそこそ内緒話までして」
「内緒話なんて」
あ。したかも。でもそれはれいこちゃんの話で別に秘密って訳でもない。
「さっき、携帯握りしめてましたよね、誰と連絡してたんですか」
「え、それは」
「ありちゃん?」
れいこちゃんの連絡を待ってた、そんな事言ったら重いだろうか。
どう答えるべきか悩んでいる私の服に手をかけたれいこちゃん
「悪い人ですね」
「ちょっ、れいこちゃん」
「どれだけ余裕のある男を演じようと頑張ってきたと思ってるんです」
「まっ、待って」
慌ててその手を制止するけど振り払われる。
「れいこちゃんお稽古場で何でもなさそうだったから、れいこちゃんもこういうの普通にあるのかなって」
「そんな訳ないでしょう。この唇以外触れたくなんてありませんから」
そう言って私の唇を親指でなぞった後噛みつくように口づけられ、れいこちゃんの舌が暴れる。
「あなたが無防備で隙がありすぎるお陰で私おかしくなりそうです」
このまま見つめ合ったらだめ、そう思うのにその熱っぽい視線から目が離せない。
「私をこんなにした責任取ってくれますよね」
感情剥き出しで私を見下ろすれいこちゃんは今までで一番美しく妖しかった。
れいこさん、貴美さんの前では余裕ぶってるから仮面剥がしちゃえと思って
腹黒王子
でも、貴美さんの不安も消えましたよね
たしかに・・・。ありちゃんありがとう。
ちょっとそこ。半径2m以内に近づかない。
なんだか見張りが厳しくなりましたね。
「そうだね」
お稽古場、れいこちゃんと珠ちゃんの決闘シーン
椅子に座ってそれを見ている私の横に直前までお稽古場の真ん中でかっこよくお芝居していたありちゃんがにこにこしながら座ってきた。
席はいっぱい空いているというのに。
今回ありちゃんとお芝居、ショーともに組ませてもらうからなのかありちゃんはよく私のところに来てくれてなんでもない話とかよくする。
「あれ?貴美さん、髪飾りがちょっと歪んでます」
「え?本当?」
直そうと後頭部に手を伸ばした私より早くありちゃんの手が伸びて整えてくれた。そのスマートな所作に感心する。
「ありがとう」
「その髪飾りれいこさんからですか?」
「うん」
思わず顔が緩む。
お気に入りの髪飾り。
れいこちゃんが付き合って初めてプレゼントしてくれたもの。
この髪飾りをつけていればれいこちゃんと一緒にいるような気になって安心する。
「れいこさんが娘役さんと絡んでるシーンの時、決まってその髪飾り触ってるって気づいてます?」
にやっとした表情で発せられた言葉の内容にびっくりして顔が熱くなる。
そんな事してるの私。
「本当?」
「本当ですよ。だってその姿が可愛くて私が観察してますから」
いつものように天使のような笑顔を見せてくれるけど、完全に遊ばれている。
「上級生をからかうものではありません」
でこぴんをおみまいすればおでこをおさえて大袈裟に痛がるありちゃん
「貴美さんのいじわるー」
「ありちゃんが悪い」
ぷくっと頬を膨らませてみせれば、ありちゃんの右手が伸びてきて頬を掴まれぷしゅっと音を立ていとも簡単に潰されてしまった。
それを見てケラケラと笑うありちゃんに眉を顰める。
全く完全に遊ばれている。
そんなやり取りをしている間にれいこちゃん達のシーンは終わって先生からアドバイスをもらっているところだった。
席に戻ろうとしたれいこちゃんと目が合って微笑めば、微笑み返してくれてこちらにやってきた。
「お疲れ様」
差し出したタオルで汗を拭う姿さえも様になって思わず見惚れてしまう。
私の横にぴったりと座ったれいこちゃん。
「どうでした?」
「え?」
「さっきの私達のシーン」
いつもなら真剣に見てるんだけどありちゃんとあんなやり取りしてたから見損ねてしまった。
素直に見てなかったと言うしかないと口を開こうとした時、隣のありちゃんが身を乗り出して先に口を開いていた。
「私が質問とかしちゃったから貴美さんちゃんと見れて無かったかもしれません」
「あー。そっか。なら仕方ない」
別になんて事ないという感じの返事だったから拍子抜けしてしまった。
そこはちゃんと私を見といて下さいよとか言ってくれても良くない?
