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ねえ、ずっと一緒にいてね。
約束だよ。
うん。ずっと居るよ。
心配せんでええ。私が守ったるから。
彼女は泣き虫である。
そして私のこと大好きみたい。
毎日彼女は朝早くから仕事に出かける。
毎日帰って来ては私を抱きしめてほっぺにちゅーする。
毎日大好きだよという
毎日今日あったことを色々話してくれる。
私も彼女の事が大好きや。
そして一緒のお布団で寝る。
彼女の腕は暖かくて心地いい
「ねえ、キキ。キキが人間だったらいいのにね。そしたらキキが私をもらってくれるでしょう?だって私達両思いだもんね」
うん。私もそう思う。
私は猫。
君は人間って生き物らしい。
だから私らは別々の種族
でも好きって気持ちに変わりはないやん。
神様もし願いが1つ叶うなら私を人間にしてください
そしたら君が悲しい時、君がしてくれるみたいに抱きしめてあげる事ができる。
神様どうかお願いします。私を人間に
「今日もお疲れ様でした」
ベランダで色違いの椅子にそれぞれ座って
貴美ちゃんはなんだか透明の苦い水
私は缶詰で一日の労をねぎらう。
毎日お月さまにお願いしてもまだ人間にはなれないのはなんでやろう
「貴美ちゃんと同じ種族になれますように」
同じ種族になれるなら缶詰一生食べれなくてもいいです。
「ねえ、キキ今日は何してた?」
「今日はな、いつも通りパトロールして家に帰ってひなたぼっこした。あとな新しい友達できた」
「楽しかったんだね」
「うん」
頭を撫で撫でしながら聞いてくるんやけど、その手が気持ちよくて返事するのが大体遅れる。
人間には私達の言葉は通じんっていうけど、私らはそんな事ないと思ってる。たとえ同じ言葉じゃなくても想いは伝わるって。
だってちゃんと会話できてるもん。
私な、夢がかなった時の為に毎日貴美ちゃんが仕事に行ってる間に本棚のご本読んでん。
ちゃんと知識ある人間じゃないとあかんってテレビで言ってたからな
人間になれたら貴美ちゃんとしたい事が沢山あるんや。
一緒にご飯作ったりお出かけしたり
でも毎日何気ない事でええ。2人で同じ時間を共有したい。
そして貴美ちゃんを全力で守る。
泣かせる奴は私が絶対に許さへん。
今の小さい体じゃ守りきれへんもん。
「キキー。疲れたぁ。充電してー」
がばっと抱きついてきた貴美ちゃんにされるがまま、すんすんと嗅がれることもしばしば。
本当に私の事好きやなー。全く
まあ小さい体でも癒すこと位なら出来るみたい。
毎晩一緒にお風呂入るんだけど。
って言っても私は蓋の上に座ってるだけなんやけどね。
お風呂を出て髪を乾かしてる横に座って毛繕いしてれば、しゃがんでその姿をじっと見られる。
「キキって、私のこと大好きだよねー」
「なっ、そっちかて私の事大好きな癖に」
嬉しそうな顔して肘でつんつんされる。
ま、好きなのは間違い無いけどな。
だって私ら両思いやもん
**
今日も朝から日課のご近所パトロール
塀の上を歩いとったら貴美ちゃん見つけた。
今日もお仕事頑張るんやで
あっ!!車がきてる
貴美ちゃん気付いてへん。
左から車来てるって!
あかん危ないっ。
猫のくせに走るの嫌いな私が全力疾走して貴美ちゃんに体当たりした
目が覚めたら知らない天井。
匂い
ふかふかのお布団の中におった。
なんかえらい小さいベッドやな。
がらがらっ。と扉の開く音がして音の方に目を向ければ貴美ちゃんが入ってきた。
「あ。目が覚めたみたいですね。良かったー」
「貴美ちゃん」
「助けて下さってありがとうございます。あれなんで名前・・・」
え?なんで敬語なん?
無事でよかったと伸ばした手
肌色のすらっと長い指
あれ、私の可愛い肉球はどこへ?
