F.NOZOMI
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ああ。まずいな。
帰宅してすぐに倒れるように横たわったベットの上。
私の手の中にある体温計は38℃を示している。
始まりは2日前。
「んー。喉が痛いような」
「先輩?風邪ですか?」
心配そうに見つめる、ゆきのいう事聞いてちゃんとご飯食べて、早めに寝たのに。
今日起きたらかなり体が怠い。
でも今頑張りどころだし、休む訳にもいかないから重い体を引きずって会社に行ったのだが、私を見たゆきは慌てている。
「先輩っ?声ガラガラだし、顔が真っ青ですよ」
ゆきから帰宅命令を下され、出勤早々帰ることになった。
今日の会議は代わりに出てくれるそうだ。
しっかりした後輩を持って私は幸せだよ。
申し訳なさすぎて、ちょっとでも手伝おうとしたけど、ゆきに怒られる始末
「何言ってんですかー。だいたい先輩頑張り過ぎなんですよ。さあ帰って早く寝てください。」
「ちゃんとご飯も食べたし、寝たのに。」
「偉かったですね、きっと神様がちょっと休みなさいって事ですよ!」
うん。もうどっちが後輩かわかんないね。
早々にタクシーまでも手配してくれ、到着したタクシーに押し込まれるように乗り込んだ。
私の中の抗体さん、頑張ってくれ。そう思いながらドライバーさんに行き先を告げた。
あやちゃんが忙しい時期な事だけが救いだ。電話とかしたら声でバレちゃうから。
どうにか帰宅したものの、家に到着した頃にはもう立ってるのもやっとで。
バックとか玄関の端に置いたままフラフラとベットに横たわり体温計を手にしたのがさっき。
熱があるって自覚させられるとよりしんどくなる不思議。
あやちゃんが忙しいからよかったなんて言いながら、本当は寂しいなんてこじらせ女子感半端ないなとガンガンする頭の中でそんなことを思った。
「んっ・・・」
寝ちゃってたんだ。
頭は重いけど、なんか冷たくて気持ちいい。
あれ、いつの間に冷えピタとか貼ったのかなやっとの思いで体を起こすときちんと布団きてる。
そういえばスーツのまま倒れ込んだ筈なのに部屋着、これはまだ夢の中なのかな?
「あ。起きた?」
寝室のドアが開いたと思ったら聞き覚えのある声が聞こえてきて分かった。
ああ、まだ夢の中なんだ。だってあやちゃんがいる。
「大丈夫?」
心配そうに見つめこちらにやって来て、ベットに腰掛けて頬に触れる細い綺麗な手
「ふっ・・・」
その時にふわっと香ったあやちゃんの香りに安心したのか涙が出てきてしまって。
思わずしがみついて泣いてしまった。
「よしよし。良く頑張ったね」
あやすように背中をさすってくれる。
あやちゃん、ありがとう。夢だとしても会えて嬉しい。
現実だと強がって大丈夫なふりしちゃうけど、夢でなら素直になれる気がする。
「貴美」
あやちゃんの甘い声に気持ちがふわふわしてきて、現実では会えないけど、今この夢でだけでももっとあやちゃんを感じたい。
「もっとギュってして」
抱きしめてくれる力が強くなり、心までも満たされてく。
暖かい・・・現実みたい。
「貴美ほんとに大丈夫?」
「あやちゃん・・・」
「なあに?って寝てる・・・熱がまだ下がってないね。」
暖かい羽に包まれるような感覚でまた意識が遠くなっていくのを感じた。
だめ、現実に戻りたくない。
夢なら覚めないで。
あやちゃんと居たい
*****************************
今日も仕事。
公演を目前に控えてお稽古に加えて撮影などもあり、スケジュールが詰まってて。
有難い話なんだけど、彼女とも全然会えてない。
終わる時間が遅いことが殆どだから、翌日朝早い彼女に電話も出来ない。
せめてもでLINEのやり取り位。元気かな?会いたいな。
今日は夕方からの仕事のみ。
でも貴美は昼間は仕事だから会える訳もなく。
珍しく早起きした私は、久しく出来てなかった部屋の掃除でもしようかとせっせとルンバさんに頑張ってもらいながら溜まってきた資料達を片していた。
