K.TUKISHIRO
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「精が出ますね」
「ありがとうございます」
風鈴の音が暑さを少し和らげてくれている気がするけどやはり今年の夏は暑い。
縁側に座って彼女が出してくれる冷たいお茶で熱った体を冷ます。
日舞の先生のお稽古の日。
休憩のこの時間が私の楽しみだったりする。
先生のお嬢さんの貴美さんは私より1つ年上で先生のお手伝いをしている。
いつも素敵なお着物を着こなすすらっとした姿。
ここに通い始めた頃は貴美さんもまだ先生から習っていて
上手く踊れないと縁側で1人泣いていた彼女に声をかけたあの日
泣きながらも上手くなりたい、先生になるんだって。
未だにあんな綺麗な目をした人に出会った事がない。
多分あの日から彼女は私の特別。
「貴美さん」
「はい」
「最近はどうですか」
「うん、生徒さんも楽しそうでなにより」
にっこり微笑む笑顔は相変わらず上品さが滲み出ている。
あなたのプライベートを聞きたかったんだけどな。
「ねえ、貴美さん」
「はい?」
「明日の夜空いてますか?」
明日は花火大会。
公演が重なったりしてもう長らく行ってない。
縁日も出るから一緒に行けたらななんて思ったりしたのだ。
「明日ですか?空いてますよ」
「花火見に行きませんか」
「花火?そうか、明日ですね。嬉しいです」
少し幼くなった笑顔、そんな顔中々見せないからなんか久しぶりに見たその感じが嬉しくて頬が緩んじゃう。
お稽古終わって待ち合わせ時間を決めてお暇する。
どの浴衣着て行こうかとか何食べようかとか
はぐれそうになったら手を繋いでも許されるだろうかとか。
帰り道はそんなことばっかりで頭がいっぱいだった。
本当はお稽古の反省とか次の撮影のこととか考える事は沢山あるのに貴美さんの事を考え出すとてんでだめ。
「お待たせしちゃってごめんなさい。どの浴衣にするか迷っちゃって」
「可愛い」
「えっ、ありがとう」
待ち合わせ場所で私の姿を見つけて小走りでこちらにやってきた貴美さんの浴衣姿ときたら。
思わず感嘆のため息と共に溢れ出た素直な感想。
恥ずかしそうにもじもじしてる貴美さんの背中にそっと手をあて歩き出す。
「帯の結び方も可愛いね」
「久しぶりにしたからなんか時間かかっちゃって」
「私のためにおしゃれしたの?」
ちょっと意地悪しようと冗談っぽく言えば
「当たり前じゃない。折角の浴衣デートだもん」
「えっ」
「ほら早く行かないとたこ焼きなくなっちゃう」
そう言っていたずらっ子みたいな笑顔を見せて私の手を引いた。
「あ、かき氷!」
「食べる?」
「うん。食べたい」
『ブルーハワイ』
昔行ったお祭りでも彼女はそれを食べていた。
自分で買うという彼女を諌めて爽やかなブルーの掛かったそれを手渡せば、目を輝かせ嬉しそうに一口頬張って眉間に皺を寄せた。
「ちべたーい」
「なにそれ」
思わず吹き出せば頬をぷっと膨らませた。
「れいこちゃんも食べてみてよ」
ほらっとかき氷を差し出す貴美さん
久しぶりにちゃん付けで呼ばれた事に胸の高鳴りを抑えられない。
いつからだろう、私達は大人になってしまって昔のようになれなくなってしまったのは。
「どうしたの?」
「ううん。あーん」
「えっ、大人のくせに」
「大人は関係ないでしょ。あーーーーん」
しぶしぶストローに乗せた氷をこちらに向けてくる。
さあ、こい。
口を開けて待ってると、そのストローはまさかのUターンをして貴美さんの口の中へ収まった。
「ふふっ」
「えー。ひどいー」
「こんなのあったよね」
あったけど。
毎公演チケット送ってるから観にきてくれて覚えてるんだろうけど今はそれじゃない。
