F.NOZOMI
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あの日から帰り道はここの前を通るのが日課になっていた。
遅い時間はもちろんもう教室は終わっちゃってて真っ暗なんだけど、早く終わった日にはタイミングが合えば貴美先生の弾く音色を聴きながら、はたまた教えてる姿をちらっと見て帰るそんな日々を送っていた。
あんまり見たらストーカーみたいだからあくまで通りがかり。
家に帰って私もピアノに手を伸ばす。
最近は曲の練習もピアノ使わずすることが多くなってたんだけどあの教室に出会ってからはまたピアノの前に座ることが増えた。
ipadを譜面台にのせて椅子に腰掛ける。
貴美先生の弾いてる姿を思い出しながら鍵盤に指を置けば自分も軽やかに弾けるような気がした。
次のお休みの日、レッスンが15時頃には終わると言うことだったので早速教室にお邪魔していた。
ピアノの音色を堪能したあと、教室の隅のテーブルでお茶とお菓子をご馳走になる。
1年前から教室をやってるという情報に気になったのはその前に何をしてたのか。大学卒業してすぐって感じでもなさそうだしな。
「この教室を開く前は何を?」
「高校で音楽を教えてました」
そう言った貴美先生の表情は何となくだけど硬かった。
まだ若いのに先生辞めて音楽教室か。
それ以上深くは話したくなさそうだったから詳しくは聞かなかったけど、音楽全般得意なんだろうな。
尚のことこの子の音楽にもっと触れてみたいと思った。
「望海さんもピアノ弾かれるんですか?」
「うん、小さい頃ピアノが大好きでね。ピアノが話し相手だった位」
「分かります。応えてくれますもんね、ピアノは」
「そうそう!貴美先生にも分かる?嬉しいな」
貴美先生なんてむず痒いと言われて貴美ちゃんと呼ばせてもらう事になった。
心の奥ではまだ諦めきれてない想い、いつかでいいから私の先生になってほしい。もっとあなたの音楽を知りたい。
でも今はその音楽に触れられるだけでも嬉しい。
私も本名で呼んでくれるかな。
出来ることなら望海風斗としてでなく、私として会いたい。
「私ね、本名あやこって言うの。本名で呼んでくれたら嬉しいな」
「あやこさんですか。素敵なお名前ですね」
名前を呼ばれただけ、微笑まれただけなのになんだかどきどきしちゃって。
今までにないどきどき感を感じた私に笑っちゃう。
「そう言えば、地元って言ってたよね。実家暮らしなの?」
「いえ、この上に住んでます」
そう上を指さした貴美ちゃんの指につられて思わず上を見上げた。
メゾネットみたいになってて二階建てなんだって。通勤0分。朝に弱い私には羨ましい距離感。
「そうだあやこさん、良かったらうちによって行きませんか?」
「え?」
「楽譜沢山あるんですよ。お好きな曲があれば今度弾きますよ」
「いいの?嬉しい」
名前で呼んだり、プライベート空間に立ち入らせてもらったり急に距離感が縮まった感じで嬉しさとそわそわとで胸がいっぱいになりながら貴美ちゃんに続いて階段を上がる。
シンプルな家具達に囲まれた部屋の壁一面の本棚には沢山の楽譜達。見てるだけで楽しくなる。図書館に来たみたい。
端から端までゆっくり見させてもらう。
2階はより防音設備が整ってる一室があるらしく、そこにグランドピアノが置いてあった。
「夜眠れない時とかここでピアノを弾いて心を落ち着けるんです」
ピアノを愛おしそうに撫でながら話す姿に本当にピアノが好きなんだなと思った。
そしてこのお仕事が楽しいんだだろう。
でも時折見せる何とも言えない雰囲気が凄く気になって堪らない。でも話したくないことを無理矢理聞くの違うし、そのうち私にも話してくれるような貴美ちゃんの中の存在になりたい。
**********
いつもの帰り道、いつもの綺麗なピアノの音色に・・・微かに聞こえる歌声。
