K.TUKISHIRO
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珍しくマスクだったから風邪でも引いたのかと思ったけど、よくよく見たら右側の頬が腫れてるように見える。
「ほっぺたどうしたの?」
「なんでもない」
覗き込むように頬を見れば誤魔化すように顔を逸らされるけど、何でもなくなさそう。
頬に手を添えれば歪む表情
「痛いよね」
腫れの原因はきっと私の思い違いではないはず。
手をあげるなんて信じられない
「よく耐えたね」
じわじわと込み上げてきたみたいで溢れんばかりの涙を隠そうと俯く姿に私も心が痛くなる。
氷を入れた袋を持って来てハンカチにくるんでそっと頬にあてる。ちゃんと冷やした方がいい。綺麗な顔になんて事するの
「泣いてもいいよ。あっち向いてるから。背中貸してあげる」
氷を手渡して背中を向ける。
こつんと背中に頭をつけてありがとうと呟いた声は涙がまじってた。
数日後のお稽古終わり、ショーでつけるアクセサリーの相談に訪れていた。
テーブルを挟んで衣装の色とか雰囲気に合わせて一緒に考えてたんだけど、ふと貴美さんの指輪に目がいって思わず問いかけた
「ねえ。幸せ?」
「え?幸せだよ?こうやって毎日大好きな布達に囲まれて」
「そうじゃない。結婚生活」
ビジューを選んでた手が止まった。
その手を握れば不安そうに揺れる瞳と視線がぶつかる。
自分に言い聞かせるように大丈夫と答えた貴美さん。
幸せかって聞いたんだけど
「心配してくれてありがとう」
今の生活に何かひっかかるところがあるんでしょ。
だから素直に幸せって答えられないんじゃないの。
本当に愛してる?旦那さんのこと。
「私ならそんな顔させない」
「え?」
「心から幸せって言えるようにできる」
流石男役さん、キザな台詞もかっこいいねと流されそうになる。今すぐ引き寄せて抱きしめたいのに、私たちの間に隔たってるこのテーブルが憎い。
だから握った手を両手でぎゅっと包んで思いを込める
「貴美さんが好きなの」
「私もれいこちゃん好きよ」
微笑まれるけどそうじゃない。私が欲しい好きはそれじゃない
「貴美さんを愛してるの」
やっと理解してくれたみたいで、その意味に困惑してる様子だけどもう我慢できない
「私、結婚してるんだよ?」
「知ってる」
そんな言葉で逃げさせはしない。
今すぐじゃなくていい、いつか別れてくれれば。それまでは例え不道徳だとか、非道と言われても構わない。
だって現に彼女は苦しんでる。
幸せになって欲しいし、私がしたい。
「私を見てほしい」
ごめんと俯いた貴美さんに丁重に振られた。
気持ちは嬉しいけどってテンプレートみたいな言葉で。
でも、そんな簡単に諦めるくらいの気持ちじゃないから。
「それって私の事嫌いだから?」
「そうじゃない。好きだけど、そういう好きとは違うの」
じゃあ、もっと頑張れば可能性はあるって事だよね?
