K.TUKISHIRO
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「もー大好きです」
「れいこちゃんありがとう。私もれいこちゃん好きよ」
「嬉しいです。それって両思いって事でいいんですか」
「え?うん、両思いっていうか・・・」
お稽古場でいつものご挨拶好きですを頂きました。
何だか最近れいこちゃんに懐かれている。
よく話しかけてくれるし、なんならお稽古中も一緒にいる。
お菓子もらったり、お休みの日にお茶したり。
お互いが尊敬し合っているというのを両思いって言うならそれは両思いなのかもしれない。
「じゃあ、私達は恋人同士という事でいいんですよね?」
「え?」
それって恋愛的な意味でって事なの?
呆然とする私を置き去りにわーいとスキップでお稽古場のど真ん中でさくらと話してるたまちゃんのとこに行ってしまった。
自然と目で追って眺めていればたまちゃんのかなり驚いた表情。
そして目があった。何か言いたそう。
きっと報告したんだろうな。
ちょ、ちょっと待って。
れいこちゃんの事は大好きだけど、恋愛かって言われたらよく分からない。
だって6期も下の可愛い下級生。
あやちゃん、あなたの可愛子ちゃんが暴走してます。
はっと我に返り慌ててれいこちゃんを止めに入る。
「ちょっ。れいこちゃん」
「貴美さんは私のなので手を出さないで下さいねー」
「れいこちゃん」
止めに入った私の腰を抱き寄せ恋人宣言されてしまった。
「ちょっ、れいこちゃん来てっ」
みんなの温かい視線にいたたまれなくなり、腕を掴んでお稽古場から出て近くの空き教室に入った。
「れいこちゃん、ごめん。私の好きとれいこちゃんの言う好きは違うの」
きっぱり言ったものの、れいこちゃんが捨て犬みたいな顔してそうで下げた頭をあげられないでいた。
「ああ、貴美さんは照れてるんですね。」
うん?君の思考回路はどうなっているのかな。
上から降ってきた言葉の意味が分からなくて顔を上げれば、全然しょげてない。寧ろにやりとした顔をしていてぐっと抱き寄せられ、気が付けば唇を奪われていた
「んっ」
「可愛い」
「だからっ、れいこちゃんは好きだけどこういう事するような好きとは違う。」
そう言ってるのに抱き締められたまま腕が緩められる気配はない。
身をよじって抜け出そうとするけどさすが男役。
力では勝てそうもない。
なので、私はつんとれいこちゃんの脇腹をつついた。
「ひゃあっ」
女の子みたいな声を上げて、飛び退く姿に思わず笑いがこみ上げてしまう。
まあ元々女の子なんだけど。
「ごめん、でもこうしないと離してくれないでしょう」
「私の事嫌いですか?」
「嫌いじゃないよ。そういう好きじゃないだけ」
「じゃあ好きになってもらえればいいだけですよね、頑張ります」
だめだこれは。
なんとかお付き合いは一旦保留というところまでは漕ぎ着けたんだけど
それからと言うもの、今まで以上にれいこちゃんの熱い想いを向けられている。
行く先々に待ち構え、何をするにも一緒
お稽古場でも移動の時も当たり前のように横に座ってくる。
「貴美さん、はいあーん」
「あーん」
「美味しいですか?」
「ん、美味しい」
今日も甲斐甲斐しく世話をされている。
もうこれにも慣れたんだけど、只今餌付け真っ最中。
最初こそ抵抗してたけど、後が大変なので大人しく食べさせてもらってるのが一番平和
甘いの嫌いなくせにいつも新しいお菓子見つけたからって買ってきてくれる。
「付いてますよ」
私を覗き込んだれいこちゃんは頬に手を当てて親指で口の端を拭ってくれた。
「あまい」
その指をぺろりと舐めてその甘さに不服そうな顔をしてるけど、私の心臓はその行為の破壊力にうるさいくらい音を立てていた。