えっと…。
「えーっ!!わっ、私っ」
思いっきり起き上がればぎしぎしと痛む体
「あたたたっ」
「まだ寝てないとだめです」
そっと私の体に触れて寝かせてくれる。
なんや貴美ちゃんがいつもより小さい。
いや私が大きくなったんや。
え?本当に人間になれたってこと?
「私何に見えます?」
「へ?」
「人間?」
「よほど強く頭を打ったんですね。」
憐れむように私の腕をさすってくれる。
いや、本気で聞いてるだけや
というか!ここ病院っ?嫌やっ。痛い事されるっ
布団をかぶって震える
「注射いややー」
「注射とかしませんって」
「ほんま?」
布団からちょっぴし顔を出せば微笑んでうなづく貴美ちゃん。
ならええけど。
怖いとかじゃないんよ。痛いの嫌いなだけや。
決して怖い訳ではない。
「あの、病院の方が身分証とかなかったから名前もわからないって」
「キキ」
私の言葉に目を見開く貴美ちゃん
私に見覚えあるやろ?
「キキ・・・さん」
さんやのうて"キキ"やろ
「そう、キキ言います」
「キキさん、本当にありがとうございました。お陰で助かりました。でもキキさんがこんな怪我を」
「そんなんええよ、貴美ちゃんが無事でよかった」
本当によかった。
この傷は勲章や。
ペロリと手の傷を舐める仕草をキョトンとした目で見られる。
あかん。人間は舐めたりせーへんのやった。
「ほっ、ほらね。舐めとけば治るわ」
「・・・そうですね」
ふっと笑ってくれたからほっと胸を撫で下ろす。
色々聞かれるのを避けるために事故の前の記憶がないって言った。
ごめんね、貴美ちゃん嘘ついて。
それから毎日、貴美ちゃんはお仕事終わりに会いに来てくれた。
それにしても二足歩行って難しいんやなぁ。
もっと練習しとくんやった。
病院の廊下をうろうろして練習。
疲れたらつい癖で猫座りしてしまう。
変な視線を感じるけど仕方ないやん。癖やもん
私はここからまだ出られへんのやって。
貴美ちゃんはおうちに帰るからばいばいしないといけないのが辛い。
一緒に寝れない夜がこんなに寂しいやなんて。
ひとりぼっちのお布団はいやや。
ばいばいするのが寂し過ぎて取り留めもない話で引き留めたり。
「明日には退院できそうですって」
「そっか。でも私いくとこなんてあらへん」
だって私のお家は貴美ちゃん家やもん。
どこに行けばいいん。
「じゃあ、うちに来ますか」
「え?いいの?」
「はい、助けてもらったお礼と言ってはなんですが」
人間として貴美ちゃんと一緒に暮らす
夢にまで見た事が現実になろうとしている
翌日、貴美ちゃんが迎えに来てくれて一緒におうちに帰る。
並んで歩いて帰れるなんて嬉しくて思わず手を繋いだ。
ほら、今の私ならおてて握れるんよ。
繋いだ手をぶんぶん振って帰る。
「キキさんってばはしゃいじゃって」
「ほらほら、見て!あの桜の木」
私が小さい時登って降りれなくなって貴美ちゃんが助けてくれた木やで。2人が出会った場所や
「あの桜の木、私のおうちの猫ちゃんと出会った木なんですよ」
私との出会いを嬉しそうに語ってくれる。
私もちゃんと覚えてるであの貴美ちゃんの胸に飛び込んだ日から私の心はずっと貴美ちゃんのものや。
ただいまー我が家
数日ぶりの我が家はえらく小さく感じた。
伸びをしていつもの位置に座る。
「そこ・・・」
「ん?」
「ううん。なんでもない。寛いで下さいね」
「お手伝いしたい」
ソファーから飛び降りて貴美ちゃんのそばに駆け寄る。
ずっと夢見てたの。
キッチンに立つ背中を見ながらいつか一緒にお料理したいって。
「そう。こうやって、上手だよキキちゃん」
「えへへー。本で読んだことはあるんよ」
初めて持つ包丁。
ゆっくりと切っていく。
嬉しい、楽しい、幸せや。
おんなじ物を食べる日が来るとは
2人向かい合って座って囲んだ食卓に並べられた料理たちを見て感嘆のため息が出た。