「分かった。でも今まで通り普通に接して欲しい。逃げられたら傷つく」
こないだのこと気にしてたんだろう申し訳なさそうに分かったとうなづいてくれた。
これで私を意識してくれればいつか可能性あるかもしれない。
***********
貴美さんの作業の見学
振られたことをもろともせずせっせと通う私になんだかんだ付き合ってくれる。
「れいこちゃんよほど暇なのね」
「違うよー。時間作って来てるの」
いつも、はいはいと流されて終わり。
ぜーんぜん進歩なし。
腰の高さ程ある作業台に布を広げて作業をする貴美さんを台の反対側から椅子に座って眺める、ただそれだけ。
それでも幸せ。いっしょに居られるだけで幸せとか大分好きだな。断られたから追いかけたくなる心理だって言われたけど、そんなんじゃない。
だって進展しないこの関係だって心地良い。
そばにいていいだけでいい。
貴美さんの肘に当たってぽろっと台から落ちたえんぴつ。
私の足元に転がって来たから拾ってあげようとしゃがんで手を伸ばす。
同じく鉛筆を取ろうと台の下に入り込んできた貴美さんもえんぴつに手を伸ばした。
触れた手、至近距離で絡まる視線。
時間が止まったみたいに感じて、気づけば貴美さんとの距離は0センチ。
「んっ・・」
突然の事にびっくりして体が跳ねた貴美さんは台に頭ぶつけてた。真っ赤な顔して涙目で痛みに耐える姿があまりにも可愛くて
「ちょっと、大丈夫?」
ぶつけた所をよしよししながら、もう一回そっと口付けた
「痛いの痛いの飛んでいけー」
おどけてみせればそんなので痛く無くなるわけないと顔を真っ赤にして怒るのでもう一回キスしてみようかと思ったら、その下心が読まれたようで後退りして台の下から逃げていった。
ああ、もう一回味わいたかったな
「普通にするって約束したじゃない」
「普通にしたよ?愛情表情」
呆気に取られた顔でこちらを恨めしそうに見てる。
「諦めるとは一言も言ってない」
「れいこちゃん。」
だってそんな簡単に諦められない。
でも1回目のは無意識だったの。本当に。
「ごめん、嫌いにならないで」
「ずるい」
そんな顔されたら困ると眉を下げる貴美さんは結局私に甘いのだ。
*************
「すごい雨」
寄るところがあったので、劇場を出て歩き出した私。
少し前から降り出した雨は明日まで続くみたい。
傘に打ちつける雨が少しづつ強くなるのを感じながら足早に歩く。
公園の角を曲がろうとした時ふと視界に入った人影。
公園の中、隅っ子のベンチに座ってる人がいる。
うわ、こんな時間に傘もささずに何してるんだろ。
やばそうな人と思ったのに思わず目がいってしまって
あれ、もしかして。
方向転換して公園の中に向かった。
確信を得た私はまっすぐその人に向かって歩くけど、座ってる本人はぼーっと下を向いて全然気づいてない
「何やってるの」
私の声にゆっくりと顔をあげた貴美さんに傘を差し掛ける。
「あ、れいこちゃん。」
「あ、じゃないよ!何してんの!」
「んー、裁縫について考えてた」
もっとましな嘘つけないのかな。
なんでこんなとこに?とか言われるけど、それはこっちのセリフだよ。もうだめ。
「おいで。うちに」
こんなまま置いて帰れる訳ない。
そっと繋いだ手は振り解かれる事はなかった。
こんなになるまで雨に打たれるなんて何考えてんの。
予定変更して直帰に変更。
タクシーで帰りたいとこだけど、こんなにびしゃびしゃじゃ難しいから歩いて帰る間に何があったか聞くとしよう。
ぎゅっと寄り添って一つの傘に入って歩く。
「れいこちゃん」
「なぁに」
消え入るような声でごめんねと言われるけど、そんな言葉が欲しいわけじゃない。
何があったのか話したら少しは楽になるかもしれない。
解決はできなくても
「私の旦那さんね、他に好きな人がいるの」
どんな話題が返ってくるかと思って待てば少しの沈黙の後、務めて明るく言った貴美さん。
知らないフリした方がいいよね。
「そうなの?貴美さんみたいな素敵な奥さんがいるのに信じられない」
浮気してるのは知ってはいたらしいが、今日実際にその現場を見てしまったらしい。
それで呆然としてたって事か。相当ショックだったんだろう。なんだかんだで憎みきれないんだろうな。
「笑っちゃうよね。本当」
「旦那さんの事愛してるんだね」
力無く笑う貴美さんに心締め付けられる。
いや、自分の言葉に締め付けられたのかもしれない。
うんと言われればそこで私の思いは行き場をなくしてしまう。
こんな時にまで自分中心な考えをしてしまうなんて不謹慎極まりないけど。
「愛とかよく分からない」
「そうだね」
うんとは言われなかったけど、今は現実にショックを受けてるから分からないだけかもしれない。
それ以上聞く勇気をなくしてしまった私はおしだまったまま歩いた。貴美さんも何も言わない。
玄関に着いたら、床が濡れちゃうと入るのを躊躇するから取り敢えずタオル持って来る。
抱き抱えて行っても良いんだけど、私が濡れるからとかジタバタされそうだから仕方ない。
「取り敢えず脱ぐ」
服を引っ剥がしてタオルでぐるぐる巻きにして、お風呂場まで引っ張ってく。早くしなきゃ風邪ひいちゃう。
「ほら、シャワー浴びて」
お風呂場へ押し込んだけど、一向にシャワーの音がしない。
もう、手が掛かるなぁ。
ズボンを捲り上げてガチャッと扉を開けて中に入るけど、扉から背を向けた貴美さんはバスタオルを巻いたまましゃがみ込んで動かない。
肩に手を乗せればぴくりと反応するけど固まったまま。
「お湯出すよ?」
タオル外してほしくて声かけるけど反応ないから貴美さんの目線に合わせてしゃがんで横から覗けば、ぎゅっと抱きつかれて尻餅をつく。
なっ何、貴美さんが抱きついてくるなんて。
「れいこちゃん」
「どうしたの」
「ありがとう。いつも助けてくれて」
動揺を平静を装って答えれば、泣きそうな声。
いや、完全に泣いてるな。
「何で、いつもヒーローみたいにピンチの時に助けに来てくれるの」
「運命だからじゃない。そろそろ私の事好きになった?」
抱きついていた手が解かれてまっすぐに見つめられる。
貴美さんの温もりが離れていって名残惜しくなる。
またそういう好きじゃないって言われるんだろうな。
「すき。れいこちゃんのせいだよ。どうしてくれるの」
ほらね。
え?今なんて言ったの?
