其の一
夢小説名前変更
夢小説名前変更この小説は夢小説です。
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主人公の名前を入力してください。
この小説では
・偶然にも下の名前が真名な主人公です。
・名前を名乗ると神隠しに遭う可能性大です。
審神者ネームは円[まどか](変換なし)
未入力の場合は
名前:五来 日和[ごく ひより]
真名:日和
になります。
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<和泉守兼定 Side>
「こっちは風呂で……こっちが厨……結構広いな、ここ」
「まあそうだな。ところで和泉守の旦那は、さっきからえらく静かじゃねぇか」
「……いや、なんつーか、なあ」
「加州の旦那の事なら、あれで解決になると思うがな」
「……そーかよ」
俺は和泉守兼定。
元々いた主を一期一振が斬ったことにより、消滅を今か今かと待ち構えていた刀だ。
……欲を言えば、また国広に会ってから、なんて思って人間みたいな器を手に入れたことを後悔していたが。
まさかの恨みに恨んだ仇の審神者が来やがった。
前にいた主のことは、胸だけは大きかったという記憶があるが、それ以外は嫌な思い出しか残っていない。
誰が来たかは知らねえが、今度はこの俺が直々にたたっ斬ってやる、と思っていた。
「待て待て待て、ちょっと待って。銃刀法違反よくない。いやというかそんな怪我して冷静でいられるの???いや、これ以上近づかないから早く病院行こう本当に」
俺が本体である刀を構えたのに対して放った言葉。
こいつに抱いた第一印象はずばり「変な奴」だった。
まず刀を構えた時点でひるまない。
そんな女は刀として仕えてた頃の、前の主である土方歳三といた時にだっていなかった。
それどころか自分の身を案じる前に俺たちの怪我を見て、早く治せと騒ぎ出す。
「そこの青髪のお兄さん、えっとなんだっけ?手入れ?できそうなとこに弟くん連れてってもらえます?私が触らない方がいいみたいだし」
「私は五来 **!審神者になってくれって言われたけどその他のことは何も聞いていない!本丸ってものがあることも今日初めて知った!だからこの状況の説明求む!!」
「というより先に!全員怪我してるの治すから!手入れとか言うやつのやり方教えて!!あと他にも怪我してる子いるなら治すから。連れてきて!!」
このセリフを聞いて抱いた印象も、やっぱり「変な奴」だった。
何も知らないだと?
そんなこと言いながらきっちり真名を隠し。
あまつさえ手入れをさせろと言い出した。
そんなことする必要はない、だって俺たちは物であり。
折れるまでは戦い抜くものだ。
痛みなんか、前の前の前の俺からも受け継がれてきて慣れている。
慣れている、はずだった。
「ってことは痛いんじゃん」
そう言われたときに、今まで確かに平気だったものが一気に辛くなる。
お前は俺たちの何を知ってそんなことを言っているんだ。
そう叫んでやりたかったのに、言葉がそれ以上出てこなかった。
だからこそ、命令されたときは思わず舌打ちが出た。
何勝手に命じてやがる。
主でもなんでもない、ただの霊力のある人間だ。
けれど、それに素直に従ってしまっている自分もいて。
俺は一体何がしたいんだ。
それで一度離れたものの、他の刀は既に顕現できるほどの力は残っていない。
1人を覗き、誰もいないことはわかっていたし。
唯一残った加州清光も怪我はないが動けないことを知っている。
そこで燭台切の提案「奇襲する様子を伺おう」を採用し。
それほど時間が経っていないが、すぐに奴の行動を監視した。
本当に何もわかっていない様子。
俺達でも思わず冷や汗をかく、あのじいさんから放たれる殺気に反応することなく。
意味が分からないと、でもやるべきことはわかっているといったその様子に、俺も燭台切も戸惑っていた。
そこで飛び出たあのセリフだった。
「よくわかんないです。扱いません、人間と変わんないんですから。人は扱う物ではないですし」
「ええ……?……とりあえず、怪我を治して……おなかがすいたので一緒にご飯作ってみんなで食べます」
「は」
思わず声が漏れた。
俺たちは刀だ。
扱わずしてどうするというんだ。
ご飯も食べなくていいのだ。
なのに、なのにこの人間は。
