番外編
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凶状持ちの吉野順平の監視役、それが私に与えられた新しい役職である。
監視役、つまりは…
「24時間、365日…吉野くんを好きなだけ監視していて良い…ということよね」
「違うと思うよ…だから帰って……」
「私は監視役の仕事しているだけよ、お気になさらず」
「気にしない方が無理だから」
別件の仕事を片付けた私は、監視対象である吉野順平の様子を見に彼の部屋へと赴いた。
しかし、彼はどうやら入浴中であったらしく、シャワーの音がしていたので一言断りを入れてからシャワールームに突撃した次第である。
一応弁明しておくと、別にやましい気持ちなどこれっぽっちも無い。ただ、そう、これは仕事である。監視こそが私の仕事なので仕方無くであり……
「絶対やましい気持ちあるだろう…」
「無いと言えば嘘になるわね」
「ほらぁ…もー……」
「ずぶ濡れの吉野くんも可愛い…」
当たり前のように突入しようと思い、遠慮無く開けようとしたドアは吉野くんの抵抗により、ほんのちょっぴりしか開かなかった。
ドアの隙間から見える肌色成分多めのしっとり濡れた吉野くんを目に焼き付ける。いや、脳に焼き付ける。
好きな人の裸に興味があるのは思春期ならば当たり前のこと、私は自分の欲求に素直に従っているだけだ。別に彼に妙なことをするつもりは無い、イエス順平ノータッチ。目で見て愛でるだけに抑えることくらい出来るはず。
そう思いながら彼の背に指先を伸ばした。
「抑えきれて無いよね!?」
「身体が勝手に…」
「ちなみにさ、何押してるの…?」
「ホクロ」
吉野くんによる必死の抵抗なんぞ、私からしたら猫パンチにも満たない力加減である。
なので少し力を加えれば簡単にドアは開いた。
焦って身体を後ろ向きにし、顔の半分を隠すため髪を下ろす吉野くんへの背中にあった小さなホクロをぴんぽーんと押した。
そのまま水滴が落ちる髪に触れる。
「どうして顔、隠してしまうの?」
「そんなの…醜いからに決まってるだろ…」
「そうかしら」
私は吉野くんの傷跡も含めて愛しているのだけれど。
どうしたら伝わるかなど考えても仕方無いことだ、私は吉野くんの身体を反転させるように腕を引く。いきなり身を引かれた吉野くんは「うわっ」と驚きの声を挙げながら、私の方に向きを変える。そのまま両手で彼の髪を思いっきりかきあげ、彼が何かを言う前に背伸びをして傷跡にキスをした。
チュッチュッ。
何度も何度も軽い、触れあうだけのキスを親愛と敬意を込めて送る。
ピシリッと音がしそうな風に固まった吉野くんを、濡れることを厭わず抱き締めて頬を擦り寄せれば、「ハァ……」と諦めたように重たい溜め息を吐いて私の肩に頭をぽすっと預けてくれた。
「…無理矢理はさあ…よくないって知ってる?」
「ごめんなさい、でも私、本当に吉野くんの全部が大切で大好きよ」
「うん…分かってる、知ってる、ありがとう」
そう、それなら良いのだけれど。
私は彼の裸を見ないようにと目を瞑って身を離す。
そうすれば、「今更見ないようにしても…」と言うので、「理性のためよ」と伝えて目を瞑ったままシャワールームから出た。
自業自得だが服が濡れた、着替えねばならない。
一旦部屋に戻るかと考えていたら、ドア越しに背中に声がかかる。
「あのさ、僕の服…着てもいい、けど…」
………はい、えー…審議の結果をお伝え致します。
今夜は寝かせませんコースでよろしいですか?
絶体理性殺しに来てるでしょう、このお姫様。
いいわ、そこまで言うのならば騎士として受けて立とうじゃない。私の理性が凄く頑丈なことを証明してあげるわ。こんな程度のことじゃ揺らがないのだから。
ええ、本当、マジよマジ。全く響いて無いから、全然そんな、ベッドの上で正座して待っておこうとかしてないから。シミュレーションしてようとか考えて無いから。
心のバーニー・ロスが「勝ちに行け」と言った。
……バーニーが言うなら仕方無いわよね、バーニーが言うんだもの。
うん、バーニー・ロスを裏切るだなんてそんなこと、私には出来ないわ。
よし。
何処からでもかかって来い、吉野順平!