***
「貴美さーん。これ見てくださーい」
「毎日大変そうだね」
「うん」
こちらに手を振って走ってくるれいこちゃんを見つめてあやちゃんが苦笑いする。
「愛され過ぎて困ってますって感じだね」
「あやちゃん、笑い事じゃないんだよ」
「いい事じゃん」
そりゃあ嫌われるより好かれてる方が良いけどさ。
愛が重いんだよ。
その愛に応えれる自信ないよ。
「れいこちゃん、貴美が明日の休みお出かけしようって」
「え?」
「本当ですか?やったー!どこ行きます?」
やられた。
あやちゃんのいじわる。
明日はお家でのんびりしようと思ってたのにそんな嬉しそうにされたら行かないなんて言えないじゃん。
「折角なんだからもっと良く知って答え出したらいいじゃん」
私の頭をぽんぽんと撫でて去っていった。
答えもなにも仲の良い先輩後輩でいたいだけ。
「じゃあ今夜ご飯食べながら明日の計画立てましょうね」
「え?」
「あ、今日からお泊まり会とかどうですか」
「いや、それはいいや」
「そっか。デートは待ち合わせの方がドキドキしますもんね」
いや、そうじゃなくて・・・。
この強敵をどうにかして下さい。
***
翌日
待ち合わせ場所にたどり着けばれいこちゃんの後ろ姿を見つけてドキドキしてしまう。立ってるだけでも様になるんだな。
でもまだ待ち合わせの15分前なんだけど。
上級生を待たせまいとプライベートでも頑張ってくれてるんだな。
「れいこちゃん」
後ろから声を掛ければ振り返ってじっと私を見たまま何も言わないから不安になる。え?格好変だったかな
「れいこちゃん・・・?」
「それって私の為にお洒落してきてくれたんですか」
あれ、いつもと違うかな
思わず自分の姿を見やる。
デートとか言われたから少し意識してしまったのは確かなんだけど、髪型とか気合い入れすぎちゃったかな。
「どうしよう。可愛すぎてみんなに見せたくないんですけど」
「なっ・・・何言ってるの」
甘いセリフに体温が上がり顔が赤くなるのが分かる。
「絶対、絶対私のそばから離れないで下さいね」
「?」
「声かけられたら困る」
「ふふっ。そんな人いないよ」
「これだから自覚ない人は」
飽きれたように行きましょうと歩き出すれいこちゃん。
歩き出す瞬間、くるりとこちらを向いて身体を曲げたれいこちゃんの頬が私の頬に触れ、囁くようなれいこちゃんのハスキーな声
「本当は手とか繋ぎたいんですけどね。流石に外ではダメかなって」
「なっ。外じゃなくてもだめっ」
言い返した私ににこりと余裕の笑みを浮かべてウインクを一つこの至近距離で飛ばしてきた。
普段は可愛い犬のくせにこの小悪魔め
「わー。これ可愛い」
「お揃いとかいいですよね」
立ち寄ったジュエリーショップでとっても可愛い指輪を見つけた。
れいこちゃんの言葉はスルーするとしよう。
「このマグカップ可愛くないですか?」
「可愛い」
「貴美さんがこっちで、私がこっちなんてどうですか?」
雑貨屋さんで色違いのマグカップを両手に持って見せてくれる。
うん、可愛いと思うけど
れいこちゃんの妄想癖が顔を出して、朝目覚めた私にコーヒーを淹れてくれる用らしいんだけどそれはれいこちゃん家か、私の家に置いておいてお泊まりするって事だよね。
楽しそうに私との朝を語ってくれるけど安定の重さ加減。
かと思いきや人とぶつかりそうになった私の腰にすっと手を添えて自分の方に引き寄せるスマートな所作に感心する。
これがギャップ萌えってやつなんだろうな。
他の子にもこんな事さらっとやってのけるのかなと思ったらちょっとだけ気持ちが重くなった。
「どうしました?」
「なんでもない」
「さては見惚れてましたね」
そっ、そんなわけ
「まあ、私の貴美さんに触れようなんざ100万年早いって話です」
