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線香花火
儚くも美しい
「ねえ、さやちゃん花火しよう」
「え?花火大会あってるやん。そっちに行こうよ」
「人混みは苦手なの」
数日前のこと
幼馴染の貴美から花火のお誘い
折角なら花火大会に行こうと言ったのに彼女はそう言った。
知ってる。彼女の優しさだって。
どうしても目立っちゃうからね。私はいいんやけど。
夏休みで実家に帰って来てるらしい貴美の家の庭で花火の約束をした。
貴美は就職で東京に行ってしまってお互い忙しいのもあり久しく会えてない。
花火といえば浴衣だって騒ぐから仕方なく浴衣でやってきた。
どれを着ていこうか何時間も悩んだのは秘密だけど。
貴美ん家も久しぶりやな。
昔はよく遊んだけどなぁ。
昔ながらの和風のおうちで、でっかい庭がある。
毎年縁側から並んで地元の花火大会を見たっけ。
今じゃ会場が変わっちゃって家からは見えないけど。
あの頃から貴美の横顔を見るのが好きで、貴美の隣には私がずっといるんだって思ってた。
結局意気地なしの私はいいお友達を演じて、この気持ちを伝えることができないまま劇団に入って今日まできてしまったのだけど。
ぴんぽんを押せばパタパタと走る音が近づいて来て玄関を開ける人影にさえ心躍る。
「さやちゃーん」
「貴美」
「いらっしゃい」
ガラガラっと横引きの玄関が開けば満面の笑みの貴美に招き入れられた。
「綺麗」
「え?」
「なんでもあらへん」
前を歩く背中を見つめながら思わずこぼれた言葉。
浴衣姿の貴美が綺麗で。
振り返った本人には恥ずかしくて絶対言わんけど
家の中も変わってないな。
「あれ、おばちゃん達は?」
「おばあちゃん家」
「そっか」
スイカを切ってくれてて、縁側で月を見ながら食べた後線香花火をする事にした。
「先に落ちた方が相手の言うことを1個聞く」
「負ける気がせんなぁ」
袖を捲って腕を回す仕草をすればくすくすと笑って線香花火を1本くれた。
3回勝負で決めることになった。
2人並んでしゃがんで火をつける。
「このまま時が止まったらいいのに」
貴美の横顔はなんだか切なそうな儚くて消えてしまいそうだった。
「あっ」
「あー。貴美の負け」
悔しそうに落ちた火玉を見つめる貴美に袋から2本取り出して1本を手渡す。
「歌劇団さんってさ、結婚とか出来ないんだよね?」
「そうやなあ」
「いいなぁ。もうさ、結婚はまだなのかって煩いんだもん」
「あはは、そんな歳になったもんな」
パチパチと花火の音と、ふと始まった結婚の話題。
まあ、それなりの歳になったしそう言う話題も出てくるよな。
「今度ね、お父さんの取引先の人とお見合いするの」
「え?」
「あ、さやちゃんの負けー」
花火の光を見つめたままの貴美から出た言葉に動揺して手元が揺れたらしく、ぽとりと落ちた火玉
私が負けたことに喜ぶ貴美とは裏腹に私の心臓はばくばくしていた。
貴美の隣を私じゃない誰かが歩くの?
最後の勝負
同時にろうそくから火を灯す。
「さやちゃん、私が結婚する時は結婚式来てくれる?」
「え?」
「スピーチとかして欲しいなぁ。あ、でもそういうのダメなのかな」
スピーチ?そんなのする訳ないやん。
他の誰かとの幸せなんて祝福してあげれる訳がない
「なに、貴美は私にお祝いのスピーチさせたいん?」
「させたいっていうか、して貰えたら嬉しいなぁって。だって・・・あっ」
ぽとりと落ちた貴美の線香花火
「あーあ。私の負けか」
「私の勝ちやな」
勝負のついた私達は縁側に腰掛ける。
貴美が足をぷらぷらさせながらこちらを向いた。
「さやちゃんの言うこと聞くよ。何がいい?」
残念そうに私の方を向いて聞いてくる。
私の願い事は勝負をすると決めた時から決まってる。
「お見合いに行くの中止する事」
「え?なにそれ私だけ結婚するのを阻止しようとしてる?」
「あと、私と付き合う事」
「え?」
「あと、」
「待って待って。3個になってる」
「ばれた?」
まあ、2個目が私の1番の願いやけど予想外のお見合い話とかあったからまずは中止が先。
戯けて笑えば、私の言葉を反芻するように考え込んでいる。
「さやちゃんと付き合うって言った?」
「言った」
確認するように控えめに聞いて来たのでキッパリ答える。
「さやちゃん、私のこと好きなの?」
「好きや」
「ずっとさやちゃんの隣にいてもいいの?」
「ずーーーっとや」
横に少しずれ縁側に手をついてる貴美の手に自分の手を重ねる。
「聞いてくれる?私の願い」
「嬉しい。私もずっとさやちゃんが好きだった」
ぎゅっと抱きついて来た貴美をきつく抱きしめる。
もう絶対に離さへんから覚悟してや。
貴美の願い事はなんやったん
負けたんだから無しだから言わない
いいやん、それくらい教えてくれても。結婚式のスピーチとか?