資料って気づいたら読んじゃうんだよね。
進まないのこれが。で、読んでるうちに微睡んでしまって
「あやちゃん、助けて。苦しい」
貴美?苦しそうに手を伸ばしてくる貴美
その手を取ろうと手を伸ばすけど届かない。
「貴美っ」
「助けて・・・」
暗闇に飲み込まれていく貴美には手が遠どかないまま、はっと目を覚ました。
やけに現実味のある夢だったなただの夢。
そう思っても何か嫌な感じがして、貴美にLINEしてみるものの、仕事中だし返事がすぐくる訳もなく。
こんな事で電話するのもな。
貴美は仕事で居ないだろうけどちょっとだけ家に行って、こないだ買った貴美に渡そうと思ってたネックレスとメッセージカードでも書いて置いていこうかな。まだしばらく会えそうにないし。
あ、ご飯でも作り置きしていこうかなんて可愛い彼女みたいな事考えたり。
忙しくなるとご飯もまともに取らずに頑張っちゃうからな。久しぶりに会ったら、かなり痩せててご飯山盛り食べさせたのが記憶に新しい。
それに貴美の家からの方が、今日の撮影現場近いからついでに休ませてもらおう。
途中だった資料整理はまた後日に先伸ばされることとなった。
久しぶりに訪れた貴美の家
合鍵で勝手に入らせていただきます。キーケースの中の2つの鍵。
家の鍵と、付き合ってしばらくしてから私があげた家の合鍵と交換で貰った貴美の家の鍵
結局中々使う機会に恵まれないんだけど。
ガチャッ
「お邪魔しまーす」
主がいなくても一応礼儀としてお声掛けだけ。
玄関を開けると脱ぎ捨てられたような靴が一足。
いつも綺麗に並べてあるのに。
床にはいつも貴美が仕事で使ってる黒い鞄が倒れてた。
ん?今日休みなの?でもお休みの日は教え合ってるから、休みになったなら連絡くるだろうしな。
会えないはずの彼女にもしかして会えるかもという淡い期待にちょっと顔が緩む
「貴美いるの?」
リビングの扉を開けてみるけど姿はない。
そりゃそうだよね。
当たり前の事実にがっくりした時、寝室の扉が開いてるのが目に入った。
覗いてみると、ベットの上に布団もかけずに貴美が仰向けに寝てた。
スーツのジャケットは羽織ってるけど前のボタンは開いて、シャツもはだけてる。え、どうゆう事?
近づけば顔が赤く、なんだか息も荒いしおでこに手を当ててみればかなり熱い。
ようやく夢の理由が分かった気がした。
すぐ我慢して言わないんだから。
取り敢えずこのままじゃ冷えてより酷くなっちゃうから着替えさせよう。
ちょっとドキドキする気持ちを抑えつつスーツを脱がせて、部屋着に着替えさせる。
薬箱に冷えピタがあったのを思い出しておでこに貼る。
布団を掛けて、早く楽になりますように願いを込めて布団から出てた手の甲にそっとキスをして布団の中に入れた。
起きた時に食べれるように雑炊の準備でもしようかな。
そっと部屋を出て、キッチンへ向かった。食材買ってきておいて良かった。
準備をしていると、コホンッと咳き込む音がして部屋の扉をあけてみると起き上がった貴美と目が合いキョトンとした顔でこちらを見ていた。
そりゃそうだよね、まさか家に私がいるとは思わないよね
「あ。起きた?」
様子を見に近づけば泣きながら抱きつかれて、会いたかったとか、もっととかまさかそんな事を言われるとは思ってなくて。
いや、私が喜ばされてどうすんの。
普段なら絶対恥ずかしがって言ってくれないような言葉ばかりでなんか私の方が動揺してきてしまった。
「ちょっほんと貴美大丈夫?」
抱きしめたまま背中をあやすようにさすって聞くけど返事が返ってこない。
ふっと貴美の力が抜けて静かに寝息が聞こえてきて。え、寝てる・・・?
おでこに手を当ててみるけどまだ熱い。
ゆっくりと貴美を寝かせて一緒に休ませてもらう事にした。
*********************
暖かい夢を見た。
あやちゃんに抱きしめられて安心して眠る夢。
今日は何回も夢見てる。
目を開ければ、目の前ににあやちゃんがいた。
しかもすやすやと眠るあやちゃんの腕の中にいる私。ほんもの?