「いただきまーす」
「すごい。初めて食べた」
こんな味初めてや。
初めて食べるシチューの味
わ。サラダの上のツナが美味しそう
「ツナ好きなの?」
思わず手を伸ばしてツナばっかり食べてた私を見て笑ってる。
「うん、美味しい」
「もっとツナ乗せようか、でもお野菜も食べないとだめだよ」
「わーい、ちゃんと葉っぱも食べる」
結局葉っぱ1:ツナ9くらいで食べちゃったけど。
茶碗洗いも一緒にして、お腹いっぱいだしもう満足でソファーに寝っ転がった。
「お風呂先に入っておいで」
「えー。一緒に入ろうよー」
「キキちゃん甘えん坊さんだね」
背中流しっこして一緒のお風呂に浸かる。
いつも上から見てただけだから不思議な感じ。
お風呂上がったら髪の毛乾かしてもらって温かい風に眠くなっちゃった。
今日こそ私が腕枕する番や。
「キキちゃん近いよ」
「そう?普通やない?」
恥ずかしそうに頬を染めるから思わず頬に擦り寄った。
「キッ、キキちゃ」
「ん?」
「何だか恥ずかしいよ」
「そう?だって大好きやもん全然恥ずかしくない」
はい、どうぞと腕を差し出せば痺れちゃうからと遠慮されたけど眠ちゃった後にこっそり腕枕した。
ほんま幸せ。
「キキちゃん早起きだね」
「朝は得意やねん」
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
いつものルーティーンの始まり。
お見送りしてパトロール
いつもなら1時間位かけて回ってる道もこの大きさだと15分で帰ってきてしまった。
「早く帰ってこないかなー」
お昼寝したり、お勉強したり結局する事はそう変わらないんだけどね。
この体じゃ毛繕う事もしなくていいしする事減った気はする。
その分貴美ちゃんのために時間を使いたくてお洗濯とかお掃除とか始めてみたり。
ある日のご飯の後、ベランダを見つめてなんだか暗い顔してたからどうしたのか聞いた。
貴美ちゃんを悲しませるすべてを排除すると決めたんだから私が解決してあげる。
「私ね、キキって猫ちゃんと暮らしてたの。でも帰って来なくなっちゃって。どうしてるんだろう、お腹すかせてないかな」
泣き出した彼女をそっと抱きしめる
これや。私がやりたかったんはこれ。
でも泣かせてる原因は紛れもない私自身で。
これでいいん?私は。
泣かせるやつは許さんって言ってたのに私がそうなっていいん。
「帰ってくるよ、きっと」
「キキちゃん?」
「今日までお世話になりました。ありがとう」
背中をぽんぽんと撫でて離れる。
私の夢は人間になること。
でももっと大事な夢は彼女が笑って暮らすこと。
私の夢のために彼女が泣くなら私は人間になれんでもええ。
幸せな数日間やった。
神様に感謝や。
「どこに行くつもりなの」
「記憶が戻ってん。おうちに帰る」
「そう、寂しいな。また会えるよね」
「そやなぁ」
大丈夫や。
ずっとそばにいるから。
人間のキキとしてはもう会われへんけど。
「なあ、最後にベランダでお疲れ様会しよう」
「お疲れ様会・・・」
「ほらほら、この苦い水持って」
「白ワインね」
貴美ちゃんを背に冷蔵庫からいつもの水を取り出してグラスに注ぐ。
私は戸棚の缶詰を・・・
「なんでそれ知って・・・」
今のサイズならいつもなら届かない戸棚にも手が届いて自分でも缶詰取れるもんねー。
戸棚に手を伸ばした時に貴美ちゃんが呟いてはっとする。
あかん。人間は私の缶詰は食べへんもんな。
伸ばした手を引っ込めて
「なあ、お水が欲しい」
「あっ、うん。」
冷蔵庫からお水を出してグラスに注いで手渡してくれる。
一緒にベランダに出て、いつもの椅子に座る。
私の横顔をじっと見つめられてる気がするけど私は月の神様へのお礼を心の中で唱えた。
神様、ありがとう。
私は貴美ちゃんの幸せが一番なんです。
