K.TUKISHIRO
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はたと気づけばもう21時になろうとしている。作業台に広げていた布達を綺麗にたたみ、荷物を一通り片付ける。
あとは頼まれていた衣装達を取りに行けば今日の仕事は終わり。
移動用ハンガーラックの置いてある倉庫から2個ハンガーラックを引き摺り出して前と後ろに一個ずつ掴んで衣装倉庫へ向かう。
最初の頃はこのハンガーラック2個持ちが出来なくてよくフラフラと違う方向に行ったりとハンガーラックに弄ばれたものだ。
別に明日やってもいいんだけど、終わらせられる事は終わらせておきたい。ハンガーラックを倉庫の前に通行の邪魔にならない様壁に寄せて置き、リストを握りしめて足を踏み入れる
所狭しとハンガーにかけられた衣装や、小物が入った箱。お衣装部屋。ここは私の大好きな場所の一つ
今度のショーで使われるらしいこのリストの衣装達。
私が手掛けたものも数点含まれていて懐かしさに胸が膨らむ
手に取れば、ああここの部分苦労したなとか、ここはすごく気に入ってもらえて褒めてもらえたなとか色々思い出す。またリメイクして新しい衣装となる。頑張ってまた素敵な衣装にしてあげるからね、しみじみと衣装を眺めてたらぎゅっと後ろから抱きしめられて心臓が飛び出るかと思ったけど、抱きしめられた瞬間の香りで分かる。
「れいこちゃん何してるのこんなとこで」
「なーんだ。バレたか」
顔は見えなくてもつまらなさそうにする顔が想像出来て思わず顔が緩んでしまう。
「笑ったでしょ。悪い子にはこうだっ」
抱きしめた腕を緩めて脇腹をくすぐられて思わず恥ずかしい声が出て口を抑える。
「なにその声。誘ってるの?」
くすぐられた時に逃げようと体を捩ったせいでれいこちゃんと向かい合ってしまっている。逃げさせまいと腕は掴まれたまま、まっすぐ見つめる大きな瞳に射抜かれたように私は硬直してしまった。
「いえすだと取るよ?」
「だっ、だめっ」
後頭部に手をかけられ、近づいてきた綺麗な唇を手で制止する。
危うく流されそうになったけど、ここは職場。
れいこちゃんの色気の恐ろしさを思い知った。
「ちぇっ」
可愛い。大きなわんこみたい。
不貞腐れた姿が何だか愛しくなってしまって、背伸びしてそっとほっぺに口付ければ口付けた所に手を当てて大きな目がさらに大きく見開く。
「えっ。」
「今はこれで我慢してね」
数秒間穴が開くんじゃないかってくらいの眼力で見つめられた後ぎゅーっと力一杯抱きしめられて、ああ幸せだなってしみじみ感じてたられいこちゃんは納得したようにぶつぶつ呟き始めた。
よく聞こえないのでじっと耳を澄ます。
「確かに私だって分からなかったら他の人にもそんな事されてるって事だもんね」
「いや、単純に誰にもされてないから分からないって可能性だってあるよ」
「抱きしめてくる人リストに入ってない事自体が問題」
なに抱きしめてくる人リストって。
そんなのある人の方が少ないよ。そんな事を考えてたら扉を開く音がしてぱっとれいこちゃんを引き剥がし、掛けられた衣装達の間に押し込む。
足音が近づいてきて身構えるけど、姿が見えれば見慣れた私の同期。
「やっぱりまだいた」
「これだけ移動したら帰るよ」
帰ろうと思ったら倉庫前にハンガーラックがあったから中にいるのは私だろうと立寄ってみてくれたらしい。
いつも気にかけてくれる優しい兄のような存在。
手伝いを申し出てくれたけどお礼だけ言って断る。
「すぐ、夢中になって遅くまで仕事するから。あんまり無理すんなよ」