不貞腐れた私を見かねて眉を下げて笑ってはい、と差し出されたストロー。
今度こそちゃんとあーんしてもらって大満足。
「ねえ、れいこちゃんあれ」
浴衣の袖をちょんちょんと引っ張って彼女が示した先には射的。
「見て見て!あれ可愛いー!ねえ、あれ取って?」
貴美さんが指さしたのは可愛いぬいぐるみ。
さっきは人のこと子供扱いしたくせに自分だって。
勝負事となれば負けたくないので本気で構えて打つ。
ぱんっという音と共に後ろに倒れたぬいぐるみ。
横の彼女はというともう大はしゃぎ。
目を見開いて驚いたかと思えば私の腕を掴んでぴょんぴょんしている。こんな喜ばれたらここにあるもの全部だって取ってあげたくなる。
そのぬいぐるみを抱き抱えたままにこにこ歩く横で私はなんだか優越感に浸っていた。見てこの可愛いひと。私のなんです。
見てもいいけど声をかけたりしないでください。
いや出来るなら目に入れないでください。
このまま連れ去ってしまえたらどんなにいいだろう。
あり得ないと思うけど、もし貴美さんが私と同じ気持ちだったら。
「あれー?れいこじゃん」
「わー。れいこさん、浴衣素敵ですね」
聞き覚えのある声に前を見れば月組生。
そういえばみんなも今日の話してたな。
ふと横に貴美さんがいない事に気づいた。
うそっ。あんなにはぐれないようにと気をつけてたのに。
「いや、連れがいるんで」
「どこにー?」
「ほっといてください。離して」
探していた人の声に振り向けば知らない奴に腕を掴まれている。
目を離してしまった自分を責めた。
「その人私のなんで触らないでもらっていいですか」
頭に血が上って睨みつけてその汚い手を振り払っていた。
手を掴み足早に歩く。
人混みを掻き分けたどり着いた神社の階段に腰掛ける。
「ごめん、私がちゃんと守ってあげれなかった」
「そんな事思ってないよ。ありがとう、助けてくれて」
悔しさのあまり握りしめていた手のひら。
その私の手にそっと触れた貴美さんの手は震えている。
「震えてる」
「えっ、だっ大丈夫」
さっと手を引っ込めようとするからすかさず掴む。
さっきの奴に掴まれてた所が跡になって痛そう。
「ごめんね」
「れいこちゃんが謝る事じゃないよ」
その跡にそっと口付ける。
その様を見ていた彼女と絡んだ視線。
彼女を後ろから照らす花火がより幻想的さを際立たせている。
しかもちょっと潤んだ瞳がたまらない。
心臓なのか、花火なのか分からない煩いくらい響く音。
キスしたい。
「へっ」
「え?」
「あ、いや。なんでもないの」
目を見開いた後、みるみる顔が赤くなり明らかに慌てている様子に首を傾げる。
あれ、もしかして声に出てた?
「いい?」
「えっ、いや、あの」
「だめ?」
「や、あの」
「もー、どっち」
「いっ、いいよ、れいこちゃんなら」
ぎゅっと目を瞑って意を決したような勢いで返事が返ってきた。
「それってさ、自惚れていいってこと?」
「・・・ずっとすきだったの。初めて話したあの日から」
「うそ、夢みたい」
ぎゅっと抱きしめた後、そっと頬に手を添えて唇を重ねる。
花火の音が遠く聞こえる。
ずっと触れてみたかった柔らかくて甘い唇。
だめだ、もう一回。
理性でどうにかできるものではないと悟った時にはもう既に手遅れ。
触れるだけでは足りなくなるだろうなんて容易に想像ついたのに。
どれくらい唇を合わせていたか分からない。
熱くてくらくらしそう。
「今日、先生は?」
「会合で泊まり」
「家行ってもいい?」
息を切らしながら答える彼女と数秒見つめ合った後その瞳に誘われるまま彼女の家へと帰路を急いだ。
ああ、お稽古してるとあの夜を思い出しちゃって
やっ、やめてよ
だって神聖なお稽古場であんな事
もう!言わないでっ
ねえ、まだ残ってる?見せて?薄くなっちゃったね、また付けないと
.
