其の一
夢小説名前変更
夢小説名前変更この小説は夢小説です。
名前を入力すると、登場人物に自動変換できます。
主人公の名前を入力してください。
この小説では
・偶然にも下の名前が真名な主人公です。
・名前を名乗ると神隠しに遭う可能性大です。
審神者ネームは円[まどか](変換なし)
未入力の場合は
名前:五来 日和[ごく ひより]
真名:日和
になります。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ですが、確かに私が、この手で斬り殺しました」
『なんか霊術か何かを使ってて、確かに斬られたけど死んでないですよ。意識不明の重体とかなんとか。それに、もし主を殺していれば問答無用で堕ちてますよ、一期一振様』
様付け呼び、まじか。
雲さん地味にギャップ萌え狙ってんな?
言っとくけど絶対元ヤンかなんかでお腹絶対真っ黒だって。
なんて現実逃避はさておき。
まさかの新事実、前のここの主は死んでいなかった。
その流れで新しく出てきた堕ちるということに関しては、他のみんなも詳しくは知らないらしいが、いわゆる敵になる、とのことだ。
なんてこったい、そんなこともあるのか恐ろしい。
ちなみに闇落ちの条件は未だ解明されてないらしいが。
1つだけ主を殺してしまうと問答無用で堕ちることだけわかっているとのことだ。
……つまり他にも斬り殺された審神者がいるんだな。
「え、待ってなら私は?帰ってくるまでの繋ぎとかそういうことです?」
『言っただろう、意識不明の重体だって。もし戻ってきても、審神者ができるほどの力はないさ』
「……そういうものなのか、よくわからん……」
なんでも霊力が斬られることで減るとかなんとか言っていたが。
これに関しては全く意味が分からなかったので、私が死んだり辞めるまでこの本丸の主は私になる、ということだけ頭に入れた。
訳わからんことばかりだからそろそろキャパオーバーだ。
これ以上は脳が爆発してしまう。
「それでも、私が殺意を持って主に斬りかかったのは事実です」
「でもそれ薬研くんを守る為でしょ?そりゃ正当化するのはよくないと思うけど。だからと言って私はそれで一期さんに死で償ってもらうのは間違ってると思います」
「……しかし、それ以外に、私ができることなど……」
「あ、そういうことか。今の世の中はね、罪を償うのは切腹じゃないんですよ」
「……と、言いますと?」
そうだそうだ、そもそもの考え方が違ったんだ。
武士の刀として生きてきた彼らは、罪を犯す = 切腹なんだ。
どおりで死にたがると思ったよ。
「今の世の中では、死をもって償うんじゃなくて。罪を背負って生きるんです。人間間違えることなんてあるんだから。ちゃんとそれを背負って生きるからこそ償いになる、ってね」
特にその主に斬りかかった本人である一期さんに、罪の意識は重いほどのしかかっている。
だからこそ、彼にはこちらの方が罰のように感じられるだろう。
だから、ちゃんと背負って生きてください。
死んで逃げるなんて、誰も許さない。
今はそういう考え方があることを教えた。
―――すると。
彼の目から、涙がポロポロと零れ落ちた。
意識して泣いていないらしく、拭うこともしなければ止めることもない。
私はあわててハンカチを荷物の中から探して差し出した。
その私の行動で自分が泣いていることに気付いたのか。
ハッとしてようやく涙をぬぐい始めた。
……ほら、こんだけ苦しんでるんだし。
ため込むのは終わりにしましょうよ、一期さん。
しばらく彼はそのまま涙が止まらなかったが。
薬研くんやみったださんに慰められ、ようやく落ち着き。
真っ赤に泣きはらした目はそのままで、私のことを「主殿」とはっきり呼んだ。
「……不束者ですが、どうぞよろしくお願い奉る」
一期さん、それは嫁入り前の娘が言う言葉ですよ。
「あ"ーもう!これじゃ俺が意地張ってるみたいじゃねえか!!」
一期さんが落ち着き、私を主と呼んだことで。
今まで静観していた兼さんが、我慢できなくなったのかそう叫ぶ。
そんなことないよ兼さん、彼らの切り替え速度が速いだけだから。
むしろ兼さんくらいでいてくれた方が私的にはありがたいんだけど。
そういうが、当の本人は全く納得しないようだ。
「こうなったら、おいアンタ!頼みがある」
「まさかの頼み事。はいはいなんでっしゃろ」
「うちの本丸にはもう1人、消えかかっているやつがいる。人間の姿で顕現しているが、唯一怪我をしてない刀だ」
「え、まじですか、なんで言わないの」
「……少し、複雑でな。その刀をどうにかできたら、お前を主として認めてやってもいい」
「和泉守くん……彼は……」
そのつまった言葉に、周りのみんなの表情。
これは一筋縄ではいかないような気がする。
とはいえまだ見ぬ刀を放置するわけにはいかない。
私はそれに対して2つ返事で了承した。
それにしてもどうにか、って雑過ぎない?