「ありがとう」
くしゃくしゃっと頭を撫でてまた明日と去っていった。
出て行ったのを確認してから、衣装をかき分ければ小さくなって膝を抱えて座ってるれいこちゃんと目が合ったんだけどなんだか怖い顔してる。
押し込めちゃったから怒ってる?ふと逸らされる目に胸が締め付けられる。
「仲良しなんだね」
「え?ああ、同期だからね」
「ふーん」
なんだか冷たい空気に居た堪れなくなって握りしめていたリストに目を落とす。
早く終わらせてこの空間から逃げ出さねば。
リストの最後の衣装は遥か頭上の棚の上の箱の中
れいこちゃんの視線から逃げるように少し離れて持参していた踏み台に乗って手を伸ばす。もうちょっと・・・。
「彼になら取ってって甘えるの?」
背伸びしてももう少しのとこで届かない私を呆れたような顔をして衣装の隙間からじっと見てる。
なんだか嫌な言い方にちょっと冷たく返してしまった。
「自分の仕事は自分でするよ」
「ふーん」
肘をついてぶすっとした顔をして座り込んだままのれいこちゃんを無視してどうにか箱を取って倉庫の外の台車に乗せる
「よし、揃った。帰ろう」
「立てない」
「もう、仕方ないな」
まだ座り込んだままのれいこちゃんに声をかければ足が痺れたとか言ってるけど、体育座りで足が痺れる事ってあるのかな。
しょうがないなと差し出した手をぐっと引っ張られてれいこちゃんに跨るかたちになってしまった。
「ちょっと、危ないでしょ」
れいこちゃんが怪我したらどうするのよ。
そう言いたかったのにれいこちゃんに口を塞がれて言葉になる事はなかった。
体重がれいこちゃんの方にかかってしまってるのと、今度こそがっちりと後頭部を押さえられてるので逃げられない。
思わず声が出て僅かに開いた隙間から、れいこちゃんの舌が割り込んできて私の舌と絡まる。
だめ、誰か来たらどうするの。そう思ってるのにれいこちゃんの唇が気持ちよくて頭がぼーっとしてしまい、されるがまま絆されるだけ絆され唇が離れる頃には何が何だか分からなくなってた。
「やばい。そんな顔のまま外に出せない」
困ったような言葉なのになんだか嬉しそうな声のれいこちゃんに見つめられるけど誰のせいだと思ってるの。
でも上に跨って、れいこちゃんの肩に手なんか乗せちゃってる私の方が押し倒して襲ってる人みたいなんだろうな。
「ちょっと、どこ触ってるの」
「綺麗なお尻だなあと思って」
撫で回すように触った後、太ももに下った手がまた上に移動したことで私のスカートは捲れ上がってしまった。
「ちょっ、れいこちゃん」
「なあに」
「やめてよ」
「やだ」
れいこちゃんの指が下着をずらして入り込んでくる。逃げようにも今度は腰を抱え込まれてて逃げられない。
「ちょっ・・・やめっ」
「こんなとこでいけない事されて感じた?」
至近距離でれいこちゃんの綺麗な目で見つめられるともっと体が熱くなる。
「身体は正直みたいだから身体に聞こうかな」
「だっ」
そのまま口を塞がれ、れいこちゃんの指は私の中で暴れておかしくなりそうな位れいこちゃんでいっぱいでこの瞬間の快楽に溺れるしか出来ない、もうだめ。遠くなる意識の中へ沈んでいった。
「あれ・・・」
気がつけばベッドに横たわってた。
あれ、ここって。
「れいこちゃん家・・・?」
「ごめん、持って帰ってきた」
「物みたい」
「それは違う。宝物だもん。大事にだいじーーに持って帰ってきたんだよ」
ちょうど寝室のドアが開いて、姿を見せたこの家の主は自慢げに言うけど、何て甘いセリフなのだろう。
大事に持って帰られたのならいいかもと思わせてしまうあたりが魔性感を出している。