どうか元の私に戻して下さい。
「じゃあ、またね」
「帰るの明日の朝でもいいんじゃないの」
「別れがたくなるから今帰るわ」
きっと夜のうちに戻っちゃうからちゃんとお別れしてから戻りたい。
マンションを出てたどり着いた人気のない草っ原、雲間から月が顔を出して私を照らす。
どんどん大きくなる景色。
あーあ本当に戻ってしもた。
いや、これでいいんや。
これからも一緒にはいれる訳だし。
うちに向けて歩き出す。
「キキっ!どこ行ってたの!心配したんだよ」
ベランダから舞い戻った私の姿を見つけて走ってきて苦しいぐらい抱きしめてくれる。
涙でぐしゃぐしゃの顔を私の頬に擦り寄せてくる。
冷たいって。泣かんとって。
これからはずーっと一緒なんやから。
「キキ、この手どうしたの」
手の傷は消える筈もなく私の腕を掴んで眉を顰める。
「この傷・・・」
腕から抜け出してソファーのいつもの定位置に座る。
久しぶりの毛繕い
なんだか変な感じ。
私がまたいなくなるんじゃないかと思ってるのかずっと私の動きを追い続けられてる。
そんな見られたら恥ずかしいやん。
トイレとかしたい時だってあるんやし。
久しぶりの猫の姿でのベランダお疲れ様会
いつも通り椅子に座る。
「キキがいない間にね、おんなじ名前の女の子に出会ったんだよ」
「おんなじ子なんやで実は」
「大好きになっちゃったんだ。いつかもっと仲良くなれたらいいな」
そう言って月を見上げた
私だってなりたいわ。
なんなら恋人ってやつに
でももう叶わへんけど。
「ねえ、キキ。あなたなんじゃないの?」
え?思わず貴美ちゃんを見上げる。
その目は真剣そのものでごくりと息を呑んだ
「私を助けてくれたキキさんは」
私やで。
届かない声を上げる。
「この傷。絶対そう。私がキキに会いたいって言ったからいなくなっちゃったの?」
「そやけど、大丈夫や。ずっと側におるで」
「キキ」
頭を撫でられてすりっと貴美ちゃんの手に頬擦りする。
「どんなキキでも好きなんだよ、でもキキちゃんに会いたい」
「私は一緒にいれるならどんな姿でもええ。出来る事なら抱きしめてあげれるサイズでいたいけど」
「もう戻ってこないのかなキキちゃんは」
貴美ちゃんが望んでくれるなら猫でも人間でも草にでもなるわ。
また月が顔を出して私を照らすけどそんな簡単にまた人間に戻る奇跡なんて起きないのわかってる。
「なーんてね。寒くなってきたね。寝ようか」
私を抱き上げて部屋の中へ入る。
今の私は彼女を抱き上げることもできんのかぁ。
「キキ、大好き」
「私も大好きや」
久しぶりの腕枕。
もう私が腕枕してあげる日は来ないんだな。
でもきっといつかこんな気持ちも薄れていってまた元通りになる。
今日はもうちょっとくっついていたい。
首元におでこを寄せて眠りについた。
「起きて!起きてキキちゃん」
「んー。どないしたん、G?Gやったら私苦手やから取ってあげられへんよ」
「そんなんじゃない。いつもキキの方が先に逃げるじゃん。やっぱりキキだったんだね」
「へ?」
凄い勢いで揺さぶって話しかけられたから眠いまなこを擦りながら答えれば
普通に会話が成り立ってて、ぎゅっと抱きつかれたその感覚で自分がまた人間の姿に戻っているのだと確信した。
え?私・・・
「猫のキキは戻ってこんよ?ええの?」
「どのキキも好きだけど、キキにぎゅってされると安心するの」
ええよ。ずーっとそばにいたるから。
そっと抱きしめる。
「美猫だと思ってたけど、人間になったらこんな美人になるんだね」
「ほんと、貴美ちゃんって私の事好きやなぁ」
「好きだよ」
「まあ、私の方が貴美ちゃんのこと好きやけど」
ずーっと貴美ちゃんの隣にいられるんや
お月様ありがとう。
一生分の缶詰と引き換えに一生の愛を
人間は愛情表現で唇にちゅーするんやろ
んっ。キキっ?