れいこちゃんのではないよ。
それにわざとぶつかろうとした訳ではないし。
なんなら私がふらふらしてたのかもしれないし。
きゃっきゃしてるくせに終始スマートなエスコートをしてもらってなんだか調子が狂う
「楽しそうだね」
「貴美さんとなら何だって楽しいです」
「れいこちゃんって真っ直ぐだよね」
「貴美さんも素直に認めたらいいじゃないですか、私が好きだって」
「ふふっ。れいこちゃんらしい」
1日なんて本当にあっという間でもうすっかり暗くなってしまった。
「じゃあ、ここで」
「はい。ああ、一日中一緒にいたらこんなに別れ際って寂しいんですね。早く一緒の家に帰れるようになりたいです」
一緒の家?同棲って事?話が飛躍しすぎじゃないかい。
「楽しかった。そんな日が来るといいね、おやすみ」
「え?それって」
デートの最後位少し甘くてもいいんじゃないかなと思って思い切って言ってみたら物凄く可愛い顔してたから恥ずかしくなって逃げるようにれいこちゃんに背を向けた。
「貴美さんっ」
後ろから思いっきり抱きしめられて、れいこちゃんの吐息が耳をくすぐる
「最後位許されるかなって」
「はっ、恥ずかしいよ」
「大好きって事伝えとかなきゃと思って。」
そんな事言われたらちょっとだけ寂しくなっちゃって、くるりとれいこちゃんの方を向いてぎゅっと抱きついた。
温かい。
「じゃあね」
「なんでそんな可愛い事するんですか。やだ、離したくない」
ぎゅぎゅーっと腕に閉じ込められて解放して貰えそうにもない。
「見られちゃうよ」
「見せつけましょう」
本気で離して貰えなくてやっと腕から解放されたのは随分と時間が経ってからだった。
***
何だかんだで楽しかったお出かけから数日
れいこちゃんはパタリと近寄って来なくなった。
おかしい。何か悪いことした?
普通に挨拶はするし、雑談もする。
なのに今までみたいな甘い感じではないのは明らかで。
なんだろう距離があるというか。
嫌われるような事しちゃったかな。
他の子と楽しそうに並んで歩いてるのを見るとなんだか胸が苦しくて見てられなくて用事もない教室に逃げ込んでみたり
ついに我慢できず、お稽古終わりにれいこちゃんを呼び止めた。
「れいこちゃん」
「貴美さん。どうしたんですか」
きょとんとした顔で見つめられるけど、いざ本人を目の前にすると言葉が出てこない。
問い詰めてどうするのよ。
「れいこさーん、早く行きましょう」
「何にもないなら私大事な約束が・・・」
遠くかられいこちゃんを呼んでる可愛い他組の娘役さん。
チラッとあの子に目をやったれいこちゃん
あの子と約束してるのか。
「行かないで」
思わずれいこちゃんの服を掴んでしまった。
自分のした行動にびっくりしてぱっとその手を離して俯けばれいこちゃんの静かな声が降ってきて思わず体に力が入る。
「何で行かないで欲しいんですか」
「え・・・あの」
「教えてください」
「れいこちゃんがすき・・・だから行かないで欲しい」
「じゃあ私と付き合ってくれるって事ですよね」
顔を上げて頷くしかできない私にいつもの笑顔で嬉しそうに抱きついてくるれいこちゃんにほっとした。
「やっと捕まえた」
「なんか最近冷たかったよね」
「押してダメなら引いてみろっていうじゃないですか。しつこい男は嫌われるって」
「それってジャンヌの・・・」
「だから引いてみました。やっぱり効果ありですね」
綺麗な顔で笑うれいこちゃんに一気に力が抜ける。
つまりは彼女の手のひらの上で転がされていたのだ。
「・・・別れる」
「えっ!何でっ」
大きな目を見開いて泣きそうな顔で腰のあたりに縋り付いてくるれいこちゃんを振り解く。
「やだやだやだ。やっと今付き合い始めたばっかりなのに」
「最短記録だね」
「何してるの、れいこ」