具体的に仲間になったら、とかでいいのに。
他の刀は妖精さん達に預け、こんちゃんをそこに置いてから移動を始める。他のみんなもついてきてくれるようで、6人でぞろぞろと歩く。
……そういえばおなかすいた。
朝から何にも食べてないや。
いや、さっき金平糖は食べた。
落ち着いたらこんちゃんにお弁当頼めるか聞いてみようかな。
とてもじゃないけどここじゃ絶対ご飯作れないから。
「……ついたぞ」
そういうと彼は、先ほど兼さんが刀を探すから入ってくるなと言って中に入っていった部屋をさした。
なるほど、私についてきてほしくなさそうだったのは、そういうことだったのか。
私は一度息をのみ込み、深呼吸をする。
確かに、何かいるような感じはある。
いざご対面、と私はふすまを思い切り開けた。
「………なに、ここ」
充満した血の匂い。
壊れてこそいないものの、中はとてもひどい有様で。
そこには刀があちこちに散乱している。
加えて、その刀たちはみな。
―――折れていた。
思わずみんなの顔を見ると。
彼らもここにいい思い出がないようで。
眉間にしわが寄っている。
今までの話と、その現状でここが何の部屋かはすぐに分かった。
彼ら刀剣は、きっとここで折られたんだろう、と。
もう一度、中の様子を見る。
やはりどこを見ても刀が散乱していて。
数えてもキリがない、という程いる。
彼らに私は何ができるのだろう。
……いや、今は兼さんのお願い事が先か。
あとでみんなで話してどうするか、決める。
そう思いながら顔を上げた時。
一番奥に、人の影を見つけた。
暗くて少し視界が悪い。
よく見えない、と思っていたら。
どこから用意してきたのか、一期さんがろうそくをつけたものを持ってきてくれた。
ありがたい、と思いながら奥の方を照らすと。
そこには、黒い服を着た、赤い瞳の人がいた。
「……加州清光」
兼さんが、そう述べる。
きっと彼の名前であろう。
加州さんか、いや、くんかな?
見た目的には私と変わらないので、そう呼ぶことにする。
それから兼さんが加州くんについて話をしてくれた。
加州くんは、かの新選組で有名な沖田総司の刀。
その最後は折れてしまうという刀にとって一番辛い運命だった。
そのため彼は、捨てられないように、愛してもらえるようにと。
前ここにいた主にも一生懸命仕えたが。
その人からの「いらない」という言葉を受け。
それから完全に再起不能となり、ずっとここから動かないという。
「……加えて相棒ともいえる大和守安定も、加州清光がうるさいから、という理由で折られちまってな。それから、この部屋を一度も出てない」
その言葉に私は歯を食いしばる。
思わず爪が食い込むほど拳を握りしめた。
元居たやつは本当に人間だったのか。
何をどうすればそんな風に考えられるのか。
ここにいるならボコボコにして、彼ら以上の苦痛を与えてやりたいほどだ。
いつか会うことがあるなら絶対に泣かしてやる。
そんなことあってほしくないと願うばかりだが。
「……大将、すまねぇ、俺、長くはいられない」
そう言って先ほどまで傍にいてくれた薬研くんが一度その場を離れた。
そりゃそうだ、間違いなくここにいい思い出があるなんて奴いない。
みんなも無理しなくていい、と言うと。
一期さんやみったださんも一言告げてその場から離れる。
そのまま残ったのは、三日月さんと兼さんだった。
「2人も、無理しなくていいよ」
「俺は大丈夫だ。しかし、お主には辛いだろう」
「本当は居たくないが、言い出したのは俺だ。見届けさせてもらう」
三日月さんは特に表情が変わらないものの。
兼さんの方は顔色最悪だ。
とはいえここから離れる気はなさそうなので、それ以上は何も言わなかった。
一期さんの持ってきてくれたろうそくで足元を照らし。
無残に置かれている折れた刀たちを踏まないように気を付ける。
……彼らは、どんな気持ちでここにずっといるのだろうか。
考えるだけで吐きそうになる。
また新たな姿で戦うことがあるのだろうか。
……そう思うと、胸の奥が締め付けられた。
加州くんのすぐ近くまで来るが、彼から反応はない。
正面には兼さんと変わらない長さの折れた刀が放置されている。
……きっと、彼がやまとの、っていう刀なんだろう。
正直に言いますごめんなさい、名前難しくて忘れました。
その刀のすぐそばに私はしゃがみ、彼の顔を覗き込む。
綺麗な顔、赤い瞳。
その瞳からは全く生気を感じられず。
ただそこにいる人形のように思える。
服も先ほど兼さんが言っていた通り、愛されるために目いっぱいおしゃれしてたんだろう。
だからこそ、その姿が余計に悲しくなった。