「へえっ?」
「なにそのへんな声」
あまりに予想外の答えで変な声をあげた私に貴美さんが吹き出す。
「すきみたいなの」
さっき浮気現場を見ても心が痛まなかったらしく、何でかって考えてあのベンチに座って考えてたらこの答えに行き着いたらしい。でも付き合うことは出来ないとか言われて。
別れるまでは色々と時間がかかるし、愛がなくても家庭がある身だから恋愛感情でお互い好きでもそれは不倫。そんな道に私を巻き込みたくないらしい。
なに今更。そんなの承知で想い伝えたんだから。
気持ちが一緒なら尚更ここで手放す訳にはいかない。
「私のものになって。もうこのまま閉じ込めておきたい位好き」
ぎゅっと抱きしめればそっと抱きしめ返してくれた。2人なら修羅の道でも歩いていける
今日帰ってこないんでしょ。旦那さん
恐らく。友達のとこに泊まるって送っておく。
友達ね・・・。濃い関係の友達だけどね。
もう、いじわる
ねえ、もう一回
.
「ほっぺたどうしたの?」
「なんでもない」
覗き込むように頬を見れば誤魔化すように顔を逸らされるけど、何でもなくなさそう。
頬に手を添えれば歪む表情
「痛いよね」
腫れの原因はきっと私の思い違いではないはず。
手をあげるなんて信じられない
「よく耐えたね」
じわじわと込み上げてきたみたいで溢れんばかりの涙を隠そうと俯く姿に私も心が痛くなる。
氷を入れた袋を持って来てハンカチにくるんでそっと頬にあてる。ちゃんと冷やした方がいい。綺麗な顔になんて事するの
「泣いてもいいよ。あっち向いてるから。背中貸してあげる」
氷を手渡して背中を向ける。
こつんと背中に頭をつけてありがとうと呟いた声は涙がまじってた。
数日後のお稽古終わり、ショーでつけるアクセサリーの相談に訪れていた。
テーブルを挟んで衣装の色とか雰囲気に合わせて一緒に考えてたんだけど、ふと貴美さんの指輪に目がいって思わず問いかけた
「ねえ。幸せ?」
「え?幸せだよ?こうやって毎日大好きな布達に囲まれて」
「そうじゃない。結婚生活」
ビジューを選んでた手が止まった。
その手を握れば不安そうに揺れる瞳と視線がぶつかる。
自分に言い聞かせるように大丈夫と答えた貴美さん。
幸せかって聞いたんだけど
「心配してくれてありがとう」
今の生活に何かひっかかるところがあるんでしょ。
だから素直に幸せって答えられないんじゃないの。
本当に愛してる?旦那さんのこと。
「私ならそんな顔させない」
「え?」
「心から幸せって言えるようにできる」
流石男役さん、キザな台詞もかっこいいねと流されそうになる。今すぐ引き寄せて抱きしめたいのに、私たちの間に隔たってるこのテーブルが憎い。
だから握った手を両手でぎゅっと包んで思いを込める
「貴美さんが好きなの」
「私もれいこちゃん好きよ」
微笑まれるけどそうじゃない。私が欲しい好きはそれじゃない
「貴美さんを愛してるの」
やっと理解してくれたみたいで、その意味に困惑してる様子だけどもう我慢できない
「私、結婚してるんだよ?」
「知ってる」
そんな言葉で逃げさせはしない。
今すぐじゃなくていい、いつか別れてくれれば。それまでは例え不道徳だとか、非道と言われても構わない。
だって現に彼女は苦しんでる。
幸せになって欲しいし、私がしたい。
「私を見てほしい」
ごめんと俯いた貴美さんに丁重に振られた。
気持ちは嬉しいけどってテンプレートみたいな言葉で。
でも、そんな簡単に諦めるくらいの気持ちじゃないから。
「それって私の事嫌いだから?」
「そうじゃない。好きだけど、そういう好きとは違うの」
じゃあ、もっと頑張れば可能性はあるって事だよね?
