すきになってもいいかもしれない
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「なあなあひなた、キスの反対は?」
「なにその質問」
「ね、これそのまま読んで!2文字だけだから!俺に向かって!」
「やだよ!圧がすごい!あと増田くんには言いたくない!」
保健室での一件があってから数週間、増田くんのかまってちゃん感が10倍くらいに跳ね上がった気がする。保健室で見た真剣な表情は幻だったのだろうか、と思うくらい。それでも顔を見るだけでどきどきしてしまうようになってしまったのが悔しいけど、それを隠すために、比例するようにつんつんした態度を取ってしまっている。
「ひなた、キスの反対は?」
「すきー」
「よくできました〜、じゃあこれ読んで?」
「『すき』!」
「なぁんで小山には言うの!」
ぷくと頬を膨らます増田くんを見ながら、慶ちゃんはけらけらと楽しそうに笑う。こういう『お兄ちゃん』みたいな人が好きなはずなんだけど、事実、増田くんを意識してしまっている自分がいるわけで。そして慶ちゃんにはその気持ちはバレてしまっていて、隣にいるのにLINEで『なんでそんなつんつんしてんの!』という文章と共に怒っているスタンプまで送ってくる始末だ。ほどなく授業開始のチャイムが鳴って、ぼんやりと黒板を見るフリをして視界の先の彼を見やると、ふいに増田くんが振り向いた。
「さっきのとこ写してなかったわ。ごめんひなたノート貸して」
「ん、どーぞ」
いつもは写せてないところがあってもそのままなのに珍しいなと思いつつ前にノートを渡す。
「はい、ありがと〜」
広げられたまま帰ってきたノートにふと目を落とすと、余白の部分に何か新しく書かれていた。
『俺はひなたが好きだけど、おまえは?』
は、と声が出そうになったのはなんとかこらえた。けど、こんな直接的に言われると思わなくて、一度読んだ文字列を何度も読み返し反芻すると、どんどんと顔が熱を帯びていくのがわかる。もう答えが決まっているとはいえど言葉にするのは難しい2文字。授業を聞く余裕もなく、うんうんと悩んで悩んで。
「…ねえ」
「っ、うい」
ーーー散々悩んで結局放課後。帰ろうとせずに机に突っ伏して寝ている増田くんを後ろから背中をつつくと、待っていたとも予想してなかったとも取れるように、びくりと反応してこちらを向いた。
「えーーと、返事なんだけど」
「うん」
「あの、ええと……さっきの質問の答え、ってことで」
「うん?」
慶ちゃんはもうわたしの言わんとすることが分かったのか、相変わらず素直じゃないなあと隣で軽く笑う。増田くんはまだぴんと来ていないみたいだ。仕方ないじゃん、好きな人に好きなんて言う免疫ついてないんだから。
「俺には言えるのにねえ」
と、慶ちゃんが助け舟を出すと増田くんはやっと気付いたようで、がたり、と椅子が鳴った。
「マジで…?!」
増田くんは顔を赤くして、萌え袖になっているカーディガンで口を覆う。え、なにその反応。気を使ってくれたのか、またね〜、と慶ちゃんは手をひらひらと振って帰ってしまうから、教室にはもうふたりだけ。教室に差す西日が眩しい。
「え、ひなた、ほんとに好きなの」
「…だからそういうことだってば」
「ちゃんと言って?」
「〜〜っ!だから、す……好き、だよ」
ふうん?と満足そうにそう言って、私の机に頬杖をついて余裕そうな笑みでこちらを向くから、なんとなく悔しくて目をそらす。
「んふふ、俺も好き。俺はさ、ずうっとひなたんこと好きだったよ。だから、俺に大切にされといてよ」
「だから、…そういうの、ほんとずるい」
「嫌い?」
「…きらいではないけど」
「ふ、素直じゃねーの」
いつものへらりとしている増田くんより、こっちのほうが断然好きだ。この方がモテるのに、と思ったけど、わたししか見れない一面があるのもそれはそれで悪くはない、のかもしれない。
「帰ろっか、俺ん家から近えし家まで送る」
「え、なんで家知ってんの」
「ああ、小山が教えてくれた」
「個人情報が漏洩している……」
リュックを背負って、ん、と差し出された、顔に似合わず『男の子』な手に遠慮がちに触れると、大きい手のひらに包み込まれる。柔らかい鼻歌が隣から聞こえて陽だまりのようだった。
