ピアス
番外編 ピアス
「あーちゃん、お願い事あったりしない?」
「うん?」
突然の申し出にカタカタとパソコンを叩く音を止めた。ゆっくりと振り向くと今日も美しい私の神様。にこにこと立つ彼の手に視線を落とせば、ピアッサーが握られている。
――でたぞー、みっちゃんの悪いクセが
「そんな急に言われても」
「なんでもいいんだよー、今日の夕飯はハンバーグがいいなーとか」
「それ神様に願うことじゃなくない?」
「じゃあ世界平和とかどう?」
「私がそんなの願うと思う?」
「願ったら僕笑い死ぬ」
そう思うのなら言わないでほしい。
「ねー、神様がこんなに頼んでるんだよー」
「もー、分かったよ……神様にお願いされてお願い事するって本当おかしいけど」
はあーっと大きなため息をわざとらしくついて、みっちゃんからピアッサーを受け取る。
「どっちの耳?」
「んー左かなー」
「えーもういっぱい開いてるくない? 右――もいっぱい……私こんな願い事したっけ」
みっちゃんの髪をかき上げて現れた両耳を見て、思わず言葉を失う。 下から上までびっしりだ。
「んふ、全部あーちゃんの大事な願い事だよ。まあ叶ったものから消えてるから実際もっとあるんじゃない」
「っていってもほとんどお願いされてあけた軽い奴じゃん」
「そうだね。本当に心から僕に願ってくれたのはこの三つだけ……と最近あけたこれか」
愛おしそうに左の、特に目立つ耳たぶにぶら下がった輪っか三つと、キラキラと小さな花が咲くヘリックスを撫でる。
「ずいぶん可愛いのつけてるね」
「巳綺緒 くんみたいに可愛いでしょ」
「そうね」
その名前が目の前の彼ではなく、同じ顔、同じ名の最近まるで末っ子のような扱いを受けている、とてもとても可愛い彼なのは分かっている。
確かにひっそりと咲く小ぶりの白い花は彼の純粋無垢を現しているようだ。
つん、っと軽く触れて一拍置いてから改めてみっちゃんに向き合う。
「願いごと決まったの?」
とろり、とろけそうに髪の隙間から見える青い瞳を潤ませてにやりと笑うみっちゃんは美しすぎて――。
「うん」
「じゃあ、ここにしようか」
かろうじてあった耳たぶぎりぎりの隙間を指定され、ゆっくりそこにピアッサーをあてがう。
「いい?」
「どうぞ」
待ちきれない、とでも言うように間髪入れず答えが帰ってくる。それを聞いていつも通りカチリと音がするまで機械を軽く押し込むと、神様は恍惚とした顔で舌なめずりした。
ベッドの上で手鏡を覗き、鼻歌を歌いながら数時間前に開けたピアスを付近を何度も撫でる。
「新しいのか」
「んふ、そう新しいの」
隣で雑誌を見ていた僕の片割れがちらっと鏡越しに目を合わせてくる。少し呆れを混ぜた視線で。
「本当に好きだな、それ」
「そうだね、大好きだよ。あーちゃんがこうやって僕に願い事をしてくれる度に自分が神だってこと強く思い出させられる。ちょっとした痛みと共にね。あーちゃんがいつも僕を崇めてくれていることは分かってはいるけど、あれだけじゃ物足りなくなっちゃって」
「……変態」
「神なんて皆変態だろう?」
そう口の端をあげれば、僕と同じ青い瞳が細められる。 一見すると呆れられているように見えるが、その瞳の熱と軽く口の端を上げるのを僕は見逃さなかった。
「……今回のアキハの願い事はなんだったんだ」
「聞きたい?」
口元を歪ませながらゆったりと彼の髪の上から耳へ口をつける。
「…………ふ」
「かわいいでしょ」
内容を聞いた彼は軽く笑う。愛おしいとでも言うように。僕も一緒に笑うとしばらくして見つめられる。そしてそっと新しいピアスへ手を伸ばす。
「叶えてやらないとな」
「うん。僕らはあの子の神様だからね」
愛しい子達を思いながら長い時間僕らはそうしていた。
「あーちゃん、お願い事あったりしない?」