「あのさ、何でベッドで寝てるの…?」
「温めておくべきだと学んだから」
「また如何わしい本読んだんだろ、いらない知識ばかりつけて…」
ほら、部屋まで送るから出た出た。
布団をひっぺがされて腕を掴まれてしまえば言うとおりにする他無い。
吉野くん、据え膳って言葉知らないのかしら…それとも私にはそういう欲求を抱けるような魅力が足りないのか……。
「あのねぇ…」
吉野くんが顔を赤くし、眉間にシワを寄せながら目線を私から外して口を開く。
「こういうことは、その…ちゃんと順序を踏んでからすべきだからさ」
「順序」
「…大切にさせてよ、お願いだから」
「ひ、」
真剣な瞳が私の瞳を捉える。
言葉を失う。
呼吸の仕方を忘れる。
耳が、やけに熱い。
指先が微かに震えた。
「返事は?」
「…ヒャイ」
「何それ、可笑しいの」
フフッと吐息を溢すように笑ってから私の手を取り、引っ張って部屋を後にする。
……誰よ、吉野くんをこんな私より強い人間にした奴は。
簡単にリードを握られてしまった。だが、悪い気はしない。
吉野くんが幸せならOKです。
ええ、吉野くんが幸せなら私も幸せです。
監視役、つまりは…
「24時間、365日…吉野くんを好きなだけ監視していて良い…ということよね」
「違うと思うよ…だから帰って……」
「私は監視役の仕事しているだけよ、お気になさらず」
「気にしない方が無理だから」
別件の仕事を片付けた私は、監視対象である吉野順平の様子を見に彼の部屋へと赴いた。
しかし、彼はどうやら入浴中であったらしく、シャワーの音がしていたので一言断りを入れてからシャワールームに突撃した次第である。
一応弁明しておくと、別にやましい気持ちなどこれっぽっちも無い。ただ、そう、これは仕事である。監視こそが私の仕事なので仕方無くであり……
「絶対やましい気持ちあるだろう…」
「無いと言えば嘘になるわね」
「ほらぁ…もー……」
「ずぶ濡れの吉野くんも可愛い…」
当たり前のように突入しようと思い、遠慮無く開けようとしたドアは吉野くんの抵抗により、ほんのちょっぴりしか開かなかった。
ドアの隙間から見える肌色成分多めのしっとり濡れた吉野くんを目に焼き付ける。いや、脳に焼き付ける。
好きな人の裸に興味があるのは思春期ならば当たり前のこと、私は自分の欲求に素直に従っているだけだ。別に彼に妙なことをするつもりは無い、イエス順平ノータッチ。目で見て愛でるだけに抑えることくらい出来るはず。
そう思いながら彼の背に指先を伸ばした。
「抑えきれて無いよね!?」
「身体が勝手に…」
「ちなみにさ、何押してるの…?」
「ホクロ」
吉野くんによる必死の抵抗なんぞ、私からしたら猫パンチにも満たない力加減である。
なので少し力を加えれば簡単にドアは開いた。
焦って身体を後ろ向きにし、顔の半分を隠すため髪を下ろす吉野くんへの背中にあった小さなホクロをぴんぽーんと押した。
そのまま水滴が落ちる髪に触れる。
「どうして顔、隠してしまうの?」
「そんなの…醜いからに決まってるだろ…」
「そうかしら」
私は吉野くんの傷跡も含めて愛しているのだけれど。
どうしたら伝わるかなど考えても仕方無いことだ、私は吉野くんの身体を反転させるように腕を引く。いきなり身を引かれた吉野くんは「うわっ」と驚きの声を挙げながら、私の方に向きを変える。そのまま両手で彼の髪を思いっきりかきあげ、彼が何かを言う前に背伸びをして傷跡にキスをした。
チュッチュッ。
何度も何度も軽い、触れあうだけのキスを親愛と敬意を込めて送る。
ピシリッと音がしそうな風に固まった吉野くんを、濡れることを厭わず抱き締めて頬を擦り寄せれば、「ハァ……」と諦めたように重たい溜め息を吐いて私の肩に頭をぽすっと預けてくれた。
「…無理矢理はさあ…よくないって知ってる?」
「ごめんなさい、でも私、本当に吉野くんの全部が大切で大好きよ」
「うん…分かってる、知ってる、ありがとう」
そう、それなら良いのだけれど。
私は彼の裸を見ないようにと目を瞑って身を離す。
そうすれば、「今更見ないようにしても…」と言うので、「理性のためよ」と伝えて目を瞑ったままシャワールームから出た。
自業自得だが服が濡れた、着替えねばならない。
一旦部屋に戻るかと考えていたら、ドア越しに背中に声がかかる。
「あのさ、僕の服…着てもいい、けど…」
………はい、えー…審議の結果をお伝え致します。
今夜は寝かせませんコースでよろしいですか?
絶体理性殺しに来てるでしょう、このお姫様。
いいわ、そこまで言うのならば騎士として受けて立とうじゃない。私の理性が凄く頑丈なことを証明してあげるわ。こんな程度のことじゃ揺らがないのだから。
ええ、本当、マジよマジ。全く響いて無いから、全然そんな、ベッドの上で正座して待っておこうとかしてないから。シミュレーションしてようとか考えて無いから。
心のバーニー・ロスが「勝ちに行け」と言った。
……バーニーが言うなら仕方無いわよね、バーニーが言うんだもの。
うん、バーニー・ロスを裏切るだなんてそんなこと、私には出来ないわ。
よし。
何処からでもかかって来い、吉野順平!
「あのさ、何でベッドで寝てるの…?」
「温めておくべきだと学んだから」
「また如何わしい本読んだんだろ、いらない知識ばかりつけて…」
ほら、部屋まで送るから出た出た。
布団をひっぺがされて腕を掴まれてしまえば言うとおりにする他無い。
吉野くん、据え膳って言葉知らないのかしら…それとも私にはそういう欲求を抱けるような魅力が足りないのか……。
「あのねぇ…」
吉野くんが顔を赤くし、眉間にシワを寄せながら目線を私から外して口を開く。
「こういうことは、その…ちゃんと順序を踏んでからすべきだからさ」
「順序」
「…大切にさせてよ、お願いだから」
「ひ、」
真剣な瞳が私の瞳を捉える。
言葉を失う。
呼吸の仕方を忘れる。
耳が、やけに熱い。
指先が微かに震えた。
「返事は?」
「…ヒャイ」
「何それ、可笑しいの」
フフッと吐息を溢すように笑ってから私の手を取り、引っ張って部屋を後にする。
……誰よ、吉野くんをこんな私より強い人間にした奴は。
簡単にリードを握られてしまった。だが、悪い気はしない。
吉野くんが幸せならOKです。
ええ、吉野くんが幸せなら私も幸せです。