あの後力尽きて眠ってしまったらしい私。
れいこちゃんが衣装達は作業場に運んでくれて、私をおんぶして運び出して、家まで運んでくれたらしい。
どうか誰にも見られてませんように。
会社内でそんな姿誰かに見られてたら、スターさんに何させてんだって怒られてしまう。
「今夜は帰したくない」
「今夜もでしょ」
旦那が一週間出張なのをいい事にここ数日、私はれいこちゃんの家に結構な頻度で訪れてる。
昨日もお泊まりしてお昼からお稽古があるれいこちゃんに起きた時用に朝ごはんを作って仕事へ向かった。
流石に入り浸り過ぎだから今日はちゃんとお家に帰ろうと思ってたんだけどな、なんて。
本当は衣装倉庫で会った時から離れがたくなってたのは間違いないんだけど。
「だってこんなにいっぱい一緒にいられるのも中々ないんだもん」
ぎゅっと抱きついてきていやいやとれいこちゃんが体を揺らす。
ごめんね、れいこちゃん。
きっと普通の恋人同士ならこんな事思わせる事ないのに。
しなくていい苦労や、悲しみも背負わせてるの分かってるから辛い。
「ひゃに」
「余計な事考えたでしょ」
抱きしめられてた腕が緩んでれいこちゃんの右手が私の頬を掴んでぎゅっと潰される。う、鋭い・・・綺麗な顔の眉間に皺が寄った。
「ここは、職業柄中々会えないの普通でしょって返すところだよ」
「だって・・・」
「きっと貴美さんが考えてる、くだらない理由で言った訳じゃない」
「くだらないってひどい」
「くだらないじゃない。だってお互いに一緒に居たいからいる。それだけ。それに私が仕事重なってたら中々会えないでしょう。それとおんなじ。どっちかだけが我慢しなくていいからいいじゃない」
「だって、私も本当はもっと一緒にいたいもん」
思わず向かい合ったれいこちゃんの洋服をちょんと掴んで俯く。
だから申し訳ないと思ってるよ、好きなのに長く会えないの辛いの。もし普通の恋人同士ならって比べちゃうの。
れいこちゃんの真剣な眼差しに弱腰になった私の小さな声をれいこちゃんは聞き逃さずにいてくれる。一瞬押し黙ったれいこちゃんがぎゅっと抱きついてきた。
「もう、そうやって可愛い事言うから私がどんどん貪欲になるんだよ」
「帰りたくない。れいこちゃんと居たい」
れいこちゃんは全てを受け止めてくれるって分かるから素直に気持ちを伝えるのが苦手な私がこんなにも素直なれる。
これが私の気持ち。出来る事ならずっと側に居たいの。気持ちを込めてぎゅっと抱きしめ返した。
「れいこちゃんと一晩中くっついてたいって?しょうがないなー」
え?居たいとは言ったけど、そこまで言ってない。
不敵な笑みを浮かべてるのが顔が見えなくても分かる。
れいこちゃん越しに傾く視界
「続きしよっか」
耳元で囁かれたその色っぽい声に会社での事を思い出して恥ずかしくなってぎゅっと目を瞑った。でも、れいこちゃんともっと触れてたい。れいこちゃんの首に手を回して近づいて触れた唇、長い夜の始まり。
あ、昨日イケメンさんにおんぶされてましたねー
警備室のお兄さんにしっかり見られてたらしく、青春ですねーって優しいむず痒いほどの微笑みを向けられた。もう絶対会社でれいこちゃんと2人っきりになったりしないと誓った。
見せつけれてよかった。
見られたのが1人でよかったよ。
あの警備のお兄さん、いつも貴美さんに邪な想いを寄せてる視線で見てたもん。あと同期のあの人も、他にもいる。もっとみんながいる時間に私の物だって見せつけてやれば良かった。絶対渡さないんだから。
真剣な目で拳を握るれいこちゃんに先行きの不安を少しだけ感じた。いつもって何?どこかで見てるの?