違うっ。・・・一回でいいからキスしてもらおうと。それでこの気持ちは忘れようと思ってた。
あほ。私以外と永遠誓うのなんて許さんよ
儚くも美しい
「ねえ、さやちゃん花火しよう」
「え?花火大会あってるやん。そっちに行こうよ」
「人混みは苦手なの」
数日前のこと
幼馴染の貴美から花火のお誘い
折角なら花火大会に行こうと言ったのに彼女はそう言った。
知ってる。彼女の優しさだって。
どうしても目立っちゃうからね。私はいいんやけど。
夏休みで実家に帰って来てるらしい貴美の家の庭で花火の約束をした。
貴美は就職で東京に行ってしまってお互い忙しいのもあり久しく会えてない。
花火といえば浴衣だって騒ぐから仕方なく浴衣でやってきた。
どれを着ていこうか何時間も悩んだのは秘密だけど。
貴美ん家も久しぶりやな。
昔はよく遊んだけどなぁ。
昔ながらの和風のおうちで、でっかい庭がある。
毎年縁側から並んで地元の花火大会を見たっけ。
今じゃ会場が変わっちゃって家からは見えないけど。
あの頃から貴美の横顔を見るのが好きで、貴美の隣には私がずっといるんだって思ってた。
結局意気地なしの私はいいお友達を演じて、この気持ちを伝えることができないまま劇団に入って今日まできてしまったのだけど。
ぴんぽんを押せばパタパタと走る音が近づいて来て玄関を開ける人影にさえ心躍る。
「さやちゃーん」
「貴美」
「いらっしゃい」
ガラガラっと横引きの玄関が開けば満面の笑みの貴美に招き入れられた。
「綺麗」
「え?」
「なんでもあらへん」
前を歩く背中を見つめながら思わずこぼれた言葉。
浴衣姿の貴美が綺麗で。
振り返った本人には恥ずかしくて絶対言わんけど
家の中も変わってないな。
「あれ、おばちゃん達は?」
「おばあちゃん家」
「そっか」
スイカを切ってくれてて、縁側で月を見ながら食べた後線香花火をする事にした。
「先に落ちた方が相手の言うことを1個聞く」
「負ける気がせんなぁ」
袖を捲って腕を回す仕草をすればくすくすと笑って線香花火を1本くれた。
3回勝負で決めることになった。
2人並んでしゃがんで火をつける。
「このまま時が止まったらいいのに」
貴美の横顔はなんだか切なそうな儚くて消えてしまいそうだった。
「あっ」
「あー。貴美の負け」
悔しそうに落ちた火玉を見つめる貴美に袋から2本取り出して1本を手渡す。
「歌劇団さんってさ、結婚とか出来ないんだよね?」
「そうやなあ」
「いいなぁ。もうさ、結婚はまだなのかって煩いんだもん」
「あはは、そんな歳になったもんな」
パチパチと花火の音と、ふと始まった結婚の話題。
まあ、それなりの歳になったしそう言う話題も出てくるよな。
「今度ね、お父さんの取引先の人とお見合いするの」
「え?」
「あ、さやちゃんの負けー」
花火の光を見つめたままの貴美から出た言葉に動揺して手元が揺れたらしく、ぽとりと落ちた火玉
私が負けたことに喜ぶ貴美とは裏腹に私の心臓はばくばくしていた。
貴美の隣を私じゃない誰かが歩くの?
最後の勝負
同時にろうそくから火を灯す。
「さやちゃん、私が結婚する時は結婚式来てくれる?」
「え?」
「スピーチとかして欲しいなぁ。あ、でもそういうのダメなのかな」
スピーチ?そんなのする訳ないやん。
他の誰かとの幸せなんて祝福してあげれる訳がない
「なに、貴美は私にお祝いのスピーチさせたいん?」
「させたいっていうか、して貰えたら嬉しいなぁって。だって・・・あっ」
ぽとりと落ちた貴美の線香花火
「あーあ。私の負けか」
「私の勝ちやな」
勝負のついた私達は縁側に腰掛ける。
貴美が足をぷらぷらさせながらこちらを向いた。
「さやちゃんの言うこと聞くよ。何がいい?」
残念そうに私の方を向いて聞いてくる。
私の願い事は勝負をすると決めた時から決まってる。
「お見合いに行くの中止する事」
「え?なにそれ私だけ結婚するのを阻止しようとしてる?」
「あと、私と付き合う事」
「え?」
「あと、」
「待って待って。3個になってる」
「ばれた?」
まあ、2個目が私の1番の願いやけど予想外のお見合い話とかあったからまずは中止が先。
戯けて笑えば、私の言葉を反芻するように考え込んでいる。
「さやちゃんと付き合うって言った?」
「言った」
確認するように控えめに聞いて来たのでキッパリ答える。
「さやちゃん、私のこと好きなの?」
「好きや」
「ずっとさやちゃんの隣にいてもいいの?」
「ずーーーっとや」
横に少しずれ縁側に手をついてる貴美の手に自分の手を重ねる。
「聞いてくれる?私の願い」
「嬉しい。私もずっとさやちゃんが好きだった」
ぎゅっと抱きついて来た貴美をきつく抱きしめる。
もう絶対に離さへんから覚悟してや。
貴美の願い事はなんやったん
負けたんだから無しだから言わない
いいやん、それくらい教えてくれても。結婚式のスピーチとか?
違うっ。・・・一回でいいからキスしてもらおうと。それでこの気持ちは忘れようと思ってた。
あほ。私以外と永遠誓うのなんて許さんよ