こっちを向いて、愛しい人【RKRN】夢小説
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(伊作side)
「失礼します、くノ一教室の恵です。気分がすぐれないので休養を取りたいのですが」
ああ、君が恵ちゃんか。僕は君の事を知っている。
「はーい」
入ってきたくノたまは、留三郎が言っていたほど美人ではなかったけれど、どこか愁いを帯びていて、知性を感じさせる所作であった。
なるほどね、留三郎。君はずっとずっとこの子が大好きで愛おしくて、しょうがなかったんだね。
僕の同室が眠れなくなるほどの好意を寄せる相手。恵ちゃんに今日、僕は初めて会った。
恵ちゃんが保健室を後にしてしばらく経ったころ、僕も薬棚の整理を終えて保健室を立ち去った。
今さっきの事を留三郎に伝えるべきか、否か。
留三郎自身だって一回喋ったかどうかすらわからないくらい関わりがない相手だから、僕の方が先に交流を持ったと聞いたらどんな顔をするのだろう。
好奇心が勝り、僕は自室で忍たまの友を読んでいた留三郎に話すことにした。
「ねえ留三郎、恵ちゃんが今日、保健室に……」
言い終わる前に留三郎は僕に飛びかからんばかりの勢いで身を乗り出す。
「本当か?!おい、俺はまだ声すら聞いたことがねえのに?!伊作に先を越されたってのか?!」
「安心してよ、僕は同室の片思いの相手に横恋慕するような真似はしないさ。……たぶん」
「おい!たぶんとか言うなよ!で、どんな声だった?」
本当に好きなんだなあ。
「うん、いろいろ教えてあげてもいいけど、留三郎がなんであの子の事を好きなのかを話してくれたらね?」
「伊作のくせに条件を付けるな!いいけどよ、別に」
僕のくせにとは失礼な。
「いいなら話して」
「……一年生だったか二年生だったか、とにかく下級生だったころに……」
僕がそのあと三十分くらい費やして聞いたのは、いつも「勝負だー!」と叫んでは戦っている好戦的な男の、甘く切ない、初恋の模様であった。
「……ねえ、僕最初の出会い編から現在の片思い編まで、全部知ってるんだけど。僕が聞いたのは、どこが好きなのかってこと」
「はあ?何で知って……いや、俺が毎日相談していたからか。すまんな、伊作。どこが好きって、全部に決まってんじゃねーか」
「それ、胡散臭い男のつかう常套句。第一どんな声なのかも知らないくせにどうして全部なんて言えるのさ」
「うるせー。いや、そもそも一回や二回、下級生の頃に喋ってはいるんだぜ?ただ、もう忘れちまっただけだ」
しばらく沈黙が下りる。
「……ねえ、本当に、どこが好きなの?何が原因で好きになったのさ」
留三郎は耳まで赤く染めてうつむいて、答えない。
「ねえ」
「……あいつは、このお世辞にも良いとは言えない現状に、喜びを探してるんだ。努力家ってわけでもない、高い理想を掲げてここに入ったわけでもない。むしろ忍者になんてなりたくもないって思ってるやつが、どうして五年間もここに居続けることができたんだ?」
それは僕が聞きたいのだが。
留三郎の意外な観察力に驚く。どうしてそこまで恵ちゃんの内面を知っているのだろう。
「俺は成長するあいつが、好きなんだ。自分と向き合って、成長していく姿が。皆が皆できる事じゃねえだろ?」
「失礼します、くノ一教室の恵です。気分がすぐれないので休養を取りたいのですが」
ああ、君が恵ちゃんか。僕は君の事を知っている。
「はーい」
入ってきたくノたまは、留三郎が言っていたほど美人ではなかったけれど、どこか愁いを帯びていて、知性を感じさせる所作であった。
なるほどね、留三郎。君はずっとずっとこの子が大好きで愛おしくて、しょうがなかったんだね。
僕の同室が眠れなくなるほどの好意を寄せる相手。恵ちゃんに今日、僕は初めて会った。
恵ちゃんが保健室を後にしてしばらく経ったころ、僕も薬棚の整理を終えて保健室を立ち去った。
今さっきの事を留三郎に伝えるべきか、否か。
留三郎自身だって一回喋ったかどうかすらわからないくらい関わりがない相手だから、僕の方が先に交流を持ったと聞いたらどんな顔をするのだろう。
好奇心が勝り、僕は自室で忍たまの友を読んでいた留三郎に話すことにした。
「ねえ留三郎、恵ちゃんが今日、保健室に……」
言い終わる前に留三郎は僕に飛びかからんばかりの勢いで身を乗り出す。
「本当か?!おい、俺はまだ声すら聞いたことがねえのに?!伊作に先を越されたってのか?!」
「安心してよ、僕は同室の片思いの相手に横恋慕するような真似はしないさ。……たぶん」
「おい!たぶんとか言うなよ!で、どんな声だった?」
本当に好きなんだなあ。
「うん、いろいろ教えてあげてもいいけど、留三郎がなんであの子の事を好きなのかを話してくれたらね?」
「伊作のくせに条件を付けるな!いいけどよ、別に」
僕のくせにとは失礼な。
「いいなら話して」
「……一年生だったか二年生だったか、とにかく下級生だったころに……」
僕がそのあと三十分くらい費やして聞いたのは、いつも「勝負だー!」と叫んでは戦っている好戦的な男の、甘く切ない、初恋の模様であった。
「……ねえ、僕最初の出会い編から現在の片思い編まで、全部知ってるんだけど。僕が聞いたのは、どこが好きなのかってこと」
「はあ?何で知って……いや、俺が毎日相談していたからか。すまんな、伊作。どこが好きって、全部に決まってんじゃねーか」
「それ、胡散臭い男のつかう常套句。第一どんな声なのかも知らないくせにどうして全部なんて言えるのさ」
「うるせー。いや、そもそも一回や二回、下級生の頃に喋ってはいるんだぜ?ただ、もう忘れちまっただけだ」
しばらく沈黙が下りる。
「……ねえ、本当に、どこが好きなの?何が原因で好きになったのさ」
留三郎は耳まで赤く染めてうつむいて、答えない。
「ねえ」
「……あいつは、このお世辞にも良いとは言えない現状に、喜びを探してるんだ。努力家ってわけでもない、高い理想を掲げてここに入ったわけでもない。むしろ忍者になんてなりたくもないって思ってるやつが、どうして五年間もここに居続けることができたんだ?」
それは僕が聞きたいのだが。
留三郎の意外な観察力に驚く。どうしてそこまで恵ちゃんの内面を知っているのだろう。
「俺は成長するあいつが、好きなんだ。自分と向き合って、成長していく姿が。皆が皆できる事じゃねえだろ?」