F.NOZOMI
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日も傾き始めたお稽古帰り
たまたまいつも通らない道を通った。
立ち並んだお店、ウインドーショッピングしながら歩いてたらふと聞こえてきた音色に思わず足を止めた。綺麗なピアノの音
"cours de piano"と書かれた小さなプレートの掛かったの扉のまん中はガラス張りになってて中を垣間見ることが出来る。
思わず私は中を覗いた。
そこには楽しそうにピアノを奏でてる女の人。
綺麗な音色が終わると俯いて愁いを帯びたような表情に目を奪われた。
「すみません」
後ろから声をかけられてはっとして振り返れば、幼稚園児位の小さな女の子とお母さん。
私が扉の前を占拠してるものだから入れなかったみたい。
「おにーさんも貴美先生のレッスン?」
「え?ううん。綺麗な音だなって」
興味津々に私を見つめる女の子。
覗き見してましたなんてこんな小さな子に言えない。
「じゃあ一緒に行こう」
「え?ちょっ・・・」
満面の笑みで私の手をとったその子に手を引かれて中に入れば、目が合って不思議そうな目でその女の人が私を見つめた。
誰って感じだよねそりゃ。
「こんにちは。ゆめちゃん、こんにちは」
私に挨拶してくれたあとしゃがんで女の子に話しかける。
ゆめちゃんって言うのか
「貴美せんせー。今日はね、このおにーちゃんもせんせーのレッスン受けたいんだって」
「そうなの?じゃあ一緒に見ててもらおうか」
立ち上がってどうぞとピアノの近くの壁際の椅子を勧められた。
お母さんはレッスンが終わった頃に迎えに来ると言って帰っていってしまった。私も一緒にいいのかな。
え、もしかして保護者さんだと思われてる?
まさか教室の前で出会ったばかりとは誰も思わないもんね。
「じゃあ、この前の続きからね」
「ゆめ、いっぱい練習してきたんだよー」
小さな女の子には大きすぎる位のピアノ。
でも、私もピアノが大好きであんなやって練習してたな。
楽しそうに弾くゆめちゃんと貴美先生を眺めながら一時間程のレッスンが終わるとゆめちゃんが貴美さんにピアノソナタを弾いてくれるようねだった。
うん、やっぱり綺麗な音。
滑らかな指使い、技術だけではない心惹かれる綺麗な音色。演奏が終わると思わず拍手してた。
「貴美せんせーのピアノきれいでしょ」
「うん、すっごく!感動しちゃった」
そんな話をしてるとちょうどお母さんがお迎えに来て、じゃあねーと手を振りながら帰っていったゆめちゃん。
一緒に出れば良かったのに帰るタイミングを逃し残された私に控えめに貴美先生が口を開いた。
「一緒に帰らなくてよかったんですか?」
「あの、実はゆめちゃんとはここの前で出会って」
「そうなんですか。ゆめちゃんのご親戚とかかと・・・」
「とっても綺麗な音色だったから思わず覗いてしまって。ゆめちゃんに声かけてもらって」
そうだったんですか見られてたなんてと少し恥ずかしそうに俯いた。
「私、宝塚歌劇団に所属してる望海風斗と申します。」
「宝塚歌劇団さんですか」
「あの・・・。ここって生徒さんまだ、受け入れてますか?」
ゆめちゃんがおにーさんって言ってたからてっきり男の人なんだと思ってたみたい。
久しぶりにこんなにピアノの音色にわくわくした。
出来ることならこの人の音楽にもっと触れてみたくて勇気を振り絞って聞いてみた。
「ごめんなさい、子供にしか教えてないんです」
「そうなんですか・・・残念」
申し訳なさそうに眉を下げて断られてしまった。
そうなんだ・・・残念過ぎる。
生徒でなければこの音色に近くで触れるチャンスはきっとない。そう思うと残念で堪らない。
しょぼんと落ち込んだ私をみかねた貴美先生は私の肩に手を置いて慰めてくれるけど、諦めきれない。
「教えて下さるもっと素晴らしい先生方が劇団にはいらっしゃるでしょう」
「こんなに感動したの久しぶりなんです。だから・・・たまにピアノ聞きに来てもいいですか」
聞かせるほどの物ではないと渋る貴美先生に頼み込んで、聞きに来るだけならとOKしてくれた。
このピアノ教室は1年前に小さい子達にピアノの楽しさを知ってもらうために始めて、今では数十人の生徒さんがいるらしい。
連絡先を教えてもらって家に帰ってまっすぐにピアノへと向かった。
ピアノソナタの楽譜を引っ張り出してきてピアノの楽譜台に乗せて椅子に座る。久しぶりだな。
楽譜をなぞりながらゆっくりと弾き出す。
同じ曲なのになんだか全然違う。
技術もそうだけど何かが違うのは明らか。鍵盤のうえの指は動きを止めてしまう。
ああ、もう一度聞きたい。耳に残ったあの音色を胸にピアノの蓋をそっと閉じた。