「分かった。でも今まで通り普通に接して欲しい。逃げられたら傷つく」
こないだのこと気にしてたんだろう申し訳なさそうに分かったとうなづいてくれた。
これで私を意識してくれればいつか可能性あるかもしれない。
***********
貴美さんの作業の見学
振られたことをもろともせずせっせと通う私になんだかんだ付き合ってくれる。
「れいこちゃんよほど暇なのね」
「違うよー。時間作って来てるの」
いつも、はいはいと流されて終わり。
ぜーんぜん進歩なし。
腰の高さ程ある作業台に布を広げて作業をする貴美さんを台の反対側から椅子に座って眺める、ただそれだけ。
それでも幸せ。いっしょに居られるだけで幸せとか大分好きだな。断られたから追いかけたくなる心理だって言われたけど、そんなんじゃない。
だって進展しないこの関係だって心地良い。
そばにいていいだけでいい。
貴美さんの肘に当たってぽろっと台から落ちたえんぴつ。
私の足元に転がって来たから拾ってあげようとしゃがんで手を伸ばす。
同じく鉛筆を取ろうと台の下に入り込んできた貴美さんもえんぴつに手を伸ばした。
触れた手、至近距離で絡まる視線。
時間が止まったみたいに感じて、気づけば貴美さんとの距離は0センチ。
「んっ・・」
突然の事にびっくりして体が跳ねた貴美さんは台に頭ぶつけてた。真っ赤な顔して涙目で痛みに耐える姿があまりにも可愛くて
「ちょっと、大丈夫?」
ぶつけた所をよしよししながら、もう一回そっと口付けた
「痛いの痛いの飛んでいけー」
おどけてみせればそんなので痛く無くなるわけないと顔を真っ赤にして怒るのでもう一回キスしてみようかと思ったら、その下心が読まれたようで後退りして台の下から逃げていった。
ああ、もう一回味わいたかったな
「普通にするって約束したじゃない」
「普通にしたよ?愛情表情」
呆気に取られた顔でこちらを恨めしそうに見てる。
「諦めるとは一言も言ってない」
「れいこちゃん。」
だってそんな簡単に諦められない。
でも1回目のは無意識だったの。本当に。
「ごめん、嫌いにならないで」
「ずるい」
そんな顔されたら困ると眉を下げる貴美さんは結局私に甘いのだ。
*************
「すごい雨」
寄るところがあったので、劇場を出て歩き出した私。
少し前から降り出した雨は明日まで続くみたい。
傘に打ちつける雨が少しづつ強くなるのを感じながら足早に歩く。
公園の角を曲がろうとした時ふと視界に入った人影。
公園の中、隅っ子のベンチに座ってる人がいる。
うわ、こんな時間に傘もささずに何してるんだろ。
やばそうな人と思ったのに思わず目がいってしまって
あれ、もしかして。
方向転換して公園の中に向かった。
確信を得た私はまっすぐその人に向かって歩くけど、座ってる本人はぼーっと下を向いて全然気づいてない
「何やってるの」
私の声にゆっくりと顔をあげた貴美さんに傘を差し掛ける。
「あ、れいこちゃん。」
「あ、じゃないよ!何してんの!」
「んー、裁縫について考えてた」
もっとましな嘘つけないのかな。
なんでこんなとこに?とか言われるけど、それはこっちのセリフだよ。もうだめ。
「おいで。うちに」
こんなまま置いて帰れる訳ない。
そっと繋いだ手は振り解かれる事はなかった。
こんなになるまで雨に打たれるなんて何考えてんの。
予定変更して直帰に変更。
タクシーで帰りたいとこだけど、こんなにびしゃびしゃじゃ難しいから歩いて帰る間に何があったか聞くとしよう。
ぎゅっと寄り添って一つの傘に入って歩く。
「れいこちゃん」
「なぁに」
消え入るような声でごめんねと言われるけど、そんな言葉が欲しいわけじゃない。