通りかかったたまちゃんが呆れたような顔で私たちを見つめる
「たまちゃん、この犬あげる」
「やだ。捨てないで」
「面倒くさそうだからいらないです」
「珠城さんも止めて下さいよ、貴美さん私の事大好きなのに私を捨てようとしてるんですよ」
纏わりついたままたまちゃんに必死の訴えをしてるけど、大好きなのにと言い切ってしまう清々しさにびっくりする。
「離してれいこちゃん」
「やだ」
「早く行かないと大事な約束したあの可愛い娘役さんに怒られるよ」
「え、なにれいこ二股?」
たまちゃんが素っ頓狂な声をあげてるけど慌てたように思いっきり首を振った。
「違いますっ。次号のGRAPHの打ち合わせが」
「大事な約束って言ったじゃん」
「やきもち妬いてくれるかなって」
なんでちょっとはにかんだような顔するわけ。
ちょっと可愛くて許してもいいいかなって思ってしまうじゃない。
「れいこちゃんなんて嫌い」
「嘘でしょう。貴美さんに捨てられたら私死んじゃいます」
「どうぞ」
「やだやだ。まだ貴美さんとしたい事が沢山あるんです死にたくない」
「もう面倒くさい」
好き同士なはずのに一緒にいれないとかおかしいと騒ぐれいこちゃんを一生懸命引き剥がそうとするけど、てこでも離れない気らしい。
「ねえ、打ち合わせ遅れるよ」
「打ち合わせなんて行ってる場合じゃないです」
「いや、仕事して?」
「無理。仕事より大事な物を失いそうになってるのに」
なんでそんなにあっさり甘い台詞が次から次へと出てくるんだろうって感心しちゃう。
嬉しくなってしまってる私も大概だけど。
「もう、分かったから。別れないから」
「良かったぁ。大好きって言って下さい」
「ほら早く行っておいで」
「ねえ」
「だっ、大好きだから。ほら早く行かないと」
「すぐ帰ってくるんで一緒に帰りましょうね」
たまちゃんもいるのに何て事言わせるの。
恥ずかし過ぎる。
何度も何度も振り返りながら打ち合わせへ向かう背中をたまちゃんと見送った。
貴美さん、れいこに甘いよね
やっぱり?許すのやめようかな
珠城さん!余計な事言わないでくださいよっ
「れいこちゃんありがとう。私もれいこちゃん好きよ」
「嬉しいです。それって両思いって事でいいんですか」
「え?うん、両思いっていうか・・・」
お稽古場でいつものご挨拶好きですを頂きました。
何だか最近れいこちゃんに懐かれている。
よく話しかけてくれるし、なんならお稽古中も一緒にいる。
お菓子もらったり、お休みの日にお茶したり。
お互いが尊敬し合っているというのを両思いって言うならそれは両思いなのかもしれない。
「じゃあ、私達は恋人同士という事でいいんですよね?」
「え?」
それって恋愛的な意味でって事なの?
呆然とする私を置き去りにわーいとスキップでお稽古場のど真ん中でさくらと話してるたまちゃんのとこに行ってしまった。
自然と目で追って眺めていればたまちゃんのかなり驚いた表情。
そして目があった。何か言いたそう。
きっと報告したんだろうな。
ちょ、ちょっと待って。
れいこちゃんの事は大好きだけど、恋愛かって言われたらよく分からない。
だって6期も下の可愛い下級生。
あやちゃん、あなたの可愛子ちゃんが暴走してます。
はっと我に返り慌ててれいこちゃんを止めに入る。
「ちょっ。れいこちゃん」
「貴美さんは私のなので手を出さないで下さいねー」
「れいこちゃん」
止めに入った私の腰を抱き寄せ恋人宣言されてしまった。
「ちょっ、れいこちゃん来てっ」
みんなの温かい視線にいたたまれなくなり、腕を掴んでお稽古場から出て近くの空き教室に入った。
「れいこちゃん、ごめん。私の好きとれいこちゃんの言う好きは違うの」
きっぱり言ったものの、れいこちゃんが捨て犬みたいな顔してそうで下げた頭をあげられないでいた。