ちゃーんと勉強したんやで。あとな、この先も知ってんで
そんな事どこで勉強したのっ
えへへ。褒めて褒めて
約束だよ。
うん。ずっと居るよ。
心配せんでええ。私が守ったるから。
彼女は泣き虫である。
そして私のこと大好きみたい。
毎日彼女は朝早くから仕事に出かける。
毎日帰って来ては私を抱きしめてほっぺにちゅーする。
毎日大好きだよという
毎日今日あったことを色々話してくれる。
私も彼女の事が大好きや。
そして一緒のお布団で寝る。
彼女の腕は暖かくて心地いい
「ねえ、キキ。キキが人間だったらいいのにね。そしたらキキが私をもらってくれるでしょう?だって私達両思いだもんね」
うん。私もそう思う。
私は猫。
君は人間って生き物らしい。
だから私らは別々の種族
でも好きって気持ちに変わりはないやん。
神様もし願いが1つ叶うなら私を人間にしてください
そしたら君が悲しい時、君がしてくれるみたいに抱きしめてあげる事ができる。
神様どうかお願いします。私を人間に
「今日もお疲れ様でした」
ベランダで色違いの椅子にそれぞれ座って
貴美ちゃんはなんだか透明の苦い水
私は缶詰で一日の労をねぎらう。
毎日お月さまにお願いしてもまだ人間にはなれないのはなんでやろう
「貴美ちゃんと同じ種族になれますように」
同じ種族になれるなら缶詰一生食べれなくてもいいです。
「ねえ、キキ今日は何してた?」
「今日はな、いつも通りパトロールして家に帰ってひなたぼっこした。あとな新しい友達できた」
「楽しかったんだね」
「うん」
頭を撫で撫でしながら聞いてくるんやけど、その手が気持ちよくて返事するのが大体遅れる。
人間には私達の言葉は通じんっていうけど、私らはそんな事ないと思ってる。たとえ同じ言葉じゃなくても想いは伝わるって。
だってちゃんと会話できてるもん。
私な、夢がかなった時の為に毎日貴美ちゃんが仕事に行ってる間に本棚のご本読んでん。
ちゃんと知識ある人間じゃないとあかんってテレビで言ってたからな
人間になれたら貴美ちゃんとしたい事が沢山あるんや。
一緒にご飯作ったりお出かけしたり
でも毎日何気ない事でええ。2人で同じ時間を共有したい。
そして貴美ちゃんを全力で守る。
泣かせる奴は私が絶対に許さへん。
今の小さい体じゃ守りきれへんもん。
「キキー。疲れたぁ。充電してー」
がばっと抱きついてきた貴美ちゃんにされるがまま、すんすんと嗅がれることもしばしば。
本当に私の事好きやなー。全く
まあ小さい体でも癒すこと位なら出来るみたい。
毎晩一緒にお風呂入るんだけど。
って言っても私は蓋の上に座ってるだけなんやけどね。
お風呂を出て髪を乾かしてる横に座って毛繕いしてれば、しゃがんでその姿をじっと見られる。
「キキって、私のこと大好きだよねー」
「なっ、そっちかて私の事大好きな癖に」
嬉しそうな顔して肘でつんつんされる。
ま、好きなのは間違い無いけどな。
だって私ら両思いやもん
**
今日も朝から日課のご近所パトロール
塀の上を歩いとったら貴美ちゃん見つけた。
今日もお仕事頑張るんやで
あっ!!車がきてる
貴美ちゃん気付いてへん。
左から車来てるって!
あかん危ないっ。
猫のくせに走るの嫌いな私が全力疾走して貴美ちゃんに体当たりした
目が覚めたら知らない天井。
匂い
ふかふかのお布団の中におった。
なんかえらい小さいベッドやな。
がらがらっ。と扉の開く音がして音の方に目を向ければ貴美ちゃんが入ってきた。
「あ。目が覚めたみたいですね。良かったー」
「貴美ちゃん」
「助けて下さってありがとうございます。あれなんで名前・・・」
え?なんで敬語なん?
無事でよかったと伸ばした手
肌色のすらっと長い指
あれ、私の可愛い肉球はどこへ?
えっと…。
「えーっ!!わっ、私っ」
思いっきり起き上がればぎしぎしと痛む体
「あたたたっ」
「まだ寝てないとだめです」
そっと私の体に触れて寝かせてくれる。
なんや貴美ちゃんがいつもより小さい。
いや私が大きくなったんや。
え?本当に人間になれたってこと?