まさか!いつもは通りすがりを装ってるから立ち止まらないんだけど、思わず立ち止まって中を覗き込んだ。
貴美ちゃんがピアノを弾きながら歌ってる。
透き通るような声、この歌・・・まさに音楽の神に愛された人。
「きっと叶うはずよ夢は」
私は思わず扉を開けて入ってた。
貴美ちゃんはびっくりして、鍵盤に指を置いたままこちらを見て固まってる。
「いつも待っていた。暗闇の中で天使が囁くその時を」
「あっ・・・あやさんっ」
「続けて」
私が歌い出したことにびっくりして目をまんまるにしてるけど、続けてといった言葉通り手と口はちゃんと動いてて声の重なり合いに鳥肌が立った。気付けば頬を涙が伝ってて。
エリックの感情ってこんなだったんだろう。
こんなに歌うのが楽しいと思ったのは久しぶりだと彼女も微笑んだ。真彩ちゃんとの声の重なりももちろん心地良いんだけどまた違う良さに胸が震えた。
ここに通ってる中学生の子が最近音楽学校の受験を考えてて歌とピアノ習ってるらしい。
中でもファントムが好きらしくて練習したいと言われたみたいで予習中なんだって。
「昨日練習し始めたばかりなのでこんなレベルを聞かれるとは恥ずかしい」
昨日始めてこのレベルとは凄い、さすがだな。
予習って事は観たのかな、公演の映像を。
誰の公演を観たんだろう、もし私だったら嬉しいな。
「観た?」
「はい。望海さんって本当に凄いんですね。真彩さんの天使の声も素晴らしかったです」
あのシーンが・・・とか思わず涙したとか嬉しそうに話してくれる姿に照れてしまう。
「ぱっと見て弾けるものなの?」
「一応・・・耳コピとかも結構ありますね」
「他のナンバーも弾ける?聞きたい」
「大丈夫です。楽譜はないのでちょっと間違ってる所とかあるかもしれませんが」
絶対音感というやつらしい・・・そう、私は出会ってしまったのだ。音楽の天使と。
完全に彼女の音楽に魅了されてしまった。
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遅い時間はもちろんもう教室は終わっちゃってて真っ暗なんだけど、早く終わった日にはタイミングが合えば貴美先生の弾く音色を聴きながら、はたまた教えてる姿をちらっと見て帰るそんな日々を送っていた。
あんまり見たらストーカーみたいだからあくまで通りがかり。
家に帰って私もピアノに手を伸ばす。
最近は曲の練習もピアノ使わずすることが多くなってたんだけどあの教室に出会ってからはまたピアノの前に座ることが増えた。
ipadを譜面台にのせて椅子に腰掛ける。
貴美先生の弾いてる姿を思い出しながら鍵盤に指を置けば自分も軽やかに弾けるような気がした。
次のお休みの日、レッスンが15時頃には終わると言うことだったので早速教室にお邪魔していた。
ピアノの音色を堪能したあと、教室の隅のテーブルでお茶とお菓子をご馳走になる。
1年前から教室をやってるという情報に気になったのはその前に何をしてたのか。大学卒業してすぐって感じでもなさそうだしな。
「この教室を開く前は何を?」
「高校で音楽を教えてました」
そう言った貴美先生の表情は何となくだけど硬かった。
まだ若いのに先生辞めて音楽教室か。
それ以上深くは話したくなさそうだったから詳しくは聞かなかったけど、音楽全般得意なんだろうな。
尚のことこの子の音楽にもっと触れてみたいと思った。
「望海さんもピアノ弾かれるんですか?」
「うん、小さい頃ピアノが大好きでね。ピアノが話し相手だった位」
「分かります。応えてくれますもんね、ピアノは」
「そうそう!貴美先生にも分かる?嬉しいな」
貴美先生なんてむず痒いと言われて貴美ちゃんと呼ばせてもらう事になった。
心の奥ではまだ諦めきれてない想い、いつかでいいから私の先生になってほしい。もっとあなたの音楽を知りたい。
でも今はその音楽に触れられるだけでも嬉しい。