「ありがとうございます」
風鈴の音が暑さを少し和らげてくれている気がするけどやはり今年の夏は暑い。
縁側に座って彼女が出してくれる冷たいお茶で熱った体を冷ます。
日舞の先生のお稽古の日。
休憩のこの時間が私の楽しみだったりする。
先生のお嬢さんの貴美さんは私より1つ年上で先生のお手伝いをしている。
いつも素敵なお着物を着こなすすらっとした姿。
ここに通い始めた頃は貴美さんもまだ先生から習っていて
上手く踊れないと縁側で1人泣いていた彼女に声をかけたあの日
泣きながらも上手くなりたい、先生になるんだって。
未だにあんな綺麗な目をした人に出会った事がない。
多分あの日から彼女は私の特別。
「貴美さん」
「はい」
「最近はどうですか」
「うん、生徒さんも楽しそうでなにより」
にっこり微笑む笑顔は相変わらず上品さが滲み出ている。
あなたのプライベートを聞きたかったんだけどな。
「ねえ、貴美さん」
「はい?」
「明日の夜空いてますか?」
明日は花火大会。
公演が重なったりしてもう長らく行ってない。
縁日も出るから一緒に行けたらななんて思ったりしたのだ。
「明日ですか?空いてますよ」
「花火見に行きませんか」
「花火?そうか、明日ですね。嬉しいです」
少し幼くなった笑顔、そんな顔中々見せないからなんか久しぶりに見たその感じが嬉しくて頬が緩んじゃう。
お稽古終わって待ち合わせ時間を決めてお暇する。
どの浴衣着て行こうかとか何食べようかとか
はぐれそうになったら手を繋いでも許されるだろうかとか。
帰り道はそんなことばっかりで頭がいっぱいだった。
本当はお稽古の反省とか次の撮影のこととか考える事は沢山あるのに貴美さんの事を考え出すとてんでだめ。
「お待たせしちゃってごめんなさい。どの浴衣にするか迷っちゃって」
「可愛い」
「えっ、ありがとう」
待ち合わせ場所で私の姿を見つけて小走りでこちらにやってきた貴美さんの浴衣姿ときたら。
思わず感嘆のため息と共に溢れ出た素直な感想。
恥ずかしそうにもじもじしてる貴美さんの背中にそっと手をあて歩き出す。
「帯の結び方も可愛いね」
「久しぶりにしたからなんか時間かかっちゃって」
「私のためにおしゃれしたの?」
ちょっと意地悪しようと冗談っぽく言えば
「当たり前じゃない。折角の浴衣デートだもん」
「えっ」
「ほら早く行かないとたこ焼きなくなっちゃう」
そう言っていたずらっ子みたいな笑顔を見せて私の手を引いた。
「あ、かき氷!」
「食べる?」
「うん。食べたい」
『ブルーハワイ』
昔行ったお祭りでも彼女はそれを食べていた。
自分で買うという彼女を諌めて爽やかなブルーの掛かったそれを手渡せば、目を輝かせ嬉しそうに一口頬張って眉間に皺を寄せた。
「ちべたーい」
「なにそれ」
思わず吹き出せば頬をぷっと膨らませた。
「れいこちゃんも食べてみてよ」
ほらっとかき氷を差し出す貴美さん
久しぶりにちゃん付けで呼ばれた事に胸の高鳴りを抑えられない。
いつからだろう、私達は大人になってしまって昔のようになれなくなってしまったのは。
「どうしたの?」
「ううん。あーん」
「えっ、大人のくせに」
「大人は関係ないでしょ。あーーーーん」
しぶしぶストローに乗せた氷をこちらに向けてくる。
さあ、こい。
口を開けて待ってると、そのストローはまさかのUターンをして貴美さんの口の中へ収まった。
「ふふっ」
「えー。ひどいー」
「こんなのあったよね」
あったけど。
毎公演チケット送ってるから観にきてくれて覚えてるんだろうけど今はそれじゃない。
不貞腐れた私を見かねて眉を下げて笑ってはい、と差し出されたストロー。
今度こそちゃんとあーんしてもらって大満足。
「ねえ、れいこちゃんあれ」