それだけ愛してくれてるんだって事で収めよう。
それ以上考えるのが怖くなってしまった。
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あとは頼まれていた衣装達を取りに行けば今日の仕事は終わり。
移動用ハンガーラックの置いてある倉庫から2個ハンガーラックを引き摺り出して前と後ろに一個ずつ掴んで衣装倉庫へ向かう。
最初の頃はこのハンガーラック2個持ちが出来なくてよくフラフラと違う方向に行ったりとハンガーラックに弄ばれたものだ。
別に明日やってもいいんだけど、終わらせられる事は終わらせておきたい。ハンガーラックを倉庫の前に通行の邪魔にならない様壁に寄せて置き、リストを握りしめて足を踏み入れる
所狭しとハンガーにかけられた衣装や、小物が入った箱。お衣装部屋。ここは私の大好きな場所の一つ
今度のショーで使われるらしいこのリストの衣装達。
私が手掛けたものも数点含まれていて懐かしさに胸が膨らむ
手に取れば、ああここの部分苦労したなとか、ここはすごく気に入ってもらえて褒めてもらえたなとか色々思い出す。またリメイクして新しい衣装となる。頑張ってまた素敵な衣装にしてあげるからね、しみじみと衣装を眺めてたらぎゅっと後ろから抱きしめられて心臓が飛び出るかと思ったけど、抱きしめられた瞬間の香りで分かる。
「れいこちゃん何してるのこんなとこで」
「なーんだ。バレたか」
顔は見えなくてもつまらなさそうにする顔が想像出来て思わず顔が緩んでしまう。
「笑ったでしょ。悪い子にはこうだっ」
抱きしめた腕を緩めて脇腹をくすぐられて思わず恥ずかしい声が出て口を抑える。
「なにその声。誘ってるの?」
くすぐられた時に逃げようと体を捩ったせいでれいこちゃんと向かい合ってしまっている。逃げさせまいと腕は掴まれたまま、まっすぐ見つめる大きな瞳に射抜かれたように私は硬直してしまった。
「いえすだと取るよ?」
「だっ、だめっ」
後頭部に手をかけられ、近づいてきた綺麗な唇を手で制止する。
危うく流されそうになったけど、ここは職場。
れいこちゃんの色気の恐ろしさを思い知った。
「ちぇっ」
可愛い。大きなわんこみたい。
不貞腐れた姿が何だか愛しくなってしまって、背伸びしてそっとほっぺに口付ければ口付けた所に手を当てて大きな目がさらに大きく見開く。
「えっ。」
「今はこれで我慢してね」
数秒間穴が開くんじゃないかってくらいの眼力で見つめられた後ぎゅーっと力一杯抱きしめられて、ああ幸せだなってしみじみ感じてたられいこちゃんは納得したようにぶつぶつ呟き始めた。
よく聞こえないのでじっと耳を澄ます。
「確かに私だって分からなかったら他の人にもそんな事されてるって事だもんね」
「いや、単純に誰にもされてないから分からないって可能性だってあるよ」
「抱きしめてくる人リストに入ってない事自体が問題」
なに抱きしめてくる人リストって。
そんなのある人の方が少ないよ。そんな事を考えてたら扉を開く音がしてぱっとれいこちゃんを引き剥がし、掛けられた衣装達の間に押し込む。
足音が近づいてきて身構えるけど、姿が見えれば見慣れた私の同期。
「やっぱりまだいた」
「これだけ移動したら帰るよ」
帰ろうと思ったら倉庫前にハンガーラックがあったから中にいるのは私だろうと立寄ってみてくれたらしい。
いつも気にかけてくれる優しい兄のような存在。
手伝いを申し出てくれたけどお礼だけ言って断る。
「すぐ、夢中になって遅くまで仕事するから。あんまり無理すんなよ」
「ありがとう」
くしゃくしゃっと頭を撫でてまた明日と去っていった。