あやちゃんの髪の毛にそっと触れる。金色の柔らかい髪、久しぶりの感覚。
「んっ。」
ゆっくりと瞼が開き、あやちゃんと目が合う。
相変わらず綺麗な瞳に吸い込まれそうになって思わず顔をそらす。
「なあに。さっきは会いたかったとか、もっと抱きしめてとか大胆だったくせにー」
ゆっくりと私の髪を撫でて、ニヤリと意地悪そうに微笑むあやちゃん。
じわじわと記憶が繋がっていく。
嘘っ、あれは夢じゃなかったってこと?恥ずかし過ぎる。
忘れて欲しいと懇願したけどあやちゃんは忘れてくれそうにない。
「ほんとやだ。というかあやちゃん。何でここに?本物?」
その問いにえっへんという言葉が一番ぴったりだという顔で自慢げにあやちゃんは一言言った。
「んー。私の貴美への愛が導いたからじゃないかな」
本当に愛としか言いようがないねとしみじみとあやちゃんは言う。
「間違いなく愛」
私のほっぺたに手を当ててそう呟くあやちゃんは最強にかっこよくてずるい。
私の顔が真っ赤なのに気づいて、熱が上がってきたんじゃないかと心配してくれてるのに、かっこいいとか不純な私
「あっ・・・ありがとう。あやちゃん、大好き」
恥ずかしいけど、今ちゃんと伝えないといけない気がして。
見つめてそう言うとあやちゃんの方が顔をそらす
「ずるい」
え?何が?気になって顔を覗き込んでみるけど目を合わせてくれない。
「ほんとにずるい。そんなやって私をいっぱいいっぱいにする」
「私もあやちゃんでいっぱいだよ?」
「っ・・・そういう意味じゃない。ほんと無意識程危険な物はないよね。」
ちょっと呆れたように見つめられ不安に駆られる。私、悪いこと言ったかな。
「ああ、もう閉じ込めときたい。」
ぎゅっと力を込めて苦しいくらい抱きしめられるけど、はっと思い出したように身体を離して肩を掴まれる。
「それより!!体調悪い時は一言連絡する事。いい?我慢しない。」
「はっ・・・はい、ごめんなさい」
「もっと心配かけてよ」
凄い勢いで約束させられたけど、最後の一言はひときわ優しい口調だった。
起きたときに食べれるように雑炊を作ってくれてる途中だったみたいで、ベットから出てキッチンに行こうとするあやちゃんの袖を無意識に掴んでた。
「もうちょっとだけここに・・・居て欲しい」
今日の私は最大限にわがままだ。
しょうがないなと言いながらもあやちゃんはベットに腰掛け抱き締めてくれた。
********************************
蓮華にすくった雑炊をふーふーと冷ます仕草にさえ胸の鼓動が高鳴る。
なんでそんなことでさえ様になるのか。
「そんなに見つめないでよ、恥ずかしいよ」
ほらと差し出された蓮華を口にすれば、胃が暖かさで満たされる。
「美味しい」
「良かった」
完全にあやちゃんに甘えて最後まで食べさせて貰ってしまった。
なんか風邪で辛かったはずなのにあやちゃんが居るだけでこんなにも幸せなんだな。
「ほら食べたらもうちょっと寝て」
薬も飲んで横になれば布団を掛けてくれる。起きたらもうあやちゃん居ないのか。
お仕事前なのに来てくれるなんて本当に優しい。
でも目を閉じたらもう、この幸せな時間は終わっちゃうんだ。
名残惜しくなってしまった私の心を見透かしてかあやちゃんはそっと手を握ってくれた。
「眠るまで側にいるから」
「ありがとう、あやちゃん」
********************************
目が覚めると24時を回っていた。なんだか体が軽い。
水が飲みたいと思って真っ暗な寝室を出て、冷蔵庫の水に手を伸ばした。
嬉しい、果物とか買ってくれたんだ。
他にも色々、空に近かったうちの冷蔵庫はぎっしりという言葉が一番しっくりくる位豊富な食材たちが。
そういえばお化粧も落とさず寝てたことを思い出して、シャワーを浴びようとお風呂場に向った。
お湯を出して頭からシャワーを浴びバスチェアに腰かけ体を洗おうと思った時、鏡に映った自分に違和感を覚えた。
見覚えのないネックレスが胸元に輝いている。
「え?なにこれ・・・」
今朝仕事に行くまで付けてなかったのはまちがいない。
