すきになんてならない、とは言い切れない
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授業の最後、前からぺらりと回ってきたプリントにまたもやネコやらブタやらのイラストが書かれてあるのを見つけてわざとらしく、前の席に聞こえるようにため息をついた。いつも通り犯人は前の席に座っている増田くん、である。
「ちょっと増田さん、わたしのプリントに勝手にお絵かきするのやめてもらえますかねえ」
「んふ、かわいーでしょ?」
「いや、可愛いとか可愛くないとかそういうことではなくてさあ…」
授業終わりのチャイムが鳴りすぐに抗議するとのほほんとした答えが帰ってきてがくりと肩を落とした。
「まーまー、好きな子にはいじわるするって言うじゃんねえ!ねーまっすー?」
と、何故か隣の慶ちゃんは目を輝かせてわたしと増田くんをそれぞれ見ながら楽しそうに話している。好きな子がなんだって…?『お前なあ!』ときゃっきゃとじゃれ始めた増田くんと慶ちゃんをよそ目に、写し終わらなかった板書を日直に消される前にボールペンを動かす。
「ほら小山ぁ、ひなたは俺のことなんか全然かまってくんねえの」
「え、かまうとは…?いや、ていうかわたし保健室連れてったりしてんじゃん!!」
「それとこれとは別なのぉ」
「拗ねられる意味がわかんないんだけど!あ、慶ちゃんそれひとくち」
「あーーー!間接キスうう!」
「うるっさい!」
慶ちゃんから新作のコンビニスイーツをひとくちもらうだけでこの有り様。増田くんの独特のノリはまだ掴めない。
「ねー、保健室行きたい」
「またぁ?そろそろ授業ちゃんと聞いとかないと分かんなくなるよ」
「だって実際しんどいし〜」
わざとらしくげほげほと咳き込みだしたので、わかったよ、と席を立つところっと機嫌良くなるんだからたちが悪い。いつも通り慶ちゃんに先生への伝言を頼んで教室を後にする。ふたりきりの時間は保健室まで、と思っていたのに。
「あれ、先生いないや」
ドアを開けた先のデスクの上に貼ってあるメモによると『会議中』と書かれてあり、1時間ほど帰ってこないらしい。いつもは保健室に送り届け次第すぐに戻るけど、とりあえず保健委員の体裁もあるので熱だけはかってもらおうと体温計を渡した。
「…なに見てんの、ひなたのえっち」
「なっ、え、見てない!見てません!」
ぷちぷちと上からボタンを外して体温計を入れるさまをぼんやりと見ていると、イスに座った増田くんが上目遣いでそんなことを言ってくるからあわてて目を逸らす。増田くんは本心が読めないから、なんとなく苦手だ。いつもにこにこへらへらしてるし、冗談ばっかりだし。こんなつんつんしてる自分にちょっかいを出してくるのもずっと疑問である。
「… ひなたはさぁ、好きな人とかいんの」
「えぇ、なに急に。……ひみつ」
「いんのかよ!え、俺の知ってるやつ?」
体温を計るまでの時間、ふいに口を開いたと思えばなぜか好きな人の話題だった。ひみつ、とは言ったものの特に好きな人なんていない。親友の恋話を聞くだけで十分楽しいし、満足だ。
「ーーーおれにしとけば」
「へ?」
いつもの軽口とは違う、真剣な、男の子の声で増田くんは私の腕をきゅっと掴むから、私は心臓の奥がどきりと苦しくなる。なんだ、この感覚。ーーー何秒か何分か経ったかは分からない。ぴぴぴと体温計の音がして、数字を確認すると37.8℃。
「うわ、ほんとに熱あるじゃん。先生には言っといてあげるからベッドで寝といたほうがいいよ」
「…ん、寝とく」
布団に入ったのを確認してベッドのカーテンを閉めて、それじゃあ、と何事もなかったように戻ろうとした、けど。
「さっきの、考えといて」
カーテン越しに声が響いて、何も聞こえないふりも出来たのに、『ん、』と小さく返事をしてしまって、がらりと保健室を出る。