何があったのか話したら少しは楽になるかもしれない。
解決はできなくても
「私の旦那さんね、他に好きな人がいるの」
どんな話題が返ってくるかと思って待てば少しの沈黙の後、務めて明るく言った貴美さん。
知らないフリした方がいいよね。
「そうなの?貴美さんみたいな素敵な奥さんがいるのに信じられない」
浮気してるのは知ってはいたらしいが、今日実際にその現場を見てしまったらしい。
それで呆然としてたって事か。相当ショックだったんだろう。なんだかんだで憎みきれないんだろうな。
「笑っちゃうよね。本当」
「旦那さんの事愛してるんだね」
力無く笑う貴美さんに心締め付けられる。
いや、自分の言葉に締め付けられたのかもしれない。
うんと言われればそこで私の思いは行き場をなくしてしまう。
こんな時にまで自分中心な考えをしてしまうなんて不謹慎極まりないけど。
「愛とかよく分からない」
「そうだね」
うんとは言われなかったけど、今は現実にショックを受けてるから分からないだけかもしれない。
それ以上聞く勇気をなくしてしまった私はおしだまったまま歩いた。貴美さんも何も言わない。
玄関に着いたら、床が濡れちゃうと入るのを躊躇するから取り敢えずタオル持って来る。
抱き抱えて行っても良いんだけど、私が濡れるからとかジタバタされそうだから仕方ない。
「取り敢えず脱ぐ」
服を引っ剥がしてタオルでぐるぐる巻きにして、お風呂場まで引っ張ってく。早くしなきゃ風邪ひいちゃう。
「ほら、シャワー浴びて」
お風呂場へ押し込んだけど、一向にシャワーの音がしない。
もう、手が掛かるなぁ。
ズボンを捲り上げてガチャッと扉を開けて中に入るけど、扉から背を向けた貴美さんはバスタオルを巻いたまましゃがみ込んで動かない。
肩に手を乗せればぴくりと反応するけど固まったまま。
「お湯出すよ?」
タオル外してほしくて声かけるけど反応ないから貴美さんの目線に合わせてしゃがんで横から覗けば、ぎゅっと抱きつかれて尻餅をつく。
なっ何、貴美さんが抱きついてくるなんて。
「れいこちゃん」
「どうしたの」
「ありがとう。いつも助けてくれて」
動揺を平静を装って答えれば、泣きそうな声。
いや、完全に泣いてるな。
「何で、いつもヒーローみたいにピンチの時に助けに来てくれるの」
「運命だからじゃない。そろそろ私の事好きになった?」
抱きついていた手が解かれてまっすぐに見つめられる。
貴美さんの温もりが離れていって名残惜しくなる。
またそういう好きじゃないって言われるんだろうな。
「すき。れいこちゃんのせいだよ。どうしてくれるの」
ほらね。
え?今なんて言ったの?
「へえっ?」
「なにそのへんな声」
あまりに予想外の答えで変な声をあげた私に貴美さんが吹き出す。
「すきみたいなの」
さっき浮気現場を見ても心が痛まなかったらしく、何でかって考えてあのベンチに座って考えてたらこの答えに行き着いたらしい。でも付き合うことは出来ないとか言われて。
別れるまでは色々と時間がかかるし、愛がなくても家庭がある身だから恋愛感情でお互い好きでもそれは不倫。そんな道に私を巻き込みたくないらしい。
なに今更。そんなの承知で想い伝えたんだから。
気持ちが一緒なら尚更ここで手放す訳にはいかない。
「私のものになって。もうこのまま閉じ込めておきたい位好き」
ぎゅっと抱きしめればそっと抱きしめ返してくれた。2人なら修羅の道でも歩いていける
今日帰ってこないんでしょ。旦那さん
恐らく。友達のとこに泊まるって送っておく。
友達ね・・・。濃い関係の友達だけどね。
もう、いじわる
ねえ、もう一回
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