ということはあやちゃんが・・・?慌ててすべてを済ませお風呂から出た私はぱぱっと濡れた髪の毛を拭いてバスタオルを巻き付け、寝室のナイトテーブルに置いた携帯を取りに行った。
寝室の電気を付けて携帯を取ろうとした時、その下に二つ折りにした紙。
手にとって開けばあやちゃんの綺麗な字
"似合ってる"
もう。本当にあやちゃんって人は。
どこまで私を虜にすれば気が済むんだろう。
「あ。起きてる。ってなんて格好してるのっ」
突然声がしてびっくりして振り向けば、寝室の入り口に目をまん丸にしたあやちゃんが立ってた。
お仕事帰り?わざわざ寄ってくれたの?ネックレスへの感動と、あやちゃんにまた会えた嬉しさとで泣き出した私におろおろしながらどこか痛いのかと近づいてきたあやちゃんに思いっきり抱きついた。
「もーあやちゃん。すき」
「なに、抱かれたいの?」
ちっ違う!色っぽく耳元で囁かれて慌てて飛びのいた私に、だってそんな格好してる方が悪いと口を尖らせてあやちゃんがぶーぶーと言ってるけど。身に着けてるのがバスタオルだけなの忘れてた。
あやちゃんからのメモを私が握りしめてるのに気づいてにこりと微笑んだ
「思った通り。似合ってるよ」
同じ言葉でも、さっきよりはるかに高鳴る鼓動
あやちゃんの声の破壊力を思い知った。
そしてそっと胸元のネックレスに触れたあやちゃんの手
「やっぱりさ、汗かいた方が早く治るっていうよね」
「えっ。」
気付けば腕を捕まれて、軽やかに引き寄せられ。
端を掴まれたバスタオルはあっさり私の体を離れてはらりと落ちた。
「まっ・・・待って」
「無理」
しっかり汗をかかされた私は見事にぶり返し、3日間寝込んだのだった。
罪悪感を感じたのかあやちゃんがきっちり看病してくれたのは言うまでも無いが、看病にかこつけて私の家からお稽古に通うあやちゃんはぷち同棲を楽しんでいるようだった。
あやちゃん、もう治ったから大丈夫だよ
やだ、帰りたくない。このままずっと一緒に住みたい
・・・それは・・・嬉しいかも。
でしょ?
.
帰宅してすぐに倒れるように横たわったベットの上。
私の手の中にある体温計は38℃を示している。
始まりは2日前。
「んー。喉が痛いような」
「先輩?風邪ですか?」
心配そうに見つめる、ゆきのいう事聞いてちゃんとご飯食べて、早めに寝たのに。
今日起きたらかなり体が怠い。
でも今頑張りどころだし、休む訳にもいかないから重い体を引きずって会社に行ったのだが、私を見たゆきは慌てている。
「先輩っ?声ガラガラだし、顔が真っ青ですよ」
ゆきから帰宅命令を下され、出勤早々帰ることになった。
今日の会議は代わりに出てくれるそうだ。
しっかりした後輩を持って私は幸せだよ。
申し訳なさすぎて、ちょっとでも手伝おうとしたけど、ゆきに怒られる始末
「何言ってんですかー。だいたい先輩頑張り過ぎなんですよ。さあ帰って早く寝てください。」
「ちゃんとご飯も食べたし、寝たのに。」
「偉かったですね、きっと神様がちょっと休みなさいって事ですよ!」
うん。もうどっちが後輩かわかんないね。
早々にタクシーまでも手配してくれ、到着したタクシーに押し込まれるように乗り込んだ。
私の中の抗体さん、頑張ってくれ。そう思いながらドライバーさんに行き先を告げた。
あやちゃんが忙しい時期な事だけが救いだ。電話とかしたら声でバレちゃうから。
どうにか帰宅したものの、家に到着した頃にはもう立ってるのもやっとで。
バックとか玄関の端に置いたままフラフラとベットに横たわり体温計を手にしたのがさっき。
熱があるって自覚させられるとよりしんどくなる不思議。
あやちゃんが忙しいからよかったなんて言いながら、本当は寂しいなんてこじらせ女子感半端ないなとガンガンする頭の中でそんなことを思った。
「んっ・・・」
寝ちゃってたんだ。
頭は重いけど、なんか冷たくて気持ちいい。
あれ、いつの間に冷えピタとか貼ったのかなやっとの思いで体を起こすときちんと布団きてる。
そういえばスーツのまま倒れ込んだ筈なのに部屋着、これはまだ夢の中なのかな?
