こっちを向いて、愛しい人【RKRN】夢小説
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(留三郎side)
伊作に先を越されたくない、という思いもあり、俺は少し早く起きて朝食をとり、保健室に向かった。
一人、静かな保健室であんたを待つ。
今まで待ち続けた時間と、今日、この保健室で待つ時間。比べれば短い方がどちらか、なんてすぐにわかる。
それでもソワソワと落ち着かない気持ちは隠せない。
俺の事を、覚えているだろうか。
いったいどんな女性に育ったのだろうか。
……もう俺の前から消えるな。ずっと俺と共に居ろ。お前が好きだ。
この数年間熟成し続けた思いを伝えたら、あんたはどんな反応をする?
会いたい。早くしろ。
もういっそこっちから出向こうかと思ったその時、障子越しに伊作と恵の声が聞こえた。
障子が開く。
俺は伊作の隣に立っていたくノたまを見て、言葉を失った。
恵だ。
紛れもなく、恵だ。
美しく絹のような手触りの長かった髪は肩より少し上で切りそろえられ、顔つきはいくらか大人びてはいたが、俺の目の前にそっと正座をする様子は、変わっていない。あいつは正座を好んだ。
何より愛らしい唇。血色の悪い彼女はいつも、形の良いぷっくりとした唇に鮮やかでしかし落ち着きのある色の紅を注 していた。
ああ、触れたい。俺の事を今まで忘れていたのならそれでもいい。それは許す、だから思い出せ。
「えーと、ほら、これが昨日言っていた留三郎だよ」
「これじゃねえ!あー、初めまして、食満留三郎です」
伊作の投げやりな紹介に食って掛かる。
それはどうでもいい。もはや平常心ではない。
勢いで初めまして、と言ったことを俺は心から後悔した。恵の顔をまともに見ることができない。
しばらくののち、初めまして、と。恵は確かに、俺に向かってそう言った。
俺は、これを恐れていた。
伊作に先を越されたくない、という思いもあり、俺は少し早く起きて朝食をとり、保健室に向かった。
一人、静かな保健室であんたを待つ。
今まで待ち続けた時間と、今日、この保健室で待つ時間。比べれば短い方がどちらか、なんてすぐにわかる。
それでもソワソワと落ち着かない気持ちは隠せない。
俺の事を、覚えているだろうか。
いったいどんな女性に育ったのだろうか。
……もう俺の前から消えるな。ずっと俺と共に居ろ。お前が好きだ。
この数年間熟成し続けた思いを伝えたら、あんたはどんな反応をする?
会いたい。早くしろ。
もういっそこっちから出向こうかと思ったその時、障子越しに伊作と恵の声が聞こえた。
障子が開く。
俺は伊作の隣に立っていたくノたまを見て、言葉を失った。
恵だ。
紛れもなく、恵だ。
美しく絹のような手触りの長かった髪は肩より少し上で切りそろえられ、顔つきはいくらか大人びてはいたが、俺の目の前にそっと正座をする様子は、変わっていない。あいつは正座を好んだ。
何より愛らしい唇。血色の悪い彼女はいつも、形の良いぷっくりとした唇に鮮やかでしかし落ち着きのある色の紅を
ああ、触れたい。俺の事を今まで忘れていたのならそれでもいい。それは許す、だから思い出せ。
「えーと、ほら、これが昨日言っていた留三郎だよ」
「これじゃねえ!あー、初めまして、食満留三郎です」
伊作の投げやりな紹介に食って掛かる。
それはどうでもいい。もはや平常心ではない。
勢いで初めまして、と言ったことを俺は心から後悔した。恵の顔をまともに見ることができない。
しばらくののち、初めまして、と。恵は確かに、俺に向かってそう言った。
俺は、これを恐れていた。
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