「私何に見えます?」
「へ?」
「人間?」
「よほど強く頭を打ったんですね。」
憐れむように私の腕をさすってくれる。
いや、本気で聞いてるだけや
というか!ここ病院っ?嫌やっ。痛い事されるっ
布団をかぶって震える
「注射いややー」
「注射とかしませんって」
「ほんま?」
布団からちょっぴし顔を出せば微笑んでうなづく貴美ちゃん。
ならええけど。
怖いとかじゃないんよ。痛いの嫌いなだけや。
決して怖い訳ではない。
「あの、病院の方が身分証とかなかったから名前もわからないって」
「キキ」
私の言葉に目を見開く貴美ちゃん
私に見覚えあるやろ?
「キキ・・・さん」
さんやのうて"キキ"やろ
「そう、キキ言います」
「キキさん、本当にありがとうございました。お陰で助かりました。でもキキさんがこんな怪我を」
「そんなんええよ、貴美ちゃんが無事でよかった」
本当によかった。
この傷は勲章や。
ペロリと手の傷を舐める仕草をキョトンとした目で見られる。
あかん。人間は舐めたりせーへんのやった。
「ほっ、ほらね。舐めとけば治るわ」
「・・・そうですね」
ふっと笑ってくれたからほっと胸を撫で下ろす。
色々聞かれるのを避けるために事故の前の記憶がないって言った。
ごめんね、貴美ちゃん嘘ついて。
それから毎日、貴美ちゃんはお仕事終わりに会いに来てくれた。
それにしても二足歩行って難しいんやなぁ。
もっと練習しとくんやった。
病院の廊下をうろうろして練習。
疲れたらつい癖で猫座りしてしまう。
変な視線を感じるけど仕方ないやん。癖やもん
私はここからまだ出られへんのやって。
貴美ちゃんはおうちに帰るからばいばいしないといけないのが辛い。
一緒に寝れない夜がこんなに寂しいやなんて。
ひとりぼっちのお布団はいやや。
ばいばいするのが寂し過ぎて取り留めもない話で引き留めたり。
「明日には退院できそうですって」
「そっか。でも私いくとこなんてあらへん」
だって私のお家は貴美ちゃん家やもん。
どこに行けばいいん。
「じゃあ、うちに来ますか」
「え?いいの?」
「はい、助けてもらったお礼と言ってはなんですが」
人間として貴美ちゃんと一緒に暮らす
夢にまで見た事が現実になろうとしている
翌日、貴美ちゃんが迎えに来てくれて一緒におうちに帰る。
並んで歩いて帰れるなんて嬉しくて思わず手を繋いだ。
ほら、今の私ならおてて握れるんよ。
繋いだ手をぶんぶん振って帰る。
「キキさんってばはしゃいじゃって」
「ほらほら、見て!あの桜の木」
私が小さい時登って降りれなくなって貴美ちゃんが助けてくれた木やで。2人が出会った場所や
「あの桜の木、私のおうちの猫ちゃんと出会った木なんですよ」
私との出会いを嬉しそうに語ってくれる。
私もちゃんと覚えてるであの貴美ちゃんの胸に飛び込んだ日から私の心はずっと貴美ちゃんのものや。
ただいまー我が家
数日ぶりの我が家はえらく小さく感じた。
伸びをしていつもの位置に座る。
「そこ・・・」
「ん?」
「ううん。なんでもない。寛いで下さいね」
「お手伝いしたい」
ソファーから飛び降りて貴美ちゃんのそばに駆け寄る。
ずっと夢見てたの。
キッチンに立つ背中を見ながらいつか一緒にお料理したいって。
「そう。こうやって、上手だよキキちゃん」
「えへへー。本で読んだことはあるんよ」
初めて持つ包丁。
ゆっくりと切っていく。
嬉しい、楽しい、幸せや。
おんなじ物を食べる日が来るとは
2人向かい合って座って囲んだ食卓に並べられた料理たちを見て感嘆のため息が出た。
「いただきまーす」
「すごい。初めて食べた」
こんな味初めてや。
初めて食べるシチューの味
わ。サラダの上のツナが美味しそう
「ツナ好きなの?」
思わず手を伸ばしてツナばっかり食べてた私を見て笑ってる。