出て行ったのを確認してから、衣装をかき分ければ小さくなって膝を抱えて座ってるれいこちゃんと目が合ったんだけどなんだか怖い顔してる。
押し込めちゃったから怒ってる?ふと逸らされる目に胸が締め付けられる。
「仲良しなんだね」
「え?ああ、同期だからね」
「ふーん」
なんだか冷たい空気に居た堪れなくなって握りしめていたリストに目を落とす。
早く終わらせてこの空間から逃げ出さねば。
リストの最後の衣装は遥か頭上の棚の上の箱の中
れいこちゃんの視線から逃げるように少し離れて持参していた踏み台に乗って手を伸ばす。もうちょっと・・・。
「彼になら取ってって甘えるの?」
背伸びしてももう少しのとこで届かない私を呆れたような顔をして衣装の隙間からじっと見てる。
なんだか嫌な言い方にちょっと冷たく返してしまった。
「自分の仕事は自分でするよ」
「ふーん」
肘をついてぶすっとした顔をして座り込んだままのれいこちゃんを無視してどうにか箱を取って倉庫の外の台車に乗せる
「よし、揃った。帰ろう」
「立てない」
「もう、仕方ないな」
まだ座り込んだままのれいこちゃんに声をかければ足が痺れたとか言ってるけど、体育座りで足が痺れる事ってあるのかな。
しょうがないなと差し出した手をぐっと引っ張られてれいこちゃんに跨るかたちになってしまった。
「ちょっと、危ないでしょ」
れいこちゃんが怪我したらどうするのよ。
そう言いたかったのにれいこちゃんに口を塞がれて言葉になる事はなかった。
体重がれいこちゃんの方にかかってしまってるのと、今度こそがっちりと後頭部を押さえられてるので逃げられない。
思わず声が出て僅かに開いた隙間から、れいこちゃんの舌が割り込んできて私の舌と絡まる。
だめ、誰か来たらどうするの。そう思ってるのにれいこちゃんの唇が気持ちよくて頭がぼーっとしてしまい、されるがまま絆されるだけ絆され唇が離れる頃には何が何だか分からなくなってた。
「やばい。そんな顔のまま外に出せない」
困ったような言葉なのになんだか嬉しそうな声のれいこちゃんに見つめられるけど誰のせいだと思ってるの。
でも上に跨って、れいこちゃんの肩に手なんか乗せちゃってる私の方が押し倒して襲ってる人みたいなんだろうな。
「ちょっと、どこ触ってるの」
「綺麗なお尻だなあと思って」
撫で回すように触った後、太ももに下った手がまた上に移動したことで私のスカートは捲れ上がってしまった。
「ちょっ、れいこちゃん」
「なあに」
「やめてよ」
「やだ」
れいこちゃんの指が下着をずらして入り込んでくる。逃げようにも今度は腰を抱え込まれてて逃げられない。
「ちょっ・・・やめっ」
「こんなとこでいけない事されて感じた?」
至近距離でれいこちゃんの綺麗な目で見つめられるともっと体が熱くなる。
「身体は正直みたいだから身体に聞こうかな」
「だっ」
そのまま口を塞がれ、れいこちゃんの指は私の中で暴れておかしくなりそうな位れいこちゃんでいっぱいでこの瞬間の快楽に溺れるしか出来ない、もうだめ。遠くなる意識の中へ沈んでいった。
「あれ・・・」
気がつけばベッドに横たわってた。
あれ、ここって。
「れいこちゃん家・・・?」
「ごめん、持って帰ってきた」
「物みたい」
「それは違う。宝物だもん。大事にだいじーーに持って帰ってきたんだよ」
ちょうど寝室のドアが開いて、姿を見せたこの家の主は自慢げに言うけど、何て甘いセリフなのだろう。
大事に持って帰られたのならいいかもと思わせてしまうあたりが魔性感を出している。
あの後力尽きて眠ってしまったらしい私。
れいこちゃんが衣装達は作業場に運んでくれて、私をおんぶして運び出して、家まで運んでくれたらしい。