風邪っぴきのうわごとなのか、いつもの冗談なのか、それとも本心なのかは分からないけど、触れられた腕は、まだ熱を持っている。
「ちょっと増田さん、わたしのプリントに勝手にお絵かきするのやめてもらえますかねえ」
「んふ、かわいーでしょ?」
「いや、可愛いとか可愛くないとかそういうことではなくてさあ…」
授業終わりのチャイムが鳴りすぐに抗議するとのほほんとした答えが帰ってきてがくりと肩を落とした。
「まーまー、好きな子にはいじわるするって言うじゃんねえ!ねーまっすー?」
と、何故か隣の慶ちゃんは目を輝かせてわたしと増田くんをそれぞれ見ながら楽しそうに話している。好きな子がなんだって…?『お前なあ!』ときゃっきゃとじゃれ始めた増田くんと慶ちゃんをよそ目に、写し終わらなかった板書を日直に消される前にボールペンを動かす。
「ほら小山ぁ、ひなたは俺のことなんか全然かまってくんねえの」
「え、かまうとは…?いや、ていうかわたし保健室連れてったりしてんじゃん!!」
「それとこれとは別なのぉ」
「拗ねられる意味がわかんないんだけど!あ、慶ちゃんそれひとくち」
「あーーー!間接キスうう!」
「うるっさい!」
慶ちゃんから新作のコンビニスイーツをひとくちもらうだけでこの有り様。増田くんの独特のノリはまだ掴めない。
「ねー、保健室行きたい」
「またぁ?そろそろ授業ちゃんと聞いとかないと分かんなくなるよ」
「だって実際しんどいし〜」
わざとらしくげほげほと咳き込みだしたので、わかったよ、と席を立つところっと機嫌良くなるんだからたちが悪い。いつも通り慶ちゃんに先生への伝言を頼んで教室を後にする。ふたりきりの時間は保健室まで、と思っていたのに。
「あれ、先生いないや」
ドアを開けた先のデスクの上に貼ってあるメモによると『会議中』と書かれてあり、1時間ほど帰ってこないらしい。いつもは保健室に送り届け次第すぐに戻るけど、とりあえず保健委員の体裁もあるので熱だけはかってもらおうと体温計を渡した。
「…なに見てんの、ひなたのえっち」
「なっ、え、見てない!見てません!」
ぷちぷちと上からボタンを外して体温計を入れるさまをぼんやりと見ていると、イスに座った増田くんが上目遣いでそんなことを言ってくるからあわてて目を逸らす。増田くんは本心が読めないから、なんとなく苦手だ。いつもにこにこへらへらしてるし、冗談ばっかりだし。こんなつんつんしてる自分にちょっかいを出してくるのもずっと疑問である。
「… ひなたはさぁ、好きな人とかいんの」
「えぇ、なに急に。……ひみつ」
「いんのかよ!え、俺の知ってるやつ?」
体温を計るまでの時間、ふいに口を開いたと思えばなぜか好きな人の話題だった。ひみつ、とは言ったものの特に好きな人なんていない。親友の恋話を聞くだけで十分楽しいし、満足だ。
「ーーーおれにしとけば」
「へ?」
いつもの軽口とは違う、真剣な、男の子の声で増田くんは私の腕をきゅっと掴むから、私は心臓の奥がどきりと苦しくなる。なんだ、この感覚。ーーー何秒か何分か経ったかは分からない。ぴぴぴと体温計の音がして、数字を確認すると37.8℃。
「うわ、ほんとに熱あるじゃん。先生には言っといてあげるからベッドで寝といたほうがいいよ」
「…ん、寝とく」
布団に入ったのを確認してベッドのカーテンを閉めて、それじゃあ、と何事もなかったように戻ろうとした、けど。
「さっきの、考えといて」
カーテン越しに声が響いて、何も聞こえないふりも出来たのに、『ん、』と小さく返事をしてしまって、がらりと保健室を出る。
風邪っぴきのうわごとなのか、いつもの冗談なのか、それとも本心なのかは分からないけど、触れられた腕は、まだ熱を持っている。
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