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たまたまいつも通らない道を通った。
立ち並んだお店、ウインドーショッピングしながら歩いてたらふと聞こえてきた音色に思わず足を止めた。綺麗なピアノの音
"cours de piano"と書かれた小さなプレートの掛かったの扉のまん中はガラス張りになってて中を垣間見ることが出来る。
思わず私は中を覗いた。
そこには楽しそうにピアノを奏でてる女の人。
綺麗な音色が終わると俯いて愁いを帯びたような表情に目を奪われた。
「すみません」
後ろから声をかけられてはっとして振り返れば、幼稚園児位の小さな女の子とお母さん。
私が扉の前を占拠してるものだから入れなかったみたい。
「おにーさんも貴美先生のレッスン?」
「え?ううん。綺麗な音だなって」
興味津々に私を見つめる女の子。
覗き見してましたなんてこんな小さな子に言えない。
「じゃあ一緒に行こう」
「え?ちょっ・・・」
満面の笑みで私の手をとったその子に手を引かれて中に入れば、目が合って不思議そうな目でその女の人が私を見つめた。
誰って感じだよねそりゃ。
「こんにちは。ゆめちゃん、こんにちは」
私に挨拶してくれたあとしゃがんで女の子に話しかける。
ゆめちゃんって言うのか
「貴美せんせー。今日はね、このおにーちゃんもせんせーのレッスン受けたいんだって」
「そうなの?じゃあ一緒に見ててもらおうか」
立ち上がってどうぞとピアノの近くの壁際の椅子を勧められた。
お母さんはレッスンが終わった頃に迎えに来ると言って帰っていってしまった。私も一緒にいいのかな。
え、もしかして保護者さんだと思われてる?
まさか教室の前で出会ったばかりとは誰も思わないもんね。
「じゃあ、この前の続きからね」
「ゆめ、いっぱい練習してきたんだよー」
小さな女の子には大きすぎる位のピアノ。
でも、私もピアノが大好きであんなやって練習してたな。
楽しそうに弾くゆめちゃんと貴美先生を眺めながら一時間程のレッスンが終わるとゆめちゃんが貴美さんにピアノソナタを弾いてくれるようねだった。
うん、やっぱり綺麗な音。
滑らかな指使い、技術だけではない心惹かれる綺麗な音色。演奏が終わると思わず拍手してた。
「貴美せんせーのピアノきれいでしょ」
「うん、すっごく!感動しちゃった」
そんな話をしてるとちょうどお母さんがお迎えに来て、じゃあねーと手を振りながら帰っていったゆめちゃん。
一緒に出れば良かったのに帰るタイミングを逃し残された私に控えめに貴美先生が口を開いた。
「一緒に帰らなくてよかったんですか?」
「あの、実はゆめちゃんとはここの前で出会って」
「そうなんですか。ゆめちゃんのご親戚とかかと・・・」
「とっても綺麗な音色だったから思わず覗いてしまって。ゆめちゃんに声かけてもらって」
そうだったんですか見られてたなんてと少し恥ずかしそうに俯いた。
「私、宝塚歌劇団に所属してる望海風斗と申します。」
「宝塚歌劇団さんですか」
「あの・・・。ここって生徒さんまだ、受け入れてますか?」
ゆめちゃんがおにーさんって言ってたからてっきり男の人なんだと思ってたみたい。
久しぶりにこんなにピアノの音色にわくわくした。
出来ることならこの人の音楽にもっと触れてみたくて勇気を振り絞って聞いてみた。
「ごめんなさい、子供にしか教えてないんです」
「そうなんですか・・・残念」
申し訳なさそうに眉を下げて断られてしまった。
そうなんだ・・・残念過ぎる。
生徒でなければこの音色に近くで触れるチャンスはきっとない。そう思うと残念で堪らない。
しょぼんと落ち込んだ私をみかねた貴美先生は私の肩に手を置いて慰めてくれるけど、諦めきれない。
「教えて下さるもっと素晴らしい先生方が劇団にはいらっしゃるでしょう」
「こんなに感動したの久しぶりなんです。だから・・・たまにピアノ聞きに来てもいいですか」
聞かせるほどの物ではないと渋る貴美先生に頼み込んで、聞きに来るだけならとOKしてくれた。
このピアノ教室は1年前に小さい子達にピアノの楽しさを知ってもらうために始めて、今では数十人の生徒さんがいるらしい。
連絡先を教えてもらって家に帰ってまっすぐにピアノへと向かった。
ピアノソナタの楽譜を引っ張り出してきてピアノの楽譜台に乗せて椅子に座る。久しぶりだな。
楽譜をなぞりながらゆっくりと弾き出す。
同じ曲なのになんだか全然違う。
技術もそうだけど何かが違うのは明らか。鍵盤のうえの指は動きを止めてしまう。
ああ、もう一度聞きたい。耳に残ったあの音色を胸にピアノの蓋をそっと閉じた。
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