「なにその質問」
「ね、これそのまま読んで!2文字だけだから!俺に向かって!」
「やだよ!圧がすごい!あと増田くんには言いたくない!」
保健室での一件があってから数週間、増田くんのかまってちゃん感が10倍くらいに跳ね上がった気がする。保健室で見た真剣な表情は幻だったのだろうか、と思うくらい。それでも顔を見るだけでどきどきしてしまうようになってしまったのが悔しいけど、それを隠すために、比例するようにつんつんした態度を取ってしまっている。
「ひなた、キスの反対は?」
「すきー」
「よくできました〜、じゃあこれ読んで?」
「『すき』!」
「なぁんで小山には言うの!」
ぷくと頬を膨らます増田くんを見ながら、慶ちゃんはけらけらと楽しそうに笑う。こういう『お兄ちゃん』みたいな人が好きなはずなんだけど、事実、増田くんを意識してしまっている自分がいるわけで。そして慶ちゃんにはその気持ちはバレてしまっていて、隣にいるのにLINEで『なんでそんなつんつんしてんの!』という文章と共に怒っているスタンプまで送ってくる始末だ。ほどなく授業開始のチャイムが鳴って、ぼんやりと黒板を見るフリをして視界の先の彼を見やると、ふいに増田くんが振り向いた。
「さっきのとこ写してなかったわ。ごめんひなたノート貸して」
「ん、どーぞ」
いつもは写せてないところがあってもそのままなのに珍しいなと思いつつ前にノートを渡す。
「はい、ありがと〜」
広げられたまま帰ってきたノートにふと目を落とすと、余白の部分に何か新しく書かれていた。
『俺はひなたが好きだけど、おまえは?』
は、と声が出そうになったのはなんとかこらえた。けど、こんな直接的に言われると思わなくて、一度読んだ文字列を何度も読み返し反芻すると、どんどんと顔が熱を帯びていくのがわかる。もう答えが決まっているとはいえど言葉にするのは難しい2文字。授業を聞く余裕もなく、うんうんと悩んで悩んで。
「…ねえ」
「っ、うい」
ーーー散々悩んで結局放課後。帰ろうとせずに机に突っ伏して寝ている増田くんを後ろから背中をつつくと、待っていたとも予想してなかったとも取れるように、びくりと反応してこちらを向いた。
「えーーと、返事なんだけど」
「うん」
「あの、ええと……さっきの質問の答え、ってことで」
「うん?」
慶ちゃんはもうわたしの言わんとすることが分かったのか、相変わらず素直じゃないなあと隣で軽く笑う。増田くんはまだぴんと来ていないみたいだ。仕方ないじゃん、好きな人に好きなんて言う免疫ついてないんだから。
「俺には言えるのにねえ」
と、慶ちゃんが助け舟を出すと増田くんはやっと気付いたようで、がたり、と椅子が鳴った。
「マジで…?!」
増田くんは顔を赤くして、萌え袖になっているカーディガンで口を覆う。え、なにその反応。気を使ってくれたのか、またね〜、と慶ちゃんは手をひらひらと振って帰ってしまうから、教室にはもうふたりだけ。教室に差す西日が眩しい。
「え、ひなた、ほんとに好きなの」
「…だからそういうことだってば」
「ちゃんと言って?」
「〜〜っ!だから、す……好き、だよ」
ふうん?と満足そうにそう言って、私の机に頬杖をついて余裕そうな笑みでこちらを向くから、なんとなく悔しくて目をそらす。
「んふふ、俺も好き。俺はさ、ずうっとひなたんこと好きだったよ。だから、俺に大切にされといてよ」
「だから、…そういうの、ほんとずるい」
「嫌い?」
「…きらいではないけど」
「ふ、素直じゃねーの」
いつものへらりとしている増田くんより、こっちのほうが断然好きだ。この方がモテるのに、と思ったけど、わたししか見れない一面があるのもそれはそれで悪くはない、のかもしれない。
「帰ろっか、俺ん家から近えし家まで送る」
「え、なんで家知ってんの」
「ああ、小山が教えてくれた」
「個人情報が漏洩している……」
リュックを背負って、ん、と差し出された、顔に似合わず『男の子』な手に遠慮がちに触れると、大きい手のひらに包み込まれる。柔らかい鼻歌が隣から聞こえて陽だまりのようだった。
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