私も本名で呼んでくれるかな。
出来ることなら望海風斗としてでなく、私として会いたい。
「私ね、本名あやこって言うの。本名で呼んでくれたら嬉しいな」
「あやこさんですか。素敵なお名前ですね」
名前を呼ばれただけ、微笑まれただけなのになんだかどきどきしちゃって。
今までにないどきどき感を感じた私に笑っちゃう。
「そう言えば、地元って言ってたよね。実家暮らしなの?」
「いえ、この上に住んでます」
そう上を指さした貴美ちゃんの指につられて思わず上を見上げた。
メゾネットみたいになってて二階建てなんだって。通勤0分。朝に弱い私には羨ましい距離感。
「そうだあやこさん、良かったらうちによって行きませんか?」
「え?」
「楽譜沢山あるんですよ。お好きな曲があれば今度弾きますよ」
「いいの?嬉しい」
名前で呼んだり、プライベート空間に立ち入らせてもらったり急に距離感が縮まった感じで嬉しさとそわそわとで胸がいっぱいになりながら貴美ちゃんに続いて階段を上がる。
シンプルな家具達に囲まれた部屋の壁一面の本棚には沢山の楽譜達。見てるだけで楽しくなる。図書館に来たみたい。
端から端までゆっくり見させてもらう。
2階はより防音設備が整ってる一室があるらしく、そこにグランドピアノが置いてあった。
「夜眠れない時とかここでピアノを弾いて心を落ち着けるんです」
ピアノを愛おしそうに撫でながら話す姿に本当にピアノが好きなんだなと思った。
そしてこのお仕事が楽しいんだだろう。
でも時折見せる何とも言えない雰囲気が凄く気になって堪らない。でも話したくないことを無理矢理聞くの違うし、そのうち私にも話してくれるような貴美ちゃんの中の存在になりたい。
**********
いつもの帰り道、いつもの綺麗なピアノの音色に・・・微かに聞こえる歌声。
まさか!いつもは通りすがりを装ってるから立ち止まらないんだけど、思わず立ち止まって中を覗き込んだ。
貴美ちゃんがピアノを弾きながら歌ってる。
透き通るような声、この歌・・・まさに音楽の神に愛された人。
「きっと叶うはずよ夢は」
私は思わず扉を開けて入ってた。
貴美ちゃんはびっくりして、鍵盤に指を置いたままこちらを見て固まってる。
「いつも待っていた。暗闇の中で天使が囁くその時を」
「あっ・・・あやさんっ」
「続けて」
私が歌い出したことにびっくりして目をまんまるにしてるけど、続けてといった言葉通り手と口はちゃんと動いてて声の重なり合いに鳥肌が立った。気付けば頬を涙が伝ってて。
エリックの感情ってこんなだったんだろう。
こんなに歌うのが楽しいと思ったのは久しぶりだと彼女も微笑んだ。真彩ちゃんとの声の重なりももちろん心地良いんだけどまた違う良さに胸が震えた。
ここに通ってる中学生の子が最近音楽学校の受験を考えてて歌とピアノ習ってるらしい。
中でもファントムが好きらしくて練習したいと言われたみたいで予習中なんだって。
「昨日練習し始めたばかりなのでこんなレベルを聞かれるとは恥ずかしい」
昨日始めてこのレベルとは凄い、さすがだな。
予習って事は観たのかな、公演の映像を。
誰の公演を観たんだろう、もし私だったら嬉しいな。
「観た?」
「はい。望海さんって本当に凄いんですね。真彩さんの天使の声も素晴らしかったです」
あのシーンが・・・とか思わず涙したとか嬉しそうに話してくれる姿に照れてしまう。
「ぱっと見て弾けるものなの?」
「一応・・・耳コピとかも結構ありますね」
「他のナンバーも弾ける?聞きたい」
「大丈夫です。楽譜はないのでちょっと間違ってる所とかあるかもしれませんが」
絶対音感というやつらしい・・・そう、私は出会ってしまったのだ。音楽の天使と。
完全に彼女の音楽に魅了されてしまった。
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