浴衣の袖をちょんちょんと引っ張って彼女が示した先には射的。
「見て見て!あれ可愛いー!ねえ、あれ取って?」
貴美さんが指さしたのは可愛いぬいぐるみ。
さっきは人のこと子供扱いしたくせに自分だって。
勝負事となれば負けたくないので本気で構えて打つ。
ぱんっという音と共に後ろに倒れたぬいぐるみ。
横の彼女はというともう大はしゃぎ。
目を見開いて驚いたかと思えば私の腕を掴んでぴょんぴょんしている。こんな喜ばれたらここにあるもの全部だって取ってあげたくなる。
そのぬいぐるみを抱き抱えたままにこにこ歩く横で私はなんだか優越感に浸っていた。見てこの可愛いひと。私のなんです。
見てもいいけど声をかけたりしないでください。
いや出来るなら目に入れないでください。
このまま連れ去ってしまえたらどんなにいいだろう。
あり得ないと思うけど、もし貴美さんが私と同じ気持ちだったら。
「あれー?れいこじゃん」
「わー。れいこさん、浴衣素敵ですね」
聞き覚えのある声に前を見れば月組生。
そういえばみんなも今日の話してたな。
ふと横に貴美さんがいない事に気づいた。
うそっ。あんなにはぐれないようにと気をつけてたのに。
「いや、連れがいるんで」
「どこにー?」
「ほっといてください。離して」
探していた人の声に振り向けば知らない奴に腕を掴まれている。
目を離してしまった自分を責めた。
「その人私のなんで触らないでもらっていいですか」
頭に血が上って睨みつけてその汚い手を振り払っていた。
手を掴み足早に歩く。
人混みを掻き分けたどり着いた神社の階段に腰掛ける。
「ごめん、私がちゃんと守ってあげれなかった」
「そんな事思ってないよ。ありがとう、助けてくれて」
悔しさのあまり握りしめていた手のひら。
その私の手にそっと触れた貴美さんの手は震えている。
「震えてる」
「えっ、だっ大丈夫」
さっと手を引っ込めようとするからすかさず掴む。
さっきの奴に掴まれてた所が跡になって痛そう。
「ごめんね」
「れいこちゃんが謝る事じゃないよ」
その跡にそっと口付ける。
その様を見ていた彼女と絡んだ視線。
彼女を後ろから照らす花火がより幻想的さを際立たせている。
しかもちょっと潤んだ瞳がたまらない。
心臓なのか、花火なのか分からない煩いくらい響く音。
キスしたい。
「へっ」
「え?」
「あ、いや。なんでもないの」
目を見開いた後、みるみる顔が赤くなり明らかに慌てている様子に首を傾げる。
あれ、もしかして声に出てた?
「いい?」
「えっ、いや、あの」
「だめ?」
「や、あの」
「もー、どっち」
「いっ、いいよ、れいこちゃんなら」
ぎゅっと目を瞑って意を決したような勢いで返事が返ってきた。
「それってさ、自惚れていいってこと?」
「・・・ずっとすきだったの。初めて話したあの日から」
「うそ、夢みたい」
ぎゅっと抱きしめた後、そっと頬に手を添えて唇を重ねる。
花火の音が遠く聞こえる。
ずっと触れてみたかった柔らかくて甘い唇。
だめだ、もう一回。
理性でどうにかできるものではないと悟った時にはもう既に手遅れ。
触れるだけでは足りなくなるだろうなんて容易に想像ついたのに。
どれくらい唇を合わせていたか分からない。
熱くてくらくらしそう。
「今日、先生は?」
「会合で泊まり」
「家行ってもいい?」
息を切らしながら答える彼女と数秒見つめ合った後その瞳に誘われるまま彼女の家へと帰路を急いだ。
ああ、お稽古してるとあの夜を思い出しちゃって
やっ、やめてよ
だって神聖なお稽古場であんな事
もう!言わないでっ
ねえ、まだ残ってる?見せて?薄くなっちゃったね、また付けないと
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