見てなかったことを棚に上げてこんなこと思うのもどうかと思うけど。
男役、月城かなとをれいこちゃんに当てはめるのは違うと思うけどもうちょっと何かお前は俺の物だ的なものがあってもいいのではなんて最近思っていたりする。
「私が貴美さんの髪飾り直してる時れいこさんに見られてた気がしたんですけど何も言われなかったですね」
こそっと耳打ちされ、れいこちゃんを横目にちらっと見るけど私の視線になんて気付くわけもなく真剣な眼差しで真ん中で踊ってるちなつを見ていた。
「貴美さーん」
「ありちゃん」
「ここなんですけどー」
全体稽古が終わって、何だかしっくりこないところがあるらしいありちゃんが台本片手にやってきた。
「ここですね、もっと角度的に斜めから入ったらいいんじゃないかなって思うんですけど」
ありちゃんの指差しているところは私とありちゃんが一緒に組んで踊るシーン
「ちょっとやってみようか」
「はい」
空き教室にやってきた私たちは早速そのシーンのそれぞれの意見を伝えていざやってみようとなった時
扉が開く音がして入ってきたのはれいこちゃんとちなつ
「あれ、貴美さんとありちゃん」
「あ、れいこさんにちなつさん」
「他のとこ埋まってて。一緒に使ってもいい?」
「もちろん」
今日はみんな残りそうだったもんな。
意見交換も終わった私達は音楽に合わせて踊り始める。
ひと通りやってみて気になったところを伝える。
「ばっといくより、見つめ合ってゆっくりいく方がいいんじゃないかなと思います。大人っぽい感じの方がいいですよね」
「そうだね、やってみよう」
踊っている途中にあるキスシーン。
頬に手を添えてゆっくりと近づいてくる綺麗な顔を見つめていたらそっと触れた柔らかい感覚
「へっ」
びっくりしたものの、体は音楽に合わせて動き続けて最後の決めポーズまできちんと踊り終わった後呆然と立ち尽くした。
「すみません。距離感が」
慌てた様子もなく眉を下げて微笑んだありちゃんにびっくりする。
そっか男役さんはこういうの馴れてるんだろう。
こういうこともあるって思ってはいたけど今までそんなこと経験しないままここまで来たからなんだか動揺してしまった。
「大丈夫」
れいこちゃんに見られていたら嫌だなって思って振り返ればじっとこちらを見ているれいこちゃん。
見られていた。鼓動が速くなる。
「ありちゃん、ああいいう時はこうやって」
立ち上がってこちらにきたれいこちゃんに身構えれば私を引き寄せてさっきのシーンを再現してくれる。
大きな手が私の頬を包んでゆっくりと近づく熱い視線
目があったまま、唇が触れる寸前で止まった。
恥ずかしくて息ができない。
「ここに手を添えておくといいよ」
「おー。分かりました、次からやってみます」
何も無かったかのように続く会話
れいこちゃんにはなんてことないんだ。
仕事上のことだから怒られるよりいいはずなのに、容認されてしまった
それがすごく切なかった。
もう少し自主稽古をして帰るという2人を残して私とありちゃんは先に帰宅の途に着いた。
明日はお休みだかられいこちゃんがうちにやってくる予定になっている。
久しぶりの一緒のお休み
れいこちゃんはお休みの日も撮影とか色々忙しいから。
帰ってきたらすぐご飯を食べれるように支度を始めた。
気が緩んでいたのか支度中に指を切ってしまい唇に指を当てた時に
さっきの自主稽古の事を思い出してしまった。
ありちゃんとキスしてしまった。
事故とはいえ、この罪悪感。
でもわざとじゃないし。駆け巡る邪念を払うように手を動かす
「れいこちゃんもこういう事あるのかな」
考えるだけで心が苦しくて息が詰まりそうになった。
さっきの反応からしてれいこちゃんもそういう事経験ありそうだった。
れいこちゃんが誰か他の人と唇を重ねる。
そんな事想像するのも怖い。
どうか早く帰ってきてこの不安をれいこちゃんで吹き飛ばして欲しい。
でも会うのが怖い気もする。
ほぼ支度も終わって後はれいこちゃんが帰ってきてから仕上げようと
ソファーで微睡んでいたところに玄関の鍵が開く音がして一気に意識が覚醒する。
あれ、いつもなら帰る前に連絡くれるから携帯の音量上げといたのに。
もしかして私が気づかなかったのかな。
そう思って携帯を見てみるけどれいこちゃんからの連絡は来てない。