「ああ、貴美さんは照れてるんですね。」
うん?君の思考回路はどうなっているのかな。
上から降ってきた言葉の意味が分からなくて顔を上げれば、全然しょげてない。寧ろにやりとした顔をしていてぐっと抱き寄せられ、気が付けば唇を奪われていた
「んっ」
「可愛い」
「だからっ、れいこちゃんは好きだけどこういう事するような好きとは違う。」
そう言ってるのに抱き締められたまま腕が緩められる気配はない。
身をよじって抜け出そうとするけどさすが男役。
力では勝てそうもない。
なので、私はつんとれいこちゃんの脇腹をつついた。
「ひゃあっ」
女の子みたいな声を上げて、飛び退く姿に思わず笑いがこみ上げてしまう。
まあ元々女の子なんだけど。
「ごめん、でもこうしないと離してくれないでしょう」
「私の事嫌いですか?」
「嫌いじゃないよ。そういう好きじゃないだけ」
「じゃあ好きになってもらえればいいだけですよね、頑張ります」
だめだこれは。
なんとかお付き合いは一旦保留というところまでは漕ぎ着けたんだけど
それからと言うもの、今まで以上にれいこちゃんの熱い想いを向けられている。
行く先々に待ち構え、何をするにも一緒
お稽古場でも移動の時も当たり前のように横に座ってくる。
「貴美さん、はいあーん」
「あーん」
「美味しいですか?」
「ん、美味しい」
今日も甲斐甲斐しく世話をされている。
もうこれにも慣れたんだけど、只今餌付け真っ最中。
最初こそ抵抗してたけど、後が大変なので大人しく食べさせてもらってるのが一番平和
甘いの嫌いなくせにいつも新しいお菓子見つけたからって買ってきてくれる。
「付いてますよ」
私を覗き込んだれいこちゃんは頬に手を当てて親指で口の端を拭ってくれた。
「あまい」
その指をぺろりと舐めてその甘さに不服そうな顔をしてるけど、私の心臓はその行為の破壊力にうるさいくらい音を立てていた。
***
「貴美さーん。これ見てくださーい」
「毎日大変そうだね」
「うん」
こちらに手を振って走ってくるれいこちゃんを見つめてあやちゃんが苦笑いする。
「愛され過ぎて困ってますって感じだね」
「あやちゃん、笑い事じゃないんだよ」
「いい事じゃん」
そりゃあ嫌われるより好かれてる方が良いけどさ。
愛が重いんだよ。
その愛に応えれる自信ないよ。
「れいこちゃん、貴美が明日の休みお出かけしようって」
「え?」
「本当ですか?やったー!どこ行きます?」
やられた。
あやちゃんのいじわる。
明日はお家でのんびりしようと思ってたのにそんな嬉しそうにされたら行かないなんて言えないじゃん。
「折角なんだからもっと良く知って答え出したらいいじゃん」
私の頭をぽんぽんと撫でて去っていった。
答えもなにも仲の良い先輩後輩でいたいだけ。
「じゃあ今夜ご飯食べながら明日の計画立てましょうね」
「え?」
「あ、今日からお泊まり会とかどうですか」
「いや、それはいいや」
「そっか。デートは待ち合わせの方がドキドキしますもんね」
いや、そうじゃなくて・・・。
この強敵をどうにかして下さい。
***
翌日
待ち合わせ場所にたどり着けばれいこちゃんの後ろ姿を見つけてドキドキしてしまう。立ってるだけでも様になるんだな。
でもまだ待ち合わせの15分前なんだけど。
上級生を待たせまいとプライベートでも頑張ってくれてるんだな。
「れいこちゃん」
後ろから声を掛ければ振り返ってじっと私を見たまま何も言わないから不安になる。え?格好変だったかな
「れいこちゃん・・・?」
「それって私の為にお洒落してきてくれたんですか」
あれ、いつもと違うかな
思わず自分の姿を見やる。
デートとか言われたから少し意識してしまったのは確かなんだけど、髪型とか気合い入れすぎちゃったかな。