本当に、何も知らないただの馬鹿か。
そうして燭台切と共に顔を見合わせ。
本当に何も知らないのか、と問いかけた。
おそらく名乗っているであろう真名。
その様子に思わずなんて馬鹿だ、と心の底からあきれる。
―――それと同時に、少しだけ期待している自分に気付かなかった。
この人間なら、俺たちのことをわかってくれるんじゃないか。
普通の人間のように、扱ってくれるのではないか、と。
そうして初めてちゃんと見たその顔は。
純粋そうで、まっすぐな黄蘗色の瞳。
さらっとした黒い、後ろで1つに簡単にまとめた髪。
恐らく洋装であるシンプルな服。
そして何より、その体からあふれているお日様のような霊力。
前にいた審神者とは、何もかもが違う人間だった。
そうして俺たちのことを、刀解する方法があるにも関わらず緊張感あっていいとか言い出した、ずっと真名を名乗っていたこの馬鹿は。
『円』と名乗り、俺たちをどんどん直していった。
更には他にもいる刀のままのお仲間たちも直すと言った。
それに対して薬研が審神者を主と認め。
俺も少しだけなら、警戒を解いてやってもいいと思っていた矢先に。
体に感じた術の気配に、すぐさまその気配の近くへ駆け寄る。
折角少しは考えてやっても良いと思っていたのに、と殺気だったのも束の間。
こんのすけが張った結界の外から見えた奴の手に動揺する。
血が流れ、止まる様子を見せないそれを見て。
奴が何かをかけたのではなく、すぐに呪詛にかかったのだと思った。
では先程の感じは何かと言えば、逆に俺たちにかかっていた術を解いたものだと理解する。
なぜ、なぜこの人間は。
そんなことまでしてそれを解いたのか。
その様子を見た爺さんが認めたのも気持ちはわかるが、よく聞けばそれが何かわからないままに無意識に解いたという。
死ぬかも知れなかったその行動に、思わずため息が出る。
その術を解いたことで、燭台切のやつも主と認め。
今までの様子を見ながら、一期一振は。
審神者が憎いよりも、『円』という審神者の刀になって良いのか悩み出した。
そしてその心の枷すらも、奴は簡単に外してしまった。
それだけで、こいつがどんなに優しい奴かもわかったし。
同時にどうしようもない馬鹿で、ものすごく変な奴だということもわかった。
それでも、俺たちがこいつに救われていっている事実は本物で。
こいつなら、きっと加州も、と思ってしまった。
それでも、どうしてもまだはっきりと主であることを認めたくなくて。
この女に期待してしまっている事実を認めたくなくて。
あんな風に言ってしまったが。
やはりあいつは助けてしまった。
いとも簡単に、今まで動かなかったその体を動かし。
今も奴の側にいると、溢れ出ている霊力の影響で、唯一居心地の良い空気であるその横にすきあらばと近づいていく。
それを俺の言った「どうにかする」認定になっていないのか。
はたまた馬鹿だからすっかり忘れているのか。
それから奴がこの件に関して追及する事は一切ない。
つまり、俺は完全に主である事を認めるタイミングを逃してしまったのだ。
いや、違う、そうじゃない。
そうではなくて、ああ、もう。
「こっちの裏の方は……ん?大将だ」
先ほど顕現された、前の記憶がないという厚の声に。
俺と薬研で近くに行くと。
確かに、あいつが先ほどの加州のいた部屋の、正面当たりの庭にいた。
と、その手に持っている物を見て。
「「「………………」」」
思わず三振りで絶句してしまった。
ふふふふ、と不気味な笑みを浮かべ。
何もしなければ美人の部類に入るであろう奴の。
その手に、持っている物と言うのは。
「斧……か?」
「……斧……だよな」
「…………斧……いや、おいおいおい」
…………ちょっと待て、ちょっと待て。
………………ちょっと、待ってくれ頼むから。
と、そのまま厚が追いかけようぜと言うので。
少し遅れつつもついていくと。
「バキッ」という大きな音がする。
待て待て待て待て待て、本当に待ってくれ。
「何してんだテメエ!!!!!」
本当に何をしているのか。
ようやくその姿を見た俺は。
思わず目を見開いてその場に固まる。
そこに広がっていた光景は。
先ほどの執務室の中で一人、斧をぶん回して机や椅子を破壊するあり得ない姿の審神者だったからだ。
「誰がっ!!そんな破廉恥なこと!!!するかバカあああああああ!!!!!!」