「うん、美味しい」
「もっとツナ乗せようか、でもお野菜も食べないとだめだよ」
「わーい、ちゃんと葉っぱも食べる」
結局葉っぱ1:ツナ9くらいで食べちゃったけど。
茶碗洗いも一緒にして、お腹いっぱいだしもう満足でソファーに寝っ転がった。
「お風呂先に入っておいで」
「えー。一緒に入ろうよー」
「キキちゃん甘えん坊さんだね」
背中流しっこして一緒のお風呂に浸かる。
いつも上から見てただけだから不思議な感じ。
お風呂上がったら髪の毛乾かしてもらって温かい風に眠くなっちゃった。
今日こそ私が腕枕する番や。
「キキちゃん近いよ」
「そう?普通やない?」
恥ずかしそうに頬を染めるから思わず頬に擦り寄った。
「キッ、キキちゃ」
「ん?」
「何だか恥ずかしいよ」
「そう?だって大好きやもん全然恥ずかしくない」
はい、どうぞと腕を差し出せば痺れちゃうからと遠慮されたけど眠ちゃった後にこっそり腕枕した。
ほんま幸せ。
「キキちゃん早起きだね」
「朝は得意やねん」
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
いつものルーティーンの始まり。
お見送りしてパトロール
いつもなら1時間位かけて回ってる道もこの大きさだと15分で帰ってきてしまった。
「早く帰ってこないかなー」
お昼寝したり、お勉強したり結局する事はそう変わらないんだけどね。
この体じゃ毛繕う事もしなくていいしする事減った気はする。
その分貴美ちゃんのために時間を使いたくてお洗濯とかお掃除とか始めてみたり。
ある日のご飯の後、ベランダを見つめてなんだか暗い顔してたからどうしたのか聞いた。
貴美ちゃんを悲しませるすべてを排除すると決めたんだから私が解決してあげる。
「私ね、キキって猫ちゃんと暮らしてたの。でも帰って来なくなっちゃって。どうしてるんだろう、お腹すかせてないかな」
泣き出した彼女をそっと抱きしめる
これや。私がやりたかったんはこれ。
でも泣かせてる原因は紛れもない私自身で。
これでいいん?私は。
泣かせるやつは許さんって言ってたのに私がそうなっていいん。
「帰ってくるよ、きっと」
「キキちゃん?」
「今日までお世話になりました。ありがとう」
背中をぽんぽんと撫でて離れる。
私の夢は人間になること。
でももっと大事な夢は彼女が笑って暮らすこと。
私の夢のために彼女が泣くなら私は人間になれんでもええ。
幸せな数日間やった。
神様に感謝や。
「どこに行くつもりなの」
「記憶が戻ってん。おうちに帰る」
「そう、寂しいな。また会えるよね」
「そやなぁ」
大丈夫や。
ずっとそばにいるから。
人間のキキとしてはもう会われへんけど。
「なあ、最後にベランダでお疲れ様会しよう」
「お疲れ様会・・・」
「ほらほら、この苦い水持って」
「白ワインね」
貴美ちゃんを背に冷蔵庫からいつもの水を取り出してグラスに注ぐ。
私は戸棚の缶詰を・・・
「なんでそれ知って・・・」
今のサイズならいつもなら届かない戸棚にも手が届いて自分でも缶詰取れるもんねー。
戸棚に手を伸ばした時に貴美ちゃんが呟いてはっとする。
あかん。人間は私の缶詰は食べへんもんな。
伸ばした手を引っ込めて
「なあ、お水が欲しい」
「あっ、うん。」
冷蔵庫からお水を出してグラスに注いで手渡してくれる。
一緒にベランダに出て、いつもの椅子に座る。
私の横顔をじっと見つめられてる気がするけど私は月の神様へのお礼を心の中で唱えた。
神様、ありがとう。
私は貴美ちゃんの幸せが一番なんです。
どうか元の私に戻して下さい。
「じゃあ、またね」
「帰るの明日の朝でもいいんじゃないの」
「別れがたくなるから今帰るわ」