別に連絡来なくてもれいこちゃんが帰ってきた、それだけでいいのに何だか今日は気持ちが沈んでばっかり。
「おかえりなさい」
「ただいま」
携帯を握りしめた私を不思議そうな目で見られる。
慌てて携帯をテーブルに置いて立ち上がる。
連絡して帰ってきてなんて重いよね。
れいこちゃんにもタイミングというものがあるのだから。
気持ちを切り替えなくては。そう思ってれいこちゃんのところへ駆け寄る。
「疲れたでしょう。ご飯あるよ」
「嬉しい」
ご飯を食べている間も楽しそうにちなつとの稽古の話をするれいこちゃんに返事はするものの心はなんとなくここにあらずだった。
洗い物も済ませてソファーに座ってたらシャワーを浴びて出てきたれいこちゃんが肩にタオルをかけたまま私の横に腰掛けた。
濡れた髪が色っぽい
「ショーの部分進んでます?」
「うん。どうにか形になりそう」
「へえ、それは良かった。私も海ちゃんといい感じに仕上がってます」
「そっか」
ずきん。
また音を立てた心に必死で目を背ける。
海ちゃんみたいに可愛くて可憐な子とれいこちゃんの並びがあまりに眩しくていつもお稽古場で目を背けたくなるのを必死で抑えながら過ごしているというのに。
「れいこちゃん?」
少し足を開いてその真ん中をトントンしている。
間に座れって事かな。
促されるまま足の間に収まればお腹に手を回されてきゅっとれいこちゃんの腕に閉じ込められてしまった。
シャンプーのいい香りが鼻をくすぐる。
肩に顎を乗せて力を抜いたれいこちゃんの重みさえも心地よい。
さっきまでの沈んだ気持ちも忘れてしまいそうになる。
「ありちゃんにキスされてどうでしたか」
「えっ」
唐突な言葉にびっくりしてれいこちゃんの方を向けばどあっぷの美しいお顔
片眉だけ上げたれいこちゃんは無という言葉がぴったり。
もしかして怒ってる?綺麗な顔程怖い。
「事故ですって?そんなのプロがしていいと思ってるんですか」
「んっ、れっ」
「それとも私に嫉妬させる為わざととか」
違う。そう言いたいのに顎を掴まれてれいこちゃんから顔を背ける事も弁解させてもくれず、言いたいことだけ言って口を塞がれる。
はいどうぞと言われたとしても綺麗な唇によって与えられるふわふわした感覚に思考が停止してしまって何も出てこないんだけど。
唇が離れる瞬間、下唇を軽く食んでわざと音を立てて私の羞恥を煽っている。
いつものれいこちゃんとは違いすぎて、でもその鋭い目にドキドキが止まらない。
「今日一日中ありちゃんとべたべたしてましたよね」
「んっ」
「ありちゃんの方がいいんですか、私より」
気がつけばソファーに押し倒され見下ろされていた。
やっぱりれいこちゃんの唇じゃないとだめ
思わずその形の整った唇に触れたくなって伸ばした手を掴まれる。
「こそこそ内緒話までして」
「内緒話なんて」
あ。したかも。でもそれはれいこちゃんの話で別に秘密って訳でもない。
「さっき、携帯握りしめてましたよね、誰と連絡してたんですか」
「え、それは」
「ありちゃん?」
れいこちゃんの連絡を待ってた、そんな事言ったら重いだろうか。
どう答えるべきか悩んでいる私の服に手をかけたれいこちゃん
「悪い人ですね」
「ちょっ、れいこちゃん」
「どれだけ余裕のある男を演じようと頑張ってきたと思ってるんです」
「まっ、待って」
慌ててその手を制止するけど振り払われる。
「れいこちゃんお稽古場で何でもなさそうだったから、れいこちゃんもこういうの普通にあるのかなって」
「そんな訳ないでしょう。この唇以外触れたくなんてありませんから」
そう言って私の唇を親指でなぞった後噛みつくように口づけられ、れいこちゃんの舌が暴れる。
「あなたが無防備で隙がありすぎるお陰で私おかしくなりそうです」
このまま見つめ合ったらだめ、そう思うのにその熱っぽい視線から目が離せない。
「私をこんなにした責任取ってくれますよね」
感情剥き出しで私を見下ろすれいこちゃんは今までで一番美しく妖しかった。
れいこさん、貴美さんの前では余裕ぶってるから仮面剥がしちゃえと思って
腹黒王子
でも、貴美さんの不安も消えましたよね
たしかに・・・。ありちゃんありがとう。
ちょっとそこ。半径2m以内に近づかない。
なんだか見張りが厳しくなりましたね。