「どうしよう。可愛すぎてみんなに見せたくないんですけど」
「なっ・・・何言ってるの」
甘いセリフに体温が上がり顔が赤くなるのが分かる。
「絶対、絶対私のそばから離れないで下さいね」
「?」
「声かけられたら困る」
「ふふっ。そんな人いないよ」
「これだから自覚ない人は」
飽きれたように行きましょうと歩き出すれいこちゃん。
歩き出す瞬間、くるりとこちらを向いて身体を曲げたれいこちゃんの頬が私の頬に触れ、囁くようなれいこちゃんのハスキーな声
「本当は手とか繋ぎたいんですけどね。流石に外ではダメかなって」
「なっ。外じゃなくてもだめっ」
言い返した私ににこりと余裕の笑みを浮かべてウインクを一つこの至近距離で飛ばしてきた。
普段は可愛い犬のくせにこの小悪魔め
「わー。これ可愛い」
「お揃いとかいいですよね」
立ち寄ったジュエリーショップでとっても可愛い指輪を見つけた。
れいこちゃんの言葉はスルーするとしよう。
「このマグカップ可愛くないですか?」
「可愛い」
「貴美さんがこっちで、私がこっちなんてどうですか?」
雑貨屋さんで色違いのマグカップを両手に持って見せてくれる。
うん、可愛いと思うけど
れいこちゃんの妄想癖が顔を出して、朝目覚めた私にコーヒーを淹れてくれる用らしいんだけどそれはれいこちゃん家か、私の家に置いておいてお泊まりするって事だよね。
楽しそうに私との朝を語ってくれるけど安定の重さ加減。
かと思いきや人とぶつかりそうになった私の腰にすっと手を添えて自分の方に引き寄せるスマートな所作に感心する。
これがギャップ萌えってやつなんだろうな。
他の子にもこんな事さらっとやってのけるのかなと思ったらちょっとだけ気持ちが重くなった。
「どうしました?」
「なんでもない」
「さては見惚れてましたね」
そっ、そんなわけ
「まあ、私の貴美さんに触れようなんざ100万年早いって話です」
れいこちゃんのではないよ。
それにわざとぶつかろうとした訳ではないし。
なんなら私がふらふらしてたのかもしれないし。
きゃっきゃしてるくせに終始スマートなエスコートをしてもらってなんだか調子が狂う
「楽しそうだね」
「貴美さんとなら何だって楽しいです」
「れいこちゃんって真っ直ぐだよね」
「貴美さんも素直に認めたらいいじゃないですか、私が好きだって」
「ふふっ。れいこちゃんらしい」
1日なんて本当にあっという間でもうすっかり暗くなってしまった。
「じゃあ、ここで」
「はい。ああ、一日中一緒にいたらこんなに別れ際って寂しいんですね。早く一緒の家に帰れるようになりたいです」
一緒の家?同棲って事?話が飛躍しすぎじゃないかい。
「楽しかった。そんな日が来るといいね、おやすみ」
「え?それって」
デートの最後位少し甘くてもいいんじゃないかなと思って思い切って言ってみたら物凄く可愛い顔してたから恥ずかしくなって逃げるようにれいこちゃんに背を向けた。
「貴美さんっ」
後ろから思いっきり抱きしめられて、れいこちゃんの吐息が耳をくすぐる
「最後位許されるかなって」
「はっ、恥ずかしいよ」
「大好きって事伝えとかなきゃと思って。」
そんな事言われたらちょっとだけ寂しくなっちゃって、くるりとれいこちゃんの方を向いてぎゅっと抱きついた。
温かい。
「じゃあね」
「なんでそんな可愛い事するんですか。やだ、離したくない」
ぎゅぎゅーっと腕に閉じ込められて解放して貰えそうにもない。
「見られちゃうよ」
「見せつけましょう」
本気で離して貰えなくてやっと腕から解放されたのは随分と時間が経ってからだった。
***
何だかんだで楽しかったお出かけから数日
れいこちゃんはパタリと近寄って来なくなった。
おかしい。何か悪いことした?