きっと夜のうちに戻っちゃうからちゃんとお別れしてから戻りたい。
マンションを出てたどり着いた人気のない草っ原、雲間から月が顔を出して私を照らす。
どんどん大きくなる景色。
あーあ本当に戻ってしもた。
いや、これでいいんや。
これからも一緒にはいれる訳だし。
うちに向けて歩き出す。
「キキっ!どこ行ってたの!心配したんだよ」
ベランダから舞い戻った私の姿を見つけて走ってきて苦しいぐらい抱きしめてくれる。
涙でぐしゃぐしゃの顔を私の頬に擦り寄せてくる。
冷たいって。泣かんとって。
これからはずーっと一緒なんやから。
「キキ、この手どうしたの」
手の傷は消える筈もなく私の腕を掴んで眉を顰める。
「この傷・・・」
腕から抜け出してソファーのいつもの定位置に座る。
久しぶりの毛繕い
なんだか変な感じ。
私がまたいなくなるんじゃないかと思ってるのかずっと私の動きを追い続けられてる。
そんな見られたら恥ずかしいやん。
トイレとかしたい時だってあるんやし。
久しぶりの猫の姿でのベランダお疲れ様会
いつも通り椅子に座る。
「キキがいない間にね、おんなじ名前の女の子に出会ったんだよ」
「おんなじ子なんやで実は」
「大好きになっちゃったんだ。いつかもっと仲良くなれたらいいな」
そう言って月を見上げた
私だってなりたいわ。
なんなら恋人ってやつに
でももう叶わへんけど。
「ねえ、キキ。あなたなんじゃないの?」
え?思わず貴美ちゃんを見上げる。
その目は真剣そのものでごくりと息を呑んだ
「私を助けてくれたキキさんは」
私やで。
届かない声を上げる。
「この傷。絶対そう。私がキキに会いたいって言ったからいなくなっちゃったの?」
「そやけど、大丈夫や。ずっと側におるで」
「キキ」
頭を撫でられてすりっと貴美ちゃんの手に頬擦りする。
「どんなキキでも好きなんだよ、でもキキちゃんに会いたい」
「私は一緒にいれるならどんな姿でもええ。出来る事なら抱きしめてあげれるサイズでいたいけど」
「もう戻ってこないのかなキキちゃんは」
貴美ちゃんが望んでくれるなら猫でも人間でも草にでもなるわ。
また月が顔を出して私を照らすけどそんな簡単にまた人間に戻る奇跡なんて起きないのわかってる。
「なーんてね。寒くなってきたね。寝ようか」
私を抱き上げて部屋の中へ入る。
今の私は彼女を抱き上げることもできんのかぁ。
「キキ、大好き」
「私も大好きや」
久しぶりの腕枕。
もう私が腕枕してあげる日は来ないんだな。
でもきっといつかこんな気持ちも薄れていってまた元通りになる。
今日はもうちょっとくっついていたい。
首元におでこを寄せて眠りについた。
「起きて!起きてキキちゃん」
「んー。どないしたん、G?Gやったら私苦手やから取ってあげられへんよ」
「そんなんじゃない。いつもキキの方が先に逃げるじゃん。やっぱりキキだったんだね」
「へ?」
凄い勢いで揺さぶって話しかけられたから眠いまなこを擦りながら答えれば
普通に会話が成り立ってて、ぎゅっと抱きつかれたその感覚で自分がまた人間の姿に戻っているのだと確信した。
え?私・・・
「猫のキキは戻ってこんよ?ええの?」
「どのキキも好きだけど、キキにぎゅってされると安心するの」
ええよ。ずーっとそばにいたるから。
そっと抱きしめる。
「美猫だと思ってたけど、人間になったらこんな美人になるんだね」
「ほんと、貴美ちゃんって私の事好きやなぁ」
「好きだよ」
「まあ、私の方が貴美ちゃんのこと好きやけど」
ずーっと貴美ちゃんの隣にいられるんや
お月様ありがとう。
一生分の缶詰と引き換えに一生の愛を
人間は愛情表現で唇にちゅーするんやろ
んっ。キキっ?
ちゃーんと勉強したんやで。あとな、この先も知ってんで
そんな事どこで勉強したのっ
えへへ。褒めて褒めて