そう言ってはにかむ伊作。ああ、本当にもっと早く保健室に来ていればよかった。
私たちの間に気恥ずかしい沈黙が下りる。嫌ではない。

「……僕たちは君のこと、名前と顔くらいは知っていたんだけど、君は本当に僕以外の忍たまの同級生を知らないのかい？」
「うん、そうね、顔は知らないけれど、立花仙蔵とか、食満留三郎とか、何人かの名前なら聞いたことはあるかな」
「あー、あの二人はくノ一に人気だからなあ……」
「らしいねえ。みんないつもサラサラの髪が美しいとか、かっこいいとか、口々に褒め称えてはうっとりしているから。でもそれを言うなら伊作、君も人気だよ？だから私も名前は聞いたことがあったの」
「はは、どうだか」

人と話すことがこんなにも楽しくて、気分が高揚して、気持ちが楽になるなんて知らなかった。
願わくば、またお話をしたい。他の誰でもなく、伊作と。

「ねえ、……あの」
「なんだい？……わかってる、また話そうよ。僕も、楽しかったから。またおいで？待ってるよ」
「……うん、ありがとう」

それが本心でなくて、ただ伊作の困っている人は放っておけない性格からの発言だったとしても、私には大いなる救いであった。
君は、忍者になりたいのだろう？ごめんね、本当に、こんな時期に迷惑をかけて。