普通に挨拶はするし、雑談もする。
なのに今までみたいな甘い感じではないのは明らかで。
なんだろう距離があるというか。
嫌われるような事しちゃったかな。
他の子と楽しそうに並んで歩いてるのを見るとなんだか胸が苦しくて見てられなくて用事もない教室に逃げ込んでみたり
ついに我慢できず、お稽古終わりにれいこちゃんを呼び止めた。
「れいこちゃん」
「貴美さん。どうしたんですか」
きょとんとした顔で見つめられるけど、いざ本人を目の前にすると言葉が出てこない。
問い詰めてどうするのよ。
「れいこさーん、早く行きましょう」
「何にもないなら私大事な約束が・・・」
遠くかられいこちゃんを呼んでる可愛い他組の娘役さん。
チラッとあの子に目をやったれいこちゃん
あの子と約束してるのか。
「行かないで」
思わずれいこちゃんの服を掴んでしまった。
自分のした行動にびっくりしてぱっとその手を離して俯けばれいこちゃんの静かな声が降ってきて思わず体に力が入る。
「何で行かないで欲しいんですか」
「え・・・あの」
「教えてください」
「れいこちゃんがすき・・・だから行かないで欲しい」
「じゃあ私と付き合ってくれるって事ですよね」
顔を上げて頷くしかできない私にいつもの笑顔で嬉しそうに抱きついてくるれいこちゃんにほっとした。
「やっと捕まえた」
「なんか最近冷たかったよね」
「押してダメなら引いてみろっていうじゃないですか。しつこい男は嫌われるって」
「それってジャンヌの・・・」
「だから引いてみました。やっぱり効果ありですね」
綺麗な顔で笑うれいこちゃんに一気に力が抜ける。
つまりは彼女の手のひらの上で転がされていたのだ。
「・・・別れる」
「えっ!何でっ」
大きな目を見開いて泣きそうな顔で腰のあたりに縋り付いてくるれいこちゃんを振り解く。
「やだやだやだ。やっと今付き合い始めたばっかりなのに」
「最短記録だね」
「何してるの、れいこ」
通りかかったたまちゃんが呆れたような顔で私たちを見つめる
「たまちゃん、この犬あげる」
「やだ。捨てないで」
「面倒くさそうだからいらないです」
「珠城さんも止めて下さいよ、貴美さん私の事大好きなのに私を捨てようとしてるんですよ」
纏わりついたままたまちゃんに必死の訴えをしてるけど、大好きなのにと言い切ってしまう清々しさにびっくりする。
「離してれいこちゃん」
「やだ」
「早く行かないと大事な約束したあの可愛い娘役さんに怒られるよ」
「え、なにれいこ二股?」
たまちゃんが素っ頓狂な声をあげてるけど慌てたように思いっきり首を振った。
「違いますっ。次号のGRAPHの打ち合わせが」
「大事な約束って言ったじゃん」
「やきもち妬いてくれるかなって」
なんでちょっとはにかんだような顔するわけ。
ちょっと可愛くて許してもいいいかなって思ってしまうじゃない。
「れいこちゃんなんて嫌い」
「嘘でしょう。貴美さんに捨てられたら私死んじゃいます」
「どうぞ」
「やだやだ。まだ貴美さんとしたい事が沢山あるんです死にたくない」
「もう面倒くさい」
好き同士なはずのに一緒にいれないとかおかしいと騒ぐれいこちゃんを一生懸命引き剥がそうとするけど、てこでも離れない気らしい。
「ねえ、打ち合わせ遅れるよ」
「打ち合わせなんて行ってる場合じゃないです」
「いや、仕事して?」
「無理。仕事より大事な物を失いそうになってるのに」
なんでそんなにあっさり甘い台詞が次から次へと出てくるんだろうって感心しちゃう。
嬉しくなってしまってる私も大概だけど。
「もう、分かったから。別れないから」
「良かったぁ。大好きって言って下さい」
「ほら早く行っておいで」
「ねえ」
「だっ、大好きだから。ほら早く行かないと」
「すぐ帰ってくるんで一緒に帰りましょうね」
たまちゃんもいるのに何て事言わせるの。
恥ずかし過ぎる。
何度も何度も振り返りながら打ち合わせへ向かう背中をたまちゃんと見送った。
貴美さん、れいこに甘いよね
やっぱり?許すのやめようかな
珠城さん!余計な事言わないでくださいよっ