どうか誰にも見られてませんように。
会社内でそんな姿誰かに見られてたら、スターさんに何させてんだって怒られてしまう。
「今夜は帰したくない」
「今夜もでしょ」
旦那が一週間出張なのをいい事にここ数日、私はれいこちゃんの家に結構な頻度で訪れてる。
昨日もお泊まりしてお昼からお稽古があるれいこちゃんに起きた時用に朝ごはんを作って仕事へ向かった。
流石に入り浸り過ぎだから今日はちゃんとお家に帰ろうと思ってたんだけどな、なんて。
本当は衣装倉庫で会った時から離れがたくなってたのは間違いないんだけど。
「だってこんなにいっぱい一緒にいられるのも中々ないんだもん」
ぎゅっと抱きついてきていやいやとれいこちゃんが体を揺らす。
ごめんね、れいこちゃん。
きっと普通の恋人同士ならこんな事思わせる事ないのに。
しなくていい苦労や、悲しみも背負わせてるの分かってるから辛い。
「ひゃに」
「余計な事考えたでしょ」
抱きしめられてた腕が緩んでれいこちゃんの右手が私の頬を掴んでぎゅっと潰される。う、鋭い・・・綺麗な顔の眉間に皺が寄った。
「ここは、職業柄中々会えないの普通でしょって返すところだよ」
「だって・・・」
「きっと貴美さんが考えてる、くだらない理由で言った訳じゃない」
「くだらないってひどい」
「くだらないじゃない。だってお互いに一緒に居たいからいる。それだけ。それに私が仕事重なってたら中々会えないでしょう。それとおんなじ。どっちかだけが我慢しなくていいからいいじゃない」
「だって、私も本当はもっと一緒にいたいもん」
思わず向かい合ったれいこちゃんの洋服をちょんと掴んで俯く。
だから申し訳ないと思ってるよ、好きなのに長く会えないの辛いの。もし普通の恋人同士ならって比べちゃうの。
れいこちゃんの真剣な眼差しに弱腰になった私の小さな声をれいこちゃんは聞き逃さずにいてくれる。一瞬押し黙ったれいこちゃんがぎゅっと抱きついてきた。
「もう、そうやって可愛い事言うから私がどんどん貪欲になるんだよ」
「帰りたくない。れいこちゃんと居たい」
れいこちゃんは全てを受け止めてくれるって分かるから素直に気持ちを伝えるのが苦手な私がこんなにも素直なれる。
これが私の気持ち。出来る事ならずっと側に居たいの。気持ちを込めてぎゅっと抱きしめ返した。
「れいこちゃんと一晩中くっついてたいって?しょうがないなー」
え?居たいとは言ったけど、そこまで言ってない。
不敵な笑みを浮かべてるのが顔が見えなくても分かる。
れいこちゃん越しに傾く視界
「続きしよっか」
耳元で囁かれたその色っぽい声に会社での事を思い出して恥ずかしくなってぎゅっと目を瞑った。でも、れいこちゃんともっと触れてたい。れいこちゃんの首に手を回して近づいて触れた唇、長い夜の始まり。
あ、昨日イケメンさんにおんぶされてましたねー
警備室のお兄さんにしっかり見られてたらしく、青春ですねーって優しいむず痒いほどの微笑みを向けられた。もう絶対会社でれいこちゃんと2人っきりになったりしないと誓った。
見せつけれてよかった。
見られたのが1人でよかったよ。
あの警備のお兄さん、いつも貴美さんに邪な想いを寄せてる視線で見てたもん。あと同期のあの人も、他にもいる。もっとみんながいる時間に私の物だって見せつけてやれば良かった。絶対渡さないんだから。
真剣な目で拳を握るれいこちゃんに先行きの不安を少しだけ感じた。いつもって何?どこかで見てるの?
それだけ愛してくれてるんだって事で収めよう。
それ以上考えるのが怖くなってしまった。
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