「あ。起きた?」
寝室のドアが開いたと思ったら聞き覚えのある声が聞こえてきて分かった。
ああ、まだ夢の中なんだ。だってあやちゃんがいる。
「大丈夫?」
心配そうに見つめこちらにやって来て、ベットに腰掛けて頬に触れる細い綺麗な手
「ふっ・・・」
その時にふわっと香ったあやちゃんの香りに安心したのか涙が出てきてしまって。
思わずしがみついて泣いてしまった。
「よしよし。良く頑張ったね」
あやすように背中をさすってくれる。
あやちゃん、ありがとう。夢だとしても会えて嬉しい。
現実だと強がって大丈夫なふりしちゃうけど、夢でなら素直になれる気がする。
「貴美」
あやちゃんの甘い声に気持ちがふわふわしてきて、現実では会えないけど、今この夢でだけでももっとあやちゃんを感じたい。
「もっとギュってして」
抱きしめてくれる力が強くなり、心までも満たされてく。
暖かい・・・現実みたい。
「貴美ほんとに大丈夫?」
「あやちゃん・・・」
「なあに?って寝てる・・・熱がまだ下がってないね。」
暖かい羽に包まれるような感覚でまた意識が遠くなっていくのを感じた。
だめ、現実に戻りたくない。
夢なら覚めないで。
あやちゃんと居たい
*****************************
今日も仕事。
公演を目前に控えてお稽古に加えて撮影などもあり、スケジュールが詰まってて。
有難い話なんだけど、彼女とも全然会えてない。
終わる時間が遅いことが殆どだから、翌日朝早い彼女に電話も出来ない。
せめてもでLINEのやり取り位。元気かな?会いたいな。
今日は夕方からの仕事のみ。
でも貴美は昼間は仕事だから会える訳もなく。
珍しく早起きした私は、久しく出来てなかった部屋の掃除でもしようかとせっせとルンバさんに頑張ってもらいながら溜まってきた資料達を片していた。
資料って気づいたら読んじゃうんだよね。
進まないのこれが。で、読んでるうちに微睡んでしまって
「あやちゃん、助けて。苦しい」
貴美?苦しそうに手を伸ばしてくる貴美
その手を取ろうと手を伸ばすけど届かない。
「貴美っ」
「助けて・・・」
暗闇に飲み込まれていく貴美には手が遠どかないまま、はっと目を覚ました。
やけに現実味のある夢だったなただの夢。
そう思っても何か嫌な感じがして、貴美にLINEしてみるものの、仕事中だし返事がすぐくる訳もなく。
こんな事で電話するのもな。
貴美は仕事で居ないだろうけどちょっとだけ家に行って、こないだ買った貴美に渡そうと思ってたネックレスとメッセージカードでも書いて置いていこうかな。まだしばらく会えそうにないし。
あ、ご飯でも作り置きしていこうかなんて可愛い彼女みたいな事考えたり。
忙しくなるとご飯もまともに取らずに頑張っちゃうからな。久しぶりに会ったら、かなり痩せててご飯山盛り食べさせたのが記憶に新しい。
それに貴美の家からの方が、今日の撮影現場近いからついでに休ませてもらおう。
途中だった資料整理はまた後日に先伸ばされることとなった。
久しぶりに訪れた貴美の家
合鍵で勝手に入らせていただきます。キーケースの中の2つの鍵。
家の鍵と、付き合ってしばらくしてから私があげた家の合鍵と交換で貰った貴美の家の鍵
結局中々使う機会に恵まれないんだけど。
ガチャッ
「お邪魔しまーす」
主がいなくても一応礼儀としてお声掛けだけ。
玄関を開けると脱ぎ捨てられたような靴が一足。
いつも綺麗に並べてあるのに。
床にはいつも貴美が仕事で使ってる黒い鞄が倒れてた。
ん?今日休みなの?でもお休みの日は教え合ってるから、休みになったなら連絡くるだろうしな。
会えないはずの彼女にもしかして会えるかもという淡い期待にちょっと顔が緩む
「貴美いるの?」
リビングの扉を開けてみるけど姿はない。
そりゃそうだよね。
当たり前の事実にがっくりした時、寝室の扉が開いてるのが目に入った。
覗いてみると、ベットの上に布団もかけずに貴美が仰向けに寝てた。
スーツのジャケットは羽織ってるけど前のボタンは開いて、シャツもはだけてる。え、どうゆう事?