「うん?」
突然の申し出にカタカタとパソコンを叩く音を止めた。ゆっくりと振り向くと今日も美しい私の神様。にこにこと立つ彼の手に視線を落とせば、ピアッサーが握られている。
――でたぞー、みっちゃんの悪いクセが
「そんな急に言われても」
「なんでもいいんだよー、今日の夕飯はハンバーグがいいなーとか」
「それ神様に願うことじゃなくない?」
「じゃあ世界平和とかどう?」
「私がそんなの願うと思う?」
「願ったら僕笑い死ぬ」
そう思うのなら言わないでほしい。
「ねー、神様がこんなに頼んでるんだよー」
「もー、分かったよ……神様にお願いされてお願い事するって本当おかしいけど」
はあーっと大きなため息をわざとらしくついて、みっちゃんからピアッサーを受け取る。
「どっちの耳?」
「んー左かなー」
「えーもういっぱい開いてるくない? 右――もいっぱい……私こんな願い事したっけ」
みっちゃんの髪をかき上げて現れた両耳を見て、思わず言葉を失う。 下から上までびっしりだ。
「んふ、全部あーちゃんの大事な願い事だよ。まあ叶ったものから消えてるから実際もっとあるんじゃない」
「っていってもほとんどお願いされてあけた軽い奴じゃん」
「そうだね。本当に心から僕に願ってくれたのはこの三つだけ……と最近あけたこれか」
愛おしそうに左の、特に目立つ耳たぶにぶら下がった輪っか三つと、キラキラと小さな花が咲くヘリックスを撫でる。
「ずいぶん可愛いのつけてるね」
「
「そうね」
その名前が目の前の彼ではなく、同じ顔、同じ名の最近まるで末っ子のような扱いを受けている、とてもとても可愛い彼なのは分かっている。
確かにひっそりと咲く小ぶりの白い花は彼の純粋無垢を現しているようだ。
つん、っと軽く触れて一拍置いてから改めてみっちゃんに向き合う。
「願いごと決まったの?」
とろり、とろけそうに髪の隙間から見える青い瞳を潤ませてにやりと笑うみっちゃんは美しすぎて――。
「うん」
「じゃあ、ここにしようか」
かろうじてあった耳たぶぎりぎりの隙間を指定され、ゆっくりそこにピアッサーをあてがう。
「いい?」
「どうぞ」
待ちきれない、とでも言うように間髪入れず答えが帰ってくる。それを聞いていつも通りカチリと音がするまで機械を軽く押し込むと、神様は恍惚とした顔で舌なめずりした。
ベッドの上で手鏡を覗き、鼻歌を歌いながら数時間前に開けたピアスを付近を何度も撫でる。
「新しいのか」
「んふ、そう新しいの」
隣で雑誌を見ていた僕の片割れがちらっと鏡越しに目を合わせてくる。少し呆れを混ぜた視線で。
「本当に好きだな、それ」
「そうだね、大好きだよ。あーちゃんがこうやって僕に願い事をしてくれる度に自分が神だってこと強く思い出させられる。ちょっとした痛みと共にね。あーちゃんがいつも僕を崇めてくれていることは分かってはいるけど、あれだけじゃ物足りなくなっちゃって」
「……変態」
「神なんて皆変態だろう?」
そう口の端をあげれば、僕と同じ青い瞳が細められる。 一見すると呆れられているように見えるが、その瞳の熱と軽く口の端を上げるのを僕は見逃さなかった。
「……今回のアキハの願い事はなんだったんだ」
「聞きたい?」
口元を歪ませながらゆったりと彼の髪の上から耳へ口をつける。
「…………ふ」
「かわいいでしょ」
内容を聞いた彼は軽く笑う。愛おしいとでも言うように。僕も一緒に笑うとしばらくして見つめられる。そしてそっと新しいピアスへ手を伸ばす。
「叶えてやらないとな」
「うん。僕らはあの子の神様だからね」
愛しい子達を思いながら長い時間僕らはそうしていた。
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