近づけば顔が赤く、なんだか息も荒いしおでこに手を当ててみればかなり熱い。
ようやく夢の理由が分かった気がした。
すぐ我慢して言わないんだから。
取り敢えずこのままじゃ冷えてより酷くなっちゃうから着替えさせよう。
ちょっとドキドキする気持ちを抑えつつスーツを脱がせて、部屋着に着替えさせる。
薬箱に冷えピタがあったのを思い出しておでこに貼る。
布団を掛けて、早く楽になりますように願いを込めて布団から出てた手の甲にそっとキスをして布団の中に入れた。
起きた時に食べれるように雑炊の準備でもしようかな。
そっと部屋を出て、キッチンへ向かった。食材買ってきておいて良かった。
準備をしていると、コホンッと咳き込む音がして部屋の扉をあけてみると起き上がった貴美と目が合いキョトンとした顔でこちらを見ていた。
そりゃそうだよね、まさか家に私がいるとは思わないよね
「あ。起きた?」
様子を見に近づけば泣きながら抱きつかれて、会いたかったとか、もっととかまさかそんな事を言われるとは思ってなくて。
いや、私が喜ばされてどうすんの。
普段なら絶対恥ずかしがって言ってくれないような言葉ばかりでなんか私の方が動揺してきてしまった。
「ちょっほんと貴美大丈夫?」
抱きしめたまま背中をあやすようにさすって聞くけど返事が返ってこない。
ふっと貴美の力が抜けて静かに寝息が聞こえてきて。え、寝てる・・・?
おでこに手を当ててみるけどまだ熱い。
ゆっくりと貴美を寝かせて一緒に休ませてもらう事にした。
*********************
暖かい夢を見た。
あやちゃんに抱きしめられて安心して眠る夢。
今日は何回も夢見てる。
目を開ければ、目の前ににあやちゃんがいた。
しかもすやすやと眠るあやちゃんの腕の中にいる私。ほんもの?
あやちゃんの髪の毛にそっと触れる。金色の柔らかい髪、久しぶりの感覚。
「んっ。」
ゆっくりと瞼が開き、あやちゃんと目が合う。
相変わらず綺麗な瞳に吸い込まれそうになって思わず顔をそらす。
「なあに。さっきは会いたかったとか、もっと抱きしめてとか大胆だったくせにー」
ゆっくりと私の髪を撫でて、ニヤリと意地悪そうに微笑むあやちゃん。
じわじわと記憶が繋がっていく。
嘘っ、あれは夢じゃなかったってこと?恥ずかし過ぎる。
忘れて欲しいと懇願したけどあやちゃんは忘れてくれそうにない。
「ほんとやだ。というかあやちゃん。何でここに?本物?」
その問いにえっへんという言葉が一番ぴったりだという顔で自慢げにあやちゃんは一言言った。
「んー。私の貴美への愛が導いたからじゃないかな」
本当に愛としか言いようがないねとしみじみとあやちゃんは言う。
「間違いなく愛」
私のほっぺたに手を当ててそう呟くあやちゃんは最強にかっこよくてずるい。
私の顔が真っ赤なのに気づいて、熱が上がってきたんじゃないかと心配してくれてるのに、かっこいいとか不純な私
「あっ・・・ありがとう。あやちゃん、大好き」
恥ずかしいけど、今ちゃんと伝えないといけない気がして。
見つめてそう言うとあやちゃんの方が顔をそらす
「ずるい」
え?何が?気になって顔を覗き込んでみるけど目を合わせてくれない。
「ほんとにずるい。そんなやって私をいっぱいいっぱいにする」
「私もあやちゃんでいっぱいだよ?」
「っ・・・そういう意味じゃない。ほんと無意識程危険な物はないよね。」
ちょっと呆れたように見つめられ不安に駆られる。私、悪いこと言ったかな。
「ああ、もう閉じ込めときたい。」
ぎゅっと力を込めて苦しいくらい抱きしめられるけど、はっと思い出したように身体を離して肩を掴まれる。
「それより!!体調悪い時は一言連絡する事。いい?我慢しない。」
「はっ・・・はい、ごめんなさい」
「もっと心配かけてよ」
凄い勢いで約束させられたけど、最後の一言はひときわ優しい口調だった。
起きたときに食べれるように雑炊を作ってくれてる途中だったみたいで、ベットから出てキッチンに行こうとするあやちゃんの袖を無意識に掴んでた。
「もうちょっとだけここに・・・居て欲しい」
今日の私は最大限にわがままだ。
しょうがないなと言いながらもあやちゃんはベットに腰掛け抱き締めてくれた。
********************************
蓮華にすくった雑炊をふーふーと冷ます仕草にさえ胸の鼓動が高鳴る。
なんでそんなことでさえ様になるのか。
「そんなに見つめないでよ、恥ずかしいよ」
ほらと差し出された蓮華を口にすれば、胃が暖かさで満たされる。
「美味しい」
「良かった」
完全にあやちゃんに甘えて最後まで食べさせて貰ってしまった。
なんか風邪で辛かったはずなのにあやちゃんが居るだけでこんなにも幸せなんだな。
「ほら食べたらもうちょっと寝て」
薬も飲んで横になれば布団を掛けてくれる。起きたらもうあやちゃん居ないのか。
お仕事前なのに来てくれるなんて本当に優しい。
でも目を閉じたらもう、この幸せな時間は終わっちゃうんだ。
名残惜しくなってしまった私の心を見透かしてかあやちゃんはそっと手を握ってくれた。
「眠るまで側にいるから」
「ありがとう、あやちゃん」
********************************
目が覚めると24時を回っていた。なんだか体が軽い。
水が飲みたいと思って真っ暗な寝室を出て、冷蔵庫の水に手を伸ばした。
嬉しい、果物とか買ってくれたんだ。
他にも色々、空に近かったうちの冷蔵庫はぎっしりという言葉が一番しっくりくる位豊富な食材たちが。
そういえばお化粧も落とさず寝てたことを思い出して、シャワーを浴びようとお風呂場に向った。
お湯を出して頭からシャワーを浴びバスチェアに腰かけ体を洗おうと思った時、鏡に映った自分に違和感を覚えた。
見覚えのないネックレスが胸元に輝いている。
「え?なにこれ・・・」
今朝仕事に行くまで付けてなかったのはまちがいない。
ということはあやちゃんが・・・?慌ててすべてを済ませお風呂から出た私はぱぱっと濡れた髪の毛を拭いてバスタオルを巻き付け、寝室のナイトテーブルに置いた携帯を取りに行った。
寝室の電気を付けて携帯を取ろうとした時、その下に二つ折りにした紙。
手にとって開けばあやちゃんの綺麗な字
"似合ってる"
もう。本当にあやちゃんって人は。
どこまで私を虜にすれば気が済むんだろう。
「あ。起きてる。ってなんて格好してるのっ」
突然声がしてびっくりして振り向けば、寝室の入り口に目をまん丸にしたあやちゃんが立ってた。
お仕事帰り?わざわざ寄ってくれたの?ネックレスへの感動と、あやちゃんにまた会えた嬉しさとで泣き出した私におろおろしながらどこか痛いのかと近づいてきたあやちゃんに思いっきり抱きついた。
「もーあやちゃん。すき」
「なに、抱かれたいの?」
ちっ違う!色っぽく耳元で囁かれて慌てて飛びのいた私に、だってそんな格好してる方が悪いと口を尖らせてあやちゃんがぶーぶーと言ってるけど。身に着けてるのがバスタオルだけなの忘れてた。
あやちゃんからのメモを私が握りしめてるのに気づいてにこりと微笑んだ
「思った通り。似合ってるよ」
同じ言葉でも、さっきよりはるかに高鳴る鼓動
あやちゃんの声の破壊力を思い知った。
そしてそっと胸元のネックレスに触れたあやちゃんの手
「やっぱりさ、汗かいた方が早く治るっていうよね」
「えっ。」
気付けば腕を捕まれて、軽やかに引き寄せられ。
端を掴まれたバスタオルはあっさり私の体を離れてはらりと落ちた。
「まっ・・・待って」
「無理」
しっかり汗をかかされた私は見事にぶり返し、3日間寝込んだのだった。
罪悪感を感じたのかあやちゃんがきっちり看病してくれたのは言うまでも無いが、看病にかこつけて私の家からお稽古に通うあやちゃんはぷち同棲を楽しんでいるようだった。
あやちゃん、もう治ったから大丈夫だよ
やだ、帰りたくない。このままずっと一緒に住みたい
・・・それは・・・嬉しいかも。